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8.命燃やして
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第8話
命を燃やして
背中に大きな傷跡を残したエルメンヒルデは、その後も命知らずのような戦いを続けていた。
そして、その闘い方もピークを迎えた。
また、あの一件から、お頭も今までは、のっしのっしとブーツを鳴らしながら、歩いて戦場に現れていたが、『皆に遅れまい』と駆けている。
だから、分かったのだろう、エルメンヒルデの異様さに。
この日もエルメンヒルデは先陣を切って突っ込んで行った。
この貧相な体に振り回される男たち。
しかし、傭兵は積荷を奪われると報酬にありつけない。相手も必死だ。
そして、接近戦で勝てないとなると、飛び道具だ。
ナイフなら避けれることも多い。
だが、マスケット銃の弾を避けたものは見たことが無い。
「動くな! 撃つぞ」
この様に相手が銃を出した場合、見張台の狙撃者が狙撃するのだが、何故か、撃たない。
相手は傭兵なのだ。見張から見えない位置にいるようだ。
「動くなだと? 動いたら撃つ。動かなかったら斬られる。なら、私は、こうする」とエルメンヒルデが言うと、手を大きく広げ、そのまま、銃に向かって歩き出した。
私は、眼を見開いた。
エルメンヒルデの顔は、笑っていたのだ。
それはおかしくて笑ってるのではない。狂気の笑いだ。
「あぁ、彼女は壊れてしまったのか……」
それが正直な気持ちだった。
銃は大きな音がするが、弓矢は音がしない。
なので、ガレオン船には弓矢・クロスボウが積まれている。
そして、見事にマスケット銃を持つ男は、音もなく胸を射抜かれた。
もし、あのままなら、エルメンヒルデは、どうなっていただろうか?
そして、その日の夜、お頭から「今日のエルメンヒルデは、どう思う」と聞かれた。
正直に話そうと思い、「手に負えません」というと、お頭は「そうか」とだけ答えた。
その後、海賊団は私掠活動より、運搬活動が多くなっていった。
そんなある日。
「イリーゼ。貴女にお話があるの」とエルメンヒルデから声を掛けられた。
「何かしら」
「私は、貴女のように可愛くもない。貴女のように賢く立ち回れないわ」
「何を言っているの?」
「隠さなくても良いわよ。貴女がお調子者を演じているのはわかるわ。閣下とクルーの潤滑油になろうとしていることも」
「それは……」
「良いの、聞いて。可愛くもなく、人から好かれるわけでもなく、とてつもなく賢いわけでもない。そんな私を嫁にしたいという人も無ければ、海賊以外の仕事もないと思う」
「そんなことはないと思うわ。いくら、そばかす満載で髪の毛がもじゃもじゃでも」
「モジャモジャ? これは天然パーマよ。くせ毛よ」
「おっほん。話を戻すわ。男たちに弄ばれたからと言って娼婦になるつもりもない。だから、海賊しか私には無いの。そして、海の上で死ねたら本望と思うわ」
「死ぬには、まだ若すぎる」と私は反発した。
なぜなら、今すぐにでも死のうとしているように見えるからだ。
「そうね……でも、スペインの男は許さない。奴らだけは」
今、思うと、あのようなことは船の中だけではなかったのだろう。
まさかと思うが。
それは、考え過ぎか……
彼女が、貧相な体系なのは、まさか。
私は恐ろしくなってきた。
自分が恵まれた環境で生きてきたと感謝するしかない。
そして、彼女にとって恐れていたことが、起こった。
お頭が海賊団を解散することを決めたようだ。
理由は、イングランドとスペインの間で戦争が起こる。
相当、エリザベス女王は怒っており、いつ戦争が起こってもおかしくないのだ。
そして、お頭はフランシス・ドレイク中将に借りがあるので、「戦争に参加して欲しい」といわれると断ることが出来ない。
なので、言われる前に解散しようということだ。
お頭らしいと思う。
そして、その後のことも考えているようで、行き場のないものは、お頭の領地とエマ姉さんの実家のアインス商会で雇用することになる。
もちろん、私の実家はアインス商会の支店になるので、支店を継ぐことになる訳だ。
そして、財産はクルーで均等に分けた。
白いガレオン船は、アインス商会が買い取り、中古船販売で買い手を見つけることになる。
まあ、これだけ武装しているのだから、海軍に売るのも良し、海賊志望者に売るのも良し。
いや、海賊になるのに自分のカネで船を買ったのは、お頭と“海賊紳士”ことスティード・ボネットぐらいだろう。普通は奪うのだから。
さて、ガレオン船は私の実家の支店が仲介した。
買ったのは、貴族だった。
自分の領地の水軍にするためだ。
お頭も納得していたが、「あぁ、うちの領地に海があれば」とボヤいていた。
しかし、そんなことしたら、自分が海賊をしていたとバレてしまうのでは?
