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第4章:鬼
第9話:足跡の主
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「ニコ様」
「んんっ?」
すっかり宿で眠っていたニコを、ゴタロウが起こす。
夜も更けて、外にはフクロウの鳴く声や狼の遠吠えが時折聞こえてくる。
殆どの動物たちも寝静まっているのだろう。
「あれ、ゴタロウ?」
ニコが目を覚まして周りを見渡す。
黒装束に身を包んだゴタロウを発見するのに、少し時間が掛かったが少しずつ目がなれてきたのだろう。
ベッドの脇に立つゴタロウに視線を向ける。
「足跡の正体が分かりました」
「本当?」
「ええ、一緒に来られますか?」
「うーん」
おいっ!
行けよ!
お前の仕事だろ!
眠いからパスとか言い出したら、ゴブリン王国に連れ戻してその根性叩き直すぞ?
「うん、すぐに行くから待ってて」
そう言ってニコが布団から飛び出して……布団に戻る。
「寒い……」
いや、おまっ……
そんなんで、本当に冒険者やってたのか?
なんか、色々とだめになってる。
よしっ、ゴタロウ!
少し厳しくいけ!
「えっと……それは、ちょっと可哀想かと」
おいいっ!
ダメだ、こいつら。
ニコをなんだと思ってるんだ。
もういい……
【ウィンドショット】
「あいたっ」
とっとと、起きていけ!
次は、もっと強めにぶつけるぞ?
仕方ないので、俺が物理的に叩き直す。
剣の状態でも魔法は使えるからな。
ニコに向かって、弱めの風の塊をぶつけてやった。
「うーん、ちょっと待ってって! 少し身体があったまってから」
あーん?
だったら次は氷の礫でも当ててやろうか?
「酷くない? そんなのぶつけられたら、痛いじゃすまないよ!」
じゃあ、水でも掛けてやろうか?
【アクアボール】
水の球を作り出して、空中で維持する。
これ以上ぐずったら、頭からぶっかけてやる。
「もう、鈴木さんは乱暴だなあ」
よく言った。
どうやら、本気でぶつけられたいみたいだ。
「ごめんごめん、すぐに用意するよ」
俺の本気を感じ取ったのか、ニコが準備を始める。
それでものそのそとした動きなのに、ため息が出る。
「よしっ!」
よしっ! じゃない。
俺を忘れてる。
「ああ、喋ってたから一緒にいると思ってた」
まあ、分からないでもないけど。
俺がいないと、お前けっこうポンコツだからな?
「あははは、そんなの知ってるよ」
笑い事じゃないんだけど?
流石にこれには、ゴタロウもため息を吐いていた。
フィーナは眠いし寒いからパスと言われた。
お前……寒冷耐性あるよね?
しかも、睡眠時間5分でも十分活動出来るよね?
単純に面倒くさいだけらしい。
外にでたら、また身体洗わないと布団に入れないしなんて呟いていた。
くそっ……
完全に、拾われるやつと同行者を間違えた。
もう少しまともな冒険者に拾われたかったよ。
ここまで付き合ったら、いまさら変えるわけにもいかないけどさ。
それから2人で村の奥にある畑へと向かう。
家畜たちは、小屋の中に入れられてしっかりと扉を閉めて閂までしてある。
そのうえで見張りもいるので、そっちには向かわなかったらしい。
そして畑の作物を物色する人影。
二本の角を頭にはやしているが、思ったよりも小さい。
うーん……160cmくらいか?
足跡を見たときは、2mは超えてると思ったんだけどな。
「まだ、子供のようですね……それと確かに近くにいたのですが、見落としていた原因なのですが」
「見落としていた原因?」
「ハーフです、あの子」
ハーフ?
なんの?
「鬼と、人のハーフです。おそらく、この村の誰かの子供か……よそから連れてこられて捨てられた子かと」
「ふーん……ハーフだと、なにかあるの?」
俺の感じた疑問を、ニコがゴタロウに聞いてくれた。
「まだ、成長先が決まってないようで、夜になると月の魔力で鬼の姿になるようです……ただ、まだ成長過程の段階なので三日月や新月のときは魔力が足りずに変身しないようですよ」
なるほど。
それで毎晩、出てくるわけじゃなかったのか。
いや、それよりもなんで村の畑を荒らしたり?
