32 / 44
第四章 ブリテン島から脱出せよ
32.テムズ川の悲劇
しおりを挟むついにクリッパー船はドーバー港を出て、ロンドンのセイント・キャサリンドックを目指すこととなった。
テムズ川の河口は大きく広がっており、幾つか島がある。
さて、ここからはタグボートに牽引してもらい、ロンドンまで進むこととなる。
80メートル級のティー・クリッパーが、ゆっくりとテムズ川を登っていく姿は神々しくも美しい。
そのセイント・キャサリンドックでは、ロンドン支店の作業員が積荷の医薬品を用意していた。
医薬品を売り、茶を買う。
茶の支払いについては、手形の裏書譲渡で幾らかは支払うようだ。
出港時間は、翌朝の8時となった。
「随分とゆっくりだな」と言ったのは船長のハインリッヒだ。
「いえ、6時台も7時台も、混雑しておりまして、最短で8時になりました」とは、ファースの言い訳だ。
港は、早朝と夕方の出港が多い。
「ヴィレム、何故、医薬品をこんなに積むの」と言ったのは、先日のジャスミンだ。
「あぁ、これはムンバイのシュバルツ商会が経営している病院が使うんだよ」
「そうなんだ」
それを見ていたヘニーが思った。
医薬品も高価だ。高値で売れる。だが、今ここで……
「おい、今日は休んでくれ。明日の出航に備えて休んでくれ」とは船長だ。
今日は、皆、休むようだ。
翌日。
時間となり、出航をする。
「よし、快速帆船。ウィンドジャマー"Sleutels tot de toekomst"号、出航する」と、船長が高らかに宣言をした。
「錨を上げぇ」と、ファースの声が聞えた。
船はドッグを出て、運河を通りテムズ川へと出る。この出航作業がたった30人で出来るとは、クリッパー船は合理的に作られているのだろうか。
そして、今、ティーレースが始まった瞬間であった。
だが、テムズ川を下って行くと下流に軍艦が三隻見えてきたのだ。
「おかしい」
「なぜだ」と、船員たちが騒ぎ出した。
「船長、あれではこの船が通れません」
軍艦が邪魔でテムズ川下流から外海に出ることが出来ない。
「まさか、『テムズ川の悲劇』の再来では」
「船長、それは?」
「あぁ、ヴィレム。『テムズ川の悲劇』とは、ロンドンから高価な荷役品を運ぶ船に対し海軍が、それを奪うことだ。有名な話では"キャプテン・キッド"の話が有名だな。テムズ川を下ったところ、海軍に荷役品も船員の半分も没収された」
「それで、キャプテン・キッドはイギリス海軍に復讐をしたのですか」
「さあ、そこまではわからんな」
しかし、船は下流に、どんどんと流されていく。
ここで停船しないと軍艦に突っ込んでしまうのだから、どうすれば良いのだろうか。
誰も、判断が出来なかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ソラノカケラ ⦅Shattered Skies⦆
みにみ
歴史・時代
2026年 中華人民共和国が台湾へ軍事侵攻を開始
台湾側は地の利を生かし善戦するも
人海戦術で推してくる中国側に敗走を重ね
たった3ヶ月ほどで第2作戦区以外を掌握される
背に腹を変えられなくなった台湾政府は
傭兵を雇うことを決定
世界各地から金を求めて傭兵たちが集まった
これは、その中の1人
台湾空軍特務中尉Mr.MAITOKIこと
舞時景都と
台湾空軍特務中士Mr.SASENOこと
佐世野榛名のコンビによる
台湾開放戦を描いた物語である
※エースコンバットみたいな世界観で描いてます()
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日露戦争の真実
蔵屋
歴史・時代
私の先祖は日露戦争の奉天の戦いで若くして戦死しました。
日本政府の定めた徴兵制で戦地に行ったのでした。
日露戦争が始まったのは明治37年(1904)2月6日でした。
帝政ロシアは清国の領土だった中国東北部を事実上占領下に置き、さらに朝鮮半島、日本海に勢力を伸ばそうとしていました。
日本はこれに対抗し開戦に至ったのです。
ほぼ同時に、日本連合艦隊はロシア軍の拠点港である旅順に向かい、ロシア軍の旅順艦隊の殲滅を目指すことになりました。
ロシア軍はヨーロッパに配備していたバルチック艦隊を日本に派遣するべく準備を開始したのです。
深い入り江に守られた旅順沿岸に設置された強力な砲台のため日本の連合艦隊は、陸軍に陸上からの旅順艦隊攻撃を要請したのでした。
この物語の始まりです。
『神知りて 人の幸せ 祈るのみ
神の伝えし 愛善の道』
この短歌は私が今年元旦に詠んだ歌である。
作家 蔵屋日唱
影武者の天下盗り
井上シオ
歴史・時代
「影武者が、本物を超えてしまった——」
百姓の男が“信長”を演じ続けた。
やがて彼は、歴史さえ書き換える“もう一人の信長”になる。
貧しい百姓・十兵衛は、織田信長の影武者として拾われた。
戦場で命を賭け、演じ続けた先に待っていたのは――本能寺の変。
炎の中、信長は死に、十兵衛だけが生き残った。
家臣たちは彼を“信長”と信じ、十兵衛もまた“信長として生きる”ことを選ぶ。
偽物だった男が、やがて本物を凌ぐ采配で天下を動かしていく。
「俺が、信長だ」
虚構と真実が交差するとき、“天下を盗る”のは誰か。
時は戦国。
貧しい百姓の青年・十兵衛は、戦火に焼かれた村で家も家族も失い、彷徨っていた。
そんな彼を拾ったのは、天下人・織田信長の家臣団だった。
その驚くべき理由は——「あまりにも、信長様に似ている」から。
歴史そのものを塗り替える——“影武者が本物を超える”成り上がり戦国譚。
(このドラマは史実を基にしたフィクションです)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
楽将伝
九情承太郎
歴史・時代
三人の天下人と、最も遊んだ楽将・金森長近(ながちか)のスチャラカ戦国物語
織田信長の親衛隊は
気楽な稼業と
きたもんだ(嘘)
戦国史上、最もブラックな職場
「織田信長の親衛隊」
そこで働きながらも、マイペースを貫く、趣味の人がいた
金森可近(ありちか)、後の長近(ながちか)
天下人さえ遊びに来る、趣味の達人の物語を、ご賞味ください!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる