雨宮卯月は腐男子である

すずなりたま

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4 まるでラブコメ漫画のように


 たしかに南條先生は授業中これでもかってくらい無愛想だけど……でも、それが余計に俺の妄想を駆り立ててくれるんだけどな。様々なギャップとか勝手に想像できるじゃん。
 とりあえず俺は先生が奨めてくれたパイプ椅子に座り、コーヒーをごちそうになった。コーヒーを飲みに来たワケじゃないんだけど……まあいいか。

「……雨宮はいつも俺の授業をニコニコしながら聞いてくれてるよな。普通のテストも小テストもいつも満点だし。元々化学が好きだったのか?」

 南條先生は話を切りだすというか、世間話を始めた。ニコニコ……? ニヤニヤしてるの間違いですけど、まぁいいか。

「好きっていうか、元々数学とか得意なんです俺。化学は去年はそんなでもなかったけど、南條先生の授業がすごい分かりやすいから自然にできるようになったっていうか……それから好きになったというか……です」

 そう、1年の頃は先生が違ったからそこまで化学は得意じゃなかった。でも2年になって化学の担当教諭が南條先生になり、そのイケボをうっとりと聞いてるうちにいつの間にか化学が得意教科になったんだ。

 だってマジでうっとりする声なんだもん。声優でいうと誰の声に近いかな……イケボな声優沢山いすぎる問題。あ、だから声優なのか。
 あ~それにしても南條先生マジ爆裂イケメン、かっこよすぎる……近くで見ると破壊力はんぱない、鼻血出そう。三次元が二次元を超えることって稀にあるよなぁ……。

 ――で、それで俺に一体何の用事なんだろうか? 俺の鼻血が噴き出す前に言ってもらわないと化学準備室が血の海になるぞー!!

「そうか……ありがとう」

 南條先生は、手を伸ばすと、そのまま俺の右頬に触れた。

 ……ん?

 そのまま、南條先生の綺麗な顔がどんどん近付いてきて……

 チュッ

 軽い音を立てながら、南條先生の唇が俺の唇に触れた。

「…………」

 俺は今、俺の身に起きたことが理解できていない。

「本当に可愛いな……雨宮は。生徒に手を出すなんて、教師として最低だって分かってる。でも、お前が可愛すぎて気持ちが抑えられない……好きだ」

 ほえぇ?

 はえぇ?

 はにゃあん?

 目を点にして萌えアニメの萌えキャラみたいな声を発しているが、俺の脳内限定だ。現実は声なんて出ない。人間って驚きすぎた時は声が出ないんだ、覚えておこう。いつか漫画のネタに使えるかもしれない。

ギュッ

 今度は抱きしめられた。外からでもイイ身体をしていると分かる南條先生の厚い胸板が、俺のすぐ目の前に……

 ひぃいいぃいいィィィ!?

「雨宮、お前は授業中いつも熱い目で俺のことを見つめているよな……今も黙ってるってことは、お前も俺と同じ気持ちだったと思っていいか?」
「!?!?」

 ち、ち、違うっ! 違います南條先生! 俺がいつも見てたのはそういう――南條先生が好きとかそういうんじゃなくって、先生と色んな男子を掛け合わせるのが楽しかっただけで!! でも、その相手の中に俺自身がいたことは一度もないんですぅぅ!!

 そう言いたいのに、何一つ言葉にならない。
 あれ? 黙ってたらまた肯定したことにならないか?

「ああ……雨宮、可愛い!! 好きだああ!」

ぎゅううううっ

 信じられない言葉を聞かされながら、より一層強く抱きしめられた。タバコと香水が混じった大人の匂いにくらくらする。

 南條先生が……あの南條先生がよりにもよって俺なんかを好きだなんて……いや待て、もしかしてこれドッキリ? 『大成功~』とか言いながら誰か出てくるとか? ……待てども待てども誰も出てこないな……

「雨宮、一応返事を聞かせてくれないか」
「だ……」

 誰か嘘だって言ってくれよぉ!! ウルトラ美形攻めの受けが腐男子で平凡で恋愛経験ゼロの俺とか萌えないにもほどがあるだろぉぉぉ!! こんなんプロットの段階でボツだよ!! ボツ!! ボツッッ!!

 ていうか……刺激が強すぎてもう……ダメだぁ……

「あまみ……うぉっ!?」

 リアルイケメンへの耐性なんて俺はゼロだから、まるでラブコメマンガのようにぶしゃーっと鼻血を出して(実際はたらたらっと)南條先生の真っ白な白衣を鼻血で汚した。そしてパイプ椅子に座ったまま後ろ向きにひっくり返り、頭を打って気を失ったのだった。
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