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85 その頃の伯父と姪
「解せないわ……」
「……何がだ?」
霧咲は隣の席で腕を組み、う~んと何やら難しい顔で考え込んでいる姪に声を掛けた。
今日は同じく休日だった恋人が旧友に会ってくるとの申し出があったため、亜衣乃が観たいと言っていた映画を小学校に迎えに行ったついでに観に来ていた。
そして観終わった今、『あー面白かった! 亜衣乃もお姫様になりたーい!』という小学生らしい感想でも聞けるかな? と思っていた矢先だったのだが。
「なんか、想像してたお話と全然違ってたの」
「そうか、そりゃあ……残念だったな。(おじさんもおまえの反応が想像と全然違ってたよ)」
「クラスの女の子達が面白い面白い言ってるから、いったいどれ程のものかと……期待しすぎていたのかもしれないわね」
「……」
なんとも子供らしくない感想に霧咲は苦笑した。
確かにご都合主義の有名企業のアニメ映画だったが、世間でも話題にもなっているし、大人の霧咲でもまあまあ普通に楽しめた。
特に良かったのは歌で、あとは『細かい部分に目を瞑ればまあこんなものだろうな』という感想なのだが。
男のキャラクターがほぼ蔑ろにされている感はあったが、これも時代なのだと思う。
「大体何であんなに大人がたくさんいるのに、誰も口出ししないのかしら……大体魔法を使えるからって王位継承権ってそんな絶対的なもの? 子供だって普通疑問に思うわよ」
亜衣乃は席に座ったまま、まだブツブツと呟いて考察している。
その姿は自分の子供の頃にそっくりだと霧咲は思った。
「ほら、係の人が掃除しに来るからそろそろ出るぞ」
「はあい」
自然に手を繋いでシアターを後にした。
恋人の榛名が一緒に来ていたなら、猫被りが得意な姪は屈託のない笑顔でわざとらしく『面白かったぁ!』などと言うのだろう。
勿論榛名に気を使っているのではなくて、自分が可愛い子ぶりたいだけなのも分かっているが。
そこはある意味子供らしい、と苦笑した。
「何笑ってるの? まこおじさん」
「いや別に。――あ、ホラ亜衣乃、あの雪だるまキャラのぬいぐるみが売ってるぞ。いるか?」
「いらない」
榛名は本気で亜衣乃と親子になりたいと思っているらしい。
しかし、しばらくの間は「可愛い妹みたいな子」と「伯父の恋人の優しいお兄さん」という関係はなかなか崩れないだろう、と霧咲は思う。
(……別に、ずっとそれでもいいんだけどな)
2人がずっと笑顔でいてくれたら、どんな関係だろうと構わない。
「ねえねえ今の親子見た? すっごい美形だった……! てかお父さんがすっごい若くない?」
「女の子もお人形みたいに可愛いかったね~」
すれ違った女子高生からそんなことを言われた。
やはり自分と亜衣乃は顔の造形が似ているらしい。
本物の親子ではないけど、そう言われるのは別段悪い気はしない。
亜衣乃のほうは分からないが。
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