マイダーリン、この世の全ての怖いものから俺を守ってくれ!!!

すずなりたま

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1 イケメン大学生は霊が怖い

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「あっ……ねぇねぇ見て、あの人」
「わぁ、イッケメーン……王子様みたい」

   礼二郎は今朝、珍しく寝坊してバスに乗り遅れたため、仕方なく駅まで歩いて電車に乗っていた。

(フフ……今日も俺は見られているな)

   礼二郎は彼女たちに対するサービスとばかりに前髪をサラッと横に流す仕草──日曜日の某国民的アニメのキザなキャラクターのように──をしてみせた。

「……カッコイイけど、ちょっと残念な人かもね……ナルシスト?」
「ぷぷ、そんなこと言っちゃダメだって!   可愛いじゃん、痛々しいイケメン(笑)」
「見てる分には面白いけど、絶対に付き合いたくはないよね~」
「それな~」

(今度はなんか笑われてる……なんでだ?   俺がかっこよすぎるせいか?)

   ふと、目の前に座っているサラリーマンに何故か可哀想な子を見るような目で見られているのに気付いた。
   きっと体調が悪いのだろう。
   もし礼二郎が座っていて、サラリーマンが立っていたのなら席を譲ってあげるところだが、今の立場は逆だ。
   つまり、礼二郎に出来ることは何も無い。

(フゥ、俺って本当にカッコよくて親切で完璧すぎる人間だな……)

   心の中でエア親切をしただけで結局何もしていないのだが、礼二郎は一人で満足げに微笑んだ。

   彼の名前は槐礼二郎かいれいじろう、19歳。都内の私大に通う大学一年生である。
   まあまあの高身長に、サラサラの天然茶髪と茶色の瞳──全体的に色素の薄い、甘いルックスをしている。
   中高時代の成績は常に10番以内をキープしており、運動神経も抜群で苦手なスポーツも特に存在しない。(飛びぬけて得意なものもないが)特技は料理とピアノだ。

   父は映画監督で母は女優、兄は一流企業に勤めており、それなりに裕福な家庭で愛されて育った。
   黙っていれば異性にはキャーキャー×∞言われるし、勘違いするには十分なスペックの持ち主だ。

   しかしそんな彼には、ものすごく苦手なものがあった。

(そういえば、電車に乗るの久しぶりだな。こっちの方が早いのに、なんでバス通にしたんだっけ……?)

   何気なくそう思い目線を上げた瞬間、窓越しに女性と目が合った。
   ガラスの反射ではなく、外にいる女性とだ。ちなみに電車は走行中である。
   彼女は青白く血塗れの顔に、ボサボサの長い髪、何も映し出さない瞳をしている。もちろん生きた人間ではなく、いわゆる──

「ヒィッッ!?」

   ──幽霊、というやつなのだが。

 咄嗟に両手で口を押えて絶叫は飲み込んだものの、礼二郎は驚きのあまり腰が抜けて、その場にぺたんと座り込んだ。

   すっかり忘れていた。
   確か一ヶ月前も同じようないきさつで電車に乗り、走行中の車窓から全身血まみれの男性の霊を視たのだ。
 彼らが自分で飛び込んだのか、誰かに突き落とされたのかは定かではないが、とりあえず強い恨みを抱いて現世にとどまっているということだけはなんとなく分かる。

「き、君、大丈夫か?   貧血かい?」
「ぅう~……っ」

   近くに立っていた人間に声を掛けられたものの返事はできず、恐怖で身体がガタガタ震え、涙がボロボロ溢れてくる。
   立っているだけで目立っていたイケメンの突然の奇行に、周囲は一時騒然となった。

「と、とりあえずここに座りなさい。ほら、涙を拭いて」

   目の前に座っていたサラリーマンに席を変わられ、差し出されたハンカチを遠慮なく受け取った。

「グスッグスッ、お、おじさん、ありがとうございます……」 
「!(キュン♡)」
「!?(キュン♡)」
「!!(キュンキュン♡♡)」

   エア親切をしたつもりが逆に親切にされ、先程の態度からは想像できない無防備な泣き顔を晒したことで、ナルシストイケメンとバカにしていたサラリーマンと女性二人をキュン死にさせた礼二郎だったが、本人はそれどころではなかった。

   ――そう、礼二郎はこの世で霊というものが最も苦手だった。
   
 その次はゴキ○リ。
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