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魔王編
チビコが拾ってきた狐が俺に懐きすぎてチビコに嫌われそうで辛い…
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「魔王様! 勇者です!」
「女勇者?」
「違います、眼鏡をかけたインテリ勇者です!」
「メンドい……パス! カインに行かせて……」
今日も魔王城は平和です。
最近は勇者の相手は主にカインにやらせてる。
知名度上げる度にね。
「フッ……弱過ぎる……その程度で魔王様に挑むとは……身の程を知れ!」
カインが左手の人差し指で勇者の剣の切っ先を押さえて溜息交じりに漏らす。
「馬鹿な! 指一本で……」
「俺に剣を抜かせる事が出来たら……その時は殺してやろう……」
カインがそう言って【強制送還】を使う。
まぁ、厳密には【強制送還】の効果を込めた魔石を手甲に埋め込んでるんだけどね。
これ一個で50回くらい【強制送還】が使える。
ちなみに市場価格で金貨1,000,000枚くらい。
市場に出る事は一生無いけどね。
日本円で100億くらいかな?
「フッ……また会える時を楽しみにしている……強くなれ勇者よ! 我を救う程にな」
しかしこの男ノリノリである。
ビッチウィッチ情報では毎日鏡の前でカッコいいポーズとか、決め台詞を考えてるらしい。
ちなみに、その鏡に映像記憶装置を付けたのは内緒な。
ある程度溜まったら投影水晶に記録して送りつけてやろう。
***
「魔王様、チビコちゃんです!」
「分かった、すぐに参ろう!」
「えぇぇぇ……」
即答して転移で玉座の間に移動する。
エリーのジト目を久しぶりに頂きました。
嬉しい。
「おう良く来たな」
俺は玉座に腰かけて笑顔でチビコを迎え入れる。
大分俺の顔にも慣れたようで、かなり引き攣っているが会話くらいは出来るようになった。
チビコが何かを抱えて俺の元まで駆けってくる。
なんだろう? 猫かな?
「えっと、魔王さまー、この子怪我してるの! 治せる?」
良く見ると、チビコの腕には一匹の狐が抱かれている。
真っ白な狐とか珍しいな……ちょっと懐かしい気がする。
それにしても、身体中擦り傷だらけだ。
かなり疲弊しているし、どこをどれだけ走ったこうなるのやら……
「大丈夫だよー! それっ!」
俺が回復魔法を使って狐を癒す。
みるみるうちに怪我が治って良く。
怪我が癒えた狐が、こちらにチラリと視線を向ける。
そして、何やら疲れたような表情。
(やっと見つけた……)
何か日本語らしきものが聞こえたような気がしたけど、まあいいや……
気のせいだろう。
「すごーい! 流石魔王さまー! 有難う」
「うむうむ良かったな。その狐はどうしたのだ?」
「うちの裏に倒れてたのをパパが見つけたの! 今日は狐鍋かなんて言ってたから慌てて連れて来た! うちで飼うの!」
「そっ、そうか」
目をキラキラさせてチビコが話してくれる。
確かに小さい子には、食べるより飼いたい衝動の方が上だろうな。
よく見ると目もクリッとして結構愛らしい顔した狐だし。
目の周りに赤い縁取りがしてあって、顔に赤い化粧のようなものが施されているのが気になるけど。
気にしたら負けだ。
ここは異世界だし。
「どうだ、少しはここでの生活にも慣れたか?」
チビコ達が魔王城城下町に住むようになって、すでに1ヶ月が過ぎた。
ハインツとその嫁は最初は怯えて外に出ようともしなかったが、チビコはわりとすぐに順応していた。
ハインツにも仕事を与えて外に出るように促したが、母親の方は最近になってようやく買い物が出来るくらいにはなったらしい。
ちなみに一家が今住んでいる家は、焼き払われた元の家を俺様のビックリドッキリチートマジック【時間包装紙】で直して転移で持ってきた。
メッチャ感謝された。
ちなみに亭主の本体を本物にした話をしたら、奥さんにメッチャ感謝された。
家より感謝された……複雑……
「うんっ! 友達も出来たよー! サハギンのローレンツ君に、ローパーのクリスティーナちゃん!」
うんっ、すぐに絶交しなさい!
先ほど同様に目をキラキラと輝かせて教えてくれるチビコにはとても言えなかった。
サハギンはともかく、ローパーってあれだよな?
触手の魔物だよな?
クリスティーナちゃんということは、女の子なんだろうけど。
心配しかない。
てか、それよりも……
おい魔族共! お前らの名前の基準はなんなんだ! 無駄に良い名前使ってんじゃねーぞ!
