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最終章:勇者と魔王
第18話:あれから一ヶ月
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女神との決戦から、1ヶ月が経った。
ヒュマノ王国も落ち着きを取り戻し、あの戦いが嘘だったかのように変わらない日常を取り戻した。
といっても、元々決戦の地はアイゼン辺境伯領。
王都から離れていたこともあり、国民たちは戦があったという実感すらないだろう。
オーウェン陛下も援軍を送ったはいいが、途中で決着がついたことで後詰の軍は宙に浮く形になった。
とはいえ、礼はしないといけない。
アイゼン辺境伯が半分負担してくれたが、俺の隠し財産も使ってミラーニャの町で大体的にもてなした。
なんせ、援軍の総大将はレオンハート将軍。
副将がロナウド殿下だ。
流石に、もう大丈夫だから回れ右して帰ってくれとは言えなかった。
2人とも王国を簡単には離れらない身分だったため、ミラーニャの町では目を丸くして色々な物に感動していたな。
ホテルミラーニャが大活躍だった。
ビュッフェスタイルの晩餐会だったが最初は従者に取りに行かせていた2人も、他の来賓の皿を見てもどかしい思いがあったのだろう。
途中から、わざわざ自身で取りに向かっていた。
従者がはしたないことはと言っていたが、レオンハート将軍に睨まれてすぐに引っ込んでいたな。
その点、うちのホテルの従業員は流石だ。
それとなくオススメの品の方に誘導し、使われている素材や調味料の説明をしていた。
さらに、その調味料を取り扱っているお店の場所の地図を従者に渡したり。
あれは、間違いなく大量に買ってかえるだろうな。
レオンハート将軍は様々なスパイスを調合した、アウトドアスパイスを気に入っていた。
行軍のお供にも、もってこいだしな。
ロナウド殿下は、胡麻ドレッシングにはまっていた。
子供でも野菜を美味しく食べられると聞いて、王都でも流通させられないか相談を受けた。
リック殿下は無茶をしたことを怒られていたが、レオンハート将軍に褒められていた。
軍略方の最高責任者を目指したらどうかと問われ、苦笑いで断っているのを見て思わず笑ってしまった。
リック殿下でも、やはり叔父には弱いらしい。
新鮮な姿が見られてほっこりしていたら、睨まれてしまったが。
リカルドだが、あのあと大変だった。
両足が切り落とされているのに無茶をして暴れまくっていたから、太ももから切り落とさないといけないほどに傷が悪化していた。
それ以前に出血で、命の危険まで。
魔王だった方のルークが足を切り落としたときに死なないように止血したようだが、結局意味のないものになっていた。
本当に馬鹿だな。
その後、素直に俺に対してごめんなさいしてきたが、許すかどうか微妙なところだ。
リック殿下がボソッと「そのまま死ねばよかったんですよ」と呟いた声が耳から離れない。
俺の中の魔王ルークも、激しく同意していたな。
ちなみに、この会食にはポルトガフ辺境伯を招待した。
彼からの報告はとても役に立ったし、何より足止めまでしてくれたのだ。
感謝しかない。
ベゼル帝国に身を置いているため、最初は迷惑を掛けた身でと固辞していたが。
ベゼル帝国に掛けられた迷惑以上に、世話になったとアイゼン辺境伯に言われて少し柔らかくなった。
その後、大人の駆け引きがあったようだが、結果としてポルトガフ辺境伯も参加してくれた。
居心地が悪いものにならないように、今回の小競り合いが小規模ですんだこと。
また、結果として世界を救うことになった、闇の女神討伐の功労者の一人としてロナウド殿下に最初に紹介しておいた。
国境の町なので、色々と交易品も多い。
そういった点も含めて、聡い貴族や商人に囲まれていた。
先頭に立っていたのは、ビレッジ商会のバンガード会長だったが。
その後、王都に戻る軍にリック殿下もリカルドも同道させられていた。
俺たちはもう少し、地元を楽しむことが出来た。
ちなみにジェファードも、俺たちと行動を共にしていた。
彼はルークに対しては、凄く好意的と言うか。
「やはりルーク様ほどともなると、それなり以上の人の従者も必要でしょう」
と言って、俺の専属執事の座を狙っていた。
フォルスが凄く嫌そうな顔をしていたな。
ただ闇属性の親和性が高い逸材でもあるので、邪険にはできなかったらしい。
彼自身も……
「神や精霊王を従者におくならば、やはり私のように帝国の皇子クラスで魔王に至るほどの人材でないと、人部門の担当は務まらないかと」
などと言い出していた。
ちなみに魔王ジェファードのままというか、魔王クラスの魔力と闇属性との親和性はそのままのようだ。
しれっとベゼル帝国側から、王都の俺たちの通う学校に編入の手続きまで行っていた。
まあ、俺からも口添えがあったから、すんなりといったわけだが。
色々と考えると、ジェファードは人として数少ないルークの理解者だったからな。
色々と便利だし、こいつ。
学校に向かう準備をしていると、アルトが後ろから抱き着いてくる。
いや、普通に鬱陶しいんだけど。
「今日も、いつものルークだ。良かった」
「いや、ずっといつものルークですが?」
何かにつけて、俺の存在を確認しに来る。
いつの間にか、消えて居なくなるんじゃないかという不安があるらしい。
しかし、ここまでくると兄弟愛が迸りすぎて、異常だと思うぞ?
