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第三章:王都学園編~初年度後期~
第39話:ブロークンプリンス
「エルザ、食堂に向かおうか」
今日も今日とて、なぜこいつはさも当然のように私と一緒に食事を取ろうとしているのだろうか。
てっきり1年生の教室に迎えにくると読んでいた私は、理科の先生の部屋で彼に出された課題に向き合っていた。
お昼になったら、一番最初に食堂に行ってレイチェルと合流するために。
うん、職員棟は教室よりも食堂に近いからね。
ちょっと、課題に集中しすぎてスタートダッシュが切れなかったけどね。
こんなことなら、素直にレイチェルと花嫁修行をすればよかった。
「私が、なぜ?」
「それは、私の婚約者だからだよ」
そうですね。
抵抗しようと思ったけど、今は周りに味方がいない。
いや、味方だと思ってた子たち全員に裏切られた。
今日は平常課程の最終日なのに。
明日は総合成果発表会だから、全員がバラバラに行動する。
食堂の利用も、まちまちなのに。
最後の最後くらい、友人たちに囲まれて食事を取りたいのに。
最近は本気で、ムカついてきている。
最初からだけど。
この自己中王子様に。
私も他人を巻き込みまくってるくせに、王子のことを悪く言えないだろうって? うっさいわ!
鼻歌でも歌いだしそうなほどご機嫌なダリウスの横で、私は不機嫌が加速している。
「最後まで一緒に出来て、良かったよ」
「それは、よかったですね」
「エリーは違うのかい?」
イラッ……
「さあ? どうでしょう?」
「そんなに、照れなくてもいいじゃないか」
イライラッ……
「普段から強くあろうとしているのは分かるけども、私の前では素直になってもいいのだよ?」
「……」
イライライライライライライライラ……
ダリウスに見られないように、右手で左腕をつねりながら必死で耐える。
冗談抜きで、私の黄金の左フックが炸裂しそうだから。
「わぁぁぁぁぁっ!」
そんな感じで食堂に入ったら、レイチェルが私とダリウスを見て慌てたような声を出した。
すぐに私に気付いてくれるなんて、レイチェルってば本当に私のことが好きだよね。
うん、少しだけ心に余裕が戻ったよ。
そして、レイチェルが早足で私たちの方に向かってくる。
何事?
少し、焦った様子に思わず身構えてしまう。
「エルザ様! わっ、私も! 私もお食事をご一緒してもよろしいでしょうか?」
そして、私にそんなお願い事を。
勿論、いいに決まってるじゃん!
最高じゃん!
ほぼ最終日に、邪魔者はおれどレイチェルと学園の食堂で食事を取れるなんて。
「もち「すまないな、ズールアーク嬢。これからしばらく会えなくなる私たちのために、今日だけは譲ってもらえないかな?」」
ブチッ!
「キャアアアアアアアア! エッ、エルザ様、落ち着いてください! 早まっては駄目です! 殿下っ、お願いですから私もご一緒させてください」
「いやあ、エルザは人気者だね。私からもお願いするよ。今日は譲ってもらいたい」
「王子殿下、私はズールアーク嬢と大切なお話がありますので、御前を辞去させていただきます」
「えっ?」
やっちまったけど、しょうがないよね。
ダリウスの胸倉を掴んで、鼻先にまで顔を近づけて威圧を掛けながら下がらせてもらうという、王族にやっちゃだめなやつ。
私も王族だし、親族だからいいんだよ。
だから、レイチェルそんな青い顔しないで。
「よかったぁ……」
よかった?
どういう意味かな?
ああ、ダリウスよりもレイチェルを選んだからかな?
「エルザ「付いてこないでくださいませ。女性同士、殿方には聞かせられない話もございますので」」
後ろからダリウスが追いかけようとしたのを、ジロリと睨みつけて止める。
「てっきり、殿下の顔を殴られるかと思ったので」
そして、レイチェルが小声で私にそんなことを言ってきた。
わざわざ言わなくてもよくない?
でも……うん、私は自分で自分の自制心を褒めたいくらいに、頑張ったよ。
本当は殴りそうだったけど、レイチェルの悲痛な表情を見て踏みとどまれただけなんだけどね。
うん、レイチェルの顔を見てなかったら、ダリウスの頬を思いっきりひっぱたいていたかもしれない。
そこまでのことはしてないだろうって?