「流石に鬼ともなると、食べる量が人のそれとは違いますからね。空腹に耐えかねてといったところでしょうか?」
目の前の背丈には見合わない幼い顔つきの鬼は、畑から蕪のようなものを抜いている。
それから、移動しながら色々な作物を抜く。
顔を見ると、悲しそうな表情だ。
申し訳ないという思いも混じっているのかな?
人並みに罪悪感は感じているようだ。
それでも、背に腹は代えられないと。
なんで、こんなところに。
まあ、村の子供の場合は、その離れたところにある鬼の集落の鬼が関係しているのだろう。
捨てられたにしても、その集落の鬼に関連性がありそうだ。
いや……逆のパターンはないか?
鬼の集落から捨ててこられたとか?
日中は人の姿ということは、たとえば女の鬼と人のハーフで里で人の姿のことが多いから、人のそばで暮らした方が幸せになれるんじゃないかと……
考えすぎかな?
「流石です。その可能性は視野にいれてませんでした。とりあえず、捕まえて話を聞きますか?」
そうだな、なんにせよ接触しないことには、進まんな。
「では、ニコ様! 行きますよ」
「うん」
うーん……もう少し、主体性を持ってほしい。
結局俺とゴタロウしか、意見を出し合ってなかったし。
これはあれだな。
俺は血を吸って強化されていくし、バフでニコを強化して色々と鍛えていたつもりだったが。
内面が全然、育ってなかった。
結果、俺がいることで楽が出来てしまってるのもあるし。
ずっと一緒に居るとも限らないから、将来のことを考えて……
いやまあ、人1人分の人生くらい付き合っても、今までの俺の過ごした年月を考えたら大した時間でもないが。
って、俺も大概甘いな。
いつ、俺と離れ離れになっても大丈夫なように……そうなったら、そうなったでゴブリン達が、どうにかしてくれるだろう。
特にゴブスチャンあたりが、うまいこと担ぎ上げてくれるだろう。
彼の忠誠心も、振り切ってる……て、どう転んでもニコが人生イージーモードになってる。
これは、だめだ。
だめなのかな?
これは、これでありなような……
いやいや、俺のパートナーとして心許ない。
やっぱり、俺ばっかり強くても仕方ない。
相方も強くあってこそだ。
やっぱり、鍛えよう。
「なんか、寒気が」
ニコ……
「えぇ、なんか怖いよ」
頑張ろうな。
「ひっ」
普通に励ましたのに、怯えられてしまった。
いかんな、何が悪かったのだろう。
さてさて、目の前の鬼に目をやる。
可哀そうに服はボロボロだな。
これは引っ掛けたとかじゃなくて、鬼になったさいにサイズが合わずに引きちぎられてしまったのだろう。
まあ、引っ掛けた穴とかもあるかもしれないし。
それに、肋骨が浮き出ててガリガリの印象を受ける。
やっぱり、食べ物が足りてないんだろう。
こないだ、家畜というか牛を1頭攫って行ったと聞いたのだけど。
まあ1週間以上前だから、もう残ってないか。
仮に残ってたとしても、腐ってたり虫が湧いてたりして食べられないのかもしれない。
しかし、黙って畑の被害を見過ごすわけにもいかん。
流石に、そろそろ。
「ニコ様、私が裏から回りますから、正面からお願いします」
「ええっ?」
「大丈夫ですよ。シノビゴブリン達が援護しますし、主もおられますので」
俺まで作戦に組み込むな、ゴタロウ。
まあ、死なれたら困るから手助けはするが。
「名乗りをあげてくださいね。それではゴブ運を」
「う……うん」
いま、ゴタロウのやつゴブ運って言ったか? ご武運じゃなくて……
それは、ゴブリン用語かな?
ちょっと、分からんけど。
「うー……」
おうおう、うーじゃなくてとっとといかんかい!
こうしてる間にも、畑が荒らされてるんだぞ?