何度か、それとなくやんわりと注意はしているのだが。
とても、悲しそうな表情をする。
そして……
「やはり、前世での兄の行いを許してくれてはいないのだな」
とウジウジしはじめて。
「だからこそ今世の私は、前世の分を含めて2倍お前を愛そう!」
などと言って、余計に構ってくるのだ。
本当に、どう扱ったらよいものか。
リーナは……うん、色々と拗らせすぎてしまった。
いまは、暗黒神を崇拝する秘密結社のようなものを、作ってしまっている。
仲のいい子たちの集まりに過ぎないけど、貴族の子がそれをやったら資金的にね……
ちなみに元からあった教会は、ほとんど真聖教会に吸収されつつある。
6大神全てを等しく進行する宗教。
光の女神も、一応入れてやってる。
フォルスに助けられた上に、他の神に散々説教されたからな。
囚われていた場所が、フォルスやリーナがいた場所だったようだから。
仕方ないから解放して飼い殺しにしろといったら、フォルスが凄く嫌そうにしてたのが笑えた。
人に迷惑を掛けないように、責任もって闇の牢獄にでも突っ込んどけって意味だったんだけどな。
ギース叔父の痕跡は結局見つからなかった。
父も、彼のことは思い出したようだ。
あの光のベールを浴びた時に、叔父の記憶も蘇ったとのこと。
俺たち兄弟の様子を見てきたからか、凄く寂しそうだったな。
自分にも弟がいたこと。
その弟に何もしてやれなかったこと。
それなのに、自分の子供を命と引き換えに助けてもらったこと。
色々な思いがあって、感情がぐちゃぐちゃになったのだろう。
まさに慟哭と言えるほどに、大声で泣いて詫びていた。
アリスの力をもってしても、叔父の復活は難しかった。
それこそ、世界を巻き戻すレベルの力が必要だとのこと。
神の力を吸収し、神と同等のレベルにまで魂の格が引き上げられていた。
愛と勇気と希望と正義を司る女神に、その魂も引き取られたとのこと。
彼女の下で、叔父も神を目指すらしい。
「家族愛を司る神なんか良いと思うの」
とその女神がルンルンで、神に相応しい身体を再構築しているところらしい。
なぜ、唯一神の一柱である彼女が、叔父の魂に興味をもったかというと。
俺の将来の父になるらしい、創造神アシンの口利きらしい。
色々と、この世界のことを全知全能の神に報告したとのこと。
その時に、ついでに彼女にも伝えたらしい。
この世の全ての世界を見守る彼女に興味を持ってもらうには、直接の子世代の最高神から話をもっていってもらうのが一番らしい。
そのアシンを頼ったのは、アリスとアマラだが。
結果として、真聖教会の開祖となったモルダーが愛と勇気と希望と正義を司る彼女に、加護をもらうことになった。
純粋なる聖属性を身に宿したのが、まさか信仰心が篤いとは言い難いモルダーとは。
いや神父さんとしてはその為人は満点で、神に対する造詣は深いが。
自分が直接受けた神託以外は、疑ってみたり。
神を見ないと信じないと言ってみたり。
聖職者としては、ちょっとどうなのかなと思う部分はある。
思い返せば、色々なことがあった濃密な一ヶ月だな。
ヒュマノ王国も落ち着きを取り戻し、あの戦いが嘘だったかのように変わらない日常を取り戻した。
といっても、元々決戦の地はアイゼン辺境伯領。
王都から離れていたこともあり、国民たちは戦があったという実感すらないだろう。
オーウェン陛下も援軍を送ったはいいが、途中で決着がついたことで後詰の軍は宙に浮く形になった。
とはいえ、礼はしないといけない。
アイゼン辺境伯が半分負担してくれたが、俺の隠し財産も使ってミラーニャの町で大体的にもてなした。
なんせ、援軍の総大将はレオンハート将軍。
副将がロナウド殿下だ。
流石に、もう大丈夫だから回れ右して帰ってくれとは言えなかった。
2人とも王国を簡単には離れらない身分だったため、ミラーニャの町では目を丸くして色々な物に感動していたな。
ホテルミラーニャが大活躍だった。
ビュッフェスタイルの晩餐会だったが最初は従者に取りに行かせていた2人も、他の来賓の皿を見てもどかしい思いがあったのだろう。
途中から、わざわざ自身で取りに向かっていた。
従者がはしたないことはと言っていたが、レオンハート将軍に睨まれてすぐに引っ込んでいたな。
その点、うちのホテルの従業員は流石だ。
それとなくオススメの品の方に誘導し、使われている素材や調味料の説明をしていた。
さらに、その調味料を取り扱っているお店の場所の地図を従者に渡したり。
あれは、間違いなく大量に買ってかえるだろうな。
レオンハート将軍は様々なスパイスを調合した、アウトドアスパイスを気に入っていた。
行軍のお供にも、もってこいだしな。
ロナウド殿下は、胡麻ドレッシングにはまっていた。
子供でも野菜を美味しく食べられると聞いて、王都でも流通させられないか相談を受けた。
リック殿下は無茶をしたことを怒られていたが、レオンハート将軍に褒められていた。
軍略方の最高責任者を目指したらどうかと問われ、苦笑いで断っているのを見て思わず笑ってしまった。
リック殿下でも、やはり叔父には弱いらしい。
新鮮な姿が見られてほっこりしていたら、睨まれてしまったが。
リカルドだが、あのあと大変だった。
両足が切り落とされているのに無茶をして暴れまくっていたから、太ももから切り落とさないといけないほどに傷が悪化していた。
それ以前に出血で、命の危険まで。
魔王だった方のルークが足を切り落としたときに死なないように止血したようだが、結局意味のないものになっていた。
本当に馬鹿だな。
その後、素直に俺に対してごめんなさいしてきたが、許すかどうか微妙なところだ。
リック殿下がボソッと「そのまま死ねばよかったんですよ」と呟いた声が耳から離れない。
俺の中の魔王ルークも、激しく同意していたな。
ちなみに、この会食にはポルトガフ辺境伯を招待した。
彼からの報告はとても役に立ったし、何より足止めまでしてくれたのだ。
感謝しかない。
ベゼル帝国に身を置いているため、最初は迷惑を掛けた身でと固辞していたが。
ベゼル帝国に掛けられた迷惑以上に、世話になったとアイゼン辺境伯に言われて少し柔らかくなった。
その後、大人の駆け引きがあったようだが、結果としてポルトガフ辺境伯も参加してくれた。
居心地が悪いものにならないように、今回の小競り合いが小規模ですんだこと。
また、結果として世界を救うことになった、闇の女神討伐の功労者の一人としてロナウド殿下に最初に紹介しておいた。
国境の町なので、色々と交易品も多い。
そういった点も含めて、聡い貴族や商人に囲まれていた。
先頭に立っていたのは、ビレッジ商会のバンガード会長だったが。
その後、王都に戻る軍にリック殿下もリカルドも同道させられていた。
俺たちはもう少し、地元を楽しむことが出来た。
ちなみにジェファードも、俺たちと行動を共にしていた。
彼はルークに対しては、凄く好意的と言うか。
「やはりルーク様ほどともなると、それなり以上の人の従者も必要でしょう」
と言って、俺の専属執事の座を狙っていた。
フォルスが凄く嫌そうな顔をしていたな。
ただ闇属性の親和性が高い逸材でもあるので、邪険にはできなかったらしい。
彼自身も……
「神や精霊王を従者におくならば、やはり私のように帝国の皇子クラスで魔王に至るほどの人材でないと、人部門の担当は務まらないかと」
などと言い出していた。
ちなみに魔王ジェファードのままというか、魔王クラスの魔力と闇属性との親和性はそのままのようだ。
しれっとベゼル帝国側から、王都の俺たちの通う学校に編入の手続きまで行っていた。
まあ、俺からも口添えがあったから、すんなりといったわけだが。
色々と考えると、ジェファードは人として数少ないルークの理解者だったからな。
色々と便利だし、こいつ。
学校に向かう準備をしていると、アルトが後ろから抱き着いてくる。
いや、普通に鬱陶しいんだけど。
「今日も、いつものルークだ。良かった」
「いや、ずっといつものルークですが?」
何かにつけて、俺の存在を確認しに来る。
いつの間にか、消えて居なくなるんじゃないかという不安があるらしい。
しかし、ここまでくると兄弟愛が迸りすぎて、異常だと思うぞ?
