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第26話 侯爵邸
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ジェストルド伯爵家の馬車は、外観はシンプルではあったが、家紋が入り、厳かな雰囲気で格式が高そうだ。さすが、代々国を支えてきた騎士団に名を連ねてきた家門なだけはある。
馬車は王都の街中を走り、貴族街へと進んで行く。貴族街は塀で囲まれてあり、平民などは簡単に入ることは叶わない。門には兵が警備をしてあり、面会申請の許可が下りている者しか、貴族街自体にすら入ることは出来ない。
平民区、商業区と抜けて行き、貴族区へと進んで行く。門で馬車が止まると、門兵から御者が声を掛けられているのが分かる。そしてしばらくすると、馬車の扉が叩かれる。
「失礼致します。確認のためお顔を拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」
外からそう声を掛けられ、ノアが窓のカーテンを開き、外に立つ門兵に顔を見せる。
「ノア・ジェストルドだ。ソルファス侯爵閣下へ面会申請をしている」
「お聞きしております。お手数をおかけ致しました。どうぞ、お通りください」
門兵は私に気付くと、にこやかにお辞儀をし、門へと戻って行った。門兵は貴族街へと続く扉を開き、馬車は先へと進んだ。門を抜けしばらく走って行くと、明らかに雰囲気が平民区や商業区とは違って来る。街中を出歩くひとなどは見受けられず、静まり返ってはいるが、道幅も広く、どの通りも明るく綺麗に整備されてある。そして奥まって行くにつれ、次第に屋敷の規模も大きくなってくる。
「奥になるにつれて身分が高い貴族家の屋敷があるんだっけ?」
窓から外を眺めながらノアに聞いた。ノアも同様に外を眺めつつ頷いた。
「あぁ、王都に居を構える貴族たちの位順に大体並んでいるな。一番奥に公爵家と侯爵家、それから辺境伯家と伯爵家が続いているな」
今まで見たこともないような巨大な屋敷、もはや城ではないかと思うほどの広大な敷地と屋敷が広がり唖然としてしまう。
そして今からそんな場所へと乗り込んで行くのだ、と思うと身震いをする。だ、大丈夫かしら……なにか無礼なことをしてしまわないか心配になる……。ごくりと生唾を飲み込んだ。
「俺もソルファス侯爵閣下には初めてお会いするから緊張する……」
ノアも若干不安そうな顔となり、お互い顔を見合わせ苦笑した。
ソルファス侯爵家の屋敷は巨大で豪華ではあったが、屋敷前には巨大な庭園が広がりとても美しい。敷地は塀で囲まれてあり、さらにソルファス侯爵家の騎士だろうか、門に見張りの騎士が立っていた。貴族街へと入るときの門兵から連絡が入っていたのか、騎士は一応名と顔を確認したが、すんなりと通してもらえた。
美しい庭園を過ぎ、屋敷の目前まで馬車が向かうと、そこに使用人たちが待ち構えていた。馬車が止まったと同時に御者が声を掛け、扉を開ける。ノアは先に馬車を降り、そして私に手を差し伸べた。
私はノアの手を取り、ソルファス侯爵家の屋敷前へと降り立った。見上げる屋敷は巨大で、さすがというかなんというか、貧乏貴族である私には到底お目にかかることはないだろう、という場違い感が半端なく、居心地の悪さを感じ苦笑する。
「お待ちしておりました。ジェストルド伯爵様」
「ノア・ジェストルドと申します。本日は侯爵閣下にお時間を取っていただき感謝しております」
黒い燕尾服を着こなした、灰色の髪をビシッと綺麗に整えた男性。背も高く、姿勢よくこちらに頭を下げた執事長らしき人が、にこやかに挨拶をする。
ノアはそれに応えるように名乗った。
「私はソルファス家で執事長をさせていただいております、ロナンと申します。ご案内致しますのでこちらへどうぞ」
ロナンはそう言い、頭を下げ促すと、私たちはそれに続いた。
屋敷内は広く豪華で、長く続く廊下には絵画が飾られ、天井にはシャンデリアが吊られてあった。一生私には関わりがないだろう侯爵家。その豪華な屋敷に圧倒される。思わずキョロキョロ周りを見回しそうになり、ノアに苦笑されつつ、必死に耐える。緊張で吐きそうだわ……。
ロナンの後に続き連れられたのは植物園? と思えるほどの植物が多く覗き見えるガラス張りの建物だった。
「これって……」
思わず口から漏れ出た言葉にロナンが入り口で立ち止まりこちらに振り向いた。
「ここは植物園として管理してありますが、中央広場にはテーブルが用意してあり、応接室としてもよく使用されるのです」
にこりと優し気に笑ったロナンがそう説明し、屋敷内から繋がる植物園の扉を開け、中へと促した。巨大な植物園は見たことがないような様々な植物が植えられてあり、温室のように気温が一定に保たれてあった。
色とりどりの花が咲き乱れ、とても美しい。風もなく太陽の光が降り注ぐ穏やかな気温の園内は、とても心地好く、のんびりと日向ぼっこでもしていると寝てしまいそうだな、なんてことを考えながらノアの後に続く。
しばらく歩いて行くと、開けた場所へと到着する。円形に広がったその場所は、周りを花で囲まれ、中央にはテーブル、そしてそこに座るひとりの男性の姿。
その男性がこちらに気付くと、顔を向け微笑んだ。そして立ち上がりこちらに向かって来る。
「ようこそ我が屋敷へ。マシュー・ソルファスだ」
菫色の髪に金色の瞳。綺麗に短く整えられた髪に、優し気な目元は目尻に皺が刻まれていた。やつれたような、疲れたようなそんな顔には見えるが、しかし、立ち上がり、こちらに向かう姿は、スラッとした体躯に上品な仕草。洗練された身のこなしでにこやかに手を伸ばす姿は貴族然としていて、私はただ見惚れていた。
馬車は王都の街中を走り、貴族街へと進んで行く。貴族街は塀で囲まれてあり、平民などは簡単に入ることは叶わない。門には兵が警備をしてあり、面会申請の許可が下りている者しか、貴族街自体にすら入ることは出来ない。
平民区、商業区と抜けて行き、貴族区へと進んで行く。門で馬車が止まると、門兵から御者が声を掛けられているのが分かる。そしてしばらくすると、馬車の扉が叩かれる。
「失礼致します。確認のためお顔を拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」
外からそう声を掛けられ、ノアが窓のカーテンを開き、外に立つ門兵に顔を見せる。
「ノア・ジェストルドだ。ソルファス侯爵閣下へ面会申請をしている」
「お聞きしております。お手数をおかけ致しました。どうぞ、お通りください」
門兵は私に気付くと、にこやかにお辞儀をし、門へと戻って行った。門兵は貴族街へと続く扉を開き、馬車は先へと進んだ。門を抜けしばらく走って行くと、明らかに雰囲気が平民区や商業区とは違って来る。街中を出歩くひとなどは見受けられず、静まり返ってはいるが、道幅も広く、どの通りも明るく綺麗に整備されてある。そして奥まって行くにつれ、次第に屋敷の規模も大きくなってくる。
「奥になるにつれて身分が高い貴族家の屋敷があるんだっけ?」
窓から外を眺めながらノアに聞いた。ノアも同様に外を眺めつつ頷いた。
「あぁ、王都に居を構える貴族たちの位順に大体並んでいるな。一番奥に公爵家と侯爵家、それから辺境伯家と伯爵家が続いているな」
今まで見たこともないような巨大な屋敷、もはや城ではないかと思うほどの広大な敷地と屋敷が広がり唖然としてしまう。
そして今からそんな場所へと乗り込んで行くのだ、と思うと身震いをする。だ、大丈夫かしら……なにか無礼なことをしてしまわないか心配になる……。ごくりと生唾を飲み込んだ。
「俺もソルファス侯爵閣下には初めてお会いするから緊張する……」
ノアも若干不安そうな顔となり、お互い顔を見合わせ苦笑した。
ソルファス侯爵家の屋敷は巨大で豪華ではあったが、屋敷前には巨大な庭園が広がりとても美しい。敷地は塀で囲まれてあり、さらにソルファス侯爵家の騎士だろうか、門に見張りの騎士が立っていた。貴族街へと入るときの門兵から連絡が入っていたのか、騎士は一応名と顔を確認したが、すんなりと通してもらえた。
美しい庭園を過ぎ、屋敷の目前まで馬車が向かうと、そこに使用人たちが待ち構えていた。馬車が止まったと同時に御者が声を掛け、扉を開ける。ノアは先に馬車を降り、そして私に手を差し伸べた。
私はノアの手を取り、ソルファス侯爵家の屋敷前へと降り立った。見上げる屋敷は巨大で、さすがというかなんというか、貧乏貴族である私には到底お目にかかることはないだろう、という場違い感が半端なく、居心地の悪さを感じ苦笑する。
「お待ちしておりました。ジェストルド伯爵様」
「ノア・ジェストルドと申します。本日は侯爵閣下にお時間を取っていただき感謝しております」
黒い燕尾服を着こなした、灰色の髪をビシッと綺麗に整えた男性。背も高く、姿勢よくこちらに頭を下げた執事長らしき人が、にこやかに挨拶をする。
ノアはそれに応えるように名乗った。
「私はソルファス家で執事長をさせていただいております、ロナンと申します。ご案内致しますのでこちらへどうぞ」
ロナンはそう言い、頭を下げ促すと、私たちはそれに続いた。
屋敷内は広く豪華で、長く続く廊下には絵画が飾られ、天井にはシャンデリアが吊られてあった。一生私には関わりがないだろう侯爵家。その豪華な屋敷に圧倒される。思わずキョロキョロ周りを見回しそうになり、ノアに苦笑されつつ、必死に耐える。緊張で吐きそうだわ……。
ロナンの後に続き連れられたのは植物園? と思えるほどの植物が多く覗き見えるガラス張りの建物だった。
「これって……」
思わず口から漏れ出た言葉にロナンが入り口で立ち止まりこちらに振り向いた。
「ここは植物園として管理してありますが、中央広場にはテーブルが用意してあり、応接室としてもよく使用されるのです」
にこりと優し気に笑ったロナンがそう説明し、屋敷内から繋がる植物園の扉を開け、中へと促した。巨大な植物園は見たことがないような様々な植物が植えられてあり、温室のように気温が一定に保たれてあった。
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しばらく歩いて行くと、開けた場所へと到着する。円形に広がったその場所は、周りを花で囲まれ、中央にはテーブル、そしてそこに座るひとりの男性の姿。
その男性がこちらに気付くと、顔を向け微笑んだ。そして立ち上がりこちらに向かって来る。
「ようこそ我が屋敷へ。マシュー・ソルファスだ」
菫色の髪に金色の瞳。綺麗に短く整えられた髪に、優し気な目元は目尻に皺が刻まれていた。やつれたような、疲れたようなそんな顔には見えるが、しかし、立ち上がり、こちらに向かう姿は、スラッとした体躯に上品な仕草。洗練された身のこなしでにこやかに手を伸ばす姿は貴族然としていて、私はただ見惚れていた。
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