【完結】海賊令嬢と幽霊船 ―誰の心にもある“冒険への憧れ”を君に!― (海賊令嬢シリーズ4)

SHOTARO

文字の大きさ
25 / 25
3.バルト海を並び行く幽霊たち

3-21.青空の下に白い帆を掲げよう

しおりを挟む
3-21.青空の下に白い帆を掲げよう

 私たちは、ケーニヒスベルクから出港することになった。
 アムステルダム経由でドーバー港に帰る。
 ドーバー港は、私たちが本拠地にしており、行きつけのドックや武器屋があるので、修理や補給も、ここで行っている。

 まあ、エマリーの実家のアインス商会の紹介なので、腕は確かだが、なんか、エマリーの懐に……
 詮索はよそう。

 さて、突堤では来た時とは違い、大勢の人が突堤に集まっていた。
 この日は、珍しく霧も止んでいた。

 突堤付近は、“ジャンジャカシャンッ!”と、音楽が鳴り響いており、賑やかな雰囲気が出来ていた。

 しかし、残念なことに、幽霊船は捕獲したが、黒幕はわからなかったのだ。
 おそらく、黒幕はドイツ貴族社会に深く関与しており、妙な噂を流したりと、情報をコントロールしてきたのだから、他の貴族の諜報関係者かもしれない。
 となると、近いうち内乱か戦争が起こるだろうな。

「ヴィル、行くのね」
「うん、行くよ。仲間が待っているからね」
 
 そう、100人の仲間が、私を待っている。
 談笑し、酒を酌み交わすことのできる仲間が。
 厚い信頼を寄せることが出来る仲間が。

 しかし、アンナは、何か寂しそうであった。
 おそらく、彼女には海賊や私掠船業をしている私の考えていることが、分からないということだろう。
 同じように貴族社会で育った従姉妹が……


「伯父上……」
「あぁ、ヴィル。今回は、世話になったね。領民もこの騒ぎだ」
「いえ、クライネスがお世話になったみたいで」
「ふふ。あの娘は、また連れておいで」
「はい」
 クライネスは伯父に気に入られたようだ。

 船員は、この間も出港準備に取り掛かっている。
「お頭ぁ、いつでも出航できます」と、甲板から声が聞えた。

 とは言うものの、閣下たちは、皆、ファンサービスで忙しいので、私は、甲板員に向け、「少し待て!」という仕草をした。
 甲板員も納得したようだ。
 この騒ぎの中、出港したら、恨まれるでしょうよ。

 ローズマリーとヤスミンの宝塚コンビは、多くの女性に囲まれていた。
 この時代、紫の染め粉が無いというのに、ローズマリーは花を絞り、ブラウスをほんのり紫に染めている。

 ヤスミンは、基本的に白と黒のゴッシクが多い。
 黒いズボンに白いブラウス、そこに黄色のリボンを首にしている。
 まさにローズマリーとヤスミン(ジャスミン)と言う感じだ。

 イリーゼとエルメンヒルデの百合コンビは、まず、イリーゼの基本色は白だ。
 白のワンピースのスカートを左の腰で結んで、ドロワーズが見えるようにしている。腰は皮のベルトを巻き、前腕から手の甲には皮鎧をしている。
 ドロワーズを見せつけているあたり、若いなと思う。

 エルメンヒルデは、緑のワンピースのスカートを右の腰で結んでいる。つまり、イリーゼと左右反対にしているのは、左利きだからなのか?
 まあ、同い年だけあって、まったく、仲が良いわ!

 青い副船長服を着たエマリーが、イライザを伴い、タラップを“のっしのっし”と上がって行くのが見えた。

 それを見たローズマリーとヤスミンが続いて、タラップを上がって行く。
 続いてイリーゼとエルメンヒルデが私のもとにかけてきた。
 二人とも護衛隊長と副隊長の顔に戻っていたので、私はそれを見て、一つ頷いた。

「では、伯父上、アンナ。黒幕に気を付けてください。行ってまいります」と言うと、伯父は頷き、アンナは下を向いた。

 私は、赤い船長服の襟を正すと、領民に手を振りながら、タラップに向かった。

「お父様、海賊の船長が騎士のソードを腰に差していますわ」
「う~ん、海賊なのか? 騎士なのか? あの子らしいな」

 突堤から、出港の鐘が盛大に鳴る。
“カ~ン、カ~ン、カ~ン”と、何度も繰り返されている。

「よし、Zukunft号、出港だ。錨を上げろ」

 ギィィーー!

「進路をアムステルダムに取れ!」

 青空の下に白い帆を張り、カモメやイルカの群れと共に、バルト海をデンマークのコペンハーゲンを通り、アムステルダムに向かう。

 やがて、陽が西に沈み、夜が来る。
 陽が西に沈むのは、また、明日、東から登るという、人々との約束。
 この日も、太陽は大西洋の遥か西に沈んで行った。

 明日と言う日が、どんな日になるかは、誰も分からない。
 しかし、必ずやって来る。
 それが、最後の一日になるかもしれない。
 しかし、まだ、私には最後の審判を受けるには、まだまだ、何もかもが足らなすぎる。
 覚悟も、なすべきことも。

 私は、これからも、この白いガレオン船と共に旅を続けるつもりだ。
 何故なら、薔薇色の真珠は、まだ見つけていないのだから。


第一部 完

 その頃、フェロル大西洋方面基地では。

「ダニエル大佐、新しい提督が到着されました」
 ダニエルは、新しい提督を迎えに港まで行くと、ガレオン船から新提督が降りてきた。
「ガレオン船が、こんなにも。これなら海賊も壊滅出来る」


 さて、クレマンティーヌを追いかけて行った黒船海賊団は、どうなったのか?
 クレマンティーヌの正体は?
 第二部に続く。

 実は、『虫めずる姫君』。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...