いやいや、4日間の累積やらかしポイントの合計結果は、レッドカードだよ。
もし私たちが出会ったのが現世日本だったら、間違いなくお見合い結婚したは良いけど熟年離婚確定パターンな組み合わせだと理解してしまった。
「レイチェルー! 会いたかったよー」
「いや一応、毎日会ってはいますよね?」
そうなんだけどさ。
とりあえずレイチェルに横から抱き着いて、そのホワホワ柔らかほっぺに目いっぱい頬ずりをする。
周囲がドン引きだけど、お構いなしだよ。
一部からは、嫉妬の視線を感じてる気がするけど。
「今日は、全然嫌がらないんだー! なんのご褒美? それとも、何かおねだりでもあるのかなー?」
「いえ、この4日間凄く我慢されているのが、見て分かりましたので。今日くらいは、好きにしてもらおうかなと……エルザ様の無聊を慰められるなら、私の無駄なお肉でも役に立ってもらおうかと」
「うわーん! 最近は色々と手厳しくなってきたけど、やっぱりレイチェルは私の一番の理解者だー! 嬉しいよー」
「いや、重くないですか?」
「私のレベルを舐めるな!」
そして、椅子に座ってレイチェルを抱きかかえて、背中に顔を埋める。
うーん、幸せ。
レイチェルが凄く恥ずかしそうにしてるけど、必死に耐えてる姿も可愛い。
そして、周囲は確実にドン引きしてるだろうね。
「す……凄いな。あんなに軽々とズールアーク嬢を抱きかかえられるなんて」
「お、俺もレベル上げ頑張らないと」
おっ? そこの少年、レベル上げだけじゃだめだぞ!
ちゃんと、トレーニングもしないと。
そして、ようやく気持ちが落ち着いてきた。
うん、ダリウスにはガチ説教だね。
仕方が無いから、私が王城に向かう旨を手紙にしたためて出しておこう。
王妃殿下宛てに、『おたくのお坊ちゃんに関して重大な話があるので、殿下も含め二人でお会いして頂きますよう伏してお願いします。』とでも書いておこう。
周囲の女子からは、私のダリウスに対する態度が不敬だのなんだのと陰口を叩かれているけど、全然効かないから。
なんせ、レイチェルの癒しリジェネレーション効果の方が、どんな陰口よりも遥かに高いからね。
なぜかオルガまで悔しそうな表情をしているけど。
その嫉妬はどっちに対してかな?
私かな? それとも、レイチェルかな?
どっちにしろ、今の私の状況が羨ましいみたい。
カーラが、私のことを困った子みたいな様子で見ているのは、少し納得いかないけど。
なんだか、最近のカーラはカーラで私の世話をしたがるというか。
私を庇護したがるというか……
何を目指しているんだ、彼女は。
ジェイとジェーンは普通にすでに、食事を始めてたよ。
ソフィアとチェルシーと一緒に。
うん、この4人は結構な仲良しさんなんだよね。
そこに身分をあまり気にしない、テレサとフローラが参加したりしなかったり。
私が居るときは、ほぼ全員集合するけど。
ソフィアのことを考えると、ジェイたちに任せた方が良さそうなんだよね。
なんか、私たちといる時よりも、スムーズに会話も出来てるみたいだし。
ただ、それだと私が良くないから、強引に彼女たちも巻き込んでるけどね。
私だって、ソフィアやジェイと話したいし。
……うん、確かに、ダリウスのこと言えないかも。
いいんだよ、私は!
別に、喜んでもらおうとか思ってないし。
私が楽しいから、巻き込んでるだけだし。
最終日はなんとか、お友達と食事が出来た。
レイチェルが皆を呼んできてくれたから。
最後くらい、一緒に食べましょうって……うん、あのレイチェルが。
積極的に仕切って、私のために全員集合を掛けてくれたのだ。
嬉しすぎて、嬉しすぎて……
「もう立ち直られたみたいで、何よりです」
彼女に感謝の気持ちを伝えようと思ってお腹に抱き着こうとしたら、さっとかわされて普通に手を振り払われてしまったけど。
そしてさっきから、視界の端をチョロチョロしている残念王子が鬱陶しい。
「もう、ズールアーク嬢との大事な話とやらは終わったのかな?」
「ええ、ですがまだ彼女達にも大事な話がありますので、ご遠慮願えますか? 女性同士でしか話せない内容ですので」
業を煮やして声を掛けてきたダリウスを、バッサリと切り捨ててガールズトークに花を咲かせる。
皆がダリウスに気遣って、少しトーンダウンしてしまったけど。
レイチェルが代わりに、盛り上げてくれた。
どうやら、私自身も気付かない間に、相当にキテたのかもしれない。
「私が幼い時に、身分至上主義派閥となかなか縁を切らないお父様に、ストレスを溜め込んで爆発した時のお姉さまとそっくりでした……あの時は、派閥の男性との見合いだの食事だのを押し付けられて、断っても断っても約束を取り付けた父が悪いのですけどね……大変でした」
そう……どう、大変だったのかな?
