雨宮卯月は腐男子である

すずなりたま

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6 異性間の友情は脆い

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 次の日、熱が下がった俺は無事に登校した。でも今日は一限目から化学だよ。とてもじゃないけど南條先生と顔合わせられない……! むしろどんな顔して授業を受ければいいんだよぉうッ!! 笑えばいいのかなぁ!?

「うっちゃんおはよー、昨日大丈夫だった? 熱出たって言ってたけど」
「あ、りっちゃんおはよう……。うん、もう下がったから大丈夫」

 まさか知恵熱だったとは恥ずかしくて言えない。小学校低学年か俺は。

「……うっちゃん、どうしたの?」
「えっ?」

 りっちゃんが綺麗な瞳でじいっと俺を見つめてきた。まさか、まだ何も言ってないのに俺が南條先生に告白されたことがもうバレたのか……!? いやいや、そんなはずはないッ!!

「何かいつもと違う。悩みでもあるの?」
「へぁ!? そ、そんな悩みごとなんてあるわけねーっしょ、お気楽腐男子の俺が恋愛ごとで悩みとかああありえないし!? 他人の恋愛には興味津津だけどただし男同士限定、そんな俺が自分の恋愛のことでしかも南條先生が告白してきたから悩むとかあああああああ!!」

 何全部素直にゲロってんだよ俺ぇ!! 普通に心配されてるだけなのにテンパりすぎだろぉぉ!! ううっ、りっちゃんの瞳がキラッキラしてるよォ――!! やっぱうちの腐女子たちと反応変わんねぇ――!!

「大丈夫だよ、うっちゃん。大丈夫だから!」
「へ?」

 りっちゃん……姉さんたちみたいに俺をからかったりしないのか?
 さすが親友! 性別を超えた友情って素晴らしい……!!

「南條先生、きっと初めてのときは優しくしてくれるよ……!!」

 うああああああ―――!!!!





 ……南條先生は、いつもと変わらなかった。

 いつものように無表情で――というより仏頂面で、眉間に寄った皺すらもかっこよくてついつい見惚れてしまう。そして今日も思わず耳が妊娠してしまいそうな爆イケバリトンヴォイス。そう、目を閉じればここはまるで桃源郷……。(※化学室)


『雨宮、可愛い……好きだぁぁっ!』


 ッあああああああ!! ダメだ、目を瞑ったら一昨日のことを鮮明に思い出してしまうッッ!!

「んーじゃあこの問題を、」

 頼むから俺に当てないでください! 今は化学式なんて考えられそうにない!!

「……今日こそ解けるか? 吉村」

 ほっ。

 今日も南條先生×吉村君の神カプが拝めるとか俺、ラッキーかよ。美形な二人を並べて見つめて少しだけ心を落ちつけよう……。

「南條先生、僕にはこんな問題無理です……! 今日も解けません。雨宮君に当ててください!」
「へぁっ!?」

 ちょ、ちょ、ちょ、ちょい―――!!? そりゃないよ吉村くぅん!!

「仕方ないな、雨宮にはこの前やってもらったから……じゃあ、池田」
「ひゃいっ!?」

 俺の横のりっちゃんが当てられた――! 俺がそっと横を見ると、りっちゃんはうるうるの涙目で俺を見つめていた。
 ごめんりっちゃん、今の俺は何の役にも立てない。頭がちっとも働かないんだ……。俺は無慈悲にもふるふると首を横に振った。

「わ……私もわかりません……」
「そうか。じゃあ、分かる奴は?」

 誰も手を挙げなかった。もちろん俺も。なんとなく南條先生の視線を感じたけど、目が合わないように俯いていたから指名されることはなかった。
 結局、その問題は南條先生が解説しながら自分で解いた。

 そして授業が終わり、りっちゃんと化学室を出ようとしたら……

「――雨宮、ちょっといいか」

 教卓から、南條先生に呼びとめられた。先生は授業中みたいに仏頂面じゃなく、眉を寄せて俺を心配しているような表情カオをしていて……見たことのない表情に、思わず心臓がドキンと跳ねた。

 な、何だ? 今のドキンって。いやいや南條先生に名前を呼ばれたら誰だってドキッとするよな……そうに決まってる。

「頭はもう大丈夫か? それと昨日は熱を出したんだって? 担任の遠藤先生から聞いたよ……」

 『頭大丈夫か?』って、捉え方によってはディスられているようにも聞こえるから不思議だよな。ディスられてるんじゃないってことは南條先生の顔を見れば一発で分かるけど……。
 でも、やっぱり俺は俯いてしまう。せっかく間近で南條先生の爆イケフェイスを堂々と拝められるチャンスなのに、どうしても目を合わせられない。

「ご心配をおかけしてすみません」
「いや、いいんだ。その、一昨日はすまなかったな……」
「……………」

 南條先生、いったいどれがすまなかったの?
 キスしたこと? 抱きしめたこと?

 ……俺に、「好きだ」って言ったこと?

 ていうか、隣でりっちゃんが超聞いてるんですけどぉぉ!?

「あー……その、アレだ。今日も昼休みに準備室にコーヒー飲みにこないか? メシ食い終ったあとにでも……」
「いや、あの」

 ――断らなきゃ。南條先生には悪いけど、俺にはそんなつもりはないって。好きだなんて言われて、正直困ってるって……。

「もっちろん行きまぁぁす! 南條先生、私が責任を持って雨宮君を行かせますから!」
「はぃい!?」

 り、り、りっちゃん―――!? なんでぇ!? 俺が嫌がってるの分かってるはずなのにィィ!? 異性間の友情って儚いなぁ!!!

 りっちゃんに裏切られた……(しくしく)
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