運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

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105 二宮、とりあえず一服する

   二宮は、堂島を抱きしめたままの体勢で考え込んでしまった。
 そんな二宮にイライラした堂島は、抱きしめられたままで叫んだ。

「~~っもおぉ、こういうことの責任取るっつったら方法は一つしか無いでしょう!? この後に及んでボケないで下さい!!」
「ンッ……?」

   堂島は二宮の腕を引き剥がしたかと思うと、今度は首をグイッと引き寄せて、思わず歯がぶつかり合うようなキスをした。

「……………」
「普通に考えて、責任取るってのはこういうことでしょ……」

(え……!?)

   堂島の行動に、二宮は頭が付いていかない。
 なんで、いきなり、キスなんか。
   自分たちは男どうしで、同じ職場の仲間で、先輩と後輩で。
   キスをすることの不自然な理由は沢山ある。 

「……堂島」
「何っすか」

 けれど何故か、気持ちの方は。

「俺、頭がおかしくなったのかも……」
「元々おかしいっしょ! ウイスキー飲んだら人格変わるなんて聞いたことねぇ!!」
「なんかお前のことが、さっきからすげぇ可愛く見えるんだけど」

   さっきから、妙な感覚に襲われている。
   二宮は至極真面目な顔で、今の気持ちを正直に堂島に告げた。

「……っはぁあ!?」
「だから、お前の泣いた顔とその行動がさ。すげぇ可愛く見えるんだけど」

 昨日のことを覚えていないと言ったら、怒って泣きわめいて。
 抱きしめたら腕の中に大人しく収まって。
 「責任を取れ」とキスをしてきた。
   二宮の勘違いでなければ、『責任を取る』というのはつまり、そういうことで。

「か、か、可愛いって……俺が?」
「ああ」

 レイプされたと言った癖に、そっちからそんな提案をしてきた堂島がすごく可愛く思えた。
 なんだかとても、いじらしくて――。

「先輩、目もイカレちゃったんですかね……っ?」
「かもしんねぇな」

   自分の言動一つで、たちまち真っ赤になるその顔も、自分が普段職場で見ている彼の姿とは全く異なっていて。
   昨夜交わったことは全く覚えていないのに、身体が覚えているのか。

    ――ドキドキする。

「……なぁ、堂島」
「な、なんッスか」

 堂島は、ふてくされたような返事をした。
 仕事の時に、二宮に注意されたときのような感じ。
   でも今は、何故かそんな態度も照れ隠しのようですごく可愛く見えてしまう。
 なんだこの可愛い生き物は。

「俺からも、キスしていいか?」
「……っ」

 真っ赤な顔で自分を見つめる頬にそっと触れて、顔をぐぐっと近づける。
 けど、ちゃんと堂島から許可が出るまでは、何もしないでいようと思った。
   これ以上自分の軽率な行動で怒らせるのは可哀想だし、照れているような焦っているようなその表情をもう少し見ていたいから。
 目の前には、堂島の少し腫れた赤い唇がある。
 昨日自分は堂島の言った通り乱暴にこの唇を貪ったんだろうか。
 押し倒して、彼の身体をめちゃくちゃにしたんだろうか。

 どうやって?
   その辺りの記憶はない。
   けれど今はただ、目の前の堂島が可愛くてキスがしたい、と思うのは二宮の男としての本能だった。
   おかしいことは、重々承知している。

「昨日あんだけ好き勝手してくれたくせに、今さら遅いんスよ」
「すまん」
「でも……」
「?」
「キスだけはすげぇ優しかったなんて、本当に先輩はずるいッス……」

 少し悔しそうにそう言って、目を逸らす堂島。

(ああもう。本当にこいつ……)

 まだ許可は出ていなかったが到底我慢できる筈もなく、二宮は堂島にキスをした。

「とりあえず、今日は俺帰るッス……シャワー貸してください」

 赤い顔をしたまま、堂島はそう言った。
 二宮は堂島をまだ帰したくなかったが、自分もこのめちゃくちゃな状態の部屋を片付けなければいけないという使命があるので、「分かった」と物分り良く返事をして、堂島が身を清めたあとに玄関まで見送った。
 堂島がドアを出る際にも、腕を引っ張って振り向きざまに軽くキスをした。

「~~……っ!」
「じゃあ、また明日な」
「……ッス」

 自分達は今、どんな関係なのだろう。
   ただ酒に溺れて、身体を重ねて(正確には自分が襲ったらしいのだが)、泣いている堂島に妙な情が湧いただけなのか。
    それとも……。

(……後から考えよう)

 とにかく、今は部屋の掃除をすることが先決だ。
 布団もコインランドリーに持っていかないと、今夜の寝具が無い。
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