【完結】永遠の海賊 エルメンヒルデ (海賊令嬢シリーズ3)

SHOTARO

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9.船長

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第9話
船長


 エルメンヒルデは、海賊の船長になった。

 辞めるはずが船長になっていた。
 新しい船長にとって大事なことは、最初に何をやるかだ。

 あのロジャー海賊団は、前の船長の敵討ちだった。
 目的がハッキリしていたから、ロジャーは船長としての力量をハッキリ見せつける事が出来た。

 しかし、この海賊団は違う。
 うるさい船長を追出し、自分たちの好きにやりたいのだ。

 そして、エルメンヒルデが船長として、やりたい事は、あのガレオン船を探したい。
 しかし、それはクルーには何の関係の無いこと。

 エルメンヒルデが必死になるほど、クルーの心は離れていった。

 そんなある日、バルト海へ向けて航行していた時、ついに見つけたのだ。
 
 白いガレオン船を!

「あれだ! ついに」
「船長、まさかあのガレオン船を略奪するんで?」
「そうだ。あの船を探していた」


「おい聞いたか?」
「あぁ、まともにやりあえる相手ではないぞ。戦列艦並の装備だ」
 などとクルーたちの士気が下がっていようとは、エルメンヒルデには気が付かなかったようだ。


 その日の会議で、エルメンヒルデは略奪計画を説明した。
「夜間の停泊中をボートで襲う」
 ガレオン船の内部は、勝手知ったる庭だ。
 乗り込みさえすれば、奪えると考えていたようだ。


 そして、決行の日。

 停泊中のガレオン船にボートで近づき、侵入した。
 夜間だけあって、人は少なかった。
 どうやら、領主の屋敷でパーティーがある様だ。
 水軍関係者もそれに出席している。
 エルメンヒルデは、それを知ってか知らずか、この日を決行日とした。

「船長、意外とあっさりと盗めましたね」
「あぁ、運は我らに有りだな」

 そして、白いガレオン船は、夜の暗闇に消えて行くのでした。


 無論、私は、このことを、エルメンヒルデからの手紙で知った。
 そして、数日後、このロッテルダムに寄港すると。

「エルメンヒルデ、お久しぶりね」
「イリーゼ、お久しぶり」
「本当に見つけたのね、白いガレオン船を」
「ふふ、たまたま見つけたのよ。運が良かったわ」

 その後、私たちは、エルメンヒルデの母親の墓に向かった。
 当時のエルメンヒルデが、なけなしのカネで埋葬した母のお墓だ。

「お母さん。ただいま帰ってきたよ」と、エルメンヒルデが言った。
 この時、エルメンヒルデの脳裏には何が写っていたのだろうか?

 祖父母から追い出された時のこと。
 父親とのこと。
 あるいは……

「母に生存報告よ! イリーゼ」
「えっ、ええ」と、私は返答に困ってしまった。

「お頭は元気かな」
「えぇ、忙しくされているわ。しかも、かなりお綺麗になられて」
「へぇ、あのお頭が」
「おかしい?」
「うん」と、エルメンヒルデが言うと、私たちは、笑い合った。

「お頭に、この海賊団の船長をして欲しいよな。それが無理なら、キーナ・コスペルの名前を貸して欲しい」
「うん?」
「もちろん、自分が相応しいなんて思っては無いよ。でも、あの頃の自分に戻りたいというか!」
「まあ、エルメンヒルデは、まだまだ青春を謳歌したいのね」
「いやぁ、そういう訳では……」
「お頭は、今は領主になるため、忙しくされているので、海賊は無理ね」

「そうか。イリーゼもか?」
「私も、今の仕事で仲間がいるわ」
「なるほど。私は、私の仲間と頑張ることにするよ。お頭には、二代目キーナになりたいと相談してみるわ」
「わかったわ」

 その後、エルメンヒルデはお頭に手紙を出して、白いガレオン船で会いに行くと言う。

「二代目キーナになれると良いわね。エルメンヒルデ!」


 しかし、船長の昔の青春は、今のクルーにとって、重要なのだろうか?

 次回の女海賊団は、海賊会議です。
 何を決めるのだろうか?
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