【完結】異世界で勇者になりましたが引きこもります

樹結理(きゆり)

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四章 王都

第二十九話

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 翌朝、朝食を取り準備を整えると、フィルさんとメルダさんが見送りに来てくれた。

「じゃあユウ、気を付けていっておいで!」
「いってらっしゃい、ユウ」

 フィルさん、メルダさん、マリーさん、オーグさんに見送られながら、荷物を抱え横にはルナとオブと一緒にキシュクの街を出た。

「さて、街の外だし元に戻って良いよ」

 ルナとオブは元の姿に戻った。

『王都とやらには歩いて行くのか?』
「うーん、そうだね、急ぐ旅でもないしのんびり行こうか」
『我の背に乗せても良いが』
「ルナの背中?」
『あぁ、飛ぶことは出来ないが、それなりな速さでは走れるぞ』
「そうなんだ、じゃあ一度試してみようかな」

 では、とルナの背中によじ登る。

『では、行くぞ』

 そう言ったかと思うと、物凄いスピードで駆け出した。岩や木々が障害物になっても、飛んでいるのかと思うくらいのジャンプ力で空を駆けているようだ。

『まってよ~』

 オブがルナのスピードに付いて行けない。必死に羽ばたいているが子供だからか、全く追い付けない。

「ルナ、止まって。オブが付いて来れない」

 ルナは静かにジャンプした先に降りた。重力がないのかと思うほど、ふんわりと着地した。
 あれだけのスピードなのに、乗り心地が悪くないのは保護魔法だけのせいでなく、ルナの優雅な身のこなしのせいだろう。

「ルナに乗るのは気持ち良かったけど、オブが付いて来れるようになるまでは歩きだね」
『そのようだな』

 オブはぜぃぜぃ言いながら追い付いて来た。

「ごめんね、オブ。休憩したら歩いて行こう」
『ううん、ぼくもごめんね。はやくいちにんまえになるからね』

 健気だなぁ、とオブを撫でた。ルナとオブが目立つから本来の道からは逸れて歩いた。
 途中で何度か休憩しつつ夕方には王都エルザードに着いた。

「ここかな。ルナ、オブ、また小さくなってね」

 小さくなったルナとオブを抱っこしながらエルザードに入る。

「もう夕方だしとりあえず先に宿屋を探そうか。散策はまた明日だね」

 王都はやはりキシュクとは比べ物にならないくらい大きい街だった。一日散策しても全部を見ては回れないだろう。
 気長に行くか~、と、ぶらぶらしながら宿屋を探した。

『ユウ、抱えていては重いだろう。我は歩いて着いて行くぞ』
「ん? あぁ、大丈夫! 出発前に身体能力強化も魔導具に附与しといたから」

 二人を抱っこしているとそれなりに重いな、と思ったので、昨晩身体能力強化を附与させておいたのだ。それのおかげで力が強くなっているのか、初めて二人を抱っこしたときよりも、全くと言って良い程重さを感じない。

「だから大丈夫だよ! もふもふぷにぷには譲れない!」

 力強く言い切ったらルナが苦笑している気がした。顔は見えなかったけど。

 宿屋を見付け、部屋を確保してから夕食を食べに食事処へ。宿屋のすぐ隣にあった。商売上手だね。

 店の人にルナとオブも一緒に入って良いか確認して席に着いた。
 一日の道程だったがそれなりに疲れた。座った途端に溜め息が……。ルナとオブは床に伏せている。

『疲れたか?』
「え? まあうん、そうだね。初めて遠出でキシュク以外の所に来たし」
『街の外での移動は歩いているときでも我の背に乗っていれば良い』
「フフ、ありがとう」

 ルナは魔獣なのに優しいな。やはり昔従属契約をしていたからなのかな。

「ルナの昔の契約者ってどんな人だったの?」
『契約者か。遥か彼方昔の勇者だった。契約したときは勇者だとは知らず知り合ったが、いつしか魔王を倒して勇者と呼ばれていた』
「勇者……」
『奴もユウと同じで最初から我と言葉を交わしていた。ユウと同じで面白い奴だった』
「面白いって!」
『ハッハッハ』

 ルナは楽しそうに笑った。以前の契約者を思い出しているのだろうか。その人のこと大好きだったんだなぁ、ちょっと嫉妬。私ももっと仲良くなりたいな。

「その人とは魔王を倒した後もずっと一緒にいたの?」
『いや、魔王を倒した後はある日突然消えた』
「え!? 消えた?」
『あぁ、全く気配を感じることが出来なくなった』
「そんな……」

 先程まで楽しそうだったルナの表情が無になった気がした。
 大好きだった人が突然いなくなった、辛かっただろうな。

『ユウが気に病む必要はない。どのみち人間のほうが先に寿命が尽きるのだ。いつかは別れが来る。それはユウとも、だ』

 ルナは真っ直ぐな瞳を向け言った。

「そうだね。私と契約してくれてありがとうね」

 前の人がどういった理由で消えてしまったのか分からないが、私は後悔することなく、ルナと共に過ごしたいな、と思った。

 オブがのけ者にしないで、とばかりに膝に乗って来た。

「フフ、オブも契約してくれてありがとう」

 撫でるとオブは嬉しそうにした。
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