何度か、それとなくやんわりと注意はしているのだが。
とても、悲しそうな表情をする。
そして……
「やはり、前世での兄の行いを許してくれてはいないのだな」
とウジウジしはじめて。
「だからこそ今世の私は、前世の分を含めて2倍お前を愛そう!」
などと言って、余計に構ってくるのだ。
本当に、どう扱ったらよいものか。
リーナは……うん、色々と拗らせすぎてしまった。
いまは、暗黒神を崇拝する秘密結社のようなものを、作ってしまっている。
仲のいい子たちの集まりに過ぎないけど、貴族の子がそれをやったら資金的にね……
ちなみに元からあった教会は、ほとんど真聖教会に吸収されつつある。
6大神全てを等しく進行する宗教。
光の女神も、一応入れてやってる。
フォルスに助けられた上に、他の神に散々説教されたからな。
囚われていた場所が、フォルスやリーナがいた場所だったようだから。
仕方ないから解放して飼い殺しにしろといったら、フォルスが凄く嫌そうにしてたのが笑えた。
人に迷惑を掛けないように、責任もって闇の牢獄にでも突っ込んどけって意味だったんだけどな。
ギース叔父の痕跡は結局見つからなかった。
父も、彼のことは思い出したようだ。
あの光のベールを浴びた時に、叔父の記憶も蘇ったとのこと。
俺たち兄弟の様子を見てきたからか、凄く寂しそうだったな。
自分にも弟がいたこと。
その弟に何もしてやれなかったこと。
それなのに、自分の子供を命と引き換えに助けてもらったこと。
色々な思いがあって、感情がぐちゃぐちゃになったのだろう。
まさに慟哭と言えるほどに、大声で泣いて詫びていた。
アリスの力をもってしても、叔父の復活は難しかった。
それこそ、世界を巻き戻すレベルの力が必要だとのこと。
神の力を吸収し、神と同等のレベルにまで魂の格が引き上げられていた。
愛と勇気と希望と正義を司る女神に、その魂も引き取られたとのこと。
彼女の下で、叔父も神を目指すらしい。
「家族愛を司る神なんか良いと思うの」
とその女神がルンルンで、神に相応しい身体を再構築しているところらしい。
なぜ、唯一神の一柱である彼女が、叔父の魂に興味をもったかというと。
俺の将来の父になるらしい、創造神アシンの口利きらしい。
色々と、この世界のことを全知全能の神に報告したとのこと。
その時に、ついでに彼女にも伝えたらしい。
この世の全ての世界を見守る彼女に興味を持ってもらうには、直接の子世代の最高神から話をもっていってもらうのが一番らしい。
そのアシンを頼ったのは、アリスとアマラだが。
結果として、真聖教会の開祖となったモルダーが愛と勇気と希望と正義を司る彼女に、加護をもらうことになった。
純粋なる聖属性を身に宿したのが、まさか信仰心が篤いとは言い難いモルダーとは。
いや神父さんとしてはその為人は満点で、神に対する造詣は深いが。
自分が直接受けた神託以外は、疑ってみたり。
神を見ないと信じないと言ってみたり。
聖職者としては、ちょっとどうなのかなと思う部分はある。
思い返せば、色々なことがあった濃密な一ヶ月だな。
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