いやまあ、子供に罪は無いけど。
その時狐がピョンとチビコの腕から飛び降りて、俺の身体をよじ登る。
それから肩の上にチョコンと座る。
「ああ! だめー! ウララちゃんは私と一緒!」
チビコが慌てて俺の足元に来て、ピョンピョン飛び跳ねて狐を取り返そうとする。
「ウララちゃんって名前にしたんだね。可愛い名前だな」
俺がそういって、ウララを下そうとするが爪をガッチリマントに食い込ませて離れようとしない……
なんで?
「魔王だめ! ウララちゃんを返して!」
チビコが必死に俺にすがってくる。
「う……うむ、分かってるって。ちょっと待ってろ……おい、お前! 下りろって!」
必死で引き剥がそうとするが、全然離れる様子が無い。
どうしよう……
「う……うううう……」
やべーチビコちゃんが泣きそうだ……
「魔王様、こういう時は私も連れてってください」
そこにエリーが息を切らしながらやってきた。
良かった……助かった。
「エリー丁度良かった、ちょっとこの狐を引き剥がしてくれ」
「はっ?」
エリーが意味が分からないといった表情を浮かべてる。
そうだよねー……魔王の肩にしがみ付いて離れない狐なんて聞いた事ないよねー……
「エリー! 魔王が私の狐とったー!」
ちょっ、チビコ何言ってんの?
「魔王様?」
エリーがこっちを睨んでくる。
「違う! コイツが勝手に!」
狐の方を指さして弁明するが、当の狐は欠伸をしてそのまま寝ようとし始める。
いやまあ、魔物以外に懐かれるのって新鮮でちょっと嬉しいけど。
あれ?
もしかして、こいつ魔物じゃねーよな?
見た目もちょっとあれだし。
とりあえず。
「ちょっ、おまっ! 下りろって!」
俺が強引に狐の首根っこを掴んで、引き離そうとする。
「キャインッ!」
狐が痛そうに鳴いているが、痛いなら下りたらいいのに……
「魔王、ウララちゃんに酷い事しないで!」
えぇ……
チビコに、なぜか怒られた……
どうしろっていうの?
これ、絶対に離れてくれないレベルなんだけど?
「うううう……もう、魔王嫌い!」
チビコちゃん待ってーーーー!
チビコちゃんが走って玉座の間から出てった。
てか俺悪くねーだろ!
「魔王様?」
エリー……俺は悪くないんやでー……
その後、1時間くらいエリーに説明してようやく納得して貰えた……
ウララどうしよう……
「あれが、チビコちゃんからペット奪った魔王様か……」
「酷い事するよなー……」
「これ見よがしに肩に乗せて見せびらかして……流石魔王……」
なんか人間が4人味方になったけど……城内に敵がそれ以上に増えた気がする……辛い……
「女勇者?」
「違います、眼鏡をかけたインテリ勇者です!」
「メンドい……パス! カインに行かせて……」
今日も魔王城は平和です。
最近は勇者の相手は主にカインにやらせてる。
知名度上げる度にね。
「フッ……弱過ぎる……その程度で魔王様に挑むとは……身の程を知れ!」
カインが左手の人差し指で勇者の剣の切っ先を押さえて溜息交じりに漏らす。
「馬鹿な! 指一本で……」
「俺に剣を抜かせる事が出来たら……その時は殺してやろう……」
カインがそう言って【強制送還】を使う。
まぁ、厳密には【強制送還】の効果を込めた魔石を手甲に埋め込んでるんだけどね。
これ一個で50回くらい【強制送還】が使える。
ちなみに市場価格で金貨1,000,000枚くらい。
市場に出る事は一生無いけどね。
日本円で100億くらいかな?
「フッ……また会える時を楽しみにしている……強くなれ勇者よ! 我を救う程にな」
しかしこの男ノリノリである。
ビッチウィッチ情報では毎日鏡の前でカッコいいポーズとか、決め台詞を考えてるらしい。
ちなみに、その鏡に映像記憶装置を付けたのは内緒な。
ある程度溜まったら投影水晶に記録して送りつけてやろう。
***
「魔王様、チビコちゃんです!」
「分かった、すぐに参ろう!」
「えぇぇぇ……」
即答して転移で玉座の間に移動する。
エリーのジト目を久しぶりに頂きました。
嬉しい。
「おう良く来たな」
俺は玉座に腰かけて笑顔でチビコを迎え入れる。
大分俺の顔にも慣れたようで、かなり引き攣っているが会話くらいは出来るようになった。
チビコが何かを抱えて俺の元まで駆けってくる。
なんだろう? 猫かな?
