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〃
「こら、誰に怒られるのが面倒臭いだって?」
聞き覚えのある声に榛名と亜衣乃が同時に振り向くと、そこには霧咲が立っていた。
「誠人さん!」
「まこおじさん!」
榛名と亜衣乃が同時に名前を叫ぶと、霧咲は「待たせたね」と言った。
「いや、全然待ってないですよ。随分早かったですね!? 電話があってまだ20分も経ってないですよ」
「渋滞だとか信号のことを考えて、敢えて30分くらいと言ったんだよ。君たちが気になることを言うから、タクシーの運転手に緊急事態だから急いでくれって急かしたのもあるけど」
「えぇえ……」
あの急な山道を急がせたのかと思うと、榛名は少し運転手に同情した。
「そうそう、あのご婦人はなんとか持ち直したよ。発作性の心筋梗塞だったみたいだ。きっと箱根の寒さが心臓に堪えたんだね」
「そうですか……」
「おばあさん助かったの!? 良かったー!」
「暁哉と亜衣乃にもすごく感謝していたよ。俺たちのこと覚えてたって」
そう言われて、榛名と亜衣乃は顔を見合わせてはにかんだ。
「それで? 大変な目にあったっていうのは!」
「あ、それより先にお部屋に案内して貰いましょう。フロント係の人、チラチラこっち見てますから」
「亜衣乃も早くお部屋にいきたーい」
「……じゃあ、部屋でゆっくり聞くことにしよう」
2人からそう言われたら、この場で聞くのは諦めざるを得ない。
霧咲は少し憮然とした顔をしたが、榛名と亜衣乃の雰囲気が前よりも少し打ち解けたものに変わったことに気付いて、2人に気付かれないように密かに微笑んだのだった。
泊まる部屋への案内は、着物を着た年配の女性従業員がしてくれた。
霧咲が予約した5階の部屋まではエレベーターで移動し、従業員の女性は『菊の間』と書かれた部屋の前で立ち止まった。女性従業員は「こちらのお部屋になります」と言って、横開きのドアをスッと開く。
「わあ! 室内なのにお外みたいになってるー!」
「ホントだ」
ドアを開けたすぐ先の通路には白石が敷き詰められ、飛び石が数個並んであった。
そしてその飛び石の向こうにはまた襖があり、その向こうが部屋になっているようだった。
「わーっ! お部屋ひろーい!!」
亜衣乃は我先にと部屋の中に進んでいき、早くも部屋の中を物色し始めた。
榛名と霧咲は従業員の後に続き、ゆっくりと部屋の奥に進んでいく。
「食事の用意は6時からいたします。当宿には大浴場と家族風呂が数か所ありまして、家族風呂の鍵は一度フロントに来て頂いて……」
従業員は食事の時間と温泉の入り方を大人二名に説明すると、部屋を後にした。
榛名は荷物を部屋の隅に置くと、一度ふうっと息を吐いてから霧咲に話しかけた。
「……すごい豪華な部屋ですね。かなり高かったんじゃないですか? ここ」
部屋はとても広く、畳のスペースとフローリングのスペースが御簾で分けられていた。
フローリングのスペースにはこじんまりとした掘り炬燵が設置されており、夜は大人だけで晩酌を楽しめそうな雰囲気だ。
窓は丸く切り取られ、障子が嵌まっている。
「んー、まあそこそこかな?初めての旅行だし、大体これは君への誕生日プレゼントなんだからね。少しは奮発しないと」
「奮発しすぎですよ」
「そうかな?」
いったい一人一泊何万円なのだろうか。
とりあえず、プレゼントということなので榛名は聞かないでおいた。
「アキちゃん! このお部屋露天風呂までついてるよー!」
「露天風呂!? わあ、明日の朝までに何回入ろうかなぁ」
「好きなだけ入るといいよ」
露天風呂に興奮している亜衣乃と榛名の様子に、霧咲は満足げにくすくすと笑った。
