運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

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104 堂島、悔し泣きする



    朝、ガンガンと容赦なく襲いかかってくる頭痛によって二宮は目が覚めた。
 しかし、ゆっくりと身体を起こして周りの状況を確認すると、もっと頭が痛くなりそうな予感がした。

(どういう状況だ、これは……)

   部屋が大変なことになっている。昨日は堂島と飲んだことは覚えているが、こんなに部屋を荒らした覚えは無い。
   何故か着ていた服はあちこちに散乱しているし、食べ物は食べかけのまま、飲み物は飲みかけのまま。
 そして何より、布団からはひどい臭いがした。

「うわ……」

   むわっとするのは主にウイスキーの臭いで、それと自分が汗くさい。
 一番強いにおいを発しているのは、既に乾いてはいるが明らかに精液だった。
   そして一番の謎は、何故か自分の隣に全裸の堂島が寝ているということ。
 二宮は、昨夜の覚えている範囲とこの状況を踏まえた結果を予想してみた。

(えええ……? いや……ないない。マジでこれは……ないだろ)

   思い立ったあと、バッと布団をめくって股間を確認する。
 感覚で分かっていたものの、やはり下着は履いていなかった。
 それどころか精液と陰毛が絡まってカピカピに乾いており、ひどい状態になっている。
   明らかに何度もセックスをした後だった。

(いやいやいや!!)

   ここまで状況証拠が残っているにも関わらず、それでもなお信じがたくて、堂島にかかっている部分の布団もめくってみた。
   多少の抵抗はあったものの、男同士ではソコを使うという噂の場所にそっと手を伸ばし、ゆっくりと触れた。

「っ!」

   堂島のソコは柔らかく、まだ少し濡れていた。

(う……嘘だろ?)

「ひゃっ」

   デリケートな部分に二宮が触れたことで、堂島はびっくりして目が覚めたらしく、飛び起きた。

「あ、悪い起こした」
「……」
「……」

   同じベッドの上で目が合った二人は、そのまま見つめ合い固まってしまったのだった。
   堂島は自分を見つめたまま何も言わないので、とりあえず先輩の自分が……と思い、二宮は口を開いた。

「お……おはよう」
「……」

   声を掛けても無反応な堂島を、二宮は自分同様にこの状況を理解できていないものだと思った。
 だから落ち着かせるために――自分もまだ完全には落ち着いていないのだが――優しく肩を掴んで、顔を覗き込んで名前を呼んだ。

「……おい、堂島? 大丈夫か?」

   そしたら。

「……っ!」

   何故か堂島は自分を見て、ボッと顔を真っ赤に染め上げたのだった。

(もしかして……堂島は、覚えている?)

 そう思って、再びゆっくりと話しかけた。
 確信はあるものの、確認は大事だ。どうしてそういう状況になったのかという理由も。

「あのさ、昨日……もしかして俺たち、ヤったのか? 俺は全然覚えてねぇんだけど」
「覚えてない?」
「うん。覚えてない」
「本当に本気で、覚えてないんスか?」
「ああ。どっちから誘ったんだ?」
「……」

   今の言葉は少しマズかったかもしれない、と二宮は思った。
 もし相手が女だったとしたら、何も聞かずにただひたすら謝る。
   たとえ自分から誘っていなくても、男の自分が襲わないと成り立たないからだ。
 けれど、今回の相手は堂島だ。
   男で、職場の後輩。
   だから無遠慮に聞いてしまったのだが、この反応は……。

「……ウイスキーで酔っぱらった二宮先輩がドSの鬼畜野郎に変貌して、半ば無理矢理俺のことをレイプしたんッスよ」
「ええええ!?」

   自分がドSの鬼畜野郎? なんだそれは。
   ……想像すらつかない。
   そして、堂島をレイプした?   男相手に見境もなく?
   目を潤ませている堂島が嘘をついているようには見えなかった。
 なので、後輩とはいえこれ以上傷つくような言葉をかけるのは自重した。
   堂島は二宮に追求する。

「本当に覚えてないんですか!? 俺のこと裸にしてなじってケツ叩いて、壁殴って威張り散らして脅して、無理矢理ケツにマグナム級デカチンポ突っ込んだのに!! あんたまじで最低っすね!!」
「え……」

   堂島は、自分がウイスキーを持ってきたことや、二宮の忠告を無視して飲ませたことは言わなかった。
 男同士のセックス動画を見せたことも。
 それにそこまで無理矢理でもなく、途中からは自分が流されたということも。
   二宮の全く覚えていないという態度が、本当に悔しかったからだ。

「……っ」

   悔しすぎて、涙まで出てきた。
 堂島の涙を見て二宮は多いに焦った。
 彼の言ったことは全て真実なのだろうと思ったのだ。

「す……すまなかっ……」
「全然覚えてない癖に、今更謝って欲しくなんか無いッス!!」

   堂島の目からはぼろぼろと次から次へ大粒の涙が溢れてくる。
 二宮が覚えていないとはいえ――醜態を見せた昨夜に比べたら、泣くことなんて全然恥ずかしいことじゃないと思った。
 だから、拭いもせずに涙をこぼし続けた。
   そして二宮は、堂島の涙を見てぎゅうっと胸が締め付けられる思いがした。

「ほ、本当にごめんな。堂島」
「うるせぇ~……」

 二宮はどうしていいのか分からず、泣きじゃくる堂島を抱きしめた。
 相手は女じゃないのに、どうして自分がそんな行動をとったのかは分からない。
 けれど何故か、抱きしめたくなったのだ。
 すると堂島は、意外にも抵抗せずに二宮に大人しく抱きしめられていた。

「うっ……うっ……二宮先輩すっげぇ怖かったし、ケツもすっげぇ痛かったんスよ」
「ごめん……」
「俺の男としてのプライドも粉々っす……どうしてくれるんですかっ、どう責任取ってくれるんスか!?」
「責任?」

   そうだ、責任を取らなければ。
 けど、男同士の場合はどういう責任を取ればいいのだろう?

「か、金か? 慰謝料は幾ら払えば……」
「はあ~!?」 
「あ、違うのか。じゃあ……今度は外に飲みに」
「もうアンタとは二度と酒呑まねぇー!!」

   参った。
 金も要らないのなら、どうやって責任を取ればいいのか二宮は本気で分からなかった。
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