10 / 12
10.海賊会議
しおりを挟む
第10話
海賊会議
キーナの元に手紙が届いた。
「お頭、エルメンヒルデから手紙です」と言ったのは、かつての砲術長のヤスミンだ。
ヤスミンは、キーナこと、ヴィルヘルミーナの屋敷で使用人をしている。
かつてガレオン船の大砲を整備した要領で、領地の大砲の整備にヴィルヘルミーナの身の回りのことをしてくれる。
そして、屋敷の中でヴィルヘルミーナ令嬢を、「お頭」と呼ぶ唯一の人なのだ。
「エルメンヒルデから?」
「はい」
「ほう、エルメンヒルデが私に会いに来るらしい。しかも、海賊の船長になったようだ」
「あの命知らずがですか?」と、ヤスミンは喜んでいる。
「なにやら、私には見せたいものがあるらしいわ」
「それは、楽しみですね。お頭」
「そうね。ふふふ」
エルメンヒルデは、この白いガレオン船をお頭に見せたかったのだろう。
しかし、お頭の領地は内陸部。
流れの早いライン川中流より上に大型船で登るのには厳しいだろう。
順風で登れないところは、そこから先は小型船を馬で曳いて上がるのが、通常の水運だ。
あるいは、ロープを巻き取り登るという方法もある。
余談だけれど、話しておくと、上流からの水力で水車を回すとロープを巻き取る。
その力で船を引き上げると言うモノ。
当然、水車が無いと登れないわけだ。
しかし、このライン川は、実に長い河川にも関わらず、標高差が無い珍しい川なのだ。
河口のロッテルダムと中流のボンとの標高差は60メートルしか無い。
おかげて、登りやすい川なのだ。
さて、エルメンヒルデたちは、順風に乗り、ワール川からライン川へ進んで行った。
だが、それも長くは続かなかった。
やはり、小型船と大型船では、要領が違う。
ライン川は小さい岩が多い。※1
これを避けて進むには、航海士には相当な負担だ。
順風でない時は馬を使いたいが、大型船を馬に曳かせるには、馬の数が足らない。
水車も無いとなると順風以外では進まなくなって来た。
「なんで、うちの船長は、こんなムキになってライン川を登るのだ?」
「無駄な労力だ」
不満が渦巻くのも無理も無い。
中流のボンまで、14時間もの消費をしているのに、しかも、まだ先だと言う。
「船長、もう日が暮れてます。ここで錨を下ろします」
「もう、これ以上は無理なのか?」
船員から嘆息が漏れた。
「わかった。ここで停泊しよう」
すると、
「錨を下ろせッ」と船員の声がした。
「今日の夜、お頭の屋敷に行くと言ったのだが」
その頃、ホーエンツォレルン家では、
「ねぇ、ヤスミン! 遅いわ。すごく遅いわ。エルメンヒルデは何をしているの?」
「エマリーさん、何か、あったんでしょう。今日は、泊まっていってください」
「始めからそのつもりよ! ヤスミン」
「ふふふ。エマリーたら」
「「ふふふ」」
「でも、エルメンヒルデは、どうしたんだろうな?」
そして、エルメンヒルデが寝ている時に、事件は起きた。
エルメンヒルデ以外の船員が集まり、海賊会議が行われていた。
「エルメンヒルデ船長は、船長として相応しくないと思う者は、挙手を!」
ザッザッザッザッザッ!
「賛成多数ッ。これより船長を追放する。自ら降りるなら良し。抵抗するなら、川に放り込む」
「「「了解だ!」」」
次回、最終回、「永遠の海賊 エルメンヒルデ」をお楽しみに。
※1 現在は流れを邪魔する岩は、爆破されて安全になっている。
海賊会議
キーナの元に手紙が届いた。
「お頭、エルメンヒルデから手紙です」と言ったのは、かつての砲術長のヤスミンだ。
ヤスミンは、キーナこと、ヴィルヘルミーナの屋敷で使用人をしている。
かつてガレオン船の大砲を整備した要領で、領地の大砲の整備にヴィルヘルミーナの身の回りのことをしてくれる。
そして、屋敷の中でヴィルヘルミーナ令嬢を、「お頭」と呼ぶ唯一の人なのだ。
「エルメンヒルデから?」
「はい」
「ほう、エルメンヒルデが私に会いに来るらしい。しかも、海賊の船長になったようだ」
「あの命知らずがですか?」と、ヤスミンは喜んでいる。
「なにやら、私には見せたいものがあるらしいわ」
「それは、楽しみですね。お頭」
「そうね。ふふふ」
エルメンヒルデは、この白いガレオン船をお頭に見せたかったのだろう。
しかし、お頭の領地は内陸部。
流れの早いライン川中流より上に大型船で登るのには厳しいだろう。
順風で登れないところは、そこから先は小型船を馬で曳いて上がるのが、通常の水運だ。
あるいは、ロープを巻き取り登るという方法もある。
余談だけれど、話しておくと、上流からの水力で水車を回すとロープを巻き取る。
その力で船を引き上げると言うモノ。
当然、水車が無いと登れないわけだ。
しかし、このライン川は、実に長い河川にも関わらず、標高差が無い珍しい川なのだ。
河口のロッテルダムと中流のボンとの標高差は60メートルしか無い。
おかげて、登りやすい川なのだ。
さて、エルメンヒルデたちは、順風に乗り、ワール川からライン川へ進んで行った。
だが、それも長くは続かなかった。
やはり、小型船と大型船では、要領が違う。
ライン川は小さい岩が多い。※1
これを避けて進むには、航海士には相当な負担だ。
順風でない時は馬を使いたいが、大型船を馬に曳かせるには、馬の数が足らない。
水車も無いとなると順風以外では進まなくなって来た。
「なんで、うちの船長は、こんなムキになってライン川を登るのだ?」
「無駄な労力だ」
不満が渦巻くのも無理も無い。
中流のボンまで、14時間もの消費をしているのに、しかも、まだ先だと言う。
「船長、もう日が暮れてます。ここで錨を下ろします」
「もう、これ以上は無理なのか?」
船員から嘆息が漏れた。
「わかった。ここで停泊しよう」
すると、
「錨を下ろせッ」と船員の声がした。
「今日の夜、お頭の屋敷に行くと言ったのだが」
その頃、ホーエンツォレルン家では、
「ねぇ、ヤスミン! 遅いわ。すごく遅いわ。エルメンヒルデは何をしているの?」
「エマリーさん、何か、あったんでしょう。今日は、泊まっていってください」
「始めからそのつもりよ! ヤスミン」
「ふふふ。エマリーたら」
「「ふふふ」」
「でも、エルメンヒルデは、どうしたんだろうな?」
そして、エルメンヒルデが寝ている時に、事件は起きた。
エルメンヒルデ以外の船員が集まり、海賊会議が行われていた。
「エルメンヒルデ船長は、船長として相応しくないと思う者は、挙手を!」
ザッザッザッザッザッ!
「賛成多数ッ。これより船長を追放する。自ら降りるなら良し。抵抗するなら、川に放り込む」
「「「了解だ!」」」
次回、最終回、「永遠の海賊 エルメンヒルデ」をお楽しみに。
※1 現在は流れを邪魔する岩は、爆破されて安全になっている。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる