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本編
第十七話 中央広場は広かった
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私とロノアが手を繋ぎ、クラハさんは前を歩き、ラズは後ろからちょこまかと付いて来ている。
相変わらずラズはブツブツと文句言ってるみたいだけど。
中央広場へは子供の足には少し遠いかしら、と思いながらも、ロノアはしっかりと自分で歩いていた。
余程楽しみなようでずっとウキウキとした顔をしている。
「さあ、着いたよ」
居住区を抜けると広大に広がる中央広場。何でも屋に行くときにも通ったが、本当に広い広場なのよね。
街の入口から中央広場までの距離とほぼ同じくらいあるのでは、というくらいの広さで、中央広場の端のほうに到着した私の目からは反対側の端を見ることが出来ないくらいに広かった。
中央には噴水が設けられ、とてもお洒落な街灯も並んでいる。露店と思われる店もたくさん並び、多くの人たちが行き交い、子供たちも多くが遊んでいる。とても賑やかだ。
ロノアはパッと笑顔になり走り出す。クラハさんは慌ててそれを追いかける。私もそれに続くが、私には周りの景色が気になりどうにもロノアだけに集中出来ない。それに気付いたラズが声を掛ける。
『おい、はぐれるぞ』
「え、あぁ、ごめん、中央広場が凄すぎて気になっちゃって」
アハハと笑いながら、ロノアに目をやった。ラズは呆れながらも抱き付かれているよりはマシだと思ったのか、特に怒るでもなくそれ以上は何も言わなかった。
一気に噴水まで駆けて行ったロノアは、噴水の縁によじ登り中を覗いた。慌ててクラハさんはロノアを支える。
「わ、綺麗だね~!」
一緒になって噴水の中を覗くと、水中には何かカラフルな石のようなものがたくさんあり、それが太陽の光を反射し、さらには水面もキラキラしているのも相まって、とんでもなく綺麗に輝いていた。
「何これ~!! 凄い綺麗!!」
ロノアもうんうんと頷き、目を輝かせる。ロノアの横で同じように目を輝かせているとクラハさんが吹き出した。
「プッ、ヒナタ、子供と一緒だね」
「えー、だってこんな綺麗なもの見たことないから」
クラハさんはアハハと声を上げて笑った。ラズも何だか笑っているようだし。何か子供扱いされてる?
「この噴水には魔石が入れてあってね」
「魔石……、魔術を施された石でしたっけ?」
「そうそう、色とりどりの色を反射させる魔術だね。それがたくさん入れてあるから凄く輝くんだ。太陽の光を浴びるとなおさら輝くけれど、夜でも自然に発光しているから、夜に見ても綺麗だよ」
「へぇぇえ!! 夜!! 夜にも見てみたーい!!」
ラズが何やらギシッと固まった気がするが気のせいかしら。まあ良いか。
いや、でも本当に夜も見てみたいなぁ。うーん、ますます早く引っ越したいわね。出来れば中央広場に近いところ!
そんなことを考えているとロノアはキャッキャッと嬉しそうに噴水の水で遊んでいる。
噴水に飽きると再び走り出したり、城門前の花が植えられている場所で虫を探したりと、飽きることなく満喫していた。
「さて、そろそろ帰らないとアルミリアさんが帰って来るよ」
クラハさんはロノアに促すが、ロノアはまあ嫌がるよね……、これは中々難しいわね。小さい子の遊びを中断させるのは大変だわ。世のお母さんたち本当にご苦労様です。
「いやー! もっとあそぶー!」
泣き叫ぶロノアを宥めるクラハさん。うーん、どうするかな。言い出しっぺは私だしね、何とかしないとね。
「ねえ、ロノア、お家に着くまでゲームしようよ」
「ゲーム?」
「うん、お家に着くまでにこの茶色い石をいくつ見付けられるか競争!」
足元に広がる石畳を指差した。全面大体は白い石畳なのだが、所々に茶色い石が混ざっている。それが程々に離れた位置に点在しているのだ。それを先に見付けていく勝負!
