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3.バルト海を並び行く幽霊たち
3-5.海賊令嬢様
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3-5.海賊令嬢様
「大丈夫じゃ。ワシらには、お頭が付いておる。ついでにお前らも助けてやる」と、イライザが言ったものだから、男たちが「わあぁ」と喜び立ち上がった。
「キーナ様、よろしくお願いします。幽霊船も骸骨の行列も討伐してください」
「お願いします」
「オレからも頼みます」と、歓喜の声であふれ上がった。
「おっ、おおぅ」と、言葉にならない返事をするのが、私には精一杯だったが、安い返事も出来ないから、困ったものだな。
「海賊令嬢様、万歳!」と、誰かが言った。
すると、皆口々に、「海賊令嬢様、万歳!」と声があがり、合唱となった。
「おっ、おおぅ」
恥ずかしいやら、照れくさいやらで、とりあえず、「まあまあ、それぐらいで」と言う具合に手を振っておくことにした。
なので、それを、神妙な顔もちで見ていた者がいたことに、私は気づくはずもなかった。
宿に帰ると、閣下を集めて、今日のことを報告した。
なお、閣下とは幹部のことを海賊では、閣下と言う仕来りになっている。
「……ということで、ドイツ騎士団に殺された者たちの呪いが、あの幽霊船や骸骨の正体と言う噂が流れているの」と、私が説明した。
「う~ん、見てみないとわからないわね」と、言ったのは副船長兼操舵手のエマリー・アインホルンだ。
「幽霊を大砲で撃ったら、どうなるんだろうね。砕け散る? それとも再生する?」と、言ったのは砲術長のヤスミン。
「まあ、幽霊になっても改宗しないなんて、さすが異教徒ね」と、言ったのは甲板長兼航海士長のローズマリーだ。閣下の中では唯一、ドイツ人ではなくスコットランド出身となる。
「では、早速、明日、幽霊船が出た海域に出航ですね」と、護衛隊長でエマリーの従姉妹のイリーゼ・アインホルンが、にこやかに答えている。
そして、女海賊団は、翌朝、白いガレオン船 “Zukuft”号に乗り、幽霊船が出た海域へと向かったが、得るもの無く帰ってきた。
「とりあえず伯父上には報告しておくか……」
翌日、公爵邸で伯父と従姉妹のアンナに、ここ数日間のことを報告した。
「ヴィル! ヴィル、それは本当なの? ドイツ騎士団に殺された人たちが私たち公爵家に復讐しようなんて」
「アンナ、落ち着きなさい」
「お、お父様。だって……」
あのアンナが取り乱している。初めて見たわ。
「あくまでも噂です。正体はあるはずです。必ず見つけます」
そう、早く見つけないと、商人たちがこの領地から離れ、漁師たちは漁が出来ず、そして、アンナは他の貴族たちから、『幽霊が出る領地の……』と、変なあだ名でも付けられ、嫁に行けなくなるなんてこともあるかもしれない。
そんなことは、私がさせない。
意地でも幽霊船を見つけてやるのだ。
その頃、フェロル港では。
「大佐、クレマンティーヌがイギリス商船の航行の邪魔をしているようです。成果が上がっています」
「そうか。提督には報告しておくことにするよ」と、ダニエル大佐は部下の報告に答えたが、提督に何かを期待するものではなかった。
この大西洋で、何も起きなければ、提督としては良いのだ。
それが、この日は違っていた。
「この調子で、イギリスの貿易相手を、一気に減らすぞ」
それを聞いたダニエル大佐は、「はぁ?」と声を出しそうになった。
無能な働き者が働くとき、多くの人が混乱するのだから。
「よし、ロンドンとバルト海の交易を絶たせる。バルト海に艦隊を向ける。途中、南ネーデルランドで地元の艦隊と合流させる。そうすれば、バルト海もイギリスも干上がる。イギリス商船を通すな」
そして、数日後、地中海方面軍から、ガレアス船が同行することになった。
何故なら、バルト海は内海で風が少ない。
それを手漕ぎで補うのだ。
あのオスマン帝国と地中海の覇権を争ったレパント海戦で活躍した手漕ぎのガレー船に、帆を付けたガレアス船は、風でも手漕ぎでも動かせる優れものなのだ。
