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32 律の告白
週末も無事に過ぎて、今日は月曜日。今日の昼休みも相変わらず吉村君は南條先生のところに質問に行ってるから、俺はりっちゃんとともに美術室へ向かった。とりあえずみんなには、金曜日にRhineで報告している。『無事に南條先生とお付き合いするようになりました、みんな応援してくれてありがとう!』って。
その後すぐに『お付き合いじゃなくてお突き合いでしょ?^^』という、およそ女子とは思えない下品な返信が約三名から返ってきましたが。さすが腐女子、ゆるぎなさすぎるぜ……!!
*
「――ごめんね、うっちゃん」
「え?」
そして何故か今、俺はりっちゃんに頭を下げられている。あいちん、かなやん、そしてすっかりお馴染みになった永田氏もその謝罪の意味が分からないらしく、俺同様にキョトンとしている。
え、まじで何の謝罪?? 可愛くてごめんってやつ?? それなら分かる。
「実は私、2週間くらい前に吉村に好きだって告白されてたんだ。今まで黙っててごめんね」
「えぇええぇ!?」
「とぉぉぉ!?」
「う――!?」
「……誰でござるか、えとうって」
俺が『え』って言っただけで適当にあとに続くなよあいちん、かなやん!! マジでえとうって誰!? ていうか、ていうか、
「マジでぇぇ!?!?」
「マジで」
吉村君、だからあんなに俺を冷たく睨んでたのか――!! そういえば、後ろを振り返ってりっちゃんと話してた時にいつも目が合ってたな……関口君も彰吾の邪魔すんなって……お前ホモじゃねぇのかよって……なるほどなるほど。謎は全て解けたァ!!
ていうか関口君も吉村君もちゃんと言えよぉ!! 「分かってるだろ?」みたいな顔して勝手に色々言いやがって、わかるかァァ――!!!
「いや、最初からりっちゃんが教えてくれたら良かったんじゃん!?」
「そうなの、だからごめんね?」
「なんで教えてくれなかったのぉ!? 俺ら親友でしょ!?」
「丁度うっちゃんが綺麗に勘違いしてたから……これを利用して、うっちゃんが南條先生への恋心を自覚してくれたらいいなぁって思って。案の定うまくいきました! やったね!!」
りっちゃんは顔の近くでダブルピースサインをした。可愛いけど、本当に反省してるのか分からない……。
「案の定じゃないよぉ……」
なんてこったい、俺はまんまとりっちゃんの策にはまったんじゃないか……!! ていうか吉村君が気の毒すぎる!!
そうとは知らずにりっちゃんと毎日教室でひそひそ話したり、好き♡って言い合ったり、腕組んだり、数々のイチャイチャを披露しまくっててごめ――ん!! 俺たちの間じゃあんなのネタなんだよ、ネタ。そりゃああんな目向けられるわな! 好きな子と教室でそんなことして、俺のこと殺したいくらいムカついてただろうなぁ! ひいいいぃぃ――!!
「さすがりっちゃん様、俺達にできないことを以下略ッ!!」
「そこは省略しなくてよかったんでないか、かなやん殿ッ!!」
「全部言うのが面倒くさかったのでござる、あいちん殿ッ!!」
「拙者の口癖をパクらないでもらえるか、大月氏ッ!! いや、大月殿ッ!!」
ああ、今日も美術室は平和ですね……。遠くのガン○ムヲタグループ(全員メガネ)や他の腐女子グループ(全員メガネ)がニヨニヨしながらこっち見てるし。皆さんも俺の恋路を心配してくれてたんですね……どうもありがとうございます。
しかし俺は脱力して言葉が出ない……。関口君にりっちゃんと付き合ってるのかって聞かれた時も、キチンと否定しなかったし。はっ、早く否定してあげないと吉村君が可哀想だ……!!
「吉村君ってあんなに可愛い顔してるけど女子が好きだったなんて、それも腐女子的には驚きだよねぇ」
「それなー!」
あいちんとかなやんは吉村君の想い人がりっちゃんだと分かってもたいして動揺していない。女子だからなのか……? すごいな女子って。
「え? 吉村よりうっちゃんの方が余裕で可愛いでしょ」
「はぁ!? それは無いから!!」
なんて恐ろしいことを言うんだりっちゃん!! 俺はあんな精巧なドールみたいに美しくないぞッッ!!