いや、公然の秘密なのだろう?
また、お頭の大衆劇も出来たそうではないか。
そして、そのヒロインは美人の伯爵令嬢なのだ。
「あのヒロインのモデルはお頭だよね? エマ姉さん」
「そうよイリー……これは大衆劇だから良いのよ」
私は、アインス商会の仕事に没頭していた頃、突如、エルメンヒルデが店を訪ねてきた。
「エルメンヒルデ!」
「お久しぶりだね」
「そうね」と返したものの、少し心配だった。
クルーたちの中で、エルメンヒルデだけが別の海賊団に移り、海賊稼業を続けていたのだ。
海賊稼業と言っても、キーナ・コスペル海賊団は私掠船活動と運搬であったので、この時代、合法行為しか行っていない。
ただ、ダブルスタンダードの件では、ドレイク中将のお世話になった程度だ。
しかし、彼女の今いる海賊団は、純粋な海賊業しかしていない。
つまり、私掠船登録をするのでなく、どの国の商船も襲っている。
特に彼女は、スペインを強く憎んでいるので、スペイン商船を襲うオランダの海賊のようだ。
私掠船でとどめて欲しかったというのが本音だ。
私掠船活動のみ行っていても、キャプテン・キッドのようにさらし首になる。
かわいそうだが、キャプテン・キッドは出資者の貴族が悪かったのだ。また、ドレイク中将のような大物を味方に付けなかったのも、良くなかった。
さて、エルメンヒルデが言うには、「海賊団は抜けようと思う」と。
それはうれしいが、出来るのだろうか?
「大丈夫、ちゃんと抜けれるから」
「それは良かったじゃない」
「で、お願いがあるんだ」
「何かしら?」
「あのお頭の白いガレオン船は、今、どこにあるの?」
何を言っているのだろうか?
もう、他人の手に渡っているのに。
「もう、売却してないわよ」
「そうか、買ったのは誰なの?」
私は嫌な予感がした。まさか、買い戻して海賊団を再結成したいのではと!
「お客さんの情報は言えないわよ。うちは商売だからね」と釘を刺しておいた。
「そこを何とか!」
「うちからは言えないわ。貴族が自身の領地のために買った。それ以上は言えないわ」
「貴族……貴族なんかがあの船を」
「お頭も伯爵じゃない」と私が言うも、エルメンヒルデが言う貴族は、祖父母のことのようだ。
自分たち親子を追い出し、父と母の仲を裂いた祖父母。
そのため、彼女の母は死に、新大陸へ行くことになり、女として辱めを受けた諸悪の原因だ。
無論、ガレオン船の購入者は、彼女の祖父母ではない。
そして、その日は、ガレオン船の話は無く、彼女は帰って行った。
数日後、彼女のいる海賊団では、海賊会議が行われる。
「本当に、この会議で船長をクビにするのだな」
「あぁ、エルメンヒルデ。間違いない」
「そうなれば、私たちの好きに出来る」
「私は、カリブに行きたいね。海賊共和国へ」※1
そして、海賊団は船長を追い出し、新しい船長を決めることになった。
「エルメンヒルデ! 入団してまだ1年だけど、お前は度胸がある。我らの船長をしてくれ」
「そうだ。頼む」
そうして、エルメンヒルデは“人から好かれない”と言いながらも、海賊団の船長となった。
次回の女海賊団は、意地でも白いガレオン船を探します。
※1 バハマが「海賊共和国」となったのは、1696年から。ここでは、単にカリブ海のことを指している。
命を燃やして
背中に大きな傷跡を残したエルメンヒルデは、その後も命知らずのような戦いを続けていた。
そして、その闘い方もピークを迎えた。
また、あの一件から、お頭も今までは、のっしのっしとブーツを鳴らしながら、歩いて戦場に現れていたが、『皆に遅れまい』と駆けている。
だから、分かったのだろう、エルメンヒルデの異様さに。
この日もエルメンヒルデは先陣を切って突っ込んで行った。
この貧相な体に振り回される男たち。
しかし、傭兵は積荷を奪われると報酬にありつけない。相手も必死だ。
そして、接近戦で勝てないとなると、飛び道具だ。
ナイフなら避けれることも多い。
