24 / 91
第2章:風の調べとゴブリンとコボルトと
第4話:食事回
しおりを挟む
「この鍋はどこから?」
「あー、ちょっとね」
テッドが目の前でグツグツと煮えたぎっている鍋を前に、首を傾げている。
ランドールのお陰で、地形魔法と地属性魔法は魔力の問題さえ解決できれば、いっぱい使えるようになったが。
現時点では鞘につけてる魔力をため込む魔石があるから。
そこに潤沢な魔力もあるし。
えっ?
だいぶ減ってる?
なんで?
ああ、リンドに向かう道中でお風呂を作ったりしたからか。
他にもちょこちょこと。
魔法が使えるのが楽しくて、手慰みに……
すまん。
ちなみに、魔石の予備が実はあったり。
魔石は長期間魔力を浴び続けた鉱石が変質したもの。
この鞘に埋め込まれている魔石は、流石領主様がくれたものだけあって質も大きさも上質。
でも、予備の魔石はさらにその上をいく逸品。
くれたのはランドールを仲介してだけど、彼の祖父。
齢2000歳を超える、由緒正しきドラゴン。
まあ、そのランドールのおじいちゃんのおじいちゃんも健在でそっちは5000歳。
若い古龍らしい。
ふふ、5000歳で若いってのもどうかと思うが。
若い古龍ってなんだ?
まあ、その古龍は子孫もたくさんいるから、直系というか本家以外は全て同列の眷属とみなしているみたいだけど。
いわゆる、長男教ってやつか……
まあ、長男教だからって長男が必ずしもいい目を見るとは限らないが。
遺産も家も何もいらないから、好きに生きたい長男だっていたりする。
いや、知人の話なんだけど……いやいや、どうでもいいや。
そのランドールからもらった魔石。
彼のおじいちゃんの寝床から、こっそりと……
2000年近く、地竜の魔力を浴び続けた魔石。
を、拝借する直前で見つかり、彼の祖父自身が魔力を大量に込めて圧縮した石。
ランドールの掌ほどのサイズの魔石が、ニコの親指の爪ほどまでに圧縮されたらしい……
それ、硬度もたぶんやばいことになってるよね?
その魔石を板状に伸ばしたものを、鞘の内側に張り付けている。
板状にしたのもまた、ランドールの祖父。
鞘に魔石をいっぱいつけるのもあれだし、隠したかったからランドールにお願いした。
顔を真っ赤にして潰そうとしてたけど、諦めてどっか飛んでいった。
俺を連れて。
ニコが物凄く焦っていたのが笑える。
だって、俺がいないとゴブリン言語分からないもんな。
こんなときのために、ゴブスチャンには人言語を勉強させておいたが。
最初は喋られないフリしろと、言い含めて。
俺のありがたみを分からせるために。
「ご安心を、私が通訳をいたしますゆえ」
「ゴブスチャンさん……」
ふふ、ランドールが飛び立った瞬間に話しかけてた。
甘々だ。
ハーシースのチョコレートなみに甘いぞゴブスチャン。
甘すぎて、奥歯がキーンとなるわ!
まあ、逆にいえば安心して任せられるが。
ランドールの祖父のところでの話はまた今度にして、だから俺の鞘には隠された魔石に古龍の魔力が……
まあ、緊急用だけどね。
ピンチの時に、無尽蔵に魔力が湧きだすのってかっこいいよね?
シチュエーション考えないと。
怒りに比例して魔力が漏れるパターンとか……ありきたりか。
「へえ、異国の料理なんだ」
「牡丹鍋って言うんですよ」
「ボタン鍋?」
テッドが自分の服をじっと見たが、残念。
テッドのチュニックにはボタンはついてなかった。
「お花の牡丹ですよ」
「牡丹ってお花があるんだ」
「ええ、花王、花神、百花王と呼ばれる豪華な花びらを携えた綺麗なお花ですよ。このイノシシのお肉の鮮やかなピンクと赤のコンストラクションによく似ているのです」
「ていうか、このお皿の盛り付けやばいよね?」
「なになに?」
「このイノシシのお肉が、お花に似てるんだって」
「わー、綺麗」
大皿に花のように盛りつけた猪肉を見てリサとミーナも、声をあげている。
「だから、猪肉をつかったこの料理を牡丹鍋と呼ぶんですよ」
ちなみに説明しているのはフィーナだ。
ニコはバンチョと一緒に、ゴートにつかまっていた。
というか、ニコとバンチョがゴートを捕まえていたともいえるが。
「いくら森の入り口で、魔物が少ないといってもそれは流石に」
「ニコさん」
「えー、こんな良い料理があるのに? ていうか、せっかくのバーベキューなのに」
ゴートのやつ、酒を持ち込んでいたらしい。
しかも、こともあろうがそれをバンチョに勧めていたと。
それに対して、ニコが注意している。
うんうん。
良いぞ、ニコ!