「えっと、魔王さまー、この子怪我してるの! 治せる?」
良く見ると、チビコの腕には一匹の狐が抱かれている。
真っ白な狐とか珍しいな……ちょっと懐かしい気がする。
それにしても、身体中擦り傷だらけだ。
かなり疲弊しているし、どこをどれだけ走ったこうなるのやら……
「大丈夫だよー! それっ!」
俺が回復魔法を使って狐を癒す。
みるみるうちに怪我が治って良く。
怪我が癒えた狐が、こちらにチラリと視線を向ける。
そして、何やら疲れたような表情。
(やっと見つけた……)
何か日本語らしきものが聞こえたような気がしたけど、まあいいや……
気のせいだろう。
「すごーい! 流石魔王さまー! 有難う」
「うむうむ良かったな。その狐はどうしたのだ?」
「うちの裏に倒れてたのをパパが見つけたの! 今日は狐鍋かなんて言ってたから慌てて連れて来た! うちで飼うの!」
「そっ、そうか」
目をキラキラさせてチビコが話してくれる。
確かに小さい子には、食べるより飼いたい衝動の方が上だろうな。
よく見ると目もクリッとして結構愛らしい顔した狐だし。
目の周りに赤い縁取りがしてあって、顔に赤い化粧のようなものが施されているのが気になるけど。
気にしたら負けだ。
ここは異世界だし。
「どうだ、少しはここでの生活にも慣れたか?」
チビコ達が魔王城城下町に住むようになって、すでに1ヶ月が過ぎた。
ハインツとその嫁は最初は怯えて外に出ようともしなかったが、チビコはわりとすぐに順応していた。
ハインツにも仕事を与えて外に出るように促したが、母親の方は最近になってようやく買い物が出来るくらいにはなったらしい。
ちなみに一家が今住んでいる家は、焼き払われた元の家を俺様のビックリドッキリチートマジック【時間包装紙】で直して転移で持ってきた。
メッチャ感謝された。
ちなみに亭主の本体を本物にした話をしたら、奥さんにメッチャ感謝された。
家より感謝された……複雑……
「うんっ! 友達も出来たよー! サハギンのローレンツ君に、ローパーのクリスティーナちゃん!」
うんっ、すぐに絶交しなさい!
先ほど同様に目をキラキラと輝かせて教えてくれるチビコにはとても言えなかった。
サハギンはともかく、ローパーってあれだよな?
触手の魔物だよな?
クリスティーナちゃんということは、女の子なんだろうけど。
心配しかない。
てか、それよりも……
おい魔族共! お前らの名前の基準はなんなんだ! 無駄に良い名前使ってんじゃねーぞ!
いやまあ、子供に罪は無いけど。
その時狐がピョンとチビコの腕から飛び降りて、俺の身体をよじ登る。
それから肩の上にチョコンと座る。
「ああ! だめー! ウララちゃんは私と一緒!」
チビコが慌てて俺の足元に来て、ピョンピョン飛び跳ねて狐を取り返そうとする。
「ウララちゃんって名前にしたんだね。可愛い名前だな」
俺がそういって、ウララを下そうとするが爪をガッチリマントに食い込ませて離れようとしない……
なんで?
「魔王だめ! ウララちゃんを返して!」
チビコが必死に俺にすがってくる。
「う……うむ、分かってるって。ちょっと待ってろ……おい、お前! 下りろって!」
必死で引き剥がそうとするが、全然離れる様子が無い。
どうしよう……
「う……うううう……」
やべーチビコちゃんが泣きそうだ……
「魔王様、こういう時は私も連れてってください」
そこにエリーが息を切らしながらやってきた。
良かった……助かった。
「エリー丁度良かった、ちょっとこの狐を引き剥がしてくれ」
「はっ?」
エリーが意味が分からないといった表情を浮かべてる。
そうだよねー……魔王の肩にしがみ付いて離れない狐なんて聞いた事ないよねー……
「エリー! 魔王が私の狐とったー!」
ちょっ、チビコ何言ってんの?
「魔王様?」
エリーがこっちを睨んでくる。
「違う! コイツが勝手に!」
狐の方を指さして弁明するが、当の狐は欠伸をしてそのまま寝ようとし始める。
いやまあ、魔物以外に懐かれるのって新鮮でちょっと嬉しいけど。
あれ?
もしかして、こいつ魔物じゃねーよな?
見た目もちょっとあれだし。
とりあえず。
「ちょっ、おまっ! 下りろって!」
俺が強引に狐の首根っこを掴んで、引き離そうとする。
「キャインッ!」
狐が痛そうに鳴いているが、痛いなら下りたらいいのに……
「魔王、ウララちゃんに酷い事しないで!」
えぇ……
チビコに、なぜか怒られた……
どうしろっていうの?
これ、絶対に離れてくれないレベルなんだけど?
「うううう……もう、魔王嫌い!」
チビコちゃん待ってーーーー!
チビコちゃんが走って玉座の間から出てった。
てか俺悪くねーだろ!
「魔王様?」
エリー……俺は悪くないんやでー……
その後、1時間くらいエリーに説明してようやく納得して貰えた……
ウララどうしよう……
「あれが、チビコちゃんからペット奪った魔王様か……」
「酷い事するよなー……」
「これ見よがしに肩に乗せて見せびらかして……流石魔王……」
なんか人間が4人味方になったけど……城内に敵がそれ以上に増えた気がする……辛い……
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