【完結】異世界で勇者になりましたが引きこもります

樹結理(きゆり)

文字の大きさ
54 / 96
六章 勇者

第五十四話

しおりを挟む
「昨日引っ掛かると言っていたのは、何か分かったのか?」

 翌日イグリードの私室に全員が集まった。
 考え込む私に視線が集まる。

 魔物が増えて、勇者が現れて、またさらに魔物が増える……、魔王が現れる。しかし魔王は誰も知らない……。
 昨日から何度も繰り返し考えた。



「勇者が現れると魔物が増える……?」

「えっ!?」

「それに……勇者が現れると魔王が現れる……?」

「!?」

「ずっと何かがおかしい気がして引っ掛かってたんだけど、順序がおかしい気がするんだ。時系列で見ても魔王が現れたから討伐のために勇者が現れた、とは一度も書かれていない。それどころか勇者が現れてから魔物が増え、魔王が現れてる……」

「ど、どういうことだ……」

 全員が唖然として沈黙が流れた。



「ピンポーン!! せいかーい!!」

「!?」

 突然聞いたことのない声が聞こえ、全員が驚き顔を見合った。
 誰だ!? 辺りをキョロキョロ見回す。

「こっちこっち」

 声がした方に向くと高い天井の近くに人が浮いていた。

「!?」
「何者だ!?」

 全員が警戒して臨戦態勢を取る。

「やだなぁ、そんな警戒しないで」

 そう言いながらその人物はゆっくり降りてきた。
 白磁のような白い肌に銀色のようなキラキラとした足まで伸びる長い白い髪と瞳。服も真っ白なローブのようなものを着ている。
 男性なのか女性なのか分からない中性的な顔。
 しかも空中に突然現れた。一体何者!?

「あなたは誰!?」

「私は~、神でーす!」

「!?」

 全員が「!?」だった。意味が分からない。神!?

「か、神だって!?」

 アレンが辛うじて口を開いた。

「そうでーす。神だよ~」

 何だこのユルい喋り……。

「本当に神だよ~。君たちの魔法に引っ掛からなかったでしょ?」

 ニコニコしながら言う。確かに索敵にもかからなかったし、部屋には誰も近付けないように言ってあるし、話は聞こえないように空間隔離をしている。
 なのに、この人物は突然空中に浮いて現れた。

「本当に神様?」
「うんうん、神様!」
「本当に神なら、何のためにここに現れた!?」

 ディルアスが少し声を荒らげて言った。

「うん、そうね~、頑張って調べて真実に近付いたご褒美に答え合わせをしてあげようと思って」

「真実? 答え合わせ?」
「そうそう! 今までの勇者でここまでたどり着いた人いないのよ~。だからご褒美~」

 何かイラッとする喋り方だな。しかしここで苛ついてはいけない。

「私たちが知りたいことを全部教えてくれるの?」
「うんうん、教えてあげる~! 特別!」

 全員が息を呑んだ。

「ユウが勇者なのか?」

 アレンが真っ先に聞いた。

「うん、そうだね~。私がこちらの世界に召還したよ」
「!!」

 全員こちらを見た。勇者……私が勇者……やはりそうなんだ……

「何で私だったの?」
「勇者の聖魔法を授けるのに、その時一番相性が良い人物で選んだんだよ」

 ニッコリと笑顔で言われた。

「勇者が現れると魔王が現れるの?」
「うん、それ、正解~!」
「!? 正解ってどういうことだ!? なぜ勇者が現れると魔王が現れる!?」
「うーんとねぇ、逆に言うと勇者がいなければ魔王は生まれないし魔物も増えないのね~」
「どういうことだ!?」
「これ、私の凄いとこ!聞いてくれる~? すっごい効率の良い仕組みなの!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する

雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。 ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。  「シェイド様、大好き!!」 「〜〜〜〜っっっ!!???」 逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

処理中です...