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111 榛名、亜衣乃に説教する
すると。
「あ、あの!」
いきなり、女性二人組が榛名と警官の間に入って話しかけてきた。
その二人は遊覧船とロープウェイの中で榛名と霧咲を生温い目で見つめていた二人組だった。
写真も撮ってもらっていたので、榛名はハッとした顔で思い出す。
「はい?」
「その人、その女の子ともう一人の保護者の方とずっと一緒でしたよ? 私達、観光中に何度かお見かけしましたから。写真も撮ってます」
そう言って、一人が榛名をチラっと見た。
その視線を受けて、榛名は「そういえば」とデジカメとスマホを出して、彼女らに撮ってもらった霧咲とのスリーショット写真を警察へと見せた。
「いや、保護者の写真を見せられてもねぇ……この保護者さんがいない以上、この人がこの女の子に今からホテルで何をするか分かんないでしょう。何かあってからじゃ遅いんですよ?」
「え!? この写真を見てこの子の保護者さんとこの人の関係に気付かないんですか!?」
「ウソでしょー!? マジでありえないから!」
「……はい?」
女性二人は榛名と霧咲が恋人同士だという事実にとっくに気付いていたため、警察官の反応(ごく一般的な反応なのだが)に大袈裟なくらい信じられない、ありえないという反応をしてみせた。
榛名は霧咲と恋人同士だと彼女らにバレていた恥ずかしさと、彼女らに嫉妬していたことを思い出して顔をカーッと赤くして俯いた。
「そうよ、アキちゃんはまこおじさんの恋人なの! だから姪の亜衣乃に何かしようなんて思う変態じゃないんだから! そんな風に勘繰る警察のおじさんの方がよっぽど変態なんじゃないの!?」
「へ、変態!?」
「こら亜衣乃ちゃん、言い過ぎっ!」
「むぐっ!」
警察に向かってとんでもない暴言を吐きだした亜衣乃の口を、榛名は後ろからむぎゅっと押さえつけた。
「すみません、すみません!」
小学生の暴言で逮捕されるわけもないのだが、榛名は自分が失礼千万なことを言われたのにも関わらずぺこぺこと警察に頭を下げた。
すると、ずっとメモに記録を書いていた先輩の方の警察官が静かに言った。
「……まあ、事情は分かりました。でも一応宿泊先のホテルの名前だけ教えて貰ってもいいですか。部下が失礼なことばかり言ってすみません。ですが私達も、疑うことが仕事ですので」
「あ、えっと、〇〇ホテルです……」
「分かりました。では、もういいですよ」
「は、はいっ」
そして、二時間ほど過ぎたような気がしたのだが――約15分程度の職務質問は終わったのだった。
「うー!」
「あ、亜衣乃ちゃんごめん!」
榛名はずっと亜衣乃の口を抑えていたことを思い出して、ぱっと手を離した。
すると亜衣乃は我慢していたのか、口が自由になった途端にマシンガンの如く喋りだした。
「ぷはっ! あああーもう! アキちゃんてば人が良すぎ!! 誰が少女誘拐の変態よ、ほんとに失礼しちゃう!! 絶対絶対あの警察、まこおじさんに言いつけてやるんだから!! 腎臓の一個や二個、手術で持ってかれちゃえばいいんだわ!!」
「いやいや、亜衣乃ちゃんちょっと待って」
榛名は変態とは言われていないし、そもそも言ったのは亜衣乃だ。
そしていくら霧咲が腎臓外科医だと言ってもそんなことをしたら犯罪だし、そもそもしないのだが、亜衣乃はどうやらおかしな勘違いをしているらしい。
以前に霧咲自身がからかって吹き込んだのかもしれない。(それでも幼い子供になんてことを吹き込むんだ、と思った)
亜衣乃の興奮は収まらず、周りにもなんの騒ぎだと立ち止まる観光客が増えてきた。
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