もっとやれ!
俺だって、かなり我慢してるのに。
本当は料理だって食べたいんだ。
「ふふーん」
こいつ。
いま、俺の方を見て笑った気がする。
そして、ニコの制止を無視してコップに入れた酒を飲み干しやがった。
まあ、こいつがこの程度で酔ったりしないことは知っているが。
腹が立ったのは事実だ。
どうしてやろう……
【身体強化が発動しました】
【筋力強化が発動しました】
【腕力強化が発動しました】
【握力強化が発動しました】
よし、ニコ!
やれ!
「えっ?」
『思いっきり、つねってやれ』
「う……うん」
俺の言葉に、遠慮気味にゴートの腕をつねるニコ。
思いっきりって言ったのに。
「ギャアアアア! なんて力でつねりやがる!」
「あっ……」
とっさにニコが謝りかけたのを、ランドールの威圧を使って止める。
「す……すまん」
まあ、主にゴートに向けたものだが。
その迫力にビビったのか、ゴートが素直に謝ったので許してやろう。
少しだけ。
残りの恨みは、また今度だ。
「これ、フィーナちゃんが」
「ありがとう」
「おっ、美味そう」
「あれ、俺のだけ肉少なくね?」
そこにテッドが牡丹鍋をよそって持ってきてくれた。
ゴートのだけ肉少なめ。
フィーナがさっきのやり取りを見てたのだろう。
そもそも、こいつは何もしてないし。
悪く言えば、たかりに来たようなもんだしな。
「なんだよ、せっかく何か起こったら守ってやろうと思ってたのに……酷いぜ! あっ、美味い」
ゴートがブーブー言いながらお皿に手を付けて、固まってた。
「やばっ、これ美味すぎるだろ!」
「食べたことない味……」
まあ日本酒もみりんも味噌も、テトの森のゴブリンの国でしか作ってないだろうしな。
さぞや珍しかろう。
「なんていうか身体に染みわたる美味さだな」
「肉も柔らかくて美味しい」
「脂身が甘いね」
「グヌヌ……」
ゴートの分とちがって、肉がたっぷり入っている3人は豪快に肉を食べているが。
あー……
「フィーナ」
「……宜しいのですか?」
「うん、まあ最初にお世話になった人だし」
ニコがフィーナに言って、ゴートにも肉を追加させた。
「はは、ありがとうな」
ゴートが嬉しそうだ。
俺もニコに影響を受けたのか、随分とお人よしに……
いや、普通か。
さっきの対応の方が、狭量すぎた。
もう少し、大人にならないと。
ちなみにフィーナはリサとミーナに囲まれて、ワイワイと楽しそう。
というか、質問攻めにあってるというか。
最初は料理のことについて、物凄く真剣に質問されていた。
今度、家で教える約束までしてた。
凄くコミュニ―ケーション能力の高いゴブリンだ。
ゴブリンということを、忘れてしまいそうになるくらいに。
その後はコイバナに。
ニコに対するフィーナの思いや、これまでのことを色々と。
「私はニコ様を愛してます。あの方のためなら、この身などどうなっても構いません」
「キャー!」
そんなフィーナの宣言に、女子2人は黄色い悲鳴をあげながら満面の笑みを両手で覆って隠していた。
臆面もなくそんなことが言えるフィーナに、2人とも感動したようだけど。
『ゴブリンが3匹ほど近づいてるぞ』
「えっ?」
俺の気配探知の範囲内に、ちょっと変わった気配を感じたので俯瞰の視点で確認したらゴブリンが。
かなりガリガリ。
1匹はよぼよぼの皺だらけ。
残りの2匹は、まだまだ子供だな。
『警戒だけは……いいや、俺がするからお前は飯を楽しんでろ』
「うん……」
ニコにそれだけ言うと、ゴブリンを観察。
かなり注意深く、ゆっくりとニコ達に近づいているけど。
その足取りは、どこかおぼつかない。
子供のゴブリンも、よぼよぼのゴブリンもお互いが支えあっているような。
敵意は全く無さそうだけど……
「むっ……」
距離が20mを切ったところで、ゴートも気づいたようだ。
流石というか、いや微妙かな?
20m……なら、まだ全然余裕で対処可能か。
周りを見渡したゴートが、ニコと視線があって少し止まる。
ニコが頷くと、少し驚いた様子のゴートが笑みを浮かべて立てかけていた剣を手元に寄せる。
ちょっと待て。
ゴブリンの様子がおかしいから、いきなり斬るのは……
普通かな?
人とゴブリンの関係性からいったら。
しかしゴブリンはそれ以上近づいてくる気配がない。
何かを期待したかのように、ジッと息をひそめて一行を見つめている。
子ゴブリンの喉がゴクリとなったのが分かる。
あー……
なんらかしらの事情で、長いこと何も食べてないのかな?
フィーナは特に気にした様子も無かったが、ニコが気付いたことでどうしますかといった感じに首を傾げてきた。
ニコに、首を横にふらせる。
気にするなという合図代わりに。
しかしだ……いかんな。
ゴブリンと共同生活を送ってたせいで、俺もニコも情が湧いている。
できれば見逃してやりたいと。
ゴートあたりが、許してくれそうにないが。
「変なこと考えるなよ? いまは子供でも、大きくなったら人を襲うし、繁殖力も高いからな……いまのうちに、殺っておくべきだぞ」
おっと、逡巡するニコの様子に気付いたのか。
ゴートが釘を刺してきた。
うーん……人の方が繁殖力旺盛というか。
なんか、その考え方ってもやっとするんだよな。
そもそも配下にすれば良いだけで。
生産調整も勝手にやってくれるし。
人間の方がよっぽど、無計画に思える。
「実は僕……テイムできるかも」
「はっ?」
ニコに言わせてみたが、ゴートがアホ面で口を開けてニコを見つめることになった。
あの口に、何か放り込んでみたい衝動に駆られるが。
まあ、おいとこう。
「何故か、ゴブリン言語のスキルをテトの森で手に入れたんですよね」
「……何故か?」
「あー……厳密にいうと、ゴブリンを狩りまくった時に……ゴブリン狩りの称号と共に」
「そ……そうか。そういうことも、あるか……いや、ないだろう! あるのか?」
「まあ、見ててください」
そう言って、ゴブリンが潜んでいる繁みに向かうニコを、ゴートが胡散臭そうな目で見送っていた。
「あー、ちょっとね」
テッドが目の前でグツグツと煮えたぎっている鍋を前に、首を傾げている。
ランドールのお陰で、地形魔法と地属性魔法は魔力の問題さえ解決できれば、いっぱい使えるようになったが。
現時点では鞘につけてる魔力をため込む魔石があるから。
そこに潤沢な魔力もあるし。
えっ?
だいぶ減ってる?
なんで?
ああ、リンドに向かう道中でお風呂を作ったりしたからか。
他にもちょこちょこと。
魔法が使えるのが楽しくて、手慰みに……
すまん。
ちなみに、魔石の予備が実はあったり。
魔石は長期間魔力を浴び続けた鉱石が変質したもの。
この鞘に埋め込まれている魔石は、流石領主様がくれたものだけあって質も大きさも上質。
でも、予備の魔石はさらにその上をいく逸品。
くれたのはランドールを仲介してだけど、彼の祖父。
齢2000歳を超える、由緒正しきドラゴン。
まあ、そのランドールのおじいちゃんのおじいちゃんも健在でそっちは5000歳。
若い古龍らしい。
ふふ、5000歳で若いってのもどうかと思うが。
若い古龍ってなんだ?
まあ、その古龍は子孫もたくさんいるから、直系というか本家以外は全て同列の眷属とみなしているみたいだけど。
いわゆる、長男教ってやつか……
まあ、長男教だからって長男が必ずしもいい目を見るとは限らないが。
遺産も家も何もいらないから、好きに生きたい長男だっていたりする。
いや、知人の話なんだけど……いやいや、どうでもいいや。
そのランドールからもらった魔石。
彼のおじいちゃんの寝床から、こっそりと……
2000年近く、地竜の魔力を浴び続けた魔石。
を、拝借する直前で見つかり、彼の祖父自身が魔力を大量に込めて圧縮した石。
ランドールの掌ほどのサイズの魔石が、ニコの親指の爪ほどまでに圧縮されたらしい……
それ、硬度もたぶんやばいことになってるよね?
その魔石を板状に伸ばしたものを、鞘の内側に張り付けている。
板状にしたのもまた、ランドールの祖父。
鞘に魔石をいっぱいつけるのもあれだし、隠したかったからランドールにお願いした。
顔を真っ赤にして潰そうとしてたけど、諦めてどっか飛んでいった。
俺を連れて。
ニコが物凄く焦っていたのが笑える。
だって、俺がいないとゴブリン言語分からないもんな。
こんなときのために、ゴブスチャンには人言語を勉強させておいたが。
最初は喋られないフリしろと、言い含めて。
俺のありがたみを分からせるために。
「ご安心を、私が通訳をいたしますゆえ」
「ゴブスチャンさん……」
ふふ、ランドールが飛び立った瞬間に話しかけてた。
甘々だ。
ハーシースのチョコレートなみに甘いぞゴブスチャン。
甘すぎて、奥歯がキーンとなるわ!
まあ、逆にいえば安心して任せられるが。
ランドールの祖父のところでの話はまた今度にして、だから俺の鞘には隠された魔石に古龍の魔力が……
まあ、緊急用だけどね。
ピンチの時に、無尽蔵に魔力が湧きだすのってかっこいいよね?
シチュエーション考えないと。
怒りに比例して魔力が漏れるパターンとか……ありきたりか。
「へえ、異国の料理なんだ」
「牡丹鍋って言うんですよ」
「ボタン鍋?」
テッドが自分の服をじっと見たが、残念。
テッドのチュニックにはボタンはついてなかった。
「お花の牡丹ですよ」
「牡丹ってお花があるんだ」
「ええ、花王、花神、百花王と呼ばれる豪華な花びらを携えた綺麗なお花ですよ。このイノシシのお肉の鮮やかなピンクと赤のコンストラクションによく似ているのです」
「ていうか、このお皿の盛り付けやばいよね?」
「なになに?」
「このイノシシのお肉が、お花に似てるんだって」
「わー、綺麗」
大皿に花のように盛りつけた猪肉を見てリサとミーナも、声をあげている。
「だから、猪肉をつかったこの料理を牡丹鍋と呼ぶんですよ」
ちなみに説明しているのはフィーナだ。
ニコはバンチョと一緒に、ゴートにつかまっていた。
というか、ニコとバンチョがゴートを捕まえていたともいえるが。
「いくら森の入り口で、魔物が少ないといってもそれは流石に」
「ニコさん」
「えー、こんな良い料理があるのに? ていうか、せっかくのバーベキューなのに」
ゴートのやつ、酒を持ち込んでいたらしい。
しかも、こともあろうがそれをバンチョに勧めていたと。
それに対して、ニコが注意している。
うんうん。
良いぞ、ニコ!
もっとやれ!
俺だって、かなり我慢してるのに。
本当は料理だって食べたいんだ。
「ふふーん」
こいつ。
いま、俺の方を見て笑った気がする。
そして、ニコの制止を無視してコップに入れた酒を飲み干しやがった。
まあ、こいつがこの程度で酔ったりしないことは知っているが。
腹が立ったのは事実だ。
どうしてやろう……
【身体強化が発動しました】
【筋力強化が発動しました】
【腕力強化が発動しました】
【握力強化が発動しました】
よし、ニコ!
やれ!
「えっ?」
『思いっきり、つねってやれ』
「う……うん」
俺の言葉に、遠慮気味にゴートの腕をつねるニコ。
思いっきりって言ったのに。
「ギャアアアア! なんて力でつねりやがる!」
「あっ……」
とっさにニコが謝りかけたのを、ランドールの威圧を使って止める。
「す……すまん」
まあ、主にゴートに向けたものだが。
その迫力にビビったのか、ゴートが素直に謝ったので許してやろう。
少しだけ。
残りの恨みは、また今度だ。
「これ、フィーナちゃんが」
「ありがとう」
「おっ、美味そう」
「あれ、俺のだけ肉少なくね?」
そこにテッドが牡丹鍋をよそって持ってきてくれた。
ゴートのだけ肉少なめ。
フィーナがさっきのやり取りを見てたのだろう。
そもそも、こいつは何もしてないし。
悪く言えば、たかりに来たようなもんだしな。
「なんだよ、せっかく何か起こったら守ってやろうと思ってたのに……酷いぜ! あっ、美味い」
ゴートがブーブー言いながらお皿に手を付けて、固まってた。
「やばっ、これ美味すぎるだろ!」
「食べたことない味……」
まあ日本酒もみりんも味噌も、テトの森のゴブリンの国でしか作ってないだろうしな。
さぞや珍しかろう。
「なんていうか身体に染みわたる美味さだな」
「肉も柔らかくて美味しい」
「脂身が甘いね」
「グヌヌ……」
ゴートの分とちがって、肉がたっぷり入っている3人は豪快に肉を食べているが。
あー……
「フィーナ」
「……宜しいのですか?」
「うん、まあ最初にお世話になった人だし」
ニコがフィーナに言って、ゴートにも肉を追加させた。
「はは、ありがとうな」
ゴートが嬉しそうだ。
俺もニコに影響を受けたのか、随分とお人よしに……
いや、普通か。
さっきの対応の方が、狭量すぎた。
もう少し、大人にならないと。
ちなみにフィーナはリサとミーナに囲まれて、ワイワイと楽しそう。
というか、質問攻めにあってるというか。
最初は料理のことについて、物凄く真剣に質問されていた。
今度、家で教える約束までしてた。
凄くコミュニ―ケーション能力の高いゴブリンだ。
ゴブリンということを、忘れてしまいそうになるくらいに。
その後はコイバナに。
ニコに対するフィーナの思いや、これまでのことを色々と。
「私はニコ様を愛してます。あの方のためなら、この身などどうなっても構いません」
「キャー!」
そんなフィーナの宣言に、女子2人は黄色い悲鳴をあげながら満面の笑みを両手で覆って隠していた。
臆面もなくそんなことが言えるフィーナに、2人とも感動したようだけど。
『ゴブリンが3匹ほど近づいてるぞ』
「えっ?」
俺の気配探知の範囲内に、ちょっと変わった気配を感じたので俯瞰の視点で確認したらゴブリンが。
かなりガリガリ。
1匹はよぼよぼの皺だらけ。
残りの2匹は、まだまだ子供だな。
『警戒だけは……いいや、俺がするからお前は飯を楽しんでろ』
「うん……」
ニコにそれだけ言うと、ゴブリンを観察。
かなり注意深く、ゆっくりとニコ達に近づいているけど。
その足取りは、どこかおぼつかない。
子供のゴブリンも、よぼよぼのゴブリンもお互いが支えあっているような。
敵意は全く無さそうだけど……
「むっ……」
距離が20mを切ったところで、ゴートも気づいたようだ。
流石というか、いや微妙かな?
20m……なら、まだ全然余裕で対処可能か。
周りを見渡したゴートが、ニコと視線があって少し止まる。
ニコが頷くと、少し驚いた様子のゴートが笑みを浮かべて立てかけていた剣を手元に寄せる。
ちょっと待て。
ゴブリンの様子がおかしいから、いきなり斬るのは……
普通かな?
人とゴブリンの関係性からいったら。
しかしゴブリンはそれ以上近づいてくる気配がない。
何かを期待したかのように、ジッと息をひそめて一行を見つめている。
子ゴブリンの喉がゴクリとなったのが分かる。
あー……
なんらかしらの事情で、長いこと何も食べてないのかな?
フィーナは特に気にした様子も無かったが、ニコが気付いたことでどうしますかといった感じに首を傾げてきた。
ニコに、首を横にふらせる。
気にするなという合図代わりに。
しかしだ……いかんな。
ゴブリンと共同生活を送ってたせいで、俺もニコも情が湧いている。
できれば見逃してやりたいと。
ゴートあたりが、許してくれそうにないが。
「変なこと考えるなよ? いまは子供でも、大きくなったら人を襲うし、繁殖力も高いからな……いまのうちに、殺っておくべきだぞ」
おっと、逡巡するニコの様子に気付いたのか。
ゴートが釘を刺してきた。
うーん……人の方が繁殖力旺盛というか。
なんか、その考え方ってもやっとするんだよな。
そもそも配下にすれば良いだけで。
生産調整も勝手にやってくれるし。
人間の方がよっぽど、無計画に思える。
「実は僕……テイムできるかも」
「はっ?」
ニコに言わせてみたが、ゴートがアホ面で口を開けてニコを見つめることになった。
あの口に、何か放り込んでみたい衝動に駆られるが。
まあ、おいとこう。
「何故か、ゴブリン言語のスキルをテトの森で手に入れたんですよね」
「……何故か?」
「あー……厳密にいうと、ゴブリンを狩りまくった時に……ゴブリン狩りの称号と共に」
「そ……そうか。そういうことも、あるか……いや、ないだろう! あるのか?」
「まあ、見ててください」
そう言って、ゴブリンが潜んでいる繁みに向かうニコを、ゴートが胡散臭そうな目で見送っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる