異世界に召喚されて中世欧州っぽい異世界っぽく色々な冒険者と過ごす日本人の更に異世界の魔王の物語

へたまろ

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第1章:仮冒険者と魔王様、冒険者になる!~エンの場合~

第9話:ルーンブレイド100ジュエル(10000円)

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「ここが、この街で一番良心的な武器屋ですよ」
「おっ、なんだいきなり! そんな事言われたって値引きしねーぞ」

 昨日のお祝い会は終始、レイドとカナタさんに弄られて終わった。
 そして、それぞれが宿に戻って朝を迎え、今はカナタさんと2人でとある武器屋に来ている。
 ここは、レイクポートの街にある武器屋の1つでそこそこ人気があるお店だ。
 武器屋といっても防具も扱っているし、包丁や鍋なんてものもおいてある。
 金物屋も兼ねているのだ。
 鉄で出来た看板には小槌と金床の絵が書いてあるが、このお店は鍛冶屋では無い。
 僕の言葉に、ニコニコとした笑みを隠そうともせずにそんな事を言うのが、このお店の店主のお兄さんだ。
 見た目凄く爽やかで清潔感溢れる好青年なのだが、冒険者に舐められないようにと使っている荒くれものの言葉遣いがアンバランスで、密かにそれが可愛いと評判を呼び女性冒険者の客も結構来ている。
 今日は、そこまで忙しく無さそうだ。
 まあ、この街にも大手の武器防具のお店が進出してきたからね。
 この通りの先にある3階建ての建物で、1階が防具、2階が武具、3階がアクセサリーのお店になっているらしい。
 といっても、あんなに大きくてキラキラしたお店は、僕みたいな貧乏人には縁の無いお店だ。

(注:チェーン展開しているという事は、様々な面でコストも抑えられて量産品なら個人のお店より安く買える……名品になれば個人店の方が掘り出し物がある可能性が高い。大手だとその辺りの目利きはまず間違わない……だから、むしろ初心者こそ覗いてみるべきである。)

 なんかいま、凄く損をしたような事を指摘する天の声が聞こえた気がする。

「で、何をお探しで? 見たところそちらのあんちゃんは丸腰みたいだから、あんちゃんの武器を選びに来たのか? それとも防具か?」

 お兄さんがニコニコとした、爽やかな笑みで話しかけてくる。
 うん、これが本当の爽やかな笑みだ。
 カナタさんのは何かが違う。
 確かに、爽やかなのだが……なんというか、なんだろう上手く表現出来ないな。
 爽やかな笑みで居ながら、目が色々な感情を物語っているというか。
 基本、人を見下しているというか。
 余裕故の、微笑みというのだろうか? 

「いえ、エンに武器を買ってあげたくてね。折角F級の冒険者になったので、そのお祝いですよ」
「おっ! そうなのかエン? それじゃあ仕方ないな、お兄さんが出すって事だけど、わしも割引って形で援助させて貰うよ。それがお祝いだ」

 カナタさんの言葉に、お兄さんが嬉しそうにこっちに話しかけてくるけど、貴方……僕とそんなに歳変わらないですからね? 
 この不自然な言葉遣いが可愛いと思える女と言う生き物は、本当に謎である。
 いや……本当は分かっているんだよ! 
 顔か? 顔なんだな? 顔だな! 
 いわゆる、「イケメンに限る」って奴なんだろ! 僕がこんな言葉遣いしたところで、うわっは! 勘違いおつ! とかって言うんだろ! 

「どうしたんですこいつ?」
「ん、気にしないで下さい。いつもの発作です」

 一人、天に向かって人生の不公平を嘆いていたら、カナタさんに勝手に発作扱いされたし。
 しかも、カナタさんが勝手に剣を選んでるし……
 それもワゴンセールの中から……
 280万ジュエルも持ってて、僕へのお祝いはワゴンセールですか……そうですか。
 期待した僕が愚かでしたね……

「なあおやじ……これも本当に200ジュエルなのか?」
「お……おやじ……! ついにわしも、おやじと呼ばれる日が来るとは……」

 カナタさんにおやじと呼ばれて、お兄さんが偉く感動して目をウルウルさせているが……そんな事はどうでも良い。
 問題は……カナタさんの持っている剣だ。
 鈍い鉄色の、ちょっとずんぐりむっくりしたショートソード。
 それって斬れるのってくらいに厚みがある。
 それでいて、幅も結構あって見るからに重そうだ。

「てやんでぃ! お兄さんなら、半額でいいぜ!」
「半額! ! よしっ、エンこれにするぞ!」

 その言葉を聞いたカナタさんが、凄い勢いで鉄のショートソードを手渡してくる。
 いや、要らないし……今持ってる奴の方が絶対良いし。なんてことを言わせてくれない良い笑顔だなおいっ! 
 何を言ったところで、たぶんこれを買わされるんだ……ここは素直に喜んで気分よくさせておいた方が良い気がする……はあ……もっとカッコいいのが良かったな。

「ワー! 物凄ク良イ剣デスネ……僕ナンカニハ、勿体ナイクライデス! 本当ニイインデスカ? ワーイ、嬉シイナ……」

 どうだ、これが僕の目いっぱいの演技だ! これなら、流石のカナタさんも騙されたに違い……
 なんすか、その目は? 

「お前……ダイコンだな……、まあ気持ちは分からんでもないし、こんな剣でそこまで本気で喜べるなら、ちょっと頭を疑うわ」

 おおい! 
 自分でも分かってて勧めてたのかよ! 
 ていうか、