聞き覚えのある声に榛名と亜衣乃が同時に振り向くと、そこには霧咲が立っていた。
「誠人さん!」
「まこおじさん!」
榛名と亜衣乃が同時に名前を叫ぶと、霧咲は「待たせたね」と言った。
「いや、全然待ってないですよ。随分早かったですね!? 電話があってまだ20分も経ってないですよ」
「渋滞だとか信号のことを考えて、敢えて30分くらいと言ったんだよ。君たちが気になることを言うから、タクシーの運転手に緊急事態だから急いでくれって急かしたのもあるけど」
「えぇえ……」
あの急な山道を急がせたのかと思うと、榛名は少し運転手に同情した。
「そうそう、あのご婦人はなんとか持ち直したよ。発作性の心筋梗塞だったみたいだ。きっと箱根の寒さが心臓に堪えたんだね」
「そうですか……」
「おばあさん助かったの!? 良かったー!」
「暁哉と亜衣乃にもすごく感謝していたよ。俺たちのこと覚えてたって」
そう言われて、榛名と亜衣乃は顔を見合わせてはにかんだ。
「それで? 大変な目にあったっていうのは!」
「あ、それより先にお部屋に案内して貰いましょう。フロント係の人、チラチラこっち見てますから」
「亜衣乃も早くお部屋にいきたーい」
「……じゃあ、部屋でゆっくり聞くことにしよう」
2人からそう言われたら、この場で聞くのは諦めざるを得ない。
霧咲は少し憮然とした顔をしたが、榛名と亜衣乃の雰囲気が前よりも少し打ち解けたものに変わったことに気付いて、2人に気付かれないように密かに微笑んだのだった。
泊まる部屋への案内は、着物を着た年配の女性従業員がしてくれた。
霧咲が予約した5階の部屋まではエレベーターで移動し、従業員の女性は『菊の間』と書かれた部屋の前で立ち止まった。女性従業員は「こちらのお部屋になります」と言って、横開きのドアをスッと開く。
「わあ! 室内なのにお外みたいになってるー!」
「ホントだ」
ドアを開けたすぐ先の通路には白石が敷き詰められ、飛び石が数個並んであった。
そしてその飛び石の向こうにはまた襖があり、その向こうが部屋になっているようだった。
「わーっ! お部屋ひろーい!!」
亜衣乃は我先にと部屋の中に進んでいき、早くも部屋の中を物色し始めた。
榛名と霧咲は従業員の後に続き、ゆっくりと部屋の奥に進んでいく。
「食事の用意は6時からいたします。当宿には大浴場と家族風呂が数か所ありまして、家族風呂の鍵は一度フロントに来て頂いて……」
従業員は食事の時間と温泉の入り方を大人二名に説明すると、部屋を後にした。
榛名は荷物を部屋の隅に置くと、一度ふうっと息を吐いてから霧咲に話しかけた。
「……すごい豪華な部屋ですね。かなり高かったんじゃないですか? ここ」
部屋はとても広く、畳のスペースとフローリングのスペースが御簾で分けられていた。
フローリングのスペースにはこじんまりとした掘り炬燵が設置されており、夜は大人だけで晩酌を楽しめそうな雰囲気だ。
窓は丸く切り取られ、障子が嵌まっている。
「んー、まあそこそこかな?初めての旅行だし、大体これは君への誕生日プレゼントなんだからね。少しは奮発しないと」
「奮発しすぎですよ」
「そうかな?」
いったい一人一泊何万円なのだろうか。
とりあえず、プレゼントということなので榛名は聞かないでおいた。
「アキちゃん! このお部屋露天風呂までついてるよー!」
「露天風呂!? わあ、明日の朝までに何回入ろうかなぁ」
「好きなだけ入るといいよ」
露天風呂に興奮している亜衣乃と榛名の様子に、霧咲は満足げにくすくすと笑った。
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