【完結】死後の世界は人手不足 ―魔法は使えませんが空手家ですー

師走とうか

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最終章 魔人と闘う空手家

95.空手の近代化

95.
 空手の近代化


 19世紀後半から20世紀初頭

 空手は岐路に立たされていた。

 武士の時代は終わり、すべての人が義務教育を受け、職業を選択する。戦争も武士がするのではなく平民を訓練し軍隊を作る。

 そんな時代だ。
 武士が武術を伝える必要が無くなって行き、次第に、日本全国で武術は衰退していった。

 そんな中、東京では『武術の中の一部を取り出し、武道と称し、青少年の教育に当てる』という考えが出てきた。
 その中心的人物が、柔道創始者の加納治五郎だ。

 だが、東京から遠く離れた沖縄では、武士がいなくなり武術が廃れて行く。
 その様な時、平民が義務教育を受け、また軍隊に入り戦うというのなら、教育の場で武術を教えればよいと考えた男がいた。
 その男の名を“糸洲 安恒”と書いて、イトス アンコウと読む。

 糸洲は考えた。
「小学校や中学校で武術を教えれば良いのだ!」と。

 そのためには、今までの様に父が息子を、師が生徒を一対一で教えるのでなく、一人の先生が大勢の生徒を指導できるように、号令に合わせて動けるような技術を作れば良い。
 それは、軍隊教育である体育教育と相反することはない。

 そうして出来た沖縄武術の形を人々は、“平安”と呼んだ。
 この“平安”を持って、沖縄武術は近代化を果たした。
 その後、昭和に入り、沖縄の武術は空手と称し、爆発的に全国へ広まったのだ。


 そして、全国に爆発的に広まった空手は、新たな問題を突き付けられた。
 剣道や柔道と比べられるようになったのだ。
「何故、空手は試合をしないのだ」と。

 本土では、「試合をしないのなら、近代武道として認めない」とまで言われた。
 突き付けられたのだ。
 これが、古い武術ならそれでも良かっただろう。
 そのまま廃れて行けばよいのだから。

 しかし、空手は選択を迫られて、苦悩していた。
 試合をして近代武道となるか。
 試合を放棄して、古い武術として廃れて行くか。

 そして、若い空手家を中心に近代化を進めて行くことにした……
 つまり、試合をするということだ!

 試合をして、多くのものを失った。
 だが、得るものも多かった。


 そう、試合をして得たもの。
 それは、オレの様な一般人でも空手に出会えるほど、普及したのだ!

 そして、試合をしなかった世代の空手家は知らない。

 この技を!

「高速上段突きだ!」

 オレの高速上段突きが、イシワラの喉元へ延びる。
 イシワラは回し受けで対応しようとしている。もし、イシワラの回し受けが完全に決まってしまえば、右腕はへし折られるだろう。

 そして、一度受けが成功したなら、二度、同じ技は通用しない。
 この一発が勝負なのだ!

 オレの突きとイシワラの受けが交差する。

 どちらの技も不完全だ!
 オレの腕はへし折られていないが、イシワラも無事だ。

 だが、しかしだ!

 高速上段突きは、連打できる!

「もう一発、高速上段突き」
 オレの左拳がイシワラの喉仏を粉砕している。そして、拳はさらに頚椎に到達し、頚椎を折り、折れた骨は首から飛び出している。

 一瞬の出来事だ。
 二発の高速上段突きを放つのに、空手の有段者が一秒とかかるだろうか?

 だが、その一秒後には、無敵を誇っていたジェネラルは血だるまと化し、ついに倒れた。

 オレは、大きく息を吸って、そして吐いた。


 次回の空手家は、ジェネラル・イシワラとは!
 
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