7 / 148
【 第一章 】 時の河を超える聖女
③ 究極の二択をあなたに
しおりを挟む
ふたりは屋敷の地下牢へ連行された。地下階が存在するここは、実は5階建ての屋敷であった。
狭い地下階の左手に、縦に並ぶ2つの牢の、鈍色に光る鉄格子が迫りくる。
ふたりは手縄を解かれ、揃って手前の牢部屋に入れられた。
アリアンロッドは反射的に鉄格子を両手で握ったが、警備の男たちはすぐに立ち去り、何も訴えることはできず唖然とするしかなかった。
「牢に閉じ込められたのなんて初めて……」
しかし焦りで居ても立っても居られない彼女をよそに、
「ふぅ…」
アンヴァルは休息をとるかのように、その場に座り込む。立腹する様子もない。
「はっ」
「どうした?」
「ねぇこの状況……お花摘みに行きたい時、どうするの!?」
「お前の一大事はそれか? たいてい隅に瓶が転がってるだろ」
「えっ……」
彼の指さす薄暗い隅のほうへ、アリアンロッドは目をやった。
「あなたもいるところで!?」
頭を抱える彼女に、アンヴァルはただ呆れ顔を向ける。
「それどころじゃないだろう? 俺たちは今、ただの賊だ。待っても取り調べどころか、崖から川に投げ捨てられて終わる」
「そんなっ! …………」
顔面蒼白のアリアンロッドは、先ほどから彼の態度について違和感がぬぐえず、いったん黙ったが、ついにこうこぼした。
「ヴァル、なんでここまで連れてこられる間に抵抗しなかったの? どうしてそんなに落ち着いていられるの?」
ここまでの間、ずっと彼を気にして見ていた。こんな緊急事態に大人しく、されるがままの男ではないのに。
「実はさ、俺……今すごく眠い」
「は?」
「疲れたからしばらく寝る。用を足すなら俺が寝てる間にしておけよ」
と言ったが最後、彼は即座に寝てしまった。
「えっ……ええ──!?」
少しのあいだ呆けていたアリアンロッドであったが、やはり不安は募りゆく。
周りを見渡してみた。格子の向こう、牢の外を覗くと奥の篝火で多少は明るい。
(どうすれば脱獄できるかな? 錠を壊せば……)
格子の間から扉表の錠前に手を伸ばし、それを外側から触れてみた。
ペタペタ手探りすると、穴がいくつか開いているような手触りがある。
「錠にはふつう鍵穴ひとつなのに、横に並ぶ穴がたくさん……。かんぬきは、ふたつ? さすがに厳重だわ……」
◇
どれほど時はたっただろう。何もすることがないせいで時の流れが緩やかに感じる。
隣のアンヴァルが立てる寝息はこの状況にそぐわない、平和な響きだ。
アリアンロッドは心のどこかで、「彼と一緒なのだから死ぬなんてことはない」と思っている。しかし今は彼の考えていることがさっぱり分からない。
この薄暗い牢の中で、時がたてばたつほど心細くなっていく。
そのころ眠りの深層に着いたアンヴァルは、ここに来る前の、王太子の密命を夢でおさらいしていた。
────────『アリアを王宮から追放!? なぜそのようなことをっ……』
以前からアンヴァルの目には、王太子がアリアンロッドを大切に思い親愛の心で触れていた様子が、輝いて映っていた。
『この国では──』
王太子は遠い彼方を見つめ、本心を探り当てられない距離を保ち、語り始める。
『胸に聖痕の刻まれる聖女が天へ歌声を捧げると、その清らかな肉体に神は降臨し、奏での詞は予言のことばへと変わる……。憑依というものは、その聖女の力量や儀式の条件が揃うなど、強大な聖力に満ちた時機に実現する大技だ』
『自在に力を発揮できる聖女は歴代でもわずか、なのですよね?』
『そうだ。普段の予言は予知夢や聖具を使った呪いからだが、アリアはそれに関しても未だ片鱗を見せない』
『…………』
『その事実は私やお前、限られた人間のうちで秘匿する現状だが、そろそろ限界だ。よって私は大聖女に、アリアに関する予言を願い出た』
『大聖女様に?』
アンヴァルはここで役目が言い渡されることを予期し、次の言葉を静かに待った。
『予言は多くを語らない。ただ、アリアは必ず活路を見出す。この先にどんな困難が待ち構えているのか、見当もつかないが……お前は今から彼女を急いで追ってくれ』
敵国からの間者が市中に紛れている昨今、力を持つ貴族は安易に外を出歩かない。
王太子の決意は彼女に対する荒療治だった。本来なら、このような判断をくだすのは心苦しい王太子であったはずだ。