「でも……相手、でかいし」
でかいけど、ガリガリだろう。
お前の敵じゃない。
「うん……なんか、見てて可哀想」
うーん……
「あのくらい、分けてあげてもいいんじゃなかなって。だって、まだ子供なんでしょ?」
そうだな……
育ち盛りの子供があんなにやせ細って、野菜を必死に取ってる。
本当に文字通りに、必死の形相で。
少し怯えと罪悪感の混じった。
でもね……
その畑、お前のじゃねーし!
そういうのは、畑の持ち主の言葉であってニコが決めていいことじゃないから!
だから、とっとと行ってこい!
「うぅ……そうだね。畑の持ち主さんが困っちゃうもんね。うん!」
俺の言葉にようやく覚悟を決めたニコが、身を隠していた畑の傍にあった道具小屋の影から飛び出す。
そして、声をかける。
「何をしてるの?」
「うわっ」
突然声を掛けられた子供が、びくっと肩を震わす。
それから、声のしたほうに目を向ける。
ニコをしっかりと、その双眸が捕らえる。
「ひっ、ごめんなさい! ごめんなさい!」
それから慌てた様子で謝りながら、反対側に駆け出す。
「おっと、逃がしませんよ」
「ひいっ! うわぁ」
すぐに回り込んでいたゴタロウに、通せんぼをされた止められる。
いきなり現れたゴタロウに驚いた子鬼がしりもちをついて、手に抱えていた野菜が辺りに散乱する。
「ああ、野菜が」
「君のじゃないよね?」
「う……」
慌てて野菜を拾おうとした子鬼の前に、今度はニコが立ちふさがる。
そして包囲をせばめるように、ゴタロウも距離を詰める。
「うぅ、ごめんなさい! ごめんなさい!」
完全に逃げられないと思ったのか、子鬼は両手で頭をかかえてその場にうずくまってひたすら謝り始めた。
まさかの無抵抗。
流石に困った様子のニコと、ゴタロウだったが取り合えずは村の外に連れ出して話を聞くことにしたらしい。
ニコが適当に食べ物を、シノビゴブリンに差し出させていた。
うん、自分にも甘いが、人にも甘い。
子供相手と思えば、分からなくもないが。
「んんっ?」
すっかり宿で眠っていたニコを、ゴタロウが起こす。
夜も更けて、外にはフクロウの鳴く声や狼の遠吠えが時折聞こえてくる。
殆どの動物たちも寝静まっているのだろう。
「あれ、ゴタロウ?」
ニコが目を覚まして周りを見渡す。
黒装束に身を包んだゴタロウを発見するのに、少し時間が掛かったが少しずつ目がなれてきたのだろう。
ベッドの脇に立つゴタロウに視線を向ける。
「足跡の正体が分かりました」
「本当?」
「ええ、一緒に来られますか?」
「うーん」
おいっ!
行けよ!
お前の仕事だろ!
眠いからパスとか言い出したら、ゴブリン王国に連れ戻してその根性叩き直すぞ?
「うん、すぐに行くから待ってて」
そう言ってニコが布団から飛び出して……布団に戻る。
「寒い……」
いや、おまっ……
そんなんで、本当に冒険者やってたのか?
なんか、色々とだめになってる。
よしっ、ゴタロウ!
少し厳しくいけ!
「えっと……それは、ちょっと可哀想かと」
おいいっ!
ダメだ、こいつら。
ニコをなんだと思ってるんだ。
もういい……
【ウィンドショット】
「あいたっ」
とっとと、起きていけ!
次は、もっと強めにぶつけるぞ?
仕方ないので、俺が物理的に叩き直す。
剣の状態でも魔法は使えるからな。
ニコに向かって、弱めの風の塊をぶつけてやった。
「うーん、ちょっと待ってって! 少し身体があったまってから」
あーん?
だったら次は氷の礫でも当ててやろうか?
「酷くない? そんなのぶつけられたら、痛いじゃすまないよ!」
じゃあ、水でも掛けてやろうか?
【アクアボール】
水の球を作り出して、空中で維持する。
これ以上ぐずったら、頭からぶっかけてやる。
「もう、鈴木さんは乱暴だなあ」
よく言った。
どうやら、本気でぶつけられたいみたいだ。
「ごめんごめん、すぐに用意するよ」
俺の本気を感じ取ったのか、ニコが準備を始める。
それでものそのそとした動きなのに、ため息が出る。
「よしっ!」
よしっ! じゃない。
俺を忘れてる。
「ああ、喋ってたから一緒にいると思ってた」
まあ、分からないでもないけど。
俺がいないと、お前けっこうポンコツだからな?
「あははは、そんなの知ってるよ」
笑い事じゃないんだけど?
流石にこれには、ゴタロウもため息を吐いていた。
フィーナは眠いし寒いからパスと言われた。
お前……寒冷耐性あるよね?
しかも、睡眠時間5分でも十分活動出来るよね?
単純に面倒くさいだけらしい。
外にでたら、また身体洗わないと布団に入れないしなんて呟いていた。
くそっ……
完全に、拾われるやつと同行者を間違えた。
もう少しまともな冒険者に拾われたかったよ。
ここまで付き合ったら、いまさら変えるわけにもいかないけどさ。
それから2人で村の奥にある畑へと向かう。
家畜たちは、小屋の中に入れられてしっかりと扉を閉めて閂までしてある。
そのうえで見張りもいるので、そっちには向かわなかったらしい。
そして畑の作物を物色する人影。
二本の角を頭にはやしているが、思ったよりも小さい。
うーん……160cmくらいか?
足跡を見たときは、2mは超えてると思ったんだけどな。
「まだ、子供のようですね……それと確かに近くにいたのですが、見落としていた原因なのですが」
「見落としていた原因?」
「ハーフです、あの子」
ハーフ?
なんの?
「鬼と、人のハーフです。おそらく、この村の誰かの子供か……よそから連れてこられて捨てられた子かと」
「ふーん……ハーフだと、なにかあるの?」
俺の感じた疑問を、ニコがゴタロウに聞いてくれた。
「まだ、成長先が決まってないようで、夜になると月の魔力で鬼の姿になるようです……ただ、まだ成長過程の段階なので三日月や新月のときは魔力が足りずに変身しないようですよ」
なるほど。
それで毎晩、出てくるわけじゃなかったのか。
いや、それよりもなんで村の畑を荒らしたり?
「流石に鬼ともなると、食べる量が人のそれとは違いますからね。空腹に耐えかねてといったところでしょうか?」
目の前の背丈には見合わない幼い顔つきの鬼は、畑から蕪のようなものを抜いている。
それから、移動しながら色々な作物を抜く。
顔を見ると、悲しそうな表情だ。
申し訳ないという思いも混じっているのかな?
人並みに罪悪感は感じているようだ。
それでも、背に腹は代えられないと。
なんで、こんなところに。
まあ、村の子供の場合は、その離れたところにある鬼の集落の鬼が関係しているのだろう。
捨てられたにしても、その集落の鬼に関連性がありそうだ。
いや……逆のパターンはないか?
鬼の集落から捨ててこられたとか?
日中は人の姿ということは、たとえば女の鬼と人のハーフで里で人の姿のことが多いから、人のそばで暮らした方が幸せになれるんじゃないかと……
考えすぎかな?
「流石です。その可能性は視野にいれてませんでした。とりあえず、捕まえて話を聞きますか?」
そうだな、なんにせよ接触しないことには、進まんな。
「では、ニコ様! 行きますよ」
「うん」
うーん……もう少し、主体性を持ってほしい。
結局俺とゴタロウしか、意見を出し合ってなかったし。
これはあれだな。
俺は血を吸って強化されていくし、バフでニコを強化して色々と鍛えていたつもりだったが。
内面が全然、育ってなかった。
結果、俺がいることで楽が出来てしまってるのもあるし。
ずっと一緒に居るとも限らないから、将来のことを考えて……
いやまあ、人1人分の人生くらい付き合っても、今までの俺の過ごした年月を考えたら大した時間でもないが。
って、俺も大概甘いな。
いつ、俺と離れ離れになっても大丈夫なように……そうなったら、そうなったでゴブリン達が、どうにかしてくれるだろう。
特にゴブスチャンあたりが、うまいこと担ぎ上げてくれるだろう。
彼の忠誠心も、振り切ってる……て、どう転んでもニコが人生イージーモードになってる。
これは、だめだ。
だめなのかな?
