魔王に転生したけど人間に嫌われ過ぎて辛い!~他の追随を一切許さない最強すぎる魔王は毎日が辛い~

へたまろ

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魔王編

相方がモテモテで……辛い

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 村でハインツのことを聞いた俺たちは、転移でセントピア城門に続く街道から少し外れた所に移動した。
 切り立った丘の上から、街道を見下ろす。
 少し顎をあげて、見下す形で城門の方へと視線を移す。
 横ではカインが姿勢正しく立っている。
 うん、はたからみると絵になっているはずだ。
 

「さてと、ハインツがどこに連れていかれたか分からんからなぁ……どうやって中に入るか……」
「私はまだ身分証がありますが、魔王様はお持ちでは無いですからね……とはいえ、私も行方不明の勇者ですから色々と事情を聴かれるでしょうし……」

 やっぱり、この規模の国となるとしっかりとした城門があるよなぁ。
 明らかに、入り口で身分証の確認してるし……しかも長蛇の列。
 並ぶの面倒くさいし、人気が無いところに転移で忍び込むか。

 二人が途方に暮れていると、遠くの方から豪華な馬車が通るのが見えた。
 貴族様でも乗っているのかな?
 あれ使えないかな? いや転移で入った方が楽か……

「ちなみに魔王様……転移等の非正規手段で入ると、大体が感知されてすぐに衛兵が集まってきますよ」

 マジ?いやいやいや、転移で入って即行で姿消してダッシュで移動すれば良いんじゃね?

「大丈夫だろ? すぐに消えれば見つからないし……」
「ちなみに、人気が無いところは罠ですからね? 魔力の流れを感知するセンサーが付いてますから姿を消しても見つかりますよ?」

 何その、絶対に正規ルートで行けみたいなフラグ?
 そんなんされたら、ますます不法入国したいんだけど?
 これ、俺に喧嘩売ってるよね?

「てか、魔力も完全に消せるし、大丈夫だって!」
「私は消せませんが?」

 カインが何か言ってる……
 魔王嘗めすぎだろ?
 範囲内の魔力を消す事ぐらい簡単だっつーの!

「お前さぁ? 俺の事誰だと思ってんの? お前含めて魔力消してやるよ?」
「入国時に魔力の登録をしないと、魔力出した瞬間にバレますが?」

 いちいちコイツは小出しで情報出しやがって!
 っていうか、逆都合主義過ぎんだろ!
 あぁ、もう面倒くせー……

「うわぁぁぁぁ!」
「まっ! 魔物だぁ!」

 その時遠くで悲鳴が聞こえる。
 例の豪華な馬車が襲われているらしい。

「なんだこいつら! 異常につえー!」
「無理だ、誰か衛兵に伝えろ!」
「ムリムリムリムリ! どうやってこの包囲網抜けんだよ!」

 いやぁ、ついてるわ!
 おの馬車助けたら中に入れるんじゃね?

「おい、カイン! 馬車が襲われてるから、お前ちょっと行って助けて来い!」

 俺がカインに命令した……のに、全然動こうとしねー……
 俺魔王! 上司! ボス!
 そこは、イエス! ボス! つってとっとと行って来いよ!

「魔王様?」

 カインがこっち見てる。
 プイッ

「魔王様?」

 プイッ

「魔王様?」

 ガシッ!

 両手で顔掴まれて正面から見つめられる。
 イヤン!

 てか、俺魔王様! 部下のやることじゃねーよな?
 こいつぜってー俺の事嘗めてるわ。

「ちっ、そうだよ! 俺だよ!」

 やっぱりバレるか……
 ちょっとこの辺りの魔物に強化を施して襲わせてやった。
 町に入れなくて困ってたら、都合良く貴族様が襲われるとこに出くわすなんてそうそうないもんな。

「はぁ、ちょっと強引ですが分かりました……行ってきます」

 カインが丘を飛び降りると馬車の上にフワリと降り立つ。

「助太刀いたす!」

 抜刀して馬車の上から一回転しながら飛び降りると、その勢いのまま馬車の正面に立つオーガに斬りかかる。
 ちなみに武器は日本刀だよ? ほらっ、日本刀振り回す西洋騎士とかさ……カッコよくね?
 豆腐を斬るようにオーガの両腕を切り落とすと、そのまま横に一回転する。
 カチッ……
 そして刀を鞘に納めると、馬車を取り囲んでいたオーガの上半身と下半身がゆっくりとスライドして切り分かれる。
 続けてその状態でパチンと指を鳴らすと、オーガの死体が火を上げて灰となる。
 無駄にカッコつけてんな……

「おぉ!」

 貴族の護衛達が感動した様子でカインを取り囲む。

「助かりました、さぞかし名のある方とお見受けします」

 護衛の代表が、カインに礼を言って近づくと手を差し出す。

「いえっ、まだまだですよ……」

 カインがそういって手を握る。

「あれで、まだまだなのか?」
「嘘だろ? 俺たちで歯が立たないオーガ達が、歯が立たないのにまだまだとか……何目指してんの?」
「それは、謙遜じゃねーよな?」

 周りの護衛が何やらボソボソ言ってるのが聞こえるが、想定通り規格外になってるみたいで良かった。

「失礼ですが、ランスフィールド様では?」

 一瞬で身バレしやがった。
 馬車から降りて来た身なりの良い女性が、カインを見つめて声を掛ける。

「ランスフィールド?……あの辺境の貴公子、勇者ランスフィールド様?」

 護衛の代表も思い出したようで、目の前のカインを凝視している。
 はい、作戦しゅーりょー!
 おまっ! そんなに有名人だったのかよ!
 先に言えや!