(ディオ様の、愛情……だよな)
7つの時、王太子に命を救われ傍らに重用されるようになって以降、アンヴァルにとっても王太子は、宝に等しい主君であった。
『アリアからきょうだいのように慕われるお前にしか、この役は任せられない。私の代わりに彼女を守ってくれ。必ず、彼女を無事に……』
そこでいったん、先の言葉を飲み込んだ王太子は、息苦しそうな表情をした。アンヴァルはそれを慮り、
『必ず守り抜きます。そして必ず、無事にあなたの元にお返しします』
王太子の元でひざまずいたら、忠心のこもった瞳を見せた。
『任せた、アンヴァル』
多くの臣下の中でも、最も厚い信頼を寄せるアンヴァルに、王太子も深い愛情をこめた笑顔で見送った。────
「足音……?」
牢内で途方に暮れて、うずくまっていたアリアンロッドは、ふっと顔を上げた。
階段を下る軽い足音が響いてくる。
「イナ! 迎えに来てくれたのね!?」
話さえ聞いてもらえれば、侵入者の汚名は晴らすことができると、そう期待した。しかし女侍従イナは牢の前に立ちはだかったまま、ただ不敵な笑みを浮かべている。
(まさか、このまま消される!?)
「あのっ、何も証明できるものは持ってないけどっ……」
格子を握り、アリアンロッドは彼女に向かって必死に訴えた。
「私は本当にヴィグリーズ王国の聖女なの。信じて! 胸の聖痕も見せるからっ」
アリアンロッドがそう上の衣服を脱ぎかけたら。
「あら。後からお越しになった、確かな書状を持つ聖女様がお持ちでしたわよ、聖痕」
「ええ……? きっとそれは、偽装して……」
それは自分に跳ね返る言い分だ。
「対面した侍女が、気品のある悠然としたお方だと話していました。お供の方もよほど偉丈夫で」
イナは白い手で口を押さえくすりと笑った。
「なにそれ……」
「あなたたちはただの狼藉者だったのね。まぁ男女二人組が屋敷近くに倒れていたからって、勘違いして中に引き入れてしまった私の落ち度よ。早々に始末するわ」
イナの凍てつく視線に尻込みをしたアリアンロッドは、もはや言葉も出てこずに、格子を握ったまま項垂れた。
(本物は私なのに……)
「と、思ったけど。私は何を盗られたわけでもなし、曲者をただ始末してもつまらない……」
そこで何か思い立ったらしき彼女は上半身を一度くねり、振り向いて言い放った。
「あなたたちのどちらかひとりだけ、逃がしてあげるわ」
「……え?」
「ひ、と、り、だ、け、あなたたちが決めた方を、私がこっそり逃がしてあげる」
────それって……。
牢の外という高みから女侍従イナは続けて、酷な言葉を繰り出すのだった。
「この牢に男が残れば明日にでも、兵に殴られ蹴られ嬲られるサンドバッグになった後、あっさり川に棄てられるでしょう。女なら、ヒルディス様の慰み者として出してもいいわね。廃人になるまでは可愛がってもらえるわよ」
片方が逃げて、片方は死ぬ。平たく言えばそのようなイナの物言いが、アリアンロッドの胸のうちをぐるぐる駆け巡る。
「そこの男が起きるまで時間をあげるから相談するといいわ。もちろんふたりで諦めるのも構わない。それとも生き残りをかけて、そこで殺し合いでもする? 男のほうが圧倒的に有利でしょうけど」
「………………」
片方が犠牲になれば、片方は助かる。
アリアンロッドは微動だにしない。しんと静まったその空間は永遠のような束の間。
イナの目に、無表情のアリアンロッドは白磁の人形のようにも映った。
狭い地下階の左手に、縦に並ぶ2つの牢の、鈍色に光る鉄格子が迫りくる。
ふたりは手縄を解かれ、揃って手前の牢部屋に入れられた。
アリアンロッドは反射的に鉄格子を両手で握ったが、警備の男たちはすぐに立ち去り、何も訴えることはできず唖然とするしかなかった。
「牢に閉じ込められたのなんて初めて……」
しかし焦りで居ても立っても居られない彼女をよそに、
「ふぅ…」
アンヴァルは休息をとるかのように、その場に座り込む。立腹する様子もない。
「はっ」
「どうした?」
「ねぇこの状況……お花摘みに行きたい時、どうするの!?」
「お前の一大事はそれか? たいてい隅に瓶が転がってるだろ」
「えっ……」
彼の指さす薄暗い隅のほうへ、アリアンロッドは目をやった。
「あなたもいるところで!?」
頭を抱える彼女に、アンヴァルはただ呆れ顔を向ける。