「ぼく、もうみつけたもん!!」
そう言うとロノアは茶色い石を目指して走り出す。
「ヒナタって凄いね」
クラハさんが感心していた。
「子供って何かしらゲーム好きじゃないですか?」
笑って答え、ロノアに続いた。クラハさんも慌てて後に続く。ラズは何やら真面目な顔付きのままゆっくりと付いて来た。
ロノアと二人で茶色い石を探しながら家まで無事到着。最後のゴールでロノアは勝ち誇った顔をした。
「ぼくのかち!」
「アハハ、ロノア、強いね」
扉を開け中へと入ると、早々にアルミリアさんが帰って来た。
「ママ!」
ロノアは勢い良くアルミリアさんに抱き付いた。
「ただいま、ロノア。良い子にしてた?」
「うん! たのしかった!」
ロノアは満面の笑みでアルミリアさんを見上げていた。
「こんなに嬉しそうなロノア初めてね、余程楽しかったのね。ありがとう」
アルミリアさんは嬉しそうにお礼を言ってくれた。クラハさんと顔を見合わせ、お互い満足気な顔で笑い合った。
クラハさんはアルミリアさんから報酬のやり取りをしていたため、私はロノアと手遊びをしていた。
ひとしきり話が終わると再びアルミリアさんは丁寧にお礼を述べてくれ、ロノアも笑顔でバイバイと言ってくれた。
「あー、今日は本当にヒナタのおかげで助かったよ!」
「アハハ、大袈裟な」
「いや、本当に! いつも俺だけだと大変だったんだよ」
クラハさんは苦笑しながら言った。それを聞いていたラズは小声でボソッと呟く。
『男同士だからじゃないか?』
「ん? 男同士?」
『男相手だから反発したんだろうよ。ヒナタにはデレデレだったじゃないか』
「…………」
『な、何だよ』
まだ変なこと言ってる。あんなちびっ子に「男」とか言われてもピンと来ないし。
「何かラズ、やきもち焼いてるみたーい」
冗談で言ってみた。
『はぁ!? 誰がやきもち!! んな訳ないだろ!! お前が危機感ないから!!』
めっちゃキレられた。
「いや、冗談だったんだけど……」
『うぐっ』
「しかも幼児に危機感とか言われても……」
『うぐぐっ…………、んがー!! ヒナタのバーカ!! バーカ!!』
「はぁぁあ!?」
ムッカー!! 何で私が馬鹿なのよ!! 勢い良くラズを羽交い絞めにし、逃げようとするラズを絞め上げた。
「誰が馬鹿だ! ラズの馬鹿!!」
『お前が馬鹿だから馬鹿って言ったんだ!!』
うぐぐっと二人で格闘していると、クラハさんが振り向き唖然とした。
「な、何やってんの?」
「え、あ、いや、アハハ……」
思い切りラズの前脚でグニッと押された顔で笑って見せたが、クラハさんはドン引きだね。それはそうよね、ムキになってしまった。子供の喧嘩じゃあるまいし、何やってんだか……。あー、恥ずかしい……。
「えっと、次は何ですか?」
居た堪れなくなり無理矢理話題を変えた。顔はひん曲がったままだけど。
「あ、あぁ、えっと次はレストランで皿洗い」
「はーい」
無理矢理ラズの前脚をグググッと下げ、抱っこ状態でクラハさんに続いた。
ラズはムスッとしたままだし。うーん、このままなのも面倒くさいな。はぁぁあ、仕方ない、危機感云々はやはり良く分からないが仲直りするか。
「ねぇ、危機感は正直幼児にはよく分からないけど、気を付けるからさ、仲直りしようよ。心配してくれてたのに馬鹿なんて言ってごめん」
ラズを抱えたまま言った。ラズは深い溜め息を吐き、身をよじるとこちらを向いた。
『…………、俺も言い過ぎた。すまん』
少し恥ずかしげに目を逸らしながら言った。
「謝るときは目を合わせましょう」
ラズを抱き上げ、目線まで上げた。鼻をスリッと合わせると、ラズは思い切り仰け反った。
「ちょっと! 何で仰け反る!」
『お前だってさっき目を合わさず言っただろうが! 近いんだよ!』
ん? 何か照れてるのか? 猫のくせにやたら照れ屋な訳ね。