だが、マスケット銃の弾を避けたものは見たことが無い。
「動くな! 撃つぞ」
この様に相手が銃を出した場合、見張台の狙撃者が狙撃するのだが、何故か、撃たない。
相手は傭兵なのだ。見張から見えない位置にいるようだ。
「動くなだと? 動いたら撃つ。動かなかったら斬られる。なら、私は、こうする」とエルメンヒルデが言うと、手を大きく広げ、そのまま、銃に向かって歩き出した。
私は、眼を見開いた。
エルメンヒルデの顔は、笑っていたのだ。
それはおかしくて笑ってるのではない。狂気の笑いだ。
「あぁ、彼女は壊れてしまったのか……」
それが正直な気持ちだった。
銃は大きな音がするが、弓矢は音がしない。
なので、ガレオン船には弓矢・クロスボウが積まれている。
そして、見事にマスケット銃を持つ男は、音もなく胸を射抜かれた。
もし、あのままなら、エルメンヒルデは、どうなっていただろうか?
そして、その日の夜、お頭から「今日のエルメンヒルデは、どう思う」と聞かれた。
正直に話そうと思い、「手に負えません」というと、お頭は「そうか」とだけ答えた。
その後、海賊団は私掠活動より、運搬活動が多くなっていった。
そんなある日。
「イリーゼ。貴女にお話があるの」とエルメンヒルデから声を掛けられた。
「何かしら」
「私は、貴女のように可愛くもない。貴女のように賢く立ち回れないわ」
「何を言っているの?」
「隠さなくても良いわよ。貴女がお調子者を演じているのはわかるわ。閣下とクルーの潤滑油になろうとしていることも」
「それは……」
「良いの、聞いて。可愛くもなく、人から好かれるわけでもなく、とてつもなく賢いわけでもない。そんな私を嫁にしたいという人も無ければ、海賊以外の仕事もないと思う」
「そんなことはないと思うわ。いくら、そばかす満載で髪の毛がもじゃもじゃでも」
「モジャモジャ? これは天然パーマよ。くせ毛よ」
「おっほん。話を戻すわ。男たちに弄ばれたからと言って娼婦になるつもりもない。だから、海賊しか私には無いの。そして、海の上で死ねたら本望と思うわ」
「死ぬには、まだ若すぎる」と私は反発した。
なぜなら、今すぐにでも死のうとしているように見えるからだ。
「そうね……でも、スペインの男は許さない。奴らだけは」
今、思うと、あのようなことは船の中だけではなかったのだろう。
まさかと思うが。
それは、考え過ぎか……
彼女が、貧相な体系なのは、まさか。
私は恐ろしくなってきた。
自分が恵まれた環境で生きてきたと感謝するしかない。
そして、彼女にとって恐れていたことが、起こった。
お頭が海賊団を解散することを決めたようだ。
理由は、イングランドとスペインの間で戦争が起こる。
相当、エリザベス女王は怒っており、いつ戦争が起こってもおかしくないのだ。
そして、お頭はフランシス・ドレイク中将に借りがあるので、「戦争に参加して欲しい」といわれると断ることが出来ない。
なので、言われる前に解散しようということだ。
お頭らしいと思う。
そして、その後のことも考えているようで、行き場のないものは、お頭の領地とエマ姉さんの実家のアインス商会で雇用することになる。
もちろん、私の実家はアインス商会の支店になるので、支店を継ぐことになる訳だ。
そして、財産はクルーで均等に分けた。
白いガレオン船は、アインス商会が買い取り、中古船販売で買い手を見つけることになる。
まあ、これだけ武装しているのだから、海軍に売るのも良し、海賊志望者に売るのも良し。
いや、海賊になるのに自分のカネで船を買ったのは、お頭と“海賊紳士”ことスティード・ボネットぐらいだろう。普通は奪うのだから。
さて、ガレオン船は私の実家の支店が仲介した。
買ったのは、貴族だった。
自分の領地の水軍にするためだ。
お頭も納得していたが、「あぁ、うちの領地に海があれば」とボヤいていた。
しかし、そんなことしたら、自分が海賊をしていたとバレてしまうのでは?
