魔王となった俺を殺した元親友の王子と初恋の相手と女神がクズすぎるので復讐しようと思ったけど人生やり直したら普通に楽しかった件

へたまろ

文字の大きさ
123 / 125
EX章1:学園編

第13話:アンテナショップジャストリビアン

しおりを挟む
 電飾で彩られた看板に書かれた文字を見て、頭を押さえる。
 そこにはでかでかと、ジャストリビアンの文字が。
 何故ここでフランス語? とは思わない。
 どうせ、アマラがフォルスとジェノファに教えたのだろう。
 そして、現地人には全く意味の分からない言葉のはずだ。


「ここがジャストールのお店か」
「僕のお店じゃないけどね」

 さてと、おじいさまの直轄ともいえる、王都初のアンテナショップ。
 いや……この世界初のアンテナショップかもしれない。

「ドライシブーカに、ショーユ、ミソのような調味料も各種取り揃えております」

 店員の説明に調味料の棚を見る。
 うん、うちの父の頑張りがしっかりと見て取れる。
 どうしてもマヨネーズを流通させたかったんだろう。
 勝手にリーチェの町の工場区に行って密閉容器を完成させていた。
 さらにはサルモネラ菌対策の滅菌処理も

 ビレッジ商会に卸し始めたと思ったら、こんなところにも。
 いや、おじいさまからお父様に……ああ、ビレッジ商会も噛んでいるのか。
 出資者として。

 抜かりないというか、あれか。
 王都での取扱商品に対する補填として、慣習として雇ったのかもしれない。
 まあ、商売に関してはプロに任せるのが一番だしね。

「マヨネーズがあるなんて、素敵よね」
「一回使い切りだけど、こっちでも食べられるのは嬉しいですね」

 クリスタとエルサがそんなやり取りをしているが。
 容器は樹脂による袋に、風属性魔法の魔法陣を使って中の空気を吸い取ったもの。
 完ぺきとは言い難いけど、密閉前に熱処理も行っているから大丈夫だと思いたい。

「この店内の商品に限っては大丈夫ですよ。闇精霊によって、滅菌処理が施されてますから」

 ああ、店員さんの格好をしたジェノファが説明してくれたけど。
 きみ、精霊王だからね?
 こんなところで、そんなことしてていいのかな? と思うけど。

「他には缶詰なんかもありますよ。鯖に似た川魚を使った味噌になんかが人気です」

 ありがとう。
 本当にね。
 ジャストールの人達が優秀すぎて、涙が出てくるよ。

 他には包丁や、玉鋼によるよく斬れる剣なんてのも置いてある。
 こっちは厳重に取り扱われているみたいだけど。
 裏に試し切り用の藁人形もあると。
 そうですか。

 試さないから、案内しなくてもいいよ。
 ジャスパーも着いていこうとしない。

「ジャストールの鍛冶師が作った逸品だろう?」
「逸品かどうかは分からないけどね。土産用の数打ちかもしれないし」
「そうか」

 そう言ったジャスパーの視線の先には、傘立てに入った木刀が。
 ああ、お土産さんの定番商品ね。

鉄刀木たがやさんによく似た木で作った木刀です」

 うん、木刀。
 ジャストールでは、刀の開発が行われているけど。
 一足先に実用化されたのが、この木刀。
 
 他にはこれまたジャストール発の丸い玉にゴムひもを通した、ブレスレット。
 他には竜のチャームやら、剣のチャームやら。
 完全に、ここはお土産物コーナーだな。

 エアボードが並べられている場所もあるけど……高いな。
 流石に。
 金貨で……おおう。
 すでに何個か売り切れで、入荷待ちと。
 まあ、リック殿下が夢中だからね。
 王族が夢中の物となれば、皆欲しがるか。
 一般人には手が出るような代物ではないけども、代わりに魔力回路を全く使ってないスケートボードも置いてある。
 さらには、前と後ろに風を出せるスケートボード。
 空を飛ぶわけじゃないから、そこまで大がかりなものではない。
 それでも、一般人の平均月収くらいの価格か。

「見ているだけでも楽しいわね」
「そうですね。でも、それだとお店がもうからないんじゃ」

 ジェニファの言葉に、クリスタが少し不思議そうにしている。
 いやまあ、そう思うかもしれないけど。
 そこまで問題じゃないというか。

「別に利益を出すためのお店じゃないからね。ジャストールの魅力を知ってもらって、ジャストールに来たくなるようになってもらうためのお店だから」
「なるほど。じゃあ、お店の中を覗いてもらえるだけでも、良いってこと?」
「そうだね。こういったものがあるってのを知ってもらうためのお店だからね。あとは、ジャストールまで来られない人が買ってくれたらいいかな?」

 僕の言葉に頷いたクリスタだったけど、彼女の視線の先には籠いっぱいに商品を入れたエルサの姿が。

「まあ、ああいった上客も必要だけどね。ジャストール直営店だから、従業員の給料はここの利益じゃなくて領地の運営費から出るし。経費も足りない分は、あっちから補填するから赤字でもそこまで問題じゃないよ」

 そもそもが、観光案内のエリアは商品の販売をしていないのだ。
 利益がまったく出ない分、そこの運営費は完全にミラーニャの町持ちだろうな。

「このパンフレット? っていう紙も凄いわね。同じ絵や文字が書かれた紙が、こんなにもあるなんて」
「ああ、印刷っていうんだよ」

 まあ、ガリ版印刷だけど、馬鹿にはならない。
 こういう永続的に使う物なら、しっかりとしたものが用意できるしね。
 複数のガリ版を使って、カラーに仕立てることもできたし。
 今は間に合わせのためと、発行部数の関係で文字の部分もガリ版印刷だけど。
 活版印刷もすでに行われている。
 オフセット印刷に関しては、ぼんやりとしか分かっていないので職人さんの開発技術に期待だ。
 ああ、それとは別に感熱印刷なんてのも手を出している。
 
 熱によって色が出たり、消えたりするインク。
 これをマグカップとかお皿に使用したら料理の熱で、模様が浮かび上がる食器が出来上がったりする。
 
 全てが俺のイメージを元に、職人さんたちが一生懸命試行錯誤して作っている。
 完成形のイメージが共有できるだけでも、かなり大きいらしい。

 あと、そのイメージがあると、挫折することも少ないらしい。
 
「印刷?」
「まあ、板を掘ってインクを付けて、紙に押し付ける感じかな?」
「ふーん」

 あっ、物には興味あるけども、作り方には興味ない感じか。
 なんか、いつの間にかテンションが上がって、一人で先走ったようだ。

「楽しそうで何よりです」

 結果、ジェニファに暖かい視線を送られてしまった。
 
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...