そこに誰もいない

sea

文字の大きさ
上 下
5 / 8

月光花

しおりを挟む

崇人達が夕食を食べ終わったのは
23時になった頃だった。
今日は、もう遅いからと
崇人達も泊まることになり 

リビングでは、崇人達が
誰が雪菜と一緒に
お風呂に入るかをジャンケンで争っているためリビングが戦場と
化しているそんな中


悠人は、一人でテーブルの上の食器を
片付けシンクで洗い物をしていた。


すると悠人の細くしなやかな
曲線を描いた腰にするりと
白く小さな腕が絡みつく


悠人は後ろを見ずにその人物に話しかけた。


「どうしたの?雪菜……
今日は随分甘えたさんだね……」


悠人はそう言うと優しく微笑み
泡がついた手を流し水気を綺麗に拭き、
雪菜を正面から捉え、抱きしめ返した。


「だって……今日は悠人と一緒にお風呂に入れないんだもん……」


そう言うと雪菜は頬を膨らませ
拗ねた様子を見せる


悠人はその様子を穏やかな様子で見守り
雪菜に言葉を返す


「今日は、深山君達と入るみたいだね、楽しそうでいいんじゃないかな?」


フフっと小さく笑い雪菜の頭を優しく
撫で髪を梳いた。


「僕は、悠人と一緒がいいの!!」

と再び頬を膨らませ、腰に回した腕に
きゅっと力を込める


雪菜の声で崇人達が一斉にキッチンの方を振り返った。



其処には、
雪菜と悠人が抱き合っている姿があった
いつもなら抱き合っている相手に対して怒りを感じるのだが、
雪菜と悠人、二人の雰囲気の
所為だろうか、

二人が抱き合っている様子はさながら
西洋の絵画のようで

悠人の雪菜に対する暖かな眼差しと
いつか消えてしまいそうな

まるでこの世の者のではない様な
そんな儚さのある美しさが


ギャーギャーと騒いでた崇人達を
一瞬で静かにさせたのだった。



リビングが静まり返ったことに対し
不審に思った悠人はリビングの方に
顔を向けると何故か皆が此方に
視線を送っているではないか


悠人は慌てて雪菜に離れる様に伝えるが
雪菜は頑として動こうとはせず
更につよく抱きついて離れようとはせず


どさくさに紛れて雪菜が悠人の丸く小さな尻をイヤらしく撫で回し悠人は
今まで出したことのない声を崇人達に
聞かれ首から耳まで真っ赤にして雪菜を怒ったのは言うまでもなくそうして夜はゆっくりと更けていくのだった。





しおりを挟む

処理中です...