「それどころじゃないだろう? 俺たちは今、ただの賊だ。待っても取り調べどころか、崖から川に投げ捨てられて終わる」
「そんなっ! …………」
顔面蒼白のアリアンロッドは、先ほどから彼の態度について違和感がぬぐえず、いったん黙ったが、ついにこうこぼした。
「ヴァル、なんでここまで連れてこられる間に抵抗しなかったの? どうしてそんなに落ち着いていられるの?」
ここまでの間、ずっと彼を気にして見ていた。こんな緊急事態に大人しく、されるがままの男ではないのに。
「実はさ、俺……今すごく眠い」
「は?」
「疲れたからしばらく寝る。用を足すなら俺が寝てる間にしておけよ」
と言ったが最後、彼は即座に寝てしまった。
「えっ……ええ──!?」
少しのあいだ呆けていたアリアンロッドであったが、やはり不安は募りゆく。
周りを見渡してみた。格子の向こう、牢の外を覗くと奥の篝火で多少は明るい。
(どうすれば脱獄できるかな? 錠を壊せば……)
格子の間から扉表の錠前に手を伸ばし、それを外側から触れてみた。
ペタペタ手探りすると、穴がいくつか開いているような手触りがある。
「錠にはふつう鍵穴ひとつなのに、横に並ぶ穴がたくさん……。かんぬきは、ふたつ? さすがに厳重だわ……」
◇
どれほど時はたっただろう。何もすることがないせいで時の流れが緩やかに感じる。
隣のアンヴァルが立てる寝息はこの状況にそぐわない、平和な響きだ。
アリアンロッドは心のどこかで、「彼と一緒なのだから死ぬなんてことはない」と思っている。しかし今は彼の考えていることがさっぱり分からない。
この薄暗い牢の中で、時がたてばたつほど心細くなっていく。
そのころ眠りの深層に着いたアンヴァルは、ここに来る前の、王太子の密命を夢でおさらいしていた。
────────『アリアを王宮から追放!? なぜそのようなことをっ……』
以前からアンヴァルの目には、王太子がアリアンロッドを大切に思い親愛の心で触れていた様子が、輝いて映っていた。
『この国では──』
王太子は遠い彼方を見つめ、本心を探り当てられない距離を保ち、語り始める。
『胸に聖痕の刻まれる聖女が天へ歌声を捧げると、その清らかな肉体に神は降臨し、奏での詞は予言のことばへと変わる……。憑依というものは、その聖女の力量や儀式の条件が揃うなど、強大な聖力に満ちた時機に実現する大技だ』
『自在に力を発揮できる聖女は歴代でもわずか、なのですよね?』
『そうだ。普段の予言は予知夢や聖具を使った呪いからだが、アリアはそれに関しても未だ片鱗を見せない』
『…………』
『その事実は私やお前、限られた人間のうちで秘匿する現状だが、そろそろ限界だ。よって私は大聖女に、アリアに関する予言を願い出た』
『大聖女様に?』
アンヴァルはここで役目が言い渡されることを予期し、次の言葉を静かに待った。
『予言は多くを語らない。ただ、アリアは必ず活路を見出す。この先にどんな困難が待ち構えているのか、見当もつかないが……お前は今から彼女を急いで追ってくれ』
敵国からの間者が市中に紛れている昨今、力を持つ貴族は安易に外を出歩かない。
王太子の決意は彼女に対する荒療治だった。本来なら、このような判断をくだすのは心苦しい王太子であったはずだ。
(ディオ様の、愛情……だよな)
7つの時、王太子に命を救われ傍らに重用されるようになって以降、アンヴァルにとっても王太子は、宝に等しい主君であった。
『アリアからきょうだいのように慕われるお前にしか、この役は任せられない。私の代わりに彼女を守ってくれ。必ず、彼女を無事に……』
そこでいったん、先の言葉を飲み込んだ王太子は、息苦しそうな表情をした。アンヴァルはそれを慮り、
『必ず守り抜きます。そして必ず、無事にあなたの元にお返しします』
王太子の元でひざまずいたら、忠心のこもった瞳を見せた。
『任せた、アンヴァル』
多くの臣下の中でも、最も厚い信頼を寄せるアンヴァルに、王太子も深い愛情をこめた笑顔で見送った。────
「足音……?」
牢内で途方に暮れて、うずくまっていたアリアンロッドは、ふっと顔を上げた。
階段を下る軽い足音が響いてくる。
「イナ! 迎えに来てくれたのね!?」
話さえ聞いてもらえれば、侵入者の汚名は晴らすことができると、そう期待した。しかし女侍従イナは牢の前に立ちはだかったまま、ただ不敵な笑みを浮かべている。
(まさか、このまま消される!?)