「ランスフィールドって巡礼に来なかったんだよな?」
「死んだって噂だったぜ……」
「俺は、加護が消されたって聞いたぜ!」

 しかも結構噂になってんじゃんお前!
 ざけんなよー、完全に人選誤ったわ……
 こんな事ならビッチスリーの誰かに頼めば良かったわ……
 俺も女と二人の方が楽しいし……

 あれっ? なんか、背筋に悪寒が……

「確かに加護を消されました……ですが魔王討伐を諦めた訳じゃありません。ですから加護を取り戻すために旅を続けてました」

 お前? まだ俺を討伐する気だったの?
 つーのは冗談で、誤魔化しに入ってんだな。
 もうちょっと様子見るか。

「流石です! ランスフィールド様の加護が消されたと聞いて、私は心配しておりましたの」
「えぇ、私としても大変不本意ではありましたが、3度魔王に見逃された時に加護も消え去っておりました……」

 ちょっと無理があるような、自然なような……
 どうなるかな? イケメン補正が大分入ってるからなぁ……

「魔王に3度も挑んだのですか? 流石です! それなのに加護を消すなんて女神様は何をむぐっ!」
「それ以上は言葉になさらぬように……女神様への冒涜は必ず天罰が降りるとの事です……それにここは聖教会最大の支部のある国、誰に聞かれるかわかりませんよ?」

 カインが女性の口に人差し指を当てて黙らせると、爽やかな笑顔で抜かしおった。
 そしてウィンクする……あかん……こいつ根っからのタラシや……

「でも安心しました……ランスフィールド様が変わらず勇敢な方で、感激しましたわ!」

 チョロいなー……

「それで連れを待たせてるのですが、お呼びしても宜しいですか? ちょっと公国に入るのに訳ありでして……ジェシカ様」
「覚えててくださったんですね?」
「えぇ勿論ですよ、こんな綺麗な方一度見たら忘れたくても忘れませんよ」

 あぁ、背中かいい……全身に蕁麻疹出て来たわ!
 なんなのコイツ、俺が見てるの知ってるよね?
 見せびらかしてる?
 どうせ俺の周りには、悪魔と蛇と百足とミイラしか居ませんよ……なんか蛙を超えた蛙とかも居た気がするが……

 とその前にっと……先ほどカインに殺されたオーガを周囲に復活させる。

「すまんな……嫌な役回りをさせて……」
「いえ、主の役に立てたのであれば本望です」

 おうっ……見た目によらず知的なのねキミ……

「流石です……こんなに簡単に復活させていただけるなんて! しかも前の身体よりも力が漲ってくる気がしますわ」

 君は女性なのね? マッスルニウーマンとか需要無いから……
 全く見分けつかねーな……
 オークのメスはまだ胸が垂れてるから分かるけど、君の胸はオパーイじゃなくて胸筋だよね?

「主様、彼は男です……」

 アッーーーーーー!
 じゃねぇよ! 紛らわしい!
 オーガのメスなんて見た事ねーからわかんねーわ!
 てか、オーガの癖に心読んでんじゃねーよ! 優秀過ぎるわ!

「まあ良い……その肉体は感謝の気持ちだ! 用は済んだ、散れ!」
「はっ!」

 取りあえず俺は調子に乗ったカインを蹴り飛ばしに行きますか……
 さっさと、カインの横に転移する。

「誰だ!」

 護衛全員が剣を抜いてこっちに向かって構える。

「ああ、私の連れです……ヒトシと言います」
「ビックリしましたわ。ランスフィールド様の仲間の方ですのね……あの、あまり近寄らないでくれますか?」

 おいっ! いきなりご挨拶だな!

「なんだ、勇者様の仲間か……見えないが……」
「しかし、いきなり現れるとは……この歳ですでに転移術を使えるのか……ムカつくな……」
「流石だな……並の魔術師じゃねーな……イラッとする顔してるが……」

 あー、あの君たち? 俺そいつの仲間だって分かったよね?
 剣しまおうか?
 なんで分かったのに剣構えたままなの?

「連れがいきなり失礼をしました……それで彼の身分証が無いのですが中に入れるよう取り持って頂けませんか?」
「勿論ですわ! ランスフィールド様の頼みならなんだって聞きます! この方の役に立つのは吐き気がしますが」

 俺……もう泣いていいっすか……いちいち人間の俺に対する扱いが辛い……
 つかカイン! 失礼されたの俺なんだけど? 少しは庇おうよ……魔王悲しい……

 ジェシカっていうペチャパイ女はどうやら公爵令嬢らしく、それなりの発言力と権限を持ってるらしくすんなりと入れてもらえた……
 衛兵にめっちゃ睨まれながら門を潜ると、眼前に綺麗な城下町が広がる。
 ちなみにカインはこれまでの詳しい経緯を聞くという事で、教会関係者に連れていかれた……
 さようならカイン……君の事は忘れないよ……

 つーか! 人間に意味も無く嫌悪される俺に一人でどうしろと?
 詰んだわ……

『おいっ! カイン! どうしようもなくなったら全員切り伏せてとっとと俺んとこ来いよ!』

 一応テレパシーでカインに伝えておく……

 さて……どうするかね……
 なんで俺はチビコにしかマーキングしなかったんだろう……
 ハインツにもマーキングしとけば良かったわ……
 でもまぁ、気配は覚えてるから大体の位置は分かった。
 大分弱ってるが、まだ生きてる。
 うん、良かった。
 間に合いそうだ。
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