それをバルト海に派遣しようと、この提督は言っている。
「エリザベスの首をキュウっと絞めてやるわ。わははははッ」
「大丈夫じゃ。ワシらには、お頭が付いておる。ついでにお前らも助けてやる」と、イライザが言ったものだから、男たちが「わあぁ」と喜び立ち上がった。
「キーナ様、よろしくお願いします。幽霊船も骸骨の行列も討伐してください」
「お願いします」
「オレからも頼みます」と、歓喜の声であふれ上がった。
「おっ、おおぅ」と、言葉にならない返事をするのが、私には精一杯だったが、安い返事も出来ないから、困ったものだな。
「海賊令嬢様、万歳!」と、誰かが言った。
すると、皆口々に、「海賊令嬢様、万歳!」と声があがり、合唱となった。
「おっ、おおぅ」
恥ずかしいやら、照れくさいやらで、とりあえず、「まあまあ、それぐらいで」と言う具合に手を振っておくことにした。
なので、それを、神妙な顔もちで見ていた者がいたことに、私は気づくはずもなかった。
宿に帰ると、閣下を集めて、今日のことを報告した。
なお、閣下とは幹部のことを海賊では、閣下と言う仕来りになっている。
「……ということで、ドイツ騎士団に殺された者たちの呪いが、あの幽霊船や骸骨の正体と言う噂が流れているの」と、私が説明した。
「う~ん、見てみないとわからないわね」と、言ったのは副船長兼操舵手のエマリー・アインホルンだ。
「幽霊を大砲で撃ったら、どうなるんだろうね。砕け散る? それとも再生する?」と、言ったのは砲術長のヤスミン。
「まあ、幽霊になっても改宗しないなんて、さすが異教徒ね」と、言ったのは甲板長兼航海士長のローズマリーだ。閣下の中では唯一、ドイツ人ではなくスコットランド出身となる。
「では、早速、明日、幽霊船が出た海域に出航ですね」と、護衛隊長でエマリーの従姉妹のイリーゼ・アインホルンが、にこやかに答えている。
そして、女海賊団は、翌朝、白いガレオン船 “Zukuft”号に乗り、幽霊船が出た海域へと向かったが、得るもの無く帰ってきた。
「とりあえず伯父上には報告しておくか……」
翌日、公爵邸で伯父と従姉妹のアンナに、ここ数日間のことを報告した。
「ヴィル! ヴィル、それは本当なの? ドイツ騎士団に殺された人たちが私たち公爵家に復讐しようなんて」
「アンナ、落ち着きなさい」
「お、お父様。だって……」
あのアンナが取り乱している。初めて見たわ。
「あくまでも噂です。正体はあるはずです。必ず見つけます」
そう、早く見つけないと、商人たちがこの領地から離れ、漁師たちは漁が出来ず、そして、アンナは他の貴族たちから、『幽霊が出る領地の……』と、変なあだ名でも付けられ、嫁に行けなくなるなんてこともあるかもしれない。
そんなことは、私がさせない。
意地でも幽霊船を見つけてやるのだ。
その頃、フェロル港では。
「大佐、クレマンティーヌがイギリス商船の航行の邪魔をしているようです。成果が上がっています」
「そうか。提督には報告しておくことにするよ」と、ダニエル大佐は部下の報告に答えたが、提督に何かを期待するものではなかった。
この大西洋で、何も起きなければ、提督としては良いのだ。
それが、この日は違っていた。
「この調子で、イギリスの貿易相手を、一気に減らすぞ」
それを聞いたダニエル大佐は、「はぁ?」と声を出しそうになった。
無能な働き者が働くとき、多くの人が混乱するのだから。
「よし、ロンドンとバルト海の交易を絶たせる。バルト海に艦隊を向ける。途中、南ネーデルランドで地元の艦隊と合流させる。そうすれば、バルト海もイギリスも干上がる。イギリス商船を通すな」
そして、数日後、地中海方面軍から、ガレアス船が同行することになった。
何故なら、バルト海は内海で風が少ない。
それを手漕ぎで補うのだ。
あのオスマン帝国と地中海の覇権を争ったレパント海戦で活躍した手漕ぎのガレー船に、帆を付けたガレアス船は、風でも手漕ぎでも動かせる優れものなのだ。
それをバルト海に派遣しようと、この提督は言っている。
「エリザベスの首をキュウっと絞めてやるわ。わははははッ」
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