チュートリアルと思ったらチートリアルだった件

へたまろ

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第6章:動き出す世界

第5話:ゴブリン階層

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「なんだよこの部屋!」
「うわっ、落とし穴!」
「押すなよ! 絶対押すなよ?」
「って言われた押すよね?」
「おお、金だ金だ!」
「きっとあれだ、貯金箱的な何かを空けるボタンだ!」
「押せ押せ!」
「うわあ、天井が! でけー! スライムからあれ! あっ……」

 マスタールームの横の謁見の間的なところで、モニターを見ながら頭を抱える。
 なんで、誰一人罠探知持ってねーんだよ。
 あー、なんか3人程さっさと先に進んでいったけど、他の騎士団はどんどん数を減らしていってる。
 大丈夫かこれ?

「なんだこれ、扉開けたのに壁?」
「うわっ、なんか飛んできた」
「壁じゃねーぞこれ、この部屋いっぱいサイズのスライムだ」
「どんだけ、スライム好きなんだよ! ここのダンジョン」
「【火球ファイアーボール】!」
「あちっ! スライムがゆだって熱気が」

 騒がしい奴等だな!
 少しは、大人しく進めないのか!

 取りあえず、どうにかボススライムを倒した時には人数は50人ほどに減っていた。
 目立ったのは、槍で降ってきたおっさん。
 どうやら、アラインというらしい。
 ピンクの鎧が極めてダサい。
 それから、魔法使いの爺ちゃん。
 イラブって呼ばれてたかな?
 それから神官のクリトフ。
 ごめん、アンデッド階層まだまだ先なんだよね?
 どっちかっていうと、僧兵なのか。
 槍と拳でも戦えてた。
 そして、何故か居る踊り子のネミア。
 扇子で戦って魔法も使えて、服も際どくて超強い。

 他にはこの大隊の隊長のタイチョー。
 名前はそれで良いのか?
 若手のホープ?
 アホな部下がボタン押したせいで、スライムに飲まれてったよ?

 他は騎士団でもそこそこの連中かな?
 ベテラン揃いなだけあって、割と平均年齢高め。

 そして、いよいよ11階層。
 青い甲冑に身を包んだ、ミスリルの剣を持つ太郎。
 ゴブリンである。

「ほう……ここまで良く辿り着いたな」
「ゴブリン?」

 タイチョーが首を傾げている。
 ゴブリンで悪いか!
 レベルは結構高いんだからな!

「しかも、一体だけとか嘗めてるのか?」

 騎士の1人が馬鹿にしたような表情で、太郎を見る。
 そして次の瞬間、その騎士が首を落とす。

「えっ?」
「ふんっ、ゴブリンだと思って嘗めているからそういう目に合うんだ……ここを通りたければ、俺を倒すことだな」
「お前ら任せた!」
「頼んだわよー!」
「あっ!」

 ゴブリンが首を落とした騎士にカッコつけたこと言ってる間に、アライン、イラブ、クリトフ、ネミアがゴブリンの上を飛び越えていく。

「待て!」
「よそ見してる場合か、雑魚が!」
「よくも、スランを殺したな!」
「おらっ、囲め囲め!」
「ちょっ、おいっ! くそっ、しくった! こんな簡単に先に行かせるとは」
「俺達も先に行くぞ!」
「待てって!」

 太郎が後悔してるが、もう遅い。
 10人に囲まれてる間に、他がとっとと先に進んでいってしまった。

「お前ら、全員ぶっ殺す!」

 あっ、太郎がキレた。
 凄い勢いで、周囲の騎士を切り飛ばしていってる。
 あー、1人にしたのは失敗だったわ。
 12階層、もぬけの殻だし。
 要改善だな。

――――――
13階層

「ここまで来たという事は、太郎を倒したという事か? だが、残念だったな。太郎ならここに……あれ?マスター?」
「ボク、タロウダヨ」
「マスターですよね?」

 本当なら太郎と次郎で迎え撃つはずだったのに、予想外に早く先に進まれたのでゴブリンのお面を付けて次郎の横に並ぶ。
 何故か、すぐに次郎にバレたけど。

「そんな紙のお面で誤魔化せるわけないでしょう」

 クロノに心底呆れた声で言われた。
 やめれ、凹むから。

「またゴブリンか!」
「あれっ?横に居るの1階層に現れた奴じゃね?」
「あー、ここも2人ってことは人員が足りてねーんじゃね?」
「まあ、出来立てだしね」

 なんか、勘違いで凄い同情されてる。

「取りあえず、こいつらも20人で囲んで先に進むぞ!」
「じゃあ、あと宜しく」
「……」

 また、囲まれてる隙に先に進まれた。
 っていうか、イラブの魔法が地味にエグい。
 あと、クリトフのサポート魔法かなんか知らんけど、皆やったら素早いし。

「次郎、後は任せた!」
「えっ? マスター? どこ行くんすか?」

 あー、もうクソッ!
 やっぱり、思い付きで変な階層作るんじゃ無かったわ。
 先回り出来なきゃ、なんの意味も無く進められてくし。

――――――
15階層

「えっと、太郎と次郎は? というか、マスターとファング様ですよね?」
「オレタロウ」
「アウーン」
「コイツジロウ」
「いや、太郎もっと活舌良いですよ? ゴブリン嘗めてます? っというか、ファング様に至っては完全にお面被った狼ですし」
「オレ、タロウ! コイツ、ジロウ! ナッ?」
「そんな、全力で威圧込めなくても……大体、マスターが威圧耐性とか付けてくれたからあんま効果無いですよ」

 くそっ!
 お前ら、もうちょっとイエスマンになれよ。
 俺が烏を白いつったら、白くするくらいの気概は無いのか?

「またゴブリンか!」
「それにまた、あいつ居るよ」
「今度は犬にまでお面被せてるぞ」
「どんだけ、人居ないんだよ!」

 盛大に馬鹿にされてる。

「アウーン!」

 イラッとした、ファングが全力で威圧を乗せて吠えると全員がビクッとなる。

「こえー!」
「やべーぞ、あの犬!」
「絶対強いわ!」
「全員同時に次の扉に突っ込め!」

 無駄だよ! 
 ファングの足の前に逃げ切れる訳無いじゃん。

「アウッ?」

 ファングがほぼ全員に体当たりをかましたけど、5人分ほどが霞みになって消えてった。
 まあ、幻惑魔法ってのは分かってたんだけど。

「ゴメンねー! お先」

 ネミアの魔法か。
 すでにいつもの4人が次の扉に進んでいて、その後ろをタイチョーが追いかけている。

「あー、外れか……」
「取りあえず、ゴブリンブッ倒して追っかけるとしよう」
「じゃあ、三郎後は任せた!」
「アウーン」
「えっ? マスター?」
「先を急いでるんだよ!」
「あっ、はい」

――――――
17階層

「クロノさんから、もう話は聞いてますんで20階層に行きますよ?」
「あっ、はい」
「それと、マスターはともかくファング様とシルバ様にお面を付けただけでなんで誤魔化せると思ったんですか?」
「えっと……ゴブリンだから?」
「ゴブリン嘗めてます?」
「ゴメン……」

 四郎にめっちゃ怒られた。
 ゴブリンに叱られるマスターとか。

「一応、太郎はもう20階層に行ってますから。次郎と三郎ももうじきこっちに来ます」
「うん、早いね」
「誰のせいですか、誰の」
「ほんとゴメン」

 口答えしちゃ駄目だ。
 余計に怒られる。

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