詳しく聞くのが、怖い気がする。
「軽いところだと……父の部屋のベッドから、夜空のお星様がよく見えるようになったとだけ」
えーっと……それが、軽いレベルなんだ……
今日も今日とて、なぜこいつはさも当然のように私と一緒に食事を取ろうとしているのだろうか。
てっきり1年生の教室に迎えにくると読んでいた私は、理科の先生の部屋で彼に出された課題に向き合っていた。
お昼になったら、一番最初に食堂に行ってレイチェルと合流するために。
うん、職員棟は教室よりも食堂に近いからね。
ちょっと、課題に集中しすぎてスタートダッシュが切れなかったけどね。
こんなことなら、素直にレイチェルと花嫁修行をすればよかった。
「私が、なぜ?」
「それは、私の婚約者だからだよ」
そうですね。
抵抗しようと思ったけど、今は周りに味方がいない。
いや、味方だと思ってた子たち全員に裏切られた。
今日は平常課程の最終日なのに。
明日は総合成果発表会だから、全員がバラバラに行動する。
食堂の利用も、まちまちなのに。
最後の最後くらい、友人たちに囲まれて食事を取りたいのに。
最近は本気で、ムカついてきている。
最初からだけど。
この自己中王子様に。
私も他人を巻き込みまくってるくせに、王子のことを悪く言えないだろうって? うっさいわ!
鼻歌でも歌いだしそうなほどご機嫌なダリウスの横で、私は不機嫌が加速している。
「最後まで一緒に出来て、良かったよ」
「それは、よかったですね」
「エリーは違うのかい?」
イラッ……
「さあ? どうでしょう?」
「そんなに、照れなくてもいいじゃないか」
イライラッ……
「普段から強くあろうとしているのは分かるけども、私の前では素直になってもいいのだよ?」
「……」
イライライライライライライライラ……
ダリウスに見られないように、右手で左腕をつねりながら必死で耐える。
冗談抜きで、私の黄金の左フックが炸裂しそうだから。
「わぁぁぁぁぁっ!」
そんな感じで食堂に入ったら、レイチェルが私とダリウスを見て慌てたような声を出した。
すぐに私に気付いてくれるなんて、レイチェルってば本当に私のことが好きだよね。
うん、少しだけ心に余裕が戻ったよ。
そして、レイチェルが早足で私たちの方に向かってくる。
何事?
少し、焦った様子に思わず身構えてしまう。
「エルザ様! わっ、私も! 私もお食事をご一緒してもよろしいでしょうか?」
そして、私にそんなお願い事を。
勿論、いいに決まってるじゃん!
最高じゃん!
ほぼ最終日に、邪魔者はおれどレイチェルと学園の食堂で食事を取れるなんて。
「もち「すまないな、ズールアーク嬢。これからしばらく会えなくなる私たちのために、今日だけは譲ってもらえないかな?」」
ブチッ!
「キャアアアアアアアア! エッ、エルザ様、落ち着いてください! 早まっては駄目です! 殿下っ、お願いですから私もご一緒させてください」
「いやあ、エルザは人気者だね。私からもお願いするよ。今日は譲ってもらいたい」
「王子殿下、私はズールアーク嬢と大切なお話がありますので、御前を辞去させていただきます」
「えっ?」
やっちまったけど、しょうがないよね。
ダリウスの胸倉を掴んで、鼻先にまで顔を近づけて威圧を掛けながら下がらせてもらうという、王族にやっちゃだめなやつ。
私も王族だし、親族だからいいんだよ。
だから、レイチェルそんな青い顔しないで。
「よかったぁ……」
よかった?
どういう意味かな?
ああ、ダリウスよりもレイチェルを選んだからかな?
「エルザ「付いてこないでくださいませ。女性同士、殿方には聞かせられない話もございますので」」
後ろからダリウスが追いかけようとしたのを、ジロリと睨みつけて止める。
「てっきり、殿下の顔を殴られるかと思ったので」
そして、レイチェルが小声で私にそんなことを言ってきた。
わざわざ言わなくてもよくない?
でも……うん、私は自分で自分の自制心を褒めたいくらいに、頑張ったよ。
本当は殴りそうだったけど、レイチェルの悲痛な表情を見て踏みとどまれただけなんだけどね。
うん、レイチェルの顔を見てなかったら、ダリウスの頬を思いっきりひっぱたいていたかもしれない。
そこまでのことはしてないだろうって?
いやいや、4日間の累積やらかしポイントの合計結果は、レッドカードだよ。
もし私たちが出会ったのが現世日本だったら、間違いなくお見合い結婚したは良いけど熟年離婚確定パターンな組み合わせだと理解してしまった。
「レイチェルー! 会いたかったよー」
「いや一応、毎日会ってはいますよね?」
そうなんだけどさ。
とりあえずレイチェルに横から抱き着いて、そのホワホワ柔らかほっぺに目いっぱい頬ずりをする。
周囲がドン引きだけど、お構いなしだよ。
一部からは、嫉妬の視線を感じてる気がするけど。
「今日は、全然嫌がらないんだー! なんのご褒美? それとも、何かおねだりでもあるのかなー?」
「いえ、この4日間凄く我慢されているのが、見て分かりましたので。今日くらいは、好きにしてもらおうかなと……エルザ様の無聊を慰められるなら、私の無駄なお肉でも役に立ってもらおうかと」
「うわーん! 最近は色々と手厳しくなってきたけど、やっぱりレイチェルは私の一番の理解者だー! 嬉しいよー」
「いや、重くないですか?」
「私のレベルを舐めるな!」
そして、椅子に座ってレイチェルを抱きかかえて、背中に顔を埋める。
うーん、幸せ。
レイチェルが凄く恥ずかしそうにしてるけど、必死に耐えてる姿も可愛い。
そして、周囲は確実にドン引きしてるだろうね。
「す……凄いな。あんなに軽々とズールアーク嬢を抱きかかえられるなんて」
「お、俺もレベル上げ頑張らないと」
おっ? そこの少年、レベル上げだけじゃだめだぞ!
ちゃんと、トレーニングもしないと。
そして、ようやく気持ちが落ち着いてきた。
うん、ダリウスにはガチ説教だね。
仕方が無いから、私が王城に向かう旨を手紙にしたためて出しておこう。
王妃殿下宛てに、『おたくのお坊ちゃんに関して重大な話があるので、殿下も含め二人でお会いして頂きますよう伏してお願いします。』とでも書いておこう。
周囲の女子からは、私のダリウスに対する態度が不敬だのなんだのと陰口を叩かれているけど、全然効かないから。
なんせ、レイチェルの癒しリジェネレーション効果の方が、どんな陰口よりも遥かに高いからね。
なぜかオルガまで悔しそうな表情をしているけど。
その嫉妬はどっちに対してかな?
私かな? それとも、レイチェルかな?
どっちにしろ、今の私の状況が羨ましいみたい。
カーラが、私のことを困った子みたいな様子で見ているのは、少し納得いかないけど。
なんだか、最近のカーラはカーラで私の世話をしたがるというか。
私を庇護したがるというか……
何を目指しているんだ、彼女は。
ジェイとジェーンは普通にすでに、食事を始めてたよ。
ソフィアとチェルシーと一緒に。
うん、この4人は結構な仲良しさんなんだよね。
そこに身分をあまり気にしない、テレサとフローラが参加したりしなかったり。
私が居るときは、ほぼ全員集合するけど。
ソフィアのことを考えると、ジェイたちに任せた方が良さそうなんだよね。
なんか、私たちといる時よりも、スムーズに会話も出来てるみたいだし。
ただ、それだと私が良くないから、強引に彼女たちも巻き込んでるけどね。
私だって、ソフィアやジェイと話したいし。
……うん、確かに、ダリウスのこと言えないかも。
いいんだよ、私は!
別に、喜んでもらおうとか思ってないし。
私が楽しいから、巻き込んでるだけだし。
最終日はなんとか、お友達と食事が出来た。
レイチェルが皆を呼んできてくれたから。
最後くらい、一緒に食べましょうって……うん、あのレイチェルが。
積極的に仕切って、私のために全員集合を掛けてくれたのだ。
嬉しすぎて、嬉しすぎて……
「もう立ち直られたみたいで、何よりです」
彼女に感謝の気持ちを伝えようと思ってお腹に抱き着こうとしたら、さっとかわされて普通に手を振り払われてしまったけど。
そしてさっきから、視界の端をチョロチョロしている残念王子が鬱陶しい。
「もう、ズールアーク嬢との大事な話とやらは終わったのかな?」
「ええ、ですがまだ彼女達にも大事な話がありますので、ご遠慮願えますか? 女性同士でしか話せない内容ですので」
業を煮やして声を掛けてきたダリウスを、バッサリと切り捨ててガールズトークに花を咲かせる。
皆がダリウスに気遣って、少しトーンダウンしてしまったけど。
レイチェルが代わりに、盛り上げてくれた。
どうやら、私自身も気付かない間に、相当にキテたのかもしれない。
「私が幼い時に、身分至上主義派閥となかなか縁を切らないお父様に、ストレスを溜め込んで爆発した時のお姉さまとそっくりでした……あの時は、派閥の男性との見合いだの食事だのを押し付けられて、断っても断っても約束を取り付けた父が悪いのですけどね……大変でした」
そう……どう、大変だったのかな?
詳しく聞くのが、怖い気がする。
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えーっと……それが、軽いレベルなんだ……
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