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王様がおかしくなった(王妃)デート
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「今日は天気も良いし、庭でも散歩するか」
朝、隣で目を覚ました豚が……元豚が……国王陛下が、そんなことを言いだした。
たしかに悪阻も落ち着いて、多少動く方が良いとは思ってたけど。
そもそも、そんな時間はあるのでしょうか?
「心配するな! 昼までにはあらかた片付けるから。今日は庭園で昼食をとろう」
昼までに片付く程度の仕事しかしてない……というわけではありません。
最近は、精力的に執務に励んでいます。
人間単純なもので、そうなると周囲の陛下を見る目がやはり変わります。
最初はポーズだと思っていたのですが、なかなか素晴らしい成果をあげている分野もありますね。
熱病に倒れた時に、あまりお見舞客が来なかったり。
周辺国家や、地方貴族からお見舞いの品が届かなかったことで不安になったのかと思いましたが。
本当に、人が変わったよう。
「終わったぞ」
ベッドに腰掛けて、まだ見ぬ王子か王女の産着を縫っていたら陛下が穏やかな表情を浮かべて入ってこられました。
それから、私の横に腰掛けて頭を優しく撫でてくれます。
「王妃は、器用なものだな。ただの布切れを、このような素敵なベベに仕立て上げるとは。我が子ながら、嫉妬するな」
そう言うと、目を細めて笑い声をあげます。
……この程度のことで胸が高鳴るなんて、なんて単純な女に成り下がったのでしょうか。
まるでおぼこのよう。
「もう少しでキリの良いところまで縫えますので、あちらでお茶でも飲んでいらしてはいかがですか?」
少し冷たい物言いになってしまったかしら。
陛下が一瞬キョトンとし表情を浮かべたあと、笑いながら頷いてテーブルへと向かいました。
照れ隠しがバレてしまったみたいで、気恥しいですね。
侍女たちの視線が生暖かいのが気になりますが、まあいいでしょう。
私はいま、これを仕上げるのに忙しいので。
見なかったことにします。
しかし……痩せたおかげか、椅子に座ってお茶を飲むだけでも様になりますね。
足があんなに長かったなんて。
豚足だとばかり思ってましたが、サラブレッドでしたのね。
サラブレッド……陛下が、スラッとした足が長く走るのが速い馬の総称として決めた言葉です。
ついこの間まで、足すら組めなかったのが噓のよう。
それに年がら年中寝てたからか、腫れぼったかった顔も全然別人のよう。
切れ長の二重に、長い睫毛。
肌もハリがあって、綺麗ですね。
少し、嫉妬してしまいます。
ああ、どこかで見たような表情だと思ったら、先々代の皇后陛下の若い頃の肖像画とそっくりですね。
深窓の令嬢と名高く、国内でも最高の美女と噂だった大皇后様。
まあ、孫なので似ないこともないでしょうが。
血は受け継いでいたのですね。
であれば、私の子供達も将来は期待が持てますね。
あの頃の豚のように、太らなければ。
それから二人で……従者がゾロゾロとついては来てますが。
庭園を歩きながら、花を愛でます。
日が当たらないようにと、陛下が傘をさしてくださってます。
そして庭園にある丘の上で、昼食。
さっと、ハンカチを下に敷いてくれます。
なんと自然な動作……そして、やけに大きめのハンカチ。
準備が良いですね。
「レジャーシートだよ」
変わった名前のハンカチですね。
このサイズだと、バスケットを包む布よりも大きいですね。
バスケットを包んだ布を下に敷くことはありますが、わざわざ座るための布ですか。
「木漏れ日が気持ちいいね」
木の下に布を敷いたため、枝や葉っぱの隙間から淡い陽の光が降り注いでます。
その光が当たった陛下の横顔に、思わず胸がときめきそうになり慌てて目を反らしてしまいました。
本当にどうしたのでしょう、私は。
「パンに色々と具を挟んだものを持ってきたから、好きな物を食べるといいよ」
そう言って、侍女から受け取ったバスケットの中身を見せてくれます。
これは、陛下が開発した柔らかい白いパンですね。
食パンなるものと、バターロールなるもの。
どちらも、そのままでも美味しいですが。
バターを塗って焼いたものは、絶品ですね。
蜂蜜も捨てがたい。
ですが、今日は少し趣が違うようですね。
「美味しい……」
「ハムサンドだ。レタスもシャキシャキしてて、ハムとマヨネーズの組み合わせが絶品だろう」
マヨネーズ……これも、陛下が開発した調味料です。
といっても、全部書物で得た知識だとおっしゃってました。
先達の知恵を、自分の手柄のように言われるのは後ろめたいとおっしゃってましたが。
肝心の、それが記された書物が王城の書庫にはないのです。
どういうことでしょうか……どこで、そのような本を。
もしかして、他所の女が……と勘繰ってしまいましたが。
熱病から復帰するまで、動くのも面倒くさがる人です。
浮気相手の家に行くなんて面倒ごとは、絶対にしないですね。
王城に呼びつけるでしょうが……それすらも面倒くさがりそうでしたから。
今は、油断なりませんが。
基本、視界の中にいますし。
たまに、街に繰り出してますが。
基本、誰かが常に側についていますし。
どっちにしろ、今の陛下は魅力を感じます。
結婚して9年……初めての感覚ですね。
婚姻とは、こういうものだったのでしょうか?
政略結婚が当たり前の感覚なので、殿方を愛するということを本当の意味で理解できていませんでしたね。
遅咲きの恋……とは、違うのでしょうが。
「ほっぺに、マヨネーズついてるよ」
……
やっぱり、他に女がいたりしませんか?
そんな自然な動きで、私の頬に口づけをするなんて……
こなれ過ぎでは?
朝、隣で目を覚ました豚が……元豚が……国王陛下が、そんなことを言いだした。
たしかに悪阻も落ち着いて、多少動く方が良いとは思ってたけど。
そもそも、そんな時間はあるのでしょうか?
「心配するな! 昼までにはあらかた片付けるから。今日は庭園で昼食をとろう」
昼までに片付く程度の仕事しかしてない……というわけではありません。
最近は、精力的に執務に励んでいます。
人間単純なもので、そうなると周囲の陛下を見る目がやはり変わります。
最初はポーズだと思っていたのですが、なかなか素晴らしい成果をあげている分野もありますね。
熱病に倒れた時に、あまりお見舞客が来なかったり。
周辺国家や、地方貴族からお見舞いの品が届かなかったことで不安になったのかと思いましたが。
本当に、人が変わったよう。
「終わったぞ」
ベッドに腰掛けて、まだ見ぬ王子か王女の産着を縫っていたら陛下が穏やかな表情を浮かべて入ってこられました。
それから、私の横に腰掛けて頭を優しく撫でてくれます。
「王妃は、器用なものだな。ただの布切れを、このような素敵なベベに仕立て上げるとは。我が子ながら、嫉妬するな」
そう言うと、目を細めて笑い声をあげます。
……この程度のことで胸が高鳴るなんて、なんて単純な女に成り下がったのでしょうか。
まるでおぼこのよう。
「もう少しでキリの良いところまで縫えますので、あちらでお茶でも飲んでいらしてはいかがですか?」
少し冷たい物言いになってしまったかしら。
陛下が一瞬キョトンとし表情を浮かべたあと、笑いながら頷いてテーブルへと向かいました。
照れ隠しがバレてしまったみたいで、気恥しいですね。
侍女たちの視線が生暖かいのが気になりますが、まあいいでしょう。
私はいま、これを仕上げるのに忙しいので。
見なかったことにします。
しかし……痩せたおかげか、椅子に座ってお茶を飲むだけでも様になりますね。
足があんなに長かったなんて。
豚足だとばかり思ってましたが、サラブレッドでしたのね。
サラブレッド……陛下が、スラッとした足が長く走るのが速い馬の総称として決めた言葉です。
ついこの間まで、足すら組めなかったのが噓のよう。
それに年がら年中寝てたからか、腫れぼったかった顔も全然別人のよう。
切れ長の二重に、長い睫毛。
肌もハリがあって、綺麗ですね。
少し、嫉妬してしまいます。
ああ、どこかで見たような表情だと思ったら、先々代の皇后陛下の若い頃の肖像画とそっくりですね。
深窓の令嬢と名高く、国内でも最高の美女と噂だった大皇后様。
まあ、孫なので似ないこともないでしょうが。
血は受け継いでいたのですね。
であれば、私の子供達も将来は期待が持てますね。
あの頃の豚のように、太らなければ。
それから二人で……従者がゾロゾロとついては来てますが。
庭園を歩きながら、花を愛でます。
日が当たらないようにと、陛下が傘をさしてくださってます。
そして庭園にある丘の上で、昼食。
さっと、ハンカチを下に敷いてくれます。
なんと自然な動作……そして、やけに大きめのハンカチ。
準備が良いですね。
「レジャーシートだよ」
変わった名前のハンカチですね。
このサイズだと、バスケットを包む布よりも大きいですね。
バスケットを包んだ布を下に敷くことはありますが、わざわざ座るための布ですか。
「木漏れ日が気持ちいいね」
木の下に布を敷いたため、枝や葉っぱの隙間から淡い陽の光が降り注いでます。
その光が当たった陛下の横顔に、思わず胸がときめきそうになり慌てて目を反らしてしまいました。
本当にどうしたのでしょう、私は。
「パンに色々と具を挟んだものを持ってきたから、好きな物を食べるといいよ」
そう言って、侍女から受け取ったバスケットの中身を見せてくれます。
これは、陛下が開発した柔らかい白いパンですね。
食パンなるものと、バターロールなるもの。
どちらも、そのままでも美味しいですが。
バターを塗って焼いたものは、絶品ですね。
蜂蜜も捨てがたい。
ですが、今日は少し趣が違うようですね。
「美味しい……」
「ハムサンドだ。レタスもシャキシャキしてて、ハムとマヨネーズの組み合わせが絶品だろう」
マヨネーズ……これも、陛下が開発した調味料です。
といっても、全部書物で得た知識だとおっしゃってました。
先達の知恵を、自分の手柄のように言われるのは後ろめたいとおっしゃってましたが。
肝心の、それが記された書物が王城の書庫にはないのです。
どういうことでしょうか……どこで、そのような本を。
もしかして、他所の女が……と勘繰ってしまいましたが。
熱病から復帰するまで、動くのも面倒くさがる人です。
浮気相手の家に行くなんて面倒ごとは、絶対にしないですね。
王城に呼びつけるでしょうが……それすらも面倒くさがりそうでしたから。
今は、油断なりませんが。
基本、視界の中にいますし。
たまに、街に繰り出してますが。
基本、誰かが常に側についていますし。
どっちにしろ、今の陛下は魅力を感じます。
結婚して9年……初めての感覚ですね。
婚姻とは、こういうものだったのでしょうか?
政略結婚が当たり前の感覚なので、殿方を愛するということを本当の意味で理解できていませんでしたね。
遅咲きの恋……とは、違うのでしょうが。
「ほっぺに、マヨネーズついてるよ」
……
やっぱり、他に女がいたりしませんか?
そんな自然な動きで、私の頬に口づけをするなんて……
こなれ過ぎでは?
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