【完結】永遠の海賊 エルメンヒルデ (海賊令嬢シリーズ3)

SHOTARO

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7.エルメンヒルデ無双 

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第7話
エルメンヒルデ無双 


 カリブ海への植民船団が、まだまだ盛んだった頃、彼らの食料を頂くこととなった。

 私掠船としては、正しい行いだ。

 カルバリン砲で帆を撃ち抜いて失速させ、追いつくと敵の砲をカノン砲で潰しておく。

「乗り込むぞ」と、お頭と共に護衛隊は乗り込んで行く。

 雇われ護衛隊なのだろうか。
 敵の数も少ない。
 勿論、隠れているかもしれないので、要注意だ!

 しかし、海賊刀を振り回すかの様に、エルメンヒルデは敵のど真ん中へ突進して行く。
 いつから、この様な性格になったのだろうか?

 やはり、父の死からだろう。
 天涯孤独になったのだ。
“もう、死んでも良い”という感じが見て取れる。
 放置はできない!

「エルメンヒルデ!」と言うと、背中を守ってやることにする。

 この様なことが何度かあった後、エルメンヒルデと話す機会が訪れた。

「エルメンヒルデ、ここ最近、何か吹っ切れたように、敵に飛び込むのだけど、どうしたの?」
「うん? いや、そんなことは無いと思う……」
「背中がお留守よ。気を付けないとね」
「うん、そうだね……」と言うと、エルメンヒルデは俯き気味だった。
 やはり、父のことがショックだったのだろう。

 しかし、詳しいことは知らないクルーからは、エルメンヒルデの活躍は大喝采だ!

 エルメンヒルデと私が突っ込んで行くように、見張台からは見える様だ。

 その後を、お頭が、“のっしのっし”と歩いてく貫禄満点の姿は、まさに無双という感じらしい。

 だが、それは、ギリギリのところで踏み止まっているだけだ。

 エルメンヒルデが、一歩早かったら、私が一歩遅かったら、死んでいたかもしれない。

 そんな状況で、いつも上手くいくとは限らないと思っていた。

 そして、その日が来ることに。


「お頭、商船が三隻。キャラベルです」
「うむ」
「お頭、任せて下さい」
「エルメンヒルデ、行くか?」
「はい」
「エマリー、頼む」
「分かったわ。キャラベルの後ろに回り込むわ、全速前進」とエマ姉さんが、航海士に指示している。

 すべての帆が張られ、ガレオン船は加速する。

 そして、私は海賊刀を用意し、乗込みの合図まで待機していた。

 すると、
“ドォーン”、とカルバリン砲が火を拭いた音が聞こえた。

 このガレオン船がキャラベルのマストや帆を攻撃しているのだ。
 乗込みまで、あと僅かということだ。

 船が停まった!
 マスケット銃の音が響く、撃ち合いが始まったのだ。
 そして、乗り込みが始まる。

  女海賊団は、キャラベル船に乗り込んで行った。

 三隻のうち、二隻は空だった。
「おかしいな。どう言うことだろうか?」

 最後の一隻に乗り込んだ際、エルメンヒルデが突っ込んで行った。
 それを見たクルー達が喚起したように、叫び、攻撃をし始めた。

 そして、後方からはお頭が、ゆっくり歩いてくるのは、いつもの通りだ。

 しかし、いつもと違ったことが起こった。
 先頭で闘っているエルメンヒルデの正面から武装した船員がなだれ込んできた。
 この船は、他の二隻の船員を集めていたのか?

 私は慌てて、エルメンヒルデの方へ助太刀に行こうとしたが、こちらにも船員がなだれ込み、助太刀に行けなくなった。
「エルメンヒルデッ!」

「ここは任せろッ」と、大柄のお頭が飛び込ん出来た。
「お頭!」
「早く!」

 お頭が船員を抑えているうちに、エルメンヒルデの援護に向かったが、一歩遅かった。

「うああぁ」
 エルメンヒルデは、背後から背中をナイフで切られてしまった。
『浅い。もう一撃を食らわなければ、命に別状はないはず』と思い、私はカットラスを高く頭上に上げ、エルメンヒルデを切った船員をたたき切った。

 その後、すぐにお頭が助けに来てくれたので、エルメンヒルデを助けることが出来たが、思ったより出血をしている。

「止血しないと」
「イリーゼ、お前はエルメンヒルデを連れて、船に戻れ!」

 それでは、護衛隊長の役目を果たしていないと思ったが、お頭の性格からして、従うしかないと思った。
「すぐに戻ります」とお頭に言うと、ガレオン船に向かい「予備兵を出して」と叫んだ。

「おや、イリー君、どうしたのん?」とエマ姉さんが、こちらをのぞき込んでいた。
「おぉ、イカンやないの。キーナ一人になっとるわ」というと、カットラスとダガーナイフで武装し、駆けて行った。

 しかし、簡単にはお頭は刈られなかった。
 船の上では、海賊刀。つまり、カットラスやダガーナイフで戦闘をするもの。
 あるいは、棒を使う。
 しかし、
「騎士たる者、剣で闘うのが礼儀」ということで、お頭は、ショートソードを帯剣している。

 しかし、ソードの定番である“ぶん殴る”という使い方はせず、刺突に使っているので、振り回すカットラスは遅れ、間合いの狭いナイフは投げる以外に仕えない。
 なので無双している。
 お頭の敵は棒だけのようだ。

 私は、医務室にエルメンヒルデを運んだ。
「先生、診てください」
「これは、すぐに止血をしないと!」というと、消毒用の酒を取り出している。
 エルメンヒルデが気になるが、お頭も気になる。
「持ち場に戻ります」と言い、私は駆けだした。

 ガレオン船の甲板に着くと、
「デカい女二人が暴れている」という声が聞え、「ホッ」とした。

 この二人は、お頭とエマ姉さんに違いないからだ。

 そして、相手を捕縛して、砲弾はすべて頂くか、捨てさせる。
 後で襲われでもされるとこちらが困るので。

 その後の女海賊団の開放の仕方は、こうしている。
 まず、捕縛、全員縄をかける。
 そして、一人はガレオン船に連れてくる。
 その一人は、自分達の船と自分の身体に縄をつないである。

 そして、海に飛び込ませる。
 自分の身体の縄を伝って、船に戻り、船員たちの縄を解くようにする。
 その間に、私たちは、さっさと立ち去るのだ。

 戦闘が終わり、生き延びたのだ。殺すこともない。
 また、私たちも襲われない。
 上手いやり方だと思う。

 さて、エルメンヒルデの様子を見に医務室に行った。
 既に、お頭が来ており、エルメンヒルデは背中を縫ったようだ。

「しばらくは痛むが、背中を上に寝てもらうよ」と先生が言っている。
「背骨は大丈夫なの?」とお頭が先生に聞いた。
「うん、後遺症にはならんよ」
「それは良かった」
「ところでキャプテン! 消毒用の酒をもっと運んでくれんか? ちょっと心もとないわ」
「先生の喉の消毒は、ほどほどにお願いするわ」

 いや、このおばはん、戦闘中に飲んでいたのか?
 私たちが命を張っているときに、消毒中だったのか?

「喉の消毒とは、上手いように言われたわ。わはは」

「イリーゼ。すまない。
 私が、もっと早く動いていればよかったものを。調子よく、カッコつけて歩いていたから、この様になってしまい。すまない」
「お頭のせいでは……
 それに、エルメンヒルデもわかっていたはずです。いつか、こんな闘い方をしていれば、こうなると」

 だから、私は、エルメンヒルデは、これに懲りて、無謀な戦い方を辞めるものだと思っていた。

 次回の女海賊団は、激しさを増すエルメンヒルデは……
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