「あのっ、何も証明できるものは持ってないけどっ……」
格子を握り、アリアンロッドは彼女に向かって必死に訴えた。
「私は本当にヴィグリーズ王国の聖女なの。信じて! 胸の聖痕も見せるからっ」
アリアンロッドがそう上の衣服を脱ぎかけたら。
「あら。後からお越しになった、確かな書状を持つ聖女様がお持ちでしたわよ、聖痕」
「ええ……? きっとそれは、偽装して……」
それは自分に跳ね返る言い分だ。
「対面した侍女が、気品のある悠然としたお方だと話していました。お供の方もよほど偉丈夫で」
イナは白い手で口を押さえくすりと笑った。
「なにそれ……」
「あなたたちはただの狼藉者だったのね。まぁ男女二人組が屋敷近くに倒れていたからって、勘違いして中に引き入れてしまった私の落ち度よ。早々に始末するわ」
イナの凍てつく視線に尻込みをしたアリアンロッドは、もはや言葉も出てこずに、格子を握ったまま項垂れた。
(本物は私なのに……)
「と、思ったけど。私は何を盗られたわけでもなし、曲者をただ始末してもつまらない……」
そこで何か思い立ったらしき彼女は上半身を一度くねり、振り向いて言い放った。
「あなたたちのどちらかひとりだけ、逃がしてあげるわ」
「……え?」
「ひ、と、り、だ、け、あなたたちが決めた方を、私がこっそり逃がしてあげる」
────それって……。
牢の外という高みから女侍従イナは続けて、酷な言葉を繰り出すのだった。
「この牢に男が残れば明日にでも、兵に殴られ蹴られ嬲られるサンドバッグになった後、あっさり川に棄てられるでしょう。女なら、ヒルディス様の慰み者として出してもいいわね。廃人になるまでは可愛がってもらえるわよ」
片方が逃げて、片方は死ぬ。平たく言えばそのようなイナの物言いが、アリアンロッドの胸のうちをぐるぐる駆け巡る。
「そこの男が起きるまで時間をあげるから相談するといいわ。もちろんふたりで諦めるのも構わない。それとも生き残りをかけて、そこで殺し合いでもする? 男のほうが圧倒的に有利でしょうけど」
「………………」
片方が犠牲になれば、片方は助かる。
アリアンロッドは微動だにしない。しんと静まったその空間は永遠のような束の間。
イナの目に、無表情のアリアンロッドは白磁の人形のようにも映った。
10
あなたにおすすめの小説
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました
藤原遊
恋愛
【溺愛・成長・政略・糖度高め】
※ヒーロー目線で進んでいきます。
王位継承権を放棄し、外交を司る第六王子ユーリ・サファイア・アレスト。
ある日、後宮の片隅でひっそりと暮らす少女――カティア・アゲート・アレストに出会う。
不遇の生まれながらも聡明で健気な少女を、ユーリは自らの正妃候補として引き取る決断を下す。
才能を開花させ成長していくカティア。
そして、次第に彼女を「妹」としてではなく「たった一人の妃」として深く愛していくユーリ。
立場も政略も超えた二人の絆が、やがて王宮の静かな波紋を生んでいく──。
「私はもう一人ではありませんわ、ユーリ」
「これからも、私の隣には君がいる」
甘く静かな後宮成長溺愛物語、ここに開幕。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる