転勤は突然に~ゴブリンの管理をやらされることになりました~

へたまろ

文字の大きさ
44 / 77
第1章:赴任

第38話:実験

しおりを挟む
「そーれ! そーれ!」

 村の中心から大きな掛け声が聞こえてくる。
 いまやっているのは綱引き。 
 31人で。

 なぜ奇数なのかというと……

 俺対、進化ゴブリン30人での綱引き。
 1対30だ。

 ちなみに、現在綱はぴくりとも動いていない。
 というか、ワイヤーだけど。
 綱でやったら、途中で切れてけが人がでてしまった。
 ゴブリン側に。

 俺はさして踏ん張ってもいなかったので、なんともなかったけど。

 で、ワイヤーを使って仕切り直し。

「本当に出鱈目っすねー」

 キノコマルが何か言ってるが、気にしない。
 とりあえず、片手で思いっきり引っ張る。
 
「うわわあ」
「わあああああ」

 これ、接待……されてないよね?

「本気でやってる?」

 俺の一言に、対戦相手の30人から怒気が立ち上る。
 本気だったのかな?

「もっと、呼んで来い!」
「このままじゃ、終われん」

 気が付けば50対1。
 うーん……

「本気でやってる?」

 今度は全員が両手両膝をついて項垂れた。
 満身創痍だ。
 俺が接待すべきだったかな?

「本当に本気を出したら、どれほどの馬鹿力なんじゃお主は……」

 このワイヤー引きちぎれたりして。
 流石に無理かなー。

「あっ……」

 思いっきり両側に引っ張ったら、ブチブチっという音が聞こえたので途中でやめた。
 ゴブリン達がドン引きしている。

「50対1の綱引きに耐えられた綱が……」

 たぶん、いままでの引っ張り合いですでにダメージを負ってたんじゃないかな?
 綱引きの途中じゃなくてよかった。
 洒落じゃすまないけが人が出るところだったなー。

 ここは安心するところだろ?
 そんな微妙な目でみなくても。
 どんよりとした100個の目って、意外と圧が凄いんだぞー!

***
 ジャッキーさんに相談。

「だったら、弱体化の魔法を自身に掛けたらどうですか?」

 なるほど……そんなこと、できるの?
 そっち方面の耐性、かなり育ててるけど。

「あー……じゃあ、まずは耐性を剥がす魔法から」

 その魔法の耐性も万全。

「……全ての耐性を解除する魔法を」

 もちろん、対策済み。

「……詰んでますね」

 詰んでるとか言わないで、一緒に考えてほしい。
 
「というか、魔王とか目指してます?」
「魔王ならこないだあったけど、あれはやりたくないかなー」

 魔王ってなんか、大変そうだし。
 そもそも魔族でもない俺が、魔族の王なんて無理無理。
 支持率0%で、秒で政権崩壊だな。

「力こそ全ての人達ですよ」

 脳筋の集まりかー。
 賢そうなイメージあったのに。

「いえ、魔力や知識等含めて才あるものこそ正義という、国民性です」

 なるほど。
 でも、やりたくないなー。

「ちなみに、私が言ってる魔王ってのはゲームのラスボス系の方ですよ? 基本、デバフ無効で物理も魔法も馬鹿げたダメージを与えてくる方の」
「俺の知ってる魔王は、眠るけどね」
「……特殊な例を持ち出さないでください」

 ジャッキーさんが諦めて会社に戻って2時間後。

「できましたよ! ステータス確認してください」

 ステータスを確認すると、スキルのところにNEWの文字が。
 見ると、全耐性絶対貫通膂力魔力割合自在変動付与スキル。
 長いスキル名だなー……

「マジーン様に特別に作ってもらいました。サトウさん専用スキルですよ」

 とりあえず、無料でくれるらしい。
 さっそく習得。
 で、ジャッキーさんに。

「ちょっとー! 何してくれてるんですか!」

 割合を一厘にまで減らしたら、地面にペタンと伏せてた。
 すぐに解除する。
 
「へえ、本当に凄いスキル……あれ? ジャッキーさーん?」

 ジャッキーさんが消えた。
 と思ったら、数分で息を切らして戻ってきた。

「人に向けて使えないようにしてもらいました」

 なんだ、無敵のスキルゲットだと思ったのに。
 まあ、別に人に向けて使う気は無かったけど。

「真っ先に私に打っておいて、何を!」

 いや、神に効くなら間違いないかなと。
 自分で実験するの、ちょっと怖くて。

「あなたは、神をなんだと思ってるんですか!」
「上司?」
「上司をなんだと思ってるんですか!」

 そりゃあれだ……責任を押し付けて、手柄を横取りする……

「酷い上司ですね……私は、そんなことしたことないでしょう!」

 まあ、そうだけど。
 人に働かせておいて、合コン三昧なのはいかがなものかと……

「それを言われると、ちょっと痛いところではありますが……」

 ちょっとだけスッとしたので、改めて自分に。
 おお、凄い!
 綱引きで使ったワイヤーで。
 指でブチブチ切れる。

「な……何を?」
「割合を10割増しにしてみました。いや、変動って書いてあったから」

 盛大に溜息を吐かれた。
 で一応、色々と調整して3分くらいまでに抑えると、不意に力が入ってもガラスのコップが砕けるてい……2分で調整しておいた。

 まあ、ステータスの方はこれ以上増やすつもりもないし。
 てか、もしかしなくても人の町に行っても安全なんじゃないかな?
 護衛にゴブ美と……あとは、ジニーを連れて行ったら。

「問題ないとは思いますが」

 そっか、もしかしたら観光が出来るってことか。
 うん、ようやく異世界の町を見られるんだな。

「ある程度、覚悟はしておいてください」

 ん?

「中世風の文明度ですから……まあ、魔法のお陰である程度は衛生面はマシですけど、路地裏には入らないようにお勧めします。それと、民家と民家の間の狭い通りも歩かない方がいいですよ」

 なんだろう。
 スラムとかで治安が悪いのかな?
 でも、いまさら追いはぎやチンピラに絡まれたところで。

「上から降ってきますよ……その、人の排泄物とか」

 あっ、全然町に行きたくなくなった。
 ここの方がマシなのかな?

 ジャッキーさんが全力で首を縦に振るってる。
 マジかー……

「大丈夫ですよ! 大通りとか、表通りなら普通に綺麗ですから」

 なんの慰めにもなってないと思うけど。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...