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〃
その後、当然といえば当然だが卯月は化学準備室にぱったりと来なくなってしまった。吉村が勉強していることをクラスでアピールしているのか、来づらいんだろう。俺の方から会いに行ってもいいのだが、俺が2Aの教室に行くってどうしても不自然になるからな……。
――せめて放課後、捕まえられたら。
つーか授業終わったあとに声かけりゃいいんだけど、俺があんなことを言ったせいで吉村は張り切って俺に質問してくるようになった。だから、卯月に話しかける隙がまるで無い。
もーほんとになんなんだよコイツは!! 勉強なんて教科書相手に一人でやってろよぉぉ! っていうか勉強してる暇があるならその分池田にアピールなりなんなりしろって!! なんて言えない……教師はつらいぜ。
だがそんな想いを募らせている俺に、信じられない奇跡が起きたのだ!!
「……あ、あ、あ、あまみやっ……!?」
ある日の放課後、吉村の勉強を見終わった帰り。叔父から50万ほどで譲り受けた愛車のフィアットにもたれかかるようにして、卯月が眠っていたのだ。
何だこれは、いったい何が起こっているんだ。卯月が俺の車に凭れて寝ている……マジで天使かッ!? 眠ってるところなんて初めて見たぞ!? か、かかかか、可愛すぎじゃねーかうおおおおおい!!! このまま家に連れ込んで抱き潰したいぃぃ――!!!!!
そんな欲求が俺の脳を支配しかけたが、寸でのところで理性が俺を留まらせた。いかんいかん、卯月は俺が顔を近づけただけで鼻血を噴くくらい純粋で純情なヤツだった。以前勢いにまかせてチンコいじったりしたけど、泣かせたし……これ以上何かやったら、嫌われる……かもしれない。
でも、このまま起こして家に送るだけじゃ何とももったいないぞぉぉ――!!(泣)
そうだ、大体卯月がここにいるということは俺に会いに来たんじゃないか! 俺も会いたかったけど、こいつも俺に会いたいって思っててくれたんだな……。もうそれだけで胸がジーンとして、涙が出そうだった。
俺のことは好きじゃないだの付き合う気はないだの言ってたけど、やっぱり俺のことが大好きなんじゃねぇかよ……!! これが俗に言うツンデレってやつかぁぁぁ!!
ああ可愛い、もう絶対に手放さない、卯月。俺はそおっと卯月を抱き上げると、愛車の助手席に乗せてシートベルトを締めた。どさくさに紛れて白い頬やまぶたにキスの雨を降らした。端からみたら完全に犯罪者、いや変態教師だが気にしない。何故なら俺は既に開き直っているからだ。
さーて俺の家に連れ込むぞーっと!! なーにちょっと寝かせてやるだけだ! 襲わねえよ、多分な! 俺の理性が持つ限りは!!
エンジンをかけて普通に車を走らせても、卯月は全然目を覚まさない。よくこんな場所でそんなに爆睡できるな……神経質な俺には無理だ。まぁ、そんなおおらかなところも卯月のいいところなんだろう。でも簡単に誘拐されそうで先生は心配だぞ……(※現在誘拐中)
それより今、俺の愛車の助手席に高校生の恋人(仮)が乗って居眠りをしてるという事実! ああ、なんて悪い大人の気分なんだ!!(※そのもの)
「ン……」
卯月が起きたらしい。もうちょっと寝顔を見ていたかった、残念。
「!!? な……南條先生!?」
ふふふ、驚いてる驚いてる。寝起きのリアクションも可愛いな、卯月。
「すごい気持ちよさそうに眠ってたから、起こさずに乗せたんだ。俺を待ってたんだろ?」
何でもなさそうな顔でそう言ったら、卯月は顔をカーッと赤くした。相変わらず分かりやすくて可愛いな。これだけ好かれてると、俺が調子に乗るのも仕方ないと思う。
「あ……はい。あ、あの……今どちらに向かってるんですか?」
「とりあえず俺の家。ゆっくり寝かせてやろうかなって思って……でも起きたらちゃんと家まで送ろうって思ってたからな!寝込みを襲うとか、俺はそこまでクズな大人じゃないからな!」
あ、ヤベッ! 口に出すイコール本音のフラグじゃねぇか!
「わ、わかってますよそんなこと」
き、気付いてない……なんて純粋なんだ、卯月。本当に誘拐されそうで俺は心配だぞ――!!
「最近吉村のヤツがえらく張り切って質問に来てたから、全然雨宮に会えなくてストレスだったよ。俺から会いに行こうかなって思ってたからお前が車の横に居たときは嬉しかった」
「……!」
正直な気持ちを伝えると、また卯月はぶわっと花が咲いたみたいに赤くなり、嬉し恥ずかしそうに俯いた。ああ~可愛い~……結婚したいッッ!!
俺は上機嫌でハンドルを華麗に操る。運転は嫌いじゃないんだ。すると突然、鼻息を荒くして卯月が言った。
「あ……あの! 俺、南條先生に言いたいことがあったんです!」
な、何だ!? この流れは、もしかして……もしかしなくても告白か!? うわ、ちょっと待てちょっと待て!! 運転中だと抱きしめられないだろうが!! 俺は動揺を悟られないように深呼吸をすると、
「その話、俺の家に着いてからにしてくれるか?」
と無駄にキリっとした顔で言った。それでも卯月は「そんなにたいしたことじゃないんですけど」としつこく食い下がる。
お前の告白が大したことじゃないわけあるかぁぁ!! 俺がどんだけ言わせたかったと思ってんだ!! まだ何も言われてないけど!!
「それでも待ってくれ。今運転中で危ないからな」
卯月は観念したのか、ついに黙った。ごめんな、俺は運転の片手間なんかにお前の愛の告白を聞きたくないんだよ。
それから10分ほど車を走らせて、俺の住む賃貸マンションが見えてきた。自分の駐車スペースでバックで車を停めると、先に降りて助手席のドアを開けてやる。
なんでこんなことするのかって?
逃がさないためだよ。
「あ……ありがとうございます」
うっとりと俺を見つめている卯月が純粋すぎて、胸が痛いような痛くないような。心の汚れきった大人でゴメンな、正直あんまり反省してないけど。
そのまま逃げられないように卯月の手をがっしりと掴み、マンションのオートロックを開けてエレベーターに乗り込んだ。本当はエレベーターの中で抱きしめたりキスしたりしたかったが、監視カメラがついてるからな。
さすがに制服を着た子にそんなことをするのは世間体が悪すぎるというか。私服だったらしてたけど。
「ここ、俺の部屋だから覚えて」
「は、はい」
卯月に合鍵を渡して先に帰ってもらって、エプロン姿で『南條先生お帰りなさい!』って出迎えてもらうのが今の俺の夢だ。夢というか、目標か? どっちにしろ近いうちに達成するけどな!!
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