運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

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「そんなこと言っても無駄やし、絶対連れてくかいね! 明日は9時までには起きるとよ~」
「……あのね? お母さん」

    榛名はL字型のソファーに斜め前に座っている母の顔をしっかりと見て、真剣な顔で言った。

「俺ね、昔から男の人が好きやとよ。今の恋人も男の人でさ、女の人には興味ない。やかいずっと結婚はせんて言っちょると。……分かった?」

   母は、大きな目を見開いて口もぽかんと開けて榛名を見つめている。
 思考がフリーズしているように見えた……が。

「なあ、分かってくれた?」

   榛名はもう一度、母の顔を覗き込むようにして聞いた。
 すると。

「……アンタ、そんなくだらん嘘ついてまでお見合いしたくないと? お母さん、アンタが高校生のときの彼女に会ったことあるがね。別に気の合わん相手やったら無理に結婚しろとは言わんから、とにかく会うだけ会ってみてんて」

   どうやら、渾身のカミングアウトは軽く流されたようだった。

「はー……やっぱりダメかぁ」

   一発で信じてもらえるとは思っていない。
 実際に霧咲を連れてきて目の前でキスでもしないかぎり、榛名の母は信じないだろう。
 そんなことするわけないのだが、霧咲に言ったら実行しかねないので恐ろしい。
 それに、榛名は母に本気で信じてもらおうとも思っていなかった。
 ただいつも同じ話をされることにうんざりして、自分の中の何かが切れたのだろうと思う。
 ヤケクソというか、なんというか。

「そんなわかりやすい嘘ついて。オレオレ詐欺の方がまだ引っかかるわ!」
「ええ……」

 自分じゃない誰かが『オレだよオレ、事故ったから金貸して?』とか言うよりも、息子がゲイであることの方が信じられないのか。
 ……まあ、後者は『信じたくない』というフィルターがかかるからかもしれないが。
 それでも正直に言ったのに、と榛名は少し悲しくなった。
 いや、悲しいというより複雑だ。
 いつか榛名の言葉が真実だったということを知る母の心境を想像すると、なんともいえない気持ちになる。

 それでも、もう戻れないから。
 最初から同性が好きだった。そんな自分の性癖を信じたくなくて沢山の女性と付き合ってきたけど、誰も好きになることなんてできなかった。
 まともに誰かを愛することができたのは、唯一、あの人だけ。
 霧咲誠人という、妻子持ちの狡い男だけだ。

(……電話、しなきゃ……)

「まったく、なんて恐ろしい嘘をつく子になったっちゃろ……。ほんとに都会は怖いとこやね」

(別に都会は関係ないけどね)

 榛名はくすっと笑った。
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