王様がおかしくなった~憑依? 転生? 別人格が乗り移り色々とやらかします~

へたまろ

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王様がおかしくなった【ガクブル】(宮廷料理人)

 突然、いとまを出された。
 誰にだって?
 この国のトップのお方だよ。

 せっかく宮廷料理人として雇われて、これから腕を振るおうと思っていたのに。
 陛下が料理人を一人所望したと。
 そして、料理長に差し出されたのが、俺だ。
 舌が良くて、腕が確かなものというお達しだった。

 それに選ばれたことは、嬉しいが。
 もしかしたら、陛下には分からないからと一番使えない人間を選んだ可能性も……
 だって、その結果がクビだからな。

 クビになった日に、荷物を片付けるように言われた。
 翌日には、追い出される。
 もう、夜逃げしてやろうかと思った。
 だが、思いとどまった。
 クビを切る相手に対して、舌が良くて腕が確かなんて条件を付けるだろうか?
 少し、様子見……

 普通に、追い出された。
 城を出てトボトボと歩いていたら、フードを目深に被った男性に声を掛けられた。

「跪くな」

 その顔を見た瞬間に、慌てて跪こうとして腕を掴まれる。
 どういうことだろう?

「お前には内密の仕事を与える。色々と大変だが、やりがいのある仕事だ」

 どうやら、ただクビにされただけじゃないらしい。
 もしかして、どこかの厨房に潜り込んでレシピを盗んで来いとか?
 それならば、条件にも納得が。

 ……とあるお店に連れて来られた。
 俺のお店らしい。

「居酒屋キングという」

 知ってる。
 最近、巷で話題のお店。
 そこを、私が?
 ああ、偽物のお店を作らせるつもりですね。
 居酒屋キングに行って、味を盗んでここで再現。
 陛下の小遣い稼ぎのためでしょうか?
 そんな小銭も稼がないといけないほど、我が国の財政は厳しいのでしょうか?

 違った……基本メニューのレシピは準備してあった。

「ここは、俺がやってるお店なのだが……週1でしかやってないことに、不満が集まってな……」

 随分と命知らずの国民が多いことで。
 陛下に不満をぶつけるなんて。

「嬉しい不満だよ。俺の料理を、それだけ望んでくれているということだからな」

 不満ではあるけども、賛辞でもあるわけか。
 なるほど、であれば陛下も悪い気はされないと。

 ……はっ?
 ここで、腕を振るっていた謎の料理人の正体が、あの愚かで名高い豚陛下……いや、今は筋骨隆々としてて、豚とは言えないけども。

 それ、俺が知っても良かったのでしょうか?

「だから、宮廷料理人を辞めてもらったんだ。誰にも言うなよ」
「はぁ……」

 いや、言わないですけど。
 言いたいですけどね。
 言いふらしたいですけど、言わないです。
 そして、尊敬します。
 俺は、自分より料理が上手な人ならば、性格に難があっても気にしません。

 それから、レシピについてあれこれと習った。
 煮切るだとか、二度揚げだとか、炒める、蒸すと色々な調理法を……
 炒めるくらいは、知ってます。
 蒸すという調理法も、似たような調理法なら……

 焼く、茹でる、揚げるは当然。
 焼くにも色々とある?
 知ってますとも。
 鉄板や、フライパンで焼く方法。
 窯で焼く方法。
 直火焼きと間接焼きというのですね。

 塩釜焼き?
 藁焼き?
 グリル? ソテー? ポワレ?

 蒸すも色々ある?
 ヴァプール? 酒蒸しみたいなもの?
 エテュベ? 素材の水分や、少量の水や出汁で蒸す。
 へ……へぇ……

 陛下のことを、師匠とお呼びしても?
 あっ、大将ですか……そうですか。

 とりあえず、昼はカレー屋なるものをやることになりました。
 カレー屋シェフ。
 なるほど、カレーのスパイスの調合を私が決めるから、私にピッタリの店名にしてくれたと。

 お店を開いて二か月。
 軌道に乗って、順調にお客様は増えてます。
 ただ……

「やっぱり、水の日のカレーは格別だよな。特に、カツカレーが」
「ばっか、お前なにいってんの? チキンマサラ一択だろう!」
「チーズウィンナーカレー最強」
「はぁ……カレーには、納豆だろうが!」
「いや、キムチだろ?」
「夏野菜カレー、最高! 素揚げされた野菜が……茄子が絶品」
「私はマッサマンカレーかな?」
「カレーうどん」
「カオソーイも、なかなか」

 週に一度、陛下が来られてカレーの方も手伝ってくれるのですが。
 自分の食べたいものをひたすら、再現されているみたいで……
 それを食べたお客様が、他の日にも要求してくるのが……
 スパイスの購入先も教えてもらえないので、一応用意はしてくれるのですが。
 研究用にまで回らないんです……

 さらに……

「おっ、今日は大将がいるじゃん」
「やった、大当たり!」

 そう……居酒屋キングの方も、陛下が居る日は売り上げが……
 俺、宮廷料理人になれるレベルのプロなんですけど?
 そして、そこで舌と腕を買われて、ここに来たはずなのに。
 心折れそうです。

「いや、俺はズルしてるから……」

 見た目に分からないズルは、ズルと言わないんですよ。
 料理してる時、ただ目が赤く光ってるだけでズルと言われましても……
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