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3.バルト海を並び行く幽霊たち
3-21.青空の下に白い帆を掲げよう
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3-21.青空の下に白い帆を掲げよう
私たちは、ケーニヒスベルクから出港することになった。
アムステルダム経由でドーバー港に帰る。
ドーバー港は、私たちが本拠地にしており、行きつけのドックや武器屋があるので、修理や補給も、ここで行っている。
まあ、エマリーの実家のアインス商会の紹介なので、腕は確かだが、なんか、エマリーの懐に……
詮索はよそう。
さて、突堤では来た時とは違い、大勢の人が突堤に集まっていた。
この日は、珍しく霧も止んでいた。
突堤付近は、“ジャンジャカシャンッ!”と、音楽が鳴り響いており、賑やかな雰囲気が出来ていた。
しかし、残念なことに、幽霊船は捕獲したが、黒幕はわからなかったのだ。
おそらく、黒幕はドイツ貴族社会に深く関与しており、妙な噂を流したりと、情報をコントロールしてきたのだから、他の貴族の諜報関係者かもしれない。
となると、近いうち内乱か戦争が起こるだろうな。
「ヴィル、行くのね」
「うん、行くよ。仲間が待っているからね」
そう、100人の仲間が、私を待っている。
談笑し、酒を酌み交わすことのできる仲間が。
厚い信頼を寄せることが出来る仲間が。
しかし、アンナは、何か寂しそうであった。
おそらく、彼女には海賊や私掠船業をしている私の考えていることが、分からないということだろう。
同じように貴族社会で育った従姉妹が……
「伯父上……」
「あぁ、ヴィル。今回は、世話になったね。領民もこの騒ぎだ」
「いえ、クライネスがお世話になったみたいで」
「ふふ。あの娘は、また連れておいで」
「はい」
クライネスは伯父に気に入られたようだ。
船員は、この間も出港準備に取り掛かっている。
「お頭ぁ、いつでも出航できます」と、甲板から声が聞えた。
とは言うものの、閣下たちは、皆、ファンサービスで忙しいので、私は、甲板員に向け、「少し待て!」という仕草をした。
甲板員も納得したようだ。
この騒ぎの中、出港したら、恨まれるでしょうよ。
ローズマリーとヤスミンの宝塚コンビは、多くの女性に囲まれていた。
この時代、紫の染め粉が無いというのに、ローズマリーは花を絞り、ブラウスをほんのり紫に染めている。
ヤスミンは、基本的に白と黒のゴッシクが多い。
黒いズボンに白いブラウス、そこに黄色のリボンを首にしている。
まさにローズマリーとヤスミン(ジャスミン)と言う感じだ。
イリーゼとエルメンヒルデの百合コンビは、まず、イリーゼの基本色は白だ。
白のワンピースのスカートを左の腰で結んで、ドロワーズが見えるようにしている。腰は皮のベルトを巻き、前腕から手の甲には皮鎧をしている。
ドロワーズを見せつけているあたり、若いなと思う。
エルメンヒルデは、緑のワンピースのスカートを右の腰で結んでいる。つまり、イリーゼと左右反対にしているのは、左利きだからなのか?
まあ、同い年だけあって、まったく、仲が良いわ!
青い副船長服を着たエマリーが、イライザを伴い、タラップを“のっしのっし”と上がって行くのが見えた。
それを見たローズマリーとヤスミンが続いて、タラップを上がって行く。
続いてイリーゼとエルメンヒルデが私のもとにかけてきた。
二人とも護衛隊長と副隊長の顔に戻っていたので、私はそれを見て、一つ頷いた。
「では、伯父上、アンナ。黒幕に気を付けてください。行ってまいります」と言うと、伯父は頷き、アンナは下を向いた。
私は、赤い船長服の襟を正すと、領民に手を振りながら、タラップに向かった。
「お父様、海賊の船長が騎士のソードを腰に差していますわ」
「う~ん、海賊なのか? 騎士なのか? あの子らしいな」
突堤から、出港の鐘が盛大に鳴る。
“カ~ン、カ~ン、カ~ン”と、何度も繰り返されている。
「よし、Zukunft号、出港だ。錨を上げろ」
ギィィーー!
「進路をアムステルダムに取れ!」
青空の下に白い帆を張り、カモメやイルカの群れと共に、バルト海をデンマークのコペンハーゲンを通り、アムステルダムに向かう。
やがて、陽が西に沈み、夜が来る。
陽が西に沈むのは、また、明日、東から登るという、人々との約束。
この日も、太陽は大西洋の遥か西に沈んで行った。
明日と言う日が、どんな日になるかは、誰も分からない。
しかし、必ずやって来る。
それが、最後の一日になるかもしれない。
しかし、まだ、私には最後の審判を受けるには、まだまだ、何もかもが足らなすぎる。
覚悟も、なすべきことも。
私は、これからも、この白いガレオン船と共に旅を続けるつもりだ。
何故なら、薔薇色の真珠は、まだ見つけていないのだから。
第一部 完
その頃、フェロル大西洋方面基地では。
「ダニエル大佐、新しい提督が到着されました」
ダニエルは、新しい提督を迎えに港まで行くと、ガレオン船から新提督が降りてきた。
「ガレオン船が、こんなにも。これなら海賊も壊滅出来る」
さて、クレマンティーヌを追いかけて行った黒船海賊団は、どうなったのか?
クレマンティーヌの正体は?
第二部に続く。
実は、『虫めずる姫君』。
私たちは、ケーニヒスベルクから出港することになった。
アムステルダム経由でドーバー港に帰る。
ドーバー港は、私たちが本拠地にしており、行きつけのドックや武器屋があるので、修理や補給も、ここで行っている。
まあ、エマリーの実家のアインス商会の紹介なので、腕は確かだが、なんか、エマリーの懐に……
詮索はよそう。
さて、突堤では来た時とは違い、大勢の人が突堤に集まっていた。
この日は、珍しく霧も止んでいた。
突堤付近は、“ジャンジャカシャンッ!”と、音楽が鳴り響いており、賑やかな雰囲気が出来ていた。
しかし、残念なことに、幽霊船は捕獲したが、黒幕はわからなかったのだ。
おそらく、黒幕はドイツ貴族社会に深く関与しており、妙な噂を流したりと、情報をコントロールしてきたのだから、他の貴族の諜報関係者かもしれない。
となると、近いうち内乱か戦争が起こるだろうな。
「ヴィル、行くのね」
「うん、行くよ。仲間が待っているからね」
そう、100人の仲間が、私を待っている。
談笑し、酒を酌み交わすことのできる仲間が。
厚い信頼を寄せることが出来る仲間が。
しかし、アンナは、何か寂しそうであった。
おそらく、彼女には海賊や私掠船業をしている私の考えていることが、分からないということだろう。
同じように貴族社会で育った従姉妹が……
「伯父上……」
「あぁ、ヴィル。今回は、世話になったね。領民もこの騒ぎだ」
「いえ、クライネスがお世話になったみたいで」
「ふふ。あの娘は、また連れておいで」
「はい」
クライネスは伯父に気に入られたようだ。
船員は、この間も出港準備に取り掛かっている。
「お頭ぁ、いつでも出航できます」と、甲板から声が聞えた。
とは言うものの、閣下たちは、皆、ファンサービスで忙しいので、私は、甲板員に向け、「少し待て!」という仕草をした。
甲板員も納得したようだ。
この騒ぎの中、出港したら、恨まれるでしょうよ。
ローズマリーとヤスミンの宝塚コンビは、多くの女性に囲まれていた。
この時代、紫の染め粉が無いというのに、ローズマリーは花を絞り、ブラウスをほんのり紫に染めている。
ヤスミンは、基本的に白と黒のゴッシクが多い。
黒いズボンに白いブラウス、そこに黄色のリボンを首にしている。
まさにローズマリーとヤスミン(ジャスミン)と言う感じだ。
イリーゼとエルメンヒルデの百合コンビは、まず、イリーゼの基本色は白だ。
白のワンピースのスカートを左の腰で結んで、ドロワーズが見えるようにしている。腰は皮のベルトを巻き、前腕から手の甲には皮鎧をしている。
ドロワーズを見せつけているあたり、若いなと思う。
エルメンヒルデは、緑のワンピースのスカートを右の腰で結んでいる。つまり、イリーゼと左右反対にしているのは、左利きだからなのか?
まあ、同い年だけあって、まったく、仲が良いわ!
青い副船長服を着たエマリーが、イライザを伴い、タラップを“のっしのっし”と上がって行くのが見えた。
それを見たローズマリーとヤスミンが続いて、タラップを上がって行く。
続いてイリーゼとエルメンヒルデが私のもとにかけてきた。
二人とも護衛隊長と副隊長の顔に戻っていたので、私はそれを見て、一つ頷いた。
「では、伯父上、アンナ。黒幕に気を付けてください。行ってまいります」と言うと、伯父は頷き、アンナは下を向いた。
私は、赤い船長服の襟を正すと、領民に手を振りながら、タラップに向かった。
「お父様、海賊の船長が騎士のソードを腰に差していますわ」
「う~ん、海賊なのか? 騎士なのか? あの子らしいな」
突堤から、出港の鐘が盛大に鳴る。
“カ~ン、カ~ン、カ~ン”と、何度も繰り返されている。
「よし、Zukunft号、出港だ。錨を上げろ」
ギィィーー!
「進路をアムステルダムに取れ!」
青空の下に白い帆を張り、カモメやイルカの群れと共に、バルト海をデンマークのコペンハーゲンを通り、アムステルダムに向かう。
やがて、陽が西に沈み、夜が来る。
陽が西に沈むのは、また、明日、東から登るという、人々との約束。
この日も、太陽は大西洋の遥か西に沈んで行った。
明日と言う日が、どんな日になるかは、誰も分からない。
しかし、必ずやって来る。
それが、最後の一日になるかもしれない。
しかし、まだ、私には最後の審判を受けるには、まだまだ、何もかもが足らなすぎる。
覚悟も、なすべきことも。
私は、これからも、この白いガレオン船と共に旅を続けるつもりだ。
何故なら、薔薇色の真珠は、まだ見つけていないのだから。
第一部 完
その頃、フェロル大西洋方面基地では。
「ダニエル大佐、新しい提督が到着されました」
ダニエルは、新しい提督を迎えに港まで行くと、ガレオン船から新提督が降りてきた。
「ガレオン船が、こんなにも。これなら海賊も壊滅出来る」
さて、クレマンティーヌを追いかけて行った黒船海賊団は、どうなったのか?
クレマンティーヌの正体は?
第二部に続く。
実は、『虫めずる姫君』。
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