転勤は突然に~ゴブリンの管理をやらされることになりました~

へたまろ

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第1章:赴任

第37話:ゴブリン村

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 もう、村といってもいい規模になったなー。
 最初の集落の拡張工事が終わり、90匹のゴブリン達も移住してきた。
 完全に毛並みが違う、別の種族のようにも思えるけど。
 進化個体もチラホラと。
 ゴブゾウ達のレベリングのお陰だな。
 
 ゴブゾウと、ゴブマルと、ゴブエモン、ゴブ美、ゴブエル、ゴブリナ、キノコマル、ゴブサクははさらに進化した。
 それぞれの職業がⅩになって、進化。

 ゴブゾウはゴブリンの戦士Ⅰ。
 ゴブマルはゴブリンコマンダーⅠ
 ゴブエモンはゴブリン剣豪Ⅰ
 ゴブ美はトゥルーゴブリンビューティーⅠ
 ゴブエルはゴブリン司祭Ⅰ
 ゴブリナは良妻ゴブリンⅠ
 キノコマルはハピネスゴブリンⅠ
 ゴブサクは……ゴブリンゴブサクⅠ

 ゴブサク……いや、まあゴブサクの種族名は置いておいて。
 すごく気になるけど、置いておこう。

 ゴブリンの戦士というのは、ゴブリンウォーリアとは違うらしい。
 世界に4体現れる、ボス特化型のゴブリンらしい。
 ゴブリンがボス特化ってどうなのだろう。

 あっ、ボスに適任というわけじゃない。
 ボスを倒す側。
 ……水晶の加護とか受けるのかな?
 ゴブゾウは……風の水晶とかかな?
 ゴブリナの良妻ゴブリンもあれだし……いや、確かにイッヌは絶好調だけど。
 人間的成長も見られるし。
 やっぱり夫を育てるのは、妻なのかな?
 男はいつまでも子供ってのは、嘘じゃないのかも。
 それじゃ困るんだけど。
 一家の大黒柱として。

 ゴブ美はもう……素直に言おう。
 可愛い。
 毛もフサフサだし。
 といっても、流れるような艶のある栗色のゆるふわウェーブの髪の毛。
 化粧のノリも良くなったと言ってたけど。
 すっぴんは有体に言って、美少女だ。

 他は、特に特筆することはないな。
 職業名で色々と察した。
 
「うちも、進化したっすよー」

 うん、特に考察は必要ないだろう。

「みんな、ハピハピにするっすよー! それームガッ!」

 なんか、キノコマルが口から胞子を飛ばしそうな予感がしたので、慌てて口を塞ぐ。
 
「何をするんすか!」

 キノコマルが慌てて俺の腕から抜け出すと、口から紐を引っ張り出す。
 そして万国旗が……
 見たこともない旗ばかりだから、この世界の国旗かな?
 
 はあ……ほっと、胸をなでおろす。

 というか、こいつは本当にどうなっていくんだろう。

 パッシブスキルに、戦意低下とある。
 相手にやる気を無くすスキルかな?
 味方のやる気も無くなりそうだけど。
 でも、人間の軍隊にこいつを送り込めば、人が増長してどうこうってのはなんとかなりそう。
 現状、ハッピーゴブリン系統がこいつしかいないけど。
 新しい住人で、しょっちゅう茸毒になってるやつに期待だな。

「しかし……本当に、ゴブリンなのかこいつらは」

 エドが髭をさすりながら、首を傾げている。
 ミレーネやサーシャも首を傾げている。
 そしてゴブ美を見たサーシャが、また溜息を。

 ここに戻ってきて最初に風呂からあがって、どんよりとしてた原因もゴブリンビューティ達だった。

 完全に女として完敗してたと。

 うん、完敗って言葉がすでに完全敗北って意味なんだけど。
 完全を重ねるほどの、敗北感だったのかな?

「私も進化したいです」

 人って進化するのかな?
 
「するぞ? まずはゴーストじゃな……次にリッチ、ハイリッチ……それからリッチキング」

 はいはい、それは進化と呼ばないから。
 アスマさんが何か言い出したから、ほどほどで止めておく。
 
 まあ、今日からゴブリン村と名乗ろうかな。
 商業施設が何一つないけど、問題なさそうだし。

 トゥルーゴブリンビューティとかなら、人の町にいけそうだけど。
 違う意味で危険性が……

「カッカッカ、ゴブ美に勝とうと思うなら、A級冒険者が2人以上はいるのう」

 そんなに強いのか?

「こないだの時点で、ミノタウロスくらいは強かったからのう」

 その、ミノタウロスの強さがよく分からないんだけど。

「人でいうB級冒険者と同等くらいの強さです。個体によっては、B級冒険者とそれ以下の冒険者数人で当たるレベルです」

 ガードが補足してくれたけど。
 そのB級冒険者の強さが分からない。

「あー……えっと、B級冒険者……」
 
 その何級冒険者って言えば伝わるみたいなの、あんまり良くないかなー。

「B級冒険者の瞬間出力が2馬力くらいかのう……補助魔法を使って3~4馬力は出るか」

 おお、なんとなくイメージできた。

「1馬力は75kgの物を1秒で1m持ち上げる力じゃ」

 ありがとうアスマさん、よく理解できた。

「ちなみにA級冒険者ともなると5~6馬力くらいは出せる。人を超えた領域じゃからのう。S級ともなると10馬力は優に超える。参考までにサラブレッドと呼ばれる馬の脚力は数十馬力はあるが」

 急にしょぼく見えてきた。
 ちなみに普通の人間は?

「身体も鍛えておらぬ一般人なら、0.2馬力~0.3馬力くらいかのう」

 おお、B級冒険者凄いじゃん。

「魔法とかは別にした、純粋な力じゃな……ちなみに、ゴブ美は30馬力くらいは出せるぞ」

 アスマさんの言葉に、ゴブ美が恥ずかしそうにしてるけど。
 あんな華奢な身体で、クルミとか簡単に握りつぶすのか。
 怒らせないようにしないと。

「ちなみにお主は……本気でリミッターを外して力を入れれば想像もつかんな」

 アスマさんにも、分からないのか。
 どれだけ力に振ったら、私の馬力は53万ですとかって言えるのかな?
 53万馬力が想像もつかないけど。

「120馬力でスポーツカークラスじゃ。300馬力以上でトラックじゃな」

 凄いなー。

「で……お主はトラックよりはある」

 はっ?

「そりゃそうじゃろう……重量が数トンあるドラゴンを押して転がすようなやつが」

 ……そっか。
 後ろを振り返る。
 ガード達がちょっと距離を取ってた。
 大丈夫だよー。
 そんなに怖くないよー。

 てかアスマさん詳しいなー。
 
「ふん、お主の世界の知識なのになぜお主が知らんのか、そっちの方がはなはだ理解できんがのう」 

 馬力について、詳しく知ろうとなんか誰も思わないよ。
 馬力って言われてもよくわからないしな。

 とりあえず、切株を引っこ抜けるだけの力はあるし……確かに重機みたいだな。
 あっ、あれからまたステータス伸ばしたんだった。
 ちょっと、しばらくステータスには触れずに、面白そうなスキルだけ集めるようにしよう。

「ちなみに、ミノタウロスの膂力は20馬力はあるぞ」

 また、強さが分からなくなってしまった。
 B級冒険者どころかS級……

「馬力だけがすべてじゃないということじゃな」

 黙って感心して説明を聞いた時間を返してほしい。

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