「で、結局池田氏は吉村と付き合うことにしたんでござるか?」
「まっさかー! 顔が可愛いだけのオトコに興味ないって言って振ったよ」
「え"え"え"え"!?」
「なんでうっちゃんがそんなに驚くの?
だって好みじゃないんだもん」
だだだだってあの吉村君に告白されたのに、りっちゃんってば理想が高すぎるよぉ……!! いや、単に好みの問題かもしれないけど!! 俺だって吉村君に告白されたら多分迷っちゃうよ!? 男だけど!!
でも、それは南條先生と出会ってなかったら、かな……まあ俺が吉村君に告白されることは絶対無いけどさ……。
「そっかー、それで吉村君は急に化学の勉強し始めたんだね~」
「へ?」
なになに、どういうこと? あいちんっ! 本気で分からない俺に呆れ顔をしたあいちんの代わりに、かなやんが答えてくれた。
「ニブイなぁうっちゃん。吉村君はね、りっちゃんに一番身近な男子……つまり打倒うっちゃんのために、とりあえずうっちゃんの一番得意教科である化学の成績で勝とうと考えたわけ! あんな可愛い子でも考えることは男子のように単純なんだねぇ」
「いや、吉村君は男子だから。何もおかしくないから」
かなやんの解説で、吉村君が急に化学を勉強し始めた理由が俺にもやっと分かった。そりゃ好きな女の子にそんな振り方されたら、努力せざるを得ないよね……打倒俺! っていうのは方向性間違ってるけど。
「今度の中間テスト、吉村君のりっちゃんへの愛が強いか、うっちゃんの南條先生への愛が強いかめっちゃ見物だね!」
「ほんとほんと! 楽しみ……じゃない、テスト自体は全然楽しみじゃなかった……」
「そうでござるな……」
テストの話題になるといきなりみんなのテンションが下がった! りっちゃんもこの世の終わりみたいな顔してるし!
んじゃまあ、ここは俺の出番だよね。
「みんなも今から化学の勉強する? みっちり教えてあげるよ!」
「「「「テスト前だけでお願いします」」」」
今度は永田氏も勉強会に参加するようだ。それにしても化学って本当に人気ないな……南條先生の声をただひたすら集中して聞いてるだけで、できるようになるのになぁ~(※卯月限定)
「あ、うっちゃん。吉村に言わないでね、私たちがただの友達だってこと」
「え、何でぇ!? 可哀想じゃん!!」
吉村君、誤解継続!?
「だってまた告白されたら面倒くさいし……うっちゃんだって私と付き合ってることにした方が南條先生と自然にお付き合いできるからいいと思うの。カモフラージュってやつだよぉ」
「う、うーん……?」
でもそれって吉村君に悪くないか? 悪いどころじゃないな! ああ、可哀想に……好きになった人が悪かったね。りっちゃんはとてつもなく変わり者の美少女なのだよ。それでも俺的には頑張って愛を貫いて欲しい。
ちなみにりっちゃんの昔からの推しキャラは〇〇ノア・ゾロだから、そっちを目指した方がいいってことはアドバイスしてあげよう。
「いいの! だって私がうっちゃんのこと大好きなのは事実だもーん♡」
「へ?」
そ、それはまた問題発言なのでは!? 友達としての好き、だよね? そうだよね!? それ以外ありえないよね!?!? あいちんとかなやんの方を見て助けを求めると、二人ともニヤニヤしている。
「私もうっちゃんのことだーいすきっ♡」
「私もうっちゃんのこと超愛してる♡」
「あ、じゃあ拙者も雨宮氏のことがダイスキでござる(棒読み)」
じゃあって何だよオイ。永田氏は違うだろ、絶対違うだろ――!!
でも……うん。
「俺もみんなのこと……大好きだよ!!」
――この返しが、正解かな。
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