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四章 王都
第三十一話
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中に入るとひんやりとした空気が流れていた。
静かだ。人気もなく静まり返っている。
とてつもない本の量だ。
見渡す限り本棚が並ぶ。三階建ての高さがありそうなくらいの本棚が敷き詰められている。
入り口で魔法に関する本が置いてあるところを聞き、そこへ向かう。何冊か目星を付け、側にある机で読む。
こちらに来てから言葉にも文字にも困ったことはない。不思議だが日本語で書いてある。変換されてる? 本来どんな字なんだろうか。
魔導書には初歩的な魔法が載っているものから、普通の人間では使えないであろう、高位魔法が載っているものもあった。
中でもその最高位魔法というものがあるらしい。
勇者が使う、勇者にしか使えない聖魔法。
普通の治癒魔法と異なり、聖魔法は死に至りそうな程の大怪我をした人間を完全回復出来たり、死んだ人間も蘇生出来るらしい。
さらに魔物を滅する力。闘って倒すというより、消滅させるようだ。
ついでに勇者について載っている本を探した。
探したが、ほとんど見付からない。精々この世界の人たちが子供の頃に昔話で聞いたと教えてもらった話が載っているくらいだ。
世界に魔物が段々と増えてくると魔王が現れ、人間が脅かされていく。魔王が現れるとどこからともなく勇者が現れ、魔王を倒してくれる。すると魔物も消え去り人間たちに再び平和が訪れる。
百年に一度くらいの周期で同じようなことが起こる、とされている。
現在は前の勇者が魔王を倒してから九十年くらい経っているようだ。
「うーん、勇者については今まで聞いたことと一緒だしよく分からないな」
一先ず勇者の件は置いといて、聖魔法についてルナに聞いてみようかな。
「ルナ、聞こえる?」
『あ、あぁ、き、聞こえるが……』
「? 勇者の聖魔法について聞きたいんだけど……」
『あ、あぁ、何だ?』
「? どうかした?」
何だか歯切れが悪い。今までのルナと様子が違う。
『いや、何だか、人間に囲まれていて困っている……』
「えっ!」
『蹴散らしても良いか?』
「いやいやいや! ダメ! それはダメ! すぐ行くから待ってて!」
『分かった……早く来てくれ』
あのルナがあんなに困った声って。
慌てて本を片付け図書館を出る。ルナの気配を探りながら、その方向へ走る。
必死に走ったその先に人集りが……しかも女の人ばかり……。
あぁ、やっぱり。
人集りの中心に頭一つ飛び出てルナの顔が見えた。詰め寄られて困った顔。その横には怯えたオブ。
「あぁ、どうしよ……」
苦笑しながらしばらく悩む。あの人集りに割り込んでいく勇気がない。
しばらく悩んでいると、後ろから肩を叩かれた。
「あの美形のお兄さん、君の連れかい?」
ディルアスくらいの歳、背格好の男性が声をかけてきた。
青年は茶色の髪と瞳で目立たない色合いだったが、それでも顔はやっぱりイケメン! いやもう何かイケメン見すぎて見慣れて来たよ? 何なのよねぇ。
「はあ、連れです」
どうしたら良いか分からず、気の抜けた返事をしてしまった。
「俺が連れて来てやるよ」
そう言うと、その青年は人集りに入って行った。
「ちょっとごめんよ~、お嬢さんごめんね~、はい、この男、俺の連れ! 良い男でしょ? 俺も!」
周りの女性たちが笑った。
『お前は誰だ』
「シッ。あっちであんたのお嬢さんが待ってるぜ。黙って付いて来い」
ルナは不審そうにしたが、青年はルナに耳打ちした。
「ちょっともう行かないと、残念だけどお嬢さんたちまたね!」
そう言うと颯爽とルナを連れ出してくれた。
そのまま私の手も引き、纏めて建物の裏に入った。
「ルナもオブも大丈夫!? ありがとうございます」
怯えたオブをルナの肩から下ろし抱き締めた。
『あぁ、ユウ、すまない』
「いや~、男前は大変だな!」
青年は笑いながら言った。
「そっちの黒いの、もしかしてドラゴンか!?」
「!!」
慌ててオブを背に隠した。ルナも私と青年の間に割って入り、背に庇った。
『お前は誰だ』
「そんなに警戒しないでよ。俺はレン。ドラゴンは珍しいから興味あっただけで、何にもしないよ」
青年はレンと言った。レンは両手を挙げ、降参のポーズをした。
「ほんと何にもしないから心配しないで! 次会うことがあれば、ドラゴン見せてくれたら嬉しいけど! じゃあまたね~」
そう言うとレンは片手をヒラヒラ振って去って行った。
「またね、って」
もう会うことはないと思うが。
「あぁ、でもやっぱりルナの人間化は危険! 仔犬化!」
『なぜ囲まれるのか分からん』
納得いかないルナは渋々仔犬化に。
『仔犬ではない』
「分かってるよ」
