サトリ

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第1章

0.傍観者X

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 とある所に五人の仲良し組がいた。

 ある日の事。来月発表予定のゲームソフトを発売元の上役である父親のコネで手に入れ、学校に持ってきたAがいた。

 Aは学校でそのゲームをして他の四人に自慢すると、四人からは「いいね」の言葉が返ってきた。

 Aは満足だった。

 しかし、体育の授業から帰ってくるとソフトがなくなっていた。

 Aはソフトを探した。

 学校にそういう類の物は持ってきてはいけない。先生に没収されたのかと思った。しかし、すぐに誰かに盗まれた事を悟った。

   Aは次の日、他の四人に「ソフトを知らないか」と尋ねた。

 それについての五人のやりとりはこうだ。

A以外の四人「知らないよ」
A「本当に?隠し事は無しだよ」
D「なに?オレらのこと疑ってんの?」
C「なにそれ、最悪」
A「別にそんなんじゃないけど…」
B「そんなんじゃないならもういいだろ!」

 その後も言い合いは続き、挙句の果てにCとDに父親のことで嫌味を言われ、Eに「ファザコン」と一言返された。怒ったAは「絶交だ!」とその場を去った。

その日、「自分たちは、最高の仲良しだ」と豪語していたグループがいとも簡単に崩壊した。

 規則を破るからこうなる。

 そんな事で崩れる関係を友達という五人もおかしいが、だいたい今回の事はちゃんと考えれば四人の中に犯人がいない事に気づくはず。

 なにせ、顔を知らないのだから。

 でも、誰も気づかなかった。何故か。Aはその四人以外に友達がいないから。学校でもゲームばかり。機械に依存していたのだろうか…。

 今の子供は恐いと思った。でも、自分もその中の一人に違いなかった。

 傍観者Xは、そんな事を手の中にあるソフトを見ながら思った。そして、Aのいるチャットルームを退出し自分がいた教室から出て、どこかへと向かった。
 
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