いや、公然の秘密なのだろう?
また、お頭の大衆劇も出来たそうではないか。
そして、そのヒロインは美人の伯爵令嬢なのだ。
「あのヒロインのモデルはお頭だよね? エマ姉さん」
「そうよイリー……これは大衆劇だから良いのよ」
私は、アインス商会の仕事に没頭していた頃、突如、エルメンヒルデが店を訪ねてきた。
「エルメンヒルデ!」
「お久しぶりだね」
「そうね」と返したものの、少し心配だった。
クルーたちの中で、エルメンヒルデだけが別の海賊団に移り、海賊稼業を続けていたのだ。
海賊稼業と言っても、キーナ・コスペル海賊団は私掠船活動と運搬であったので、この時代、合法行為しか行っていない。
ただ、ダブルスタンダードの件では、ドレイク中将のお世話になった程度だ。
しかし、彼女の今いる海賊団は、純粋な海賊業しかしていない。
つまり、私掠船登録をするのでなく、どの国の商船も襲っている。
特に彼女は、スペインを強く憎んでいるので、スペイン商船を襲うオランダの海賊のようだ。
私掠船でとどめて欲しかったというのが本音だ。
私掠船活動のみ行っていても、キャプテン・キッドのようにさらし首になる。
かわいそうだが、キャプテン・キッドは出資者の貴族が悪かったのだ。また、ドレイク中将のような大物を味方に付けなかったのも、良くなかった。
さて、エルメンヒルデが言うには、「海賊団は抜けようと思う」と。
それはうれしいが、出来るのだろうか?
「大丈夫、ちゃんと抜けれるから」
「それは良かったじゃない」
「で、お願いがあるんだ」
「何かしら?」
「あのお頭の白いガレオン船は、今、どこにあるの?」
何を言っているのだろうか?
もう、他人の手に渡っているのに。
「もう、売却してないわよ」
「そうか、買ったのは誰なの?」
私は嫌な予感がした。まさか、買い戻して海賊団を再結成したいのではと!
「お客さんの情報は言えないわよ。うちは商売だからね」と釘を刺しておいた。
「そこを何とか!」
「うちからは言えないわ。貴族が自身の領地のために買った。それ以上は言えないわ」
「貴族……貴族なんかがあの船を」
「お頭も伯爵じゃない」と私が言うも、エルメンヒルデが言う貴族は、祖父母のことのようだ。
自分たち親子を追い出し、父と母の仲を裂いた祖父母。
そのため、彼女の母は死に、新大陸へ行くことになり、女として辱めを受けた諸悪の原因だ。
無論、ガレオン船の購入者は、彼女の祖父母ではない。
そして、その日は、ガレオン船の話は無く、彼女は帰って行った。
数日後、彼女のいる海賊団では、海賊会議が行われる。
「本当に、この会議で船長をクビにするのだな」
「あぁ、エルメンヒルデ。間違いない」
「そうなれば、私たちの好きに出来る」
「私は、カリブに行きたいね。海賊共和国へ」※1
そして、海賊団は船長を追い出し、新しい船長を決めることになった。
「エルメンヒルデ! 入団してまだ1年だけど、お前は度胸がある。我らの船長をしてくれ」
「そうだ。頼む」
そうして、エルメンヒルデは“人から好かれない”と言いながらも、海賊団の船長となった。
次回の女海賊団は、意地でも白いガレオン船を探します。
※1 バハマが「海賊共和国」となったのは、1696年から。ここでは、単にカリブ海のことを指している。
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