「はぁぁ、もう、しょうがないなぁ」
『お、お前な……』
仕方ないから許してやろう、そんな態度で言うと案の定ラズが唖然としたような顔になり、それが面白かったから、まあ良いや、とラズを抱っこし直し、クラハさんの後ろを歩いた。
相変わらずラズはブツブツと文句言ってるみたいだけど。
中央広場へは子供の足には少し遠いかしら、と思いながらも、ロノアはしっかりと自分で歩いていた。
余程楽しみなようでずっとウキウキとした顔をしている。
「さあ、着いたよ」
居住区を抜けると広大に広がる中央広場。何でも屋に行くときにも通ったが、本当に広い広場なのよね。
街の入口から中央広場までの距離とほぼ同じくらいあるのでは、というくらいの広さで、中央広場の端のほうに到着した私の目からは反対側の端を見ることが出来ないくらいに広かった。
中央には噴水が設けられ、とてもお洒落な街灯も並んでいる。露店と思われる店もたくさん並び、多くの人たちが行き交い、子供たちも多くが遊んでいる。とても賑やかだ。
ロノアはパッと笑顔になり走り出す。クラハさんは慌ててそれを追いかける。私もそれに続くが、私には周りの景色が気になりどうにもロノアだけに集中出来ない。それに気付いたラズが声を掛ける。
『おい、はぐれるぞ』
「え、あぁ、ごめん、中央広場が凄すぎて気になっちゃって」
アハハと笑いながら、ロノアに目をやった。ラズは呆れながらも抱き付かれているよりはマシだと思ったのか、特に怒るでもなくそれ以上は何も言わなかった。
一気に噴水まで駆けて行ったロノアは、噴水の縁によじ登り中を覗いた。慌ててクラハさんはロノアを支える。
「わ、綺麗だね~!」
一緒になって噴水の中を覗くと、水中には何かカラフルな石のようなものがたくさんあり、それが太陽の光を反射し、さらには水面もキラキラしているのも相まって、とんでもなく綺麗に輝いていた。
「何これ~!! 凄い綺麗!!」
ロノアもうんうんと頷き、目を輝かせる。ロノアの横で同じように目を輝かせているとクラハさんが吹き出した。
「プッ、ヒナタ、子供と一緒だね」
「えー、だってこんな綺麗なもの見たことないから」
クラハさんはアハハと声を上げて笑った。ラズも何だか笑っているようだし。何か子供扱いされてる?
「この噴水には魔石が入れてあってね」
「魔石……、魔術を施された石でしたっけ?」
「そうそう、色とりどりの色を反射させる魔術だね。それがたくさん入れてあるから凄く輝くんだ。太陽の光を浴びるとなおさら輝くけれど、夜でも自然に発光しているから、夜に見ても綺麗だよ」
「へぇぇえ!! 夜!! 夜にも見てみたーい!!」
ラズが何やらギシッと固まった気がするが気のせいかしら。まあ良いか。
いや、でも本当に夜も見てみたいなぁ。うーん、ますます早く引っ越したいわね。出来れば中央広場に近いところ!
そんなことを考えているとロノアはキャッキャッと嬉しそうに噴水の水で遊んでいる。
噴水に飽きると再び走り出したり、城門前の花が植えられている場所で虫を探したりと、飽きることなく満喫していた。
「さて、そろそろ帰らないとアルミリアさんが帰って来るよ」
クラハさんはロノアに促すが、ロノアはまあ嫌がるよね……、これは中々難しいわね。小さい子の遊びを中断させるのは大変だわ。世のお母さんたち本当にご苦労様です。
「いやー! もっとあそぶー!」
泣き叫ぶロノアを宥めるクラハさん。うーん、どうするかな。言い出しっぺは私だしね、何とかしないとね。
「ねえ、ロノア、お家に着くまでゲームしようよ」
「ゲーム?」
「うん、お家に着くまでにこの茶色い石をいくつ見付けられるか競争!」
足元に広がる石畳を指差した。全面大体は白い石畳なのだが、所々に茶色い石が混ざっている。それが程々に離れた位置に点在しているのだ。それを先に見付けていく勝負!
