運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

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95 二宮と堂島の話

※ここから一旦霧咲×榛名編はお休みして、二宮×堂島編になります。
 そのあとから旅行編が始まります。





 T病院透析室で働く臨床工学技士の二宮修にのみやしゅうは、後輩の堂島太一どうじまたいちのことが苦手だった。
   本人そのものが苦手というより、堂島は自分が『苦手とする人種』だ。
 病院勤務の癖に外見が派手──いわゆるチャラ男というやつで、中身も外見を裏切らないチャラさ。
   堂島が後輩として透析室に配属された時は、絶対に仲良くなれない、いや、なりたくないとすら思ってしまった。
 けれど、一緒に働いてみれば堂島は意外とマジメに人の話を聞き、丁寧に仕事をこなした。
 そして穿刺のセンスの良さは、明らかに自分よりも上だった。

『人は見かけによらない』

 二宮がその言葉をしみじみと実感し、見かけだけで人を判断した自分を反省したのは、今からもう3年も前のことだった。



「二宮せんぱーい……」
「ん?」

 堂島も二宮も喫煙者だ。
   病院の敷地内は全館禁煙となっているため、煙草が吸いたくなればわざわざ着替えて病院の外にある喫煙所──といっても正規の喫煙所ではなく、人の目に付きにくい単なる職員の溜まり場である。
 勿論携帯灰皿持参──に来たり、着替えずに自分の車の中で吸ったりしている。
 二宮は自分の愛車が煙草臭くなるのは絶対に嫌なので、どんなに面倒でも昼休みは着替えて外へ煙草を吸いに来ていた。
 仕事中に着替えて外に出ることなどはできないので、昼休みに吸う一本はとても貴重だ。
 そして今は、堂島が自分の横で煙草を吸っている。
 今日は二人そろって遅番だったため、喫煙タイムも被ってしまったらしい。
   堂島は紫煙をくゆらせながら、心底ダルそうな態度で二宮に声をかけていた。

「先輩の車って、めちゃ派手っすよね」
「そうか?」
「派手っすよぉ。青のインプとかめちゃめちゃ派手じゃないですか。なんか意外っす、二宮先輩ってオヤジ車に乗ってるようなイメージじゃないですかぁ、セダンとかの」
「どんなイメージだよ。失礼だなお前……」

 二宮は今年で31歳なので、まだ27歳の堂島からすればオッサンなのかもしれない……が、堂島だって四捨五入すれば既にアラサーだ。
 二宮は昔から妙に態度が落ち着いていた子供だったので、周りから老けてるだのなんだのと言われることが多かったが、ついに外見が中身に追いついたのだろうか。
   それはあまり笑えることではなく、微妙にショックな事実だとも言えた。
 だが今はそんなことより、最近元気のない後輩の態度の方が二宮は気になっていた。
   堂島が突然二宮の車の話をしだしたことには、特に深い意味はないのだろう。

「すげぇスピードでカッ飛ばしたら気持ちよさそうっすよね」
「それ、暗に乗せてくださいって言ってるのか?」
「え、そんな風に聞こえました?   いやそりゃ乗りたいっすけど、助手席に男乗せるのとか嫌じゃないっすか?」
「別に。乗りたいなら乗せてやるよ」

 二宮の愛車の助手席には、すでに男の榛名が乗ったことがある。
 弟も友達も乗せたことがあるし、堂島の発言は何言ってんだコイツ、くらいにしか思えなかった。
   堂島は車を買ったら、助手席には恋人しか乗せないという自分ルールでもあるのだろうか。

「え、まじでいいんすか?」
「いいよ。ただし禁煙だからな。そして飲み物はいいけど菓子類は絶対に持ち込むなよ」

 二宮は以前友人を乗せたときに、ポテトチップスのカスを落とされて激怒した思い出がある。
   それからその友人は積極的に二宮の車に乗せてくれとは言わなくなった。

「色々厳しッスね……いや、でも嬉しいです。いつ乗せてくれるんですか?」
「別に、お前が暇なら今日でも」

 二宮には恋人もいないし、特に帰って出かける予定もない。
   仕事はアフター5できっちりと終わるが、いつも帰ってすることといえば、何かをつまみながら焼酎を飲むくらいだ。それは予定というよりも日課だが。

「マジっすか!   じゃあ今日、お願いしまーす!」
「どっか行きたいとこあるのか?」
「ええ~っと……海とか?」
「彼女か」

 堂島も言ったあとに一瞬『しまった』という顔をしたが、他に行きたいところの希望は特にないようだった。
   そういうわけで、今日の仕事終わりに二宮の車で海に行くことになった。
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