拗ねたルナに笑いながらなでなでした。
さてと、今日はこの後どうしようかな、と二人を抱き上げた。
静かだ。人気もなく静まり返っている。
とてつもない本の量だ。
見渡す限り本棚が並ぶ。三階建ての高さがありそうなくらいの本棚が敷き詰められている。
入り口で魔法に関する本が置いてあるところを聞き、そこへ向かう。何冊か目星を付け、側にある机で読む。
こちらに来てから言葉にも文字にも困ったことはない。不思議だが日本語で書いてある。変換されてる? 本来どんな字なんだろうか。
魔導書には初歩的な魔法が載っているものから、普通の人間では使えないであろう、高位魔法が載っているものもあった。
中でもその最高位魔法というものがあるらしい。
勇者が使う、勇者にしか使えない聖魔法。
普通の治癒魔法と異なり、聖魔法は死に至りそうな程の大怪我をした人間を完全回復出来たり、死んだ人間も蘇生出来るらしい。
さらに魔物を滅する力。闘って倒すというより、消滅させるようだ。
ついでに勇者について載っている本を探した。
探したが、ほとんど見付からない。精々この世界の人たちが子供の頃に昔話で聞いたと教えてもらった話が載っているくらいだ。
世界に魔物が段々と増えてくると魔王が現れ、人間が脅かされていく。魔王が現れるとどこからともなく勇者が現れ、魔王を倒してくれる。すると魔物も消え去り人間たちに再び平和が訪れる。
百年に一度くらいの周期で同じようなことが起こる、とされている。
現在は前の勇者が魔王を倒してから九十年くらい経っているようだ。
「うーん、勇者については今まで聞いたことと一緒だしよく分からないな」
一先ず勇者の件は置いといて、聖魔法についてルナに聞いてみようかな。
「ルナ、聞こえる?」
『あ、あぁ、き、聞こえるが……』
「? 勇者の聖魔法について聞きたいんだけど……」
『あ、あぁ、何だ?』
「? どうかした?」
何だか歯切れが悪い。今までのルナと様子が違う。
『いや、何だか、人間に囲まれていて困っている……』
「えっ!」
『蹴散らしても良いか?』
「いやいやいや! ダメ! それはダメ! すぐ行くから待ってて!」
『分かった……早く来てくれ』
あのルナがあんなに困った声って。
慌てて本を片付け図書館を出る。ルナの気配を探りながら、その方向へ走る。
必死に走ったその先に人集りが……しかも女の人ばかり……。
あぁ、やっぱり。
人集りの中心に頭一つ飛び出てルナの顔が見えた。詰め寄られて困った顔。その横には怯えたオブ。
「あぁ、どうしよ……」
苦笑しながらしばらく悩む。あの人集りに割り込んでいく勇気がない。
しばらく悩んでいると、後ろから肩を叩かれた。
「あの美形のお兄さん、君の連れかい?」
ディルアスくらいの歳、背格好の男性が声をかけてきた。
青年は茶色の髪と瞳で目立たない色合いだったが、それでも顔はやっぱりイケメン! いやもう何かイケメン見すぎて見慣れて来たよ? 何なのよねぇ。
「はあ、連れです」
どうしたら良いか分からず、気の抜けた返事をしてしまった。
「俺が連れて来てやるよ」
そう言うと、その青年は人集りに入って行った。
「ちょっとごめんよ~、お嬢さんごめんね~、はい、この男、俺の連れ! 良い男でしょ? 俺も!」
周りの女性たちが笑った。
『お前は誰だ』
「シッ。あっちであんたのお嬢さんが待ってるぜ。黙って付いて来い」
ルナは不審そうにしたが、青年はルナに耳打ちした。
「ちょっともう行かないと、残念だけどお嬢さんたちまたね!」
そう言うと颯爽とルナを連れ出してくれた。
そのまま私の手も引き、纏めて建物の裏に入った。
「ルナもオブも大丈夫!? ありがとうございます」
怯えたオブをルナの肩から下ろし抱き締めた。
『あぁ、ユウ、すまない』
「いや~、男前は大変だな!」
青年は笑いながら言った。
「そっちの黒いの、もしかしてドラゴンか!?」
「!!」
慌ててオブを背に隠した。ルナも私と青年の間に割って入り、背に庇った。
『お前は誰だ』
「そんなに警戒しないでよ。俺はレン。ドラゴンは珍しいから興味あっただけで、何にもしないよ」
青年はレンと言った。レンは両手を挙げ、降参のポーズをした。
「ほんと何にもしないから心配しないで! 次会うことがあれば、ドラゴン見せてくれたら嬉しいけど! じゃあまたね~」
そう言うとレンは片手をヒラヒラ振って去って行った。
「またね、って」
もう会うことはないと思うが。
「あぁ、でもやっぱりルナの人間化は危険! 仔犬化!」
『なぜ囲まれるのか分からん』
納得いかないルナは渋々仔犬化に。
『仔犬ではない』
「分かってるよ」
拗ねたルナに笑いながらなでなでした。
さてと、今日はこの後どうしようかな、と二人を抱き上げた。
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