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1.事故紹介
3か月前
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みなさんは事故を起こした事があるでしょうか? なければ幸いです。私はーーいや、私たちは3か月前に事故を起こしました。以来、「2人で1人」と言う状態です。今の私の名はカミーヌ・荒木。フランス系日本人で、性別は女性、となっていますが…。
私たちは人間ではなくーーと言うよりも地球上の生物ですらなく、遠い星から来た異邦人です。私たちの目的は、はるか昔に地球を訪れた同胞が、どんな暮らしをしているのか、それを確認する事でした。私たちは宇宙船で訪問したのですが、運悪く隕石に衝突し、夜間の山中に不時着。さらに悪い事に、キャンプしていた若者たちが宇宙船の破片を受けて重体となったのでした。周りに望遠鏡があるので、天体観測をしていたと思います。
「どうする?」
仲間の1人がテレパシーで呼びかけます。その波長は、あまりにも露骨に狼狽えており、反っておかしかったほどでした。
「仕方が無いだろう。責任を取らなきゃ」
別の仲間が主張しますが、こちらも淡々としすぎて、凄惨な現場にはそぐいません。
そもそも、我々の種族はいわゆる人間型ではなく、不定形で、緑色のゼリーが必要に応じて触手を伸ばす、と言う形態でしたから、表情は読み取れません、少なくとも地球人には。でも、1人目が「青ざめて」いるのは判りましたし、2人目は平然としていました。そうそう、もちろん性別もありません。
「そう言う事だな」
3人目はブルブルと身体を震わせ、若者の一人に向かってスルスルと地を這い、進みます。他の仲間もそれに倣い、手近の若者に近づきました。もちろん私も。
私たちは不定形の身体を覆い被せ、若者の身体と一体化していきます。同化の能力は我々の特性ですが…。
「どうやら、この星に来た同胞たちは、退化してしまったようね」
私は同化しながら、「宿主」となった女性の記憶を探ります。私たちと同じような形態を持つのは「下等な」アメーバーぐらいで、特性に至ってはどの生物も持っていないようでした。
「その突起物は何だ?」
男性ーー甲田森夫と言う「男性」に同化中の仲間が、私の一部を指しました。そこは「胸」と呼ばれる部位で、宇宙船の破片で衣服ごと切れたため、素肌が露出しているのですが、私の緑が赤い傷跡を修復していく内に、一対の隆起を発生させたのです。
「乳房、と言うらしいわ。地球人の成人女性に見られる特徴ね」
私が宿主の記憶から答えます。
「おそろしく原始的な生き物、と言う訳ね」
別の仲間ーー宿主は真実井と言う女性ーーが、呆れたような声を出します。その顔は、事故で縞模様に傷が入っており、赤い横縞が緑に包まれて修復している最中でした。そして、自分の胸と私の胸を交互に見比べ、
「あなたの方がヴォリュームがあるわね。妬けるわ」
と言うや、緑の体組織を胸に集め、嵩増しを行っていきました。
「これで良いわ」
その顔に浮かぶ表情の満足気な事。
残りの2人も、それぞれ同化と修復を行いました。
「宿主の意識が戻らないのだが」
甲森ーー甲田
「テレパシーが使えないのか?」
彼はオロオロし、右往左往しています。
「宿主の意識が戻らないのは、死んでいるんじゃないかしら?」
彼女は続けました。
「そう思い込んでるだけでしょ。ショックが強すぎたのよ、心身ともにね」
私が自説を述べます。
「それに、能力が発揮できない」
甲森が狼狽していました。その様は本当に滑稽でしたが、他人事ではありません。
「どうやら、同化し過ぎて制約が掛かったようね」
私は、ふと夜空を見上げました。そこには三日月がかかっていました。
「この星では…と言うか、彼らは強い暗示を受けているようね。この星の衛星に」
事実、12日後の満月では、能力がほぼ元のまま行使できました。もちろん、宿主と離れると彼らが死ぬので、それは行いませんでしたが。
と言う事が有って間がないのに、またも私は事故を起こしてしまったのでした。しかも、交通事故を。
私たちは人間ではなくーーと言うよりも地球上の生物ですらなく、遠い星から来た異邦人です。私たちの目的は、はるか昔に地球を訪れた同胞が、どんな暮らしをしているのか、それを確認する事でした。私たちは宇宙船で訪問したのですが、運悪く隕石に衝突し、夜間の山中に不時着。さらに悪い事に、キャンプしていた若者たちが宇宙船の破片を受けて重体となったのでした。周りに望遠鏡があるので、天体観測をしていたと思います。
「どうする?」
仲間の1人がテレパシーで呼びかけます。その波長は、あまりにも露骨に狼狽えており、反っておかしかったほどでした。
「仕方が無いだろう。責任を取らなきゃ」
別の仲間が主張しますが、こちらも淡々としすぎて、凄惨な現場にはそぐいません。
そもそも、我々の種族はいわゆる人間型ではなく、不定形で、緑色のゼリーが必要に応じて触手を伸ばす、と言う形態でしたから、表情は読み取れません、少なくとも地球人には。でも、1人目が「青ざめて」いるのは判りましたし、2人目は平然としていました。そうそう、もちろん性別もありません。
「そう言う事だな」
3人目はブルブルと身体を震わせ、若者の一人に向かってスルスルと地を這い、進みます。他の仲間もそれに倣い、手近の若者に近づきました。もちろん私も。
私たちは不定形の身体を覆い被せ、若者の身体と一体化していきます。同化の能力は我々の特性ですが…。
「どうやら、この星に来た同胞たちは、退化してしまったようね」
私は同化しながら、「宿主」となった女性の記憶を探ります。私たちと同じような形態を持つのは「下等な」アメーバーぐらいで、特性に至ってはどの生物も持っていないようでした。
「その突起物は何だ?」
男性ーー甲田森夫と言う「男性」に同化中の仲間が、私の一部を指しました。そこは「胸」と呼ばれる部位で、宇宙船の破片で衣服ごと切れたため、素肌が露出しているのですが、私の緑が赤い傷跡を修復していく内に、一対の隆起を発生させたのです。
「乳房、と言うらしいわ。地球人の成人女性に見られる特徴ね」
私が宿主の記憶から答えます。
「おそろしく原始的な生き物、と言う訳ね」
別の仲間ーー宿主は真実井と言う女性ーーが、呆れたような声を出します。その顔は、事故で縞模様に傷が入っており、赤い横縞が緑に包まれて修復している最中でした。そして、自分の胸と私の胸を交互に見比べ、
「あなたの方がヴォリュームがあるわね。妬けるわ」
と言うや、緑の体組織を胸に集め、嵩増しを行っていきました。
「これで良いわ」
その顔に浮かぶ表情の満足気な事。
残りの2人も、それぞれ同化と修復を行いました。
「宿主の意識が戻らないのだが」
甲森ーー甲田
「テレパシーが使えないのか?」
彼はオロオロし、右往左往しています。
「宿主の意識が戻らないのは、死んでいるんじゃないかしら?」
彼女は続けました。
「そう思い込んでるだけでしょ。ショックが強すぎたのよ、心身ともにね」
私が自説を述べます。
「それに、能力が発揮できない」
甲森が狼狽していました。その様は本当に滑稽でしたが、他人事ではありません。
「どうやら、同化し過ぎて制約が掛かったようね」
私は、ふと夜空を見上げました。そこには三日月がかかっていました。
「この星では…と言うか、彼らは強い暗示を受けているようね。この星の衛星に」
事実、12日後の満月では、能力がほぼ元のまま行使できました。もちろん、宿主と離れると彼らが死ぬので、それは行いませんでしたが。
と言う事が有って間がないのに、またも私は事故を起こしてしまったのでした。しかも、交通事故を。
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