【完結】永遠の海賊 エルメンヒルデ (海賊令嬢シリーズ3)

SHOTARO

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後書きに代えて ―永遠なれ、女海賊団―

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 天国への海原を進む白いガレオン船の船首に、ギターを持ったアンが曲を弾いていた。

 イリーゼは、椅子に座り、それを何となく見つめていたが、ある境界線を過ぎた辺りで、異変に気付いた。

「アン?」

 すると、アンの着ていた服は白に変わり、黒かった髪は金髪に、眼球の色も変わっていた。
 しかも、ギターはハープに変わっていた。

「アン、お前はまさか……」
「そうよ、まさかよ。イリーゼ」
「ふふッ、船首から魂が抜け出したのかい?」
「まあ、そんなところね」
「それより、そろそろ水先案内人が来る頃か!」

 というイリーゼの声を聞きながらも、アンはハープを弾いていた。

 しばらくして、辺りが白い光に包まれたと思いきや、光の中に人影を見付けた。

“コツ、コツ、コツ……”

 ブーツの音がする。
 このブーツの音は……

「な、懐かしい。あの二人だわ」
 イリーゼは立ち上がり、二人を迎えた。

「イリーゼッ!」
「イリー君やないの? 探したで!」

 すると、イリーゼの顔は、70歳代の顔でなく、あの時の顔に戻っていた。

「お頭に、エマ姉さんッ!」
「イリーゼ、ありがとう。孫の面倒を見てくれて、本当に、ありがとう。助かったよ」
「お頭!」
「うんうん、うちの商会もイリー君のおかげで繁盛しておるみたいだしね」
「エマ姉さん」と、イリーゼが言うと、エマリーはお乳の中にイリーゼの顔を埋めてしまった。
「あぁ、これも、懐かしいわ」


「「「イリーゼッ!」」」と、また、声がした。
「ローズマリーさん、ヤスミンさん、イライザさん」
「あぁ、イリーゼが最後だよ」

 そして、また、ブーツの音が、“コツ、コツ”と聞こえてきた。
 今度は誰だろうか?

「我が友、イリーゼ!」
「エルメンヒルデッ!」と言うと、二人は抱き合った。
「イリーゼ、ありがとう。いつも、私と母の墓を手入れしてくれて」
「お安い御用よ」



「さあ、ものども! 天国の門まで突っ走るぞ!」
「キーナ・コスペル海賊団が全員揃ったわ」
「よし! ジョリー・ロジャーを掲げろ!」
「「「うぉー」」」

「これが、我らの“自由と未来の扉を開く鍵”の旗だ」

 きっと、船首のローレライはハープを楽しげに弾いているのだろう。
 笑っているように感じる。


***


「クリスティアーネ、私は、イリーゼさんにお世話になったけど、恩返しの一つでも出来たのだろうか?」

「ミーナ……」

「それは、分からない。分からないけど、きっとイリーゼさんなら、こういうと思うわ。『恩返しなどするのでなく、次の世代の面倒を見てやれ』と。受けた恩は次の世代へ」
「そうね」
「受け継いで繋いでいきます。だから安らかに……」

 最後の女海賊、イリーゼ・アインホルン。
 ロッテルダムに睡る!

 あぁ、永遠なれ、女海賊団!

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