運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

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「ねえまこおじさん、晩御飯ってどうするの?」
「暁哉に確認してからだな、友達と食べてくるなら俺たちは今からここで食べよう。……ところで亜衣乃、最近おじさんのこと外でもパパって呼ばないんだな。前は呼ぶなって言っても呼んでたのに。もうすぐ本物の親子になるんだし、パパって呼んでも構わないんだぞ?」

   もっとも、前も本気で呼ばれていたわけではなく、嫌がらせに近いニュアンスだったのだが。

「呼ぶなって言われて呼ぶのと、呼んでいいって言われて呼ぶのとじゃ全然違うのよ」
「何がどう違うんだ? ……まさか照れてるのか? 嘘だろ?」

   大げさに驚いてやれば、亜衣乃はかぁっと顔を赤くした。

「もうまこおじさんうるさい! さっさとアキちゃんに連絡すれば!?」
「はいはい」

   恋人をからかうのも楽しいが、小学生の姪をからかうのも楽しくてやめられない。
 我ながら嫌な性格だと思うが、今更変えようとは思わない。

「あれ、暁哉からメールが来てるな。……!?」
「え、アキちゃんから? なんてなんて?」

    ”誠人さん、愛してますよ”

   霧咲はそのメールを読んだ途端、画面に釘付けになってしまった。
   真面目で照れ屋な恋人は、こういうメールを送ってきたことは今までに一度もない。
   それがいきなりこんな愛がこもったメールを送ってくるなんて、一体どういう風の吹き回しなのだろうか。 

「…………」

   友人と何かあったとしか考えられない。
 榛名が帰ったら、全部問い詰めようと思った。
 勿論、亜衣乃が寝静まった頃に。

「もう、おじさんってばぁ!! 亜衣乃にもアキちゃんからのメール見せてよぉ!!」

   亜衣乃は手を伸ばして霧咲のスマホを奪おうとするが、霧咲は絶対に亜衣乃の手が届かないところまで大人げなく腕を伸ばしてそれを阻止する。 
   そんな二人の行動は、映画を見に来ているその他大勢の客に見られていて遠巻きにクスクスと笑われているのだが、特に気にはならない。

「コレはダメだ。絶対に見せてやらない、減るからな」
「え、何が減るの? アキちゃんなんて書いてたの?」
「あー……今夜は亜衣乃が好きなハンバーグを作って待ってるから、晩御飯は食べずに帰ってこい、と」
「えっホント!? ……じゃあまこおじさん、亜衣乃のお腹が減るって言いたかったの? 亜衣乃、そこまで食いしん坊じゃないもん!」

   亜衣乃は両頬をぷくっと膨らませて、どすどすと足音を立てながら霧咲に背を向けてエレベーターに向かって歩いていく。
   なんとかうまく誤魔化せたが、更に機嫌を損ねてしまったようだ。

「亜衣乃、ケーキでも買って帰ろう」
「太るからいらない!」
「じゃあ俺と暁哉の分だけ買うか……」
「そんなのずるい! まこおじさん、お腹出てきてアキちゃんに嫌われても知らないからね!」

   機嫌を取らないといけないのに、ますます機嫌を損ねてしまった。
 つくづく自分は、こういうことが苦手だと思う。
   榛名は大人なぶん、霧咲の子供じみたからかいには『もう……』とため息をついて諦めてくれるのだが、亜衣乃はそうはいかない。 
 霧咲の方が大人にならないといけないのだ。当然だが。

 ちなみに霧咲は週一でジムに通っているため、今のところ腹が出る心配は全くしていない。
 自分より10歳も若い恋人を満足させるため、それなりの努力は怠っていないのだ。
   けど、亜衣乃にそれを言おうものならますます怒らせてしまうだろうと思い、そこは黙っていた。
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