これは、これでありなような……
いやいや、俺のパートナーとして心許ない。
やっぱり、俺ばっかり強くても仕方ない。
相方も強くあってこそだ。
やっぱり、鍛えよう。
「なんか、寒気が」
ニコ……
「えぇ、なんか怖いよ」
頑張ろうな。
「ひっ」
普通に励ましたのに、怯えられてしまった。
いかんな、何が悪かったのだろう。
さてさて、目の前の鬼に目をやる。
可哀そうに服はボロボロだな。
これは引っ掛けたとかじゃなくて、鬼になったさいにサイズが合わずに引きちぎられてしまったのだろう。
まあ、引っ掛けた穴とかもあるかもしれないし。
それに、肋骨が浮き出ててガリガリの印象を受ける。
やっぱり、食べ物が足りてないんだろう。
こないだ、家畜というか牛を1頭攫って行ったと聞いたのだけど。
まあ1週間以上前だから、もう残ってないか。
仮に残ってたとしても、腐ってたり虫が湧いてたりして食べられないのかもしれない。
しかし、黙って畑の被害を見過ごすわけにもいかん。
流石に、そろそろ。
「ニコ様、私が裏から回りますから、正面からお願いします」
「ええっ?」
「大丈夫ですよ。シノビゴブリン達が援護しますし、主もおられますので」
俺まで作戦に組み込むな、ゴタロウ。
まあ、死なれたら困るから手助けはするが。
「名乗りをあげてくださいね。それではゴブ運を」
「う……うん」
いま、ゴタロウのやつゴブ運って言ったか? ご武運じゃなくて……
それは、ゴブリン用語かな?
ちょっと、分からんけど。
「うー……」
おうおう、うーじゃなくてとっとといかんかい!
こうしてる間にも、畑が荒らされてるんだぞ?
「でも……相手、でかいし」
でかいけど、ガリガリだろう。
お前の敵じゃない。
「うん……なんか、見てて可哀想」
うーん……
「あのくらい、分けてあげてもいいんじゃなかなって。だって、まだ子供なんでしょ?」
そうだな……
育ち盛りの子供があんなにやせ細って、野菜を必死に取ってる。
本当に文字通りに、必死の形相で。
少し怯えと罪悪感の混じった。
でもね……
その畑、お前のじゃねーし!
そういうのは、畑の持ち主の言葉であってニコが決めていいことじゃないから!
だから、とっとと行ってこい!
「うぅ……そうだね。畑の持ち主さんが困っちゃうもんね。うん!」
俺の言葉にようやく覚悟を決めたニコが、身を隠していた畑の傍にあった道具小屋の影から飛び出す。
そして、声をかける。
「何をしてるの?」
「うわっ」
突然声を掛けられた子供が、びくっと肩を震わす。
それから、声のしたほうに目を向ける。
ニコをしっかりと、その双眸が捕らえる。
「ひっ、ごめんなさい! ごめんなさい!」
それから慌てた様子で謝りながら、反対側に駆け出す。
「おっと、逃がしませんよ」
「ひいっ! うわぁ」
すぐに回り込んでいたゴタロウに、通せんぼをされた止められる。
いきなり現れたゴタロウに驚いた子鬼がしりもちをついて、手に抱えていた野菜が辺りに散乱する。
「ああ、野菜が」
「君のじゃないよね?」
「う……」
慌てて野菜を拾おうとした子鬼の前に、今度はニコが立ちふさがる。
そして包囲をせばめるように、ゴタロウも距離を詰める。
「うぅ、ごめんなさい! ごめんなさい!」
完全に逃げられないと思ったのか、子鬼は両手で頭をかかえてその場にうずくまってひたすら謝り始めた。
まさかの無抵抗。
流石に困った様子のニコと、ゴタロウだったが取り合えずは村の外に連れ出して話を聞くことにしたらしい。
ニコが適当に食べ物を、シノビゴブリンに差し出させていた。
うん、自分にも甘いが、人にも甘い。
子供相手と思えば、分からなくもないが。
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