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第29話 お説教
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同じ問いを二度も投げ掛けられ、アシェルト様の圧を感じる。言い訳や言い逃れは通用しない。「逃がさない」というアシェルト様の鋭い視線。
「あ、あの……す、すみません……とりあえず着替えて来ても良いですか?」
「…………分かった。キッチンで待ってるから」
「は、はい……」
怒っているような鋭い視線からようやく解放され、自身の部屋へと入ると深い溜め息が漏れる。
あぁ、逃れられない……。待っていると言われたら行くしかない……。明らかに怒っていそうな表情だった……。ど、どうしよう……でも、もう……隠し通すなんて無理……だよね……。
あんなドレスを着て出て行ったということがバレている以上、どこへ行ったのかは言うしかない。嘘を吐いたところできっとすぐにバレるだろう。そもそもアシェルト様に嘘が通用するとも思えない。きっと顔に出てしまい、すぐに見透かされると思う……。だから嘘を吐いて言い訳をしたところで無駄な労力のような気がする。はぁぁ。
もそもそと鈍い動きのまま、ドレスから普段着に着替え終え、キッチンへと向かいたくない思いを必死に抑え込み、重い足取りで向かう。
アシェルト様にラシャ様の婚約話があったことを伝えても良いのだろうか。ラシャ様が隠していたことを私の口から伝えて良いのだろうか……。それが怖くもなる。私のせいで、またアシェルト様を傷付けてしまうかもしれない。それが怖い。しかも、その相手は……
そんなことを悶々と考えながら、あっという間にキッチンへとたどり着いてしまい、椅子に座ったアシェルト様の背中が見えた瞬間、一気に緊張で身体が強張った。気付かれないようにゴクリと生唾を飲み込み、息を潜める。
しかし、そんな緊張が余計に気配として伝わったのか、アシェルト様は私のほうへと振り向いた。
「ルフィル、座って」
「は、はい」
真っ直ぐに見据えられ、ギクリと身体が強張るが、静かに深呼吸をしてアシェルト様の向かいへと座る。そして膝の上に置いた手をグッと握り締める。
アシェルト様はそんな私の一挙手一投足を見逃すまいとばかりに、じぃっと目で追われ、余計に緊張してしまった。
「それで? 一体どこに行っていたの? あのドレス……あれはノア君からもらったの?」
「え!? ド、ドレスですか!?」
あれは自分で持っていた、と言ったと思うんだけど……。言ったよね? う、うん、言ったと思う! な、なんで今さらそんなこと聞くの? こ、これは、本当のことを言うべき!? あのときは嘘を吐いてしまった……だ、だってノアといえど、男の子からドレスを贈られた、なんて言い辛い! いや、まあアシェルト様にしてみたらそんなことどうでも良いことなんだろうけど……ん? どうでも良いことだと思うのに、なんでそんなこと聞くのかしら……。
「あ、その……私が全くドレスを持っていなかったので……その……ノアが贈ってくれました……自分で持っていた、なんて嘘吐いてすみません……」
アシェルト様の視線が痛くて、結局本当のことを口にするはめに……こんなことなら最初から言えば良かった……。私、ただの嘘つきじゃないの……。
「…………あのドレス……公の場では着ちゃ駄目だよ?」
「え?」
「もし公の場でドレスが必要になることがあるなら僕が贈るから」
「え!? そ、それは……どういう……」
なんだか不機嫌な声音で言われ、怒っている……のだろうということは分かるんだけど……。
ど、どういう意味!? ノアから贈られたドレスを着ちゃ駄目!? 必要なときはアシェルト様が贈ってくれるの!? ん? どういうこと?
「あのドレスはノア君の……いや、まあルフィルが気付いていないなら、それはもういいよ」
視線を外し、なんだか呆れたように小さく溜め息を吐かれる。そしてブツブツと「気付かれても厄介だし」とかなんとか聞こえたが……なんなのかしら……ノアの、って? ノアが贈ってくれたといっても友達として、ということはお互い念押ししたし……。
なんだかよく分からず悶々と考えていると、アシェルト様は再び視線を戻し、真っ直ぐにじぃっと見詰められ、ギクリとたじろいだ。アシェルト様の綺麗な水色の瞳に吸い込まれそう。思わず目が泳ぎそうになる。
「それで? どこへ行っていたの? ノア君とふたりでなにをコソコソとしているの? 僕には全て報告するように言っていたよね? それが、君がラシャの事故について調べることに対しての条件だったはずだよ?」
「は、はい……すみません……」
アシェルト様は真っ直ぐにこちらを見詰めたまま、睨むような鋭い視線を向ける。そしてその表情は明らかな怒りを感じる。でも……この怒りは……きっと私を心配してくれているから……。私が危ない目に遭うかもしれないことを心配してくれているから。そう思えた。
私を心配して怒ってくれている。それがなんだか嬉しく思ってしまった。アシェルト様へ報告するという約束を破って、勝手に調べているくせに……そのせいでアシェルト様に心配をかけてしまっているのに……私を心配してくれているということがこれほど嬉しいことだとは。
以前、アシェルト様の研究を勝手に見てしまったときに怒られた拒絶ではない。私を受け入れてくれているからこその怒りなのだと分かるから……だから嬉しいのだ。
「なに笑ってるの? 僕は怒ってるんだけど」
「え!?」
わ、私、笑ってた!?
慌てて自身の頬を両手で包み俯いた。ま、まずい……にやけていたのかもしれない。怒られているのににやけるとか最低じゃないのよ。
「す、すみません……アシェルト様が怒ってくれているのが嬉しくて……」
思わず馬鹿正直に言ってしまった……。怒られて嬉しいとか頭おかしい子だと思われるかしら……。
俯いたままチラリと上目遣いにアシェルト様の顔を見ると、目を見開き驚いた顔をしていた。そして、片手で顔を覆うと「はぁぁあ」と大きな溜め息を吐いた。
「やっぱり君には敵わないな」
溜め息交じりにそう呟いたアシェルト様は顔から手を離すと、苦笑しながら私を見た。その顔からは怒りは消え、優しい目を向けてくれていた。
「あ、あの……す、すみません……とりあえず着替えて来ても良いですか?」
「…………分かった。キッチンで待ってるから」
「は、はい……」
怒っているような鋭い視線からようやく解放され、自身の部屋へと入ると深い溜め息が漏れる。
あぁ、逃れられない……。待っていると言われたら行くしかない……。明らかに怒っていそうな表情だった……。ど、どうしよう……でも、もう……隠し通すなんて無理……だよね……。
あんなドレスを着て出て行ったということがバレている以上、どこへ行ったのかは言うしかない。嘘を吐いたところできっとすぐにバレるだろう。そもそもアシェルト様に嘘が通用するとも思えない。きっと顔に出てしまい、すぐに見透かされると思う……。だから嘘を吐いて言い訳をしたところで無駄な労力のような気がする。はぁぁ。
もそもそと鈍い動きのまま、ドレスから普段着に着替え終え、キッチンへと向かいたくない思いを必死に抑え込み、重い足取りで向かう。
アシェルト様にラシャ様の婚約話があったことを伝えても良いのだろうか。ラシャ様が隠していたことを私の口から伝えて良いのだろうか……。それが怖くもなる。私のせいで、またアシェルト様を傷付けてしまうかもしれない。それが怖い。しかも、その相手は……
そんなことを悶々と考えながら、あっという間にキッチンへとたどり着いてしまい、椅子に座ったアシェルト様の背中が見えた瞬間、一気に緊張で身体が強張った。気付かれないようにゴクリと生唾を飲み込み、息を潜める。
しかし、そんな緊張が余計に気配として伝わったのか、アシェルト様は私のほうへと振り向いた。
「ルフィル、座って」
「は、はい」
真っ直ぐに見据えられ、ギクリと身体が強張るが、静かに深呼吸をしてアシェルト様の向かいへと座る。そして膝の上に置いた手をグッと握り締める。
アシェルト様はそんな私の一挙手一投足を見逃すまいとばかりに、じぃっと目で追われ、余計に緊張してしまった。
「それで? 一体どこに行っていたの? あのドレス……あれはノア君からもらったの?」
「え!? ド、ドレスですか!?」
あれは自分で持っていた、と言ったと思うんだけど……。言ったよね? う、うん、言ったと思う! な、なんで今さらそんなこと聞くの? こ、これは、本当のことを言うべき!? あのときは嘘を吐いてしまった……だ、だってノアといえど、男の子からドレスを贈られた、なんて言い辛い! いや、まあアシェルト様にしてみたらそんなことどうでも良いことなんだろうけど……ん? どうでも良いことだと思うのに、なんでそんなこと聞くのかしら……。
「あ、その……私が全くドレスを持っていなかったので……その……ノアが贈ってくれました……自分で持っていた、なんて嘘吐いてすみません……」
アシェルト様の視線が痛くて、結局本当のことを口にするはめに……こんなことなら最初から言えば良かった……。私、ただの嘘つきじゃないの……。
「…………あのドレス……公の場では着ちゃ駄目だよ?」
「え?」
「もし公の場でドレスが必要になることがあるなら僕が贈るから」
「え!? そ、それは……どういう……」
なんだか不機嫌な声音で言われ、怒っている……のだろうということは分かるんだけど……。
ど、どういう意味!? ノアから贈られたドレスを着ちゃ駄目!? 必要なときはアシェルト様が贈ってくれるの!? ん? どういうこと?
「あのドレスはノア君の……いや、まあルフィルが気付いていないなら、それはもういいよ」
視線を外し、なんだか呆れたように小さく溜め息を吐かれる。そしてブツブツと「気付かれても厄介だし」とかなんとか聞こえたが……なんなのかしら……ノアの、って? ノアが贈ってくれたといっても友達として、ということはお互い念押ししたし……。
なんだかよく分からず悶々と考えていると、アシェルト様は再び視線を戻し、真っ直ぐにじぃっと見詰められ、ギクリとたじろいだ。アシェルト様の綺麗な水色の瞳に吸い込まれそう。思わず目が泳ぎそうになる。
「それで? どこへ行っていたの? ノア君とふたりでなにをコソコソとしているの? 僕には全て報告するように言っていたよね? それが、君がラシャの事故について調べることに対しての条件だったはずだよ?」
「は、はい……すみません……」
アシェルト様は真っ直ぐにこちらを見詰めたまま、睨むような鋭い視線を向ける。そしてその表情は明らかな怒りを感じる。でも……この怒りは……きっと私を心配してくれているから……。私が危ない目に遭うかもしれないことを心配してくれているから。そう思えた。
私を心配して怒ってくれている。それがなんだか嬉しく思ってしまった。アシェルト様へ報告するという約束を破って、勝手に調べているくせに……そのせいでアシェルト様に心配をかけてしまっているのに……私を心配してくれているということがこれほど嬉しいことだとは。
以前、アシェルト様の研究を勝手に見てしまったときに怒られた拒絶ではない。私を受け入れてくれているからこその怒りなのだと分かるから……だから嬉しいのだ。
「なに笑ってるの? 僕は怒ってるんだけど」
「え!?」
わ、私、笑ってた!?
慌てて自身の頬を両手で包み俯いた。ま、まずい……にやけていたのかもしれない。怒られているのににやけるとか最低じゃないのよ。
「す、すみません……アシェルト様が怒ってくれているのが嬉しくて……」
思わず馬鹿正直に言ってしまった……。怒られて嬉しいとか頭おかしい子だと思われるかしら……。
俯いたままチラリと上目遣いにアシェルト様の顔を見ると、目を見開き驚いた顔をしていた。そして、片手で顔を覆うと「はぁぁあ」と大きな溜め息を吐いた。
「やっぱり君には敵わないな」
溜め息交じりにそう呟いたアシェルト様は顔から手を離すと、苦笑しながら私を見た。その顔からは怒りは消え、優しい目を向けてくれていた。
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