「ぼく、もうみつけたもん!!」
そう言うとロノアは茶色い石を目指して走り出す。
「ヒナタって凄いね」
クラハさんが感心していた。
「子供って何かしらゲーム好きじゃないですか?」
笑って答え、ロノアに続いた。クラハさんも慌てて後に続く。ラズは何やら真面目な顔付きのままゆっくりと付いて来た。
ロノアと二人で茶色い石を探しながら家まで無事到着。最後のゴールでロノアは勝ち誇った顔をした。
「ぼくのかち!」
「アハハ、ロノア、強いね」
扉を開け中へと入ると、早々にアルミリアさんが帰って来た。
「ママ!」
ロノアは勢い良くアルミリアさんに抱き付いた。
「ただいま、ロノア。良い子にしてた?」
「うん! たのしかった!」
ロノアは満面の笑みでアルミリアさんを見上げていた。
「こんなに嬉しそうなロノア初めてね、余程楽しかったのね。ありがとう」
アルミリアさんは嬉しそうにお礼を言ってくれた。クラハさんと顔を見合わせ、お互い満足気な顔で笑い合った。
クラハさんはアルミリアさんから報酬のやり取りをしていたため、私はロノアと手遊びをしていた。
ひとしきり話が終わると再びアルミリアさんは丁寧にお礼を述べてくれ、ロノアも笑顔でバイバイと言ってくれた。
「あー、今日は本当にヒナタのおかげで助かったよ!」
「アハハ、大袈裟な」
「いや、本当に! いつも俺だけだと大変だったんだよ」
クラハさんは苦笑しながら言った。それを聞いていたラズは小声でボソッと呟く。
『男同士だからじゃないか?』
「ん? 男同士?」
『男相手だから反発したんだろうよ。ヒナタにはデレデレだったじゃないか』
「…………」
『な、何だよ』
まだ変なこと言ってる。あんなちびっ子に「男」とか言われてもピンと来ないし。
「何かラズ、やきもち焼いてるみたーい」
冗談で言ってみた。
『はぁ!? 誰がやきもち!! んな訳ないだろ!! お前が危機感ないから!!』
めっちゃキレられた。
「いや、冗談だったんだけど……」
『うぐっ』
「しかも幼児に危機感とか言われても……」
『うぐぐっ…………、んがー!! ヒナタのバーカ!! バーカ!!』
「はぁぁあ!?」
ムッカー!! 何で私が馬鹿なのよ!! 勢い良くラズを羽交い絞めにし、逃げようとするラズを絞め上げた。
「誰が馬鹿だ! ラズの馬鹿!!」
『お前が馬鹿だから馬鹿って言ったんだ!!』
うぐぐっと二人で格闘していると、クラハさんが振り向き唖然とした。
「な、何やってんの?」
「え、あ、いや、アハハ……」
思い切りラズの前脚でグニッと押された顔で笑って見せたが、クラハさんはドン引きだね。それはそうよね、ムキになってしまった。子供の喧嘩じゃあるまいし、何やってんだか……。あー、恥ずかしい……。
「えっと、次は何ですか?」
居た堪れなくなり無理矢理話題を変えた。顔はひん曲がったままだけど。
「あ、あぁ、えっと次はレストランで皿洗い」
「はーい」
無理矢理ラズの前脚をグググッと下げ、抱っこ状態でクラハさんに続いた。
ラズはムスッとしたままだし。うーん、このままなのも面倒くさいな。はぁぁあ、仕方ない、危機感云々はやはり良く分からないが仲直りするか。
「ねぇ、危機感は正直幼児にはよく分からないけど、気を付けるからさ、仲直りしようよ。心配してくれてたのに馬鹿なんて言ってごめん」
ラズを抱えたまま言った。ラズは深い溜め息を吐き、身をよじるとこちらを向いた。
『…………、俺も言い過ぎた。すまん』
少し恥ずかしげに目を逸らしながら言った。
「謝るときは目を合わせましょう」
ラズを抱き上げ、目線まで上げた。鼻をスリッと合わせると、ラズは思い切り仰け反った。
「ちょっと! 何で仰け反る!」
『お前だってさっき目を合わさず言っただろうが! 近いんだよ!』
ん? 何か照れてるのか? 猫のくせにやたら照れ屋な訳ね。
「はぁぁ、もう、しょうがないなぁ」
『お、お前な……』
仕方ないから許してやろう、そんな態度で言うと案の定ラズが唖然としたような顔になり、それが面白かったから、まあ良いや、とラズを抱っこし直し、クラハさんの後ろを歩いた。
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