運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

文字の大きさ
179 / 322

91 榛名が女装したときの話

※榛名くんが高校生の時のお話で、番外編のようなものです。
興味のない方はスルーしてください。






「ねえ榛名、一回私と制服交換してみらん?」
「は?」

 榛名がいきなり親友の郁にそんなことを言われたのは、体育の授業中だった。

「なん言いよっと郁……俺の性別知っちょるか?」
「知っちょるわ、榛名って私と身長そんな変わらんし、肩も細いし身体薄いし絶対女子の制服着れるって」
「身長10センチくらい違うっちゃけど、郁にとっては誤差の範囲? あと身体薄いって言うな。着れるか着れないかの問題でもないし」
「うふ。私、男子の制服一度着てみたかったとよ。ね、お願い! 決定!」
「そっちか。って……決定!?」

 押しに弱い榛名が郁に逆らえるはずもなく、そのまま体育の授業は終わった。
 看護科は女子の人数が圧倒的に多いため、女子は教室、男子は更衣室で着替えるのだが、榛名はジャージ姿のまま制服を持って教室に来させられた。
 中にいる女子全員が着替え終わった頃を見計らって、教室に入る。

「榛名ーぁ! こっちにこいこい」

 榛名と同じくジャージ姿だった郁に手招きされ、榛名は郁のもとに行った。

「ホントに俺、郁の制服着ると?」
「さっき決定したやん、ホラ交換交換!」

 郁は本当は男子の制服が着たかったわけではなく、単に榛名に女子の制服を着させたかっただけである。
 そして榛名がため息をついて郁の制服に袖を通したところ、何事かと二人の周りにクラスメイトの女子が群がってきた。
 女子の前で着替えるのは恥ずかしいが、堂々とズボンを脱いで着替えようとしたら郁に止められ、スカートを履いたあとにズボンを脱ぐ、という方法を伝授された。

「郁、スカート腰回りがゆるいー、落ちそう……」
「男子のくせに私より細いとか腹立つわぁ。てか、似合うなオイ」
「きゃあ、榛名っちょカワイイー! てっげ似合っちょるー!!」
「ホント可愛いー! メイクもしよーや!」
「え、ちょ、ちょっと!?」

 あれよあれよと女子に囲まれ、榛名はあっという間にオモチャにされた。
 ファンデーションを塗られ、アイラインを引かれ、マスカラを塗られて色つきリップを塗られ……もうすぐ帰りのホームルームが始まるというのに、自分の制服には着替えさせてもらえない。

「げー! ちょっとまじでてげ可愛くない!? これヅラ被ったら完璧女子やない!?」
「あたしウィッグ持っちょるよ~、黒髪ロングストレートのハーフウィッグ」
「それ被せたい! 明日持ってきて!」
「あの……俺を無視して勝手に盛り上がらんでくれん?」

 もはや榛名が何を言おうと、女子は止まらない。

「ていうか榛名っちょ、文化祭のミスコン出れるっちゃないと? 看護科一年の代表で、商業科の女子負かせるっちゃない!?」
「あー絶対イケる! ミスコン目指して榛名を可愛くしようや! ギャルばっかの商業科が男に負けるとかてっげウケる!!」
「男は清楚系好きやしね! 絶対榛名の優勝やじ!」

 看護科と商業科は、お互い殆ど女子しかいないせいか犬猿の仲だ。

「あの、何の話をしちょると……?」

 もはや自分にはどうにもできないところまで話が進んでしまっている。
 涙目で親友を見ると、慰めるようにぽんと肩を叩かれた。

「諦めろ、榛名」
「……」

 それは、すごくいい笑顔だった。

 そして文化祭当日。
 今日に至るまできっぱりと断れることもなく、榛名は郁の制服を借りて再び女装してミスコンが始まるのを教室で待っていた。
 隣には郁がマネージャーの如く一緒にいて、メイクの直しやら髪の直しやらをしてくれている。

「榛名ぁ、ちょっと前髪切ろっか」
「は?」
「前髪がうっとおしいっちゃわ。それにぱっつんの方がより顔が見えるし、女子にも見えるし」

 そう言って、郁は筆箱から大きなはさみを取り出した。
 さすがにそれは榛名も必死で抵抗した。

「ちょっと待って、それだけは勘弁して! 今日が終わったら俺二度と女装なんてせんちゃから!」
「やかましいっ、それなら今日一日は完璧に女子になりきらんね! 優勝どころか商業科に負けたらアンタ、明日から自分がどんな扱い受けるかわかっとると? みんなの期待を裏切らんでよ!」
「俺が希望したわけじゃないとに~!」
「ガタガタ言わんと、早よトイレ行くよ!」
「横暴!!」

 連れて行かれたのはもちろん女子トイレだ。
 榛名は恥ずかしくて仕方がなかったが、榛名を男だと知っているのは看護科の一年女子だけなので、すれ違う男からは妙に熱い視線を送られていた。

「今の子見たか?」
「すっげぇ可愛かったな。何科やろうな?」

 トイレで郁に前髪をざくざく切られ、視界はよくなったがまるで日本人形のようなヘアスタイルにされてしまった。

「お、俺の前髪が……」
「ほら、ワックスで整えるからこっち向く!」
「ううう」
「コラ泣くな、メイクが落ちる!」

 そして、校内放送が流れた。

『午後からのミスコン参加者の方は、至急体育館に集合してください』

「あ! 呼ばれちょる。榛名、行くよ!」
「ホントに俺が出らんといかんと? 郁、代わりに出てよぉ」
「悔しいけどアンタの方が私よりだいぶ可愛いわ! くそむかつくけど!」
「ええええ」

 全然嬉しくないと思いながらも、榛名は郁に手を引かれながら急いで体育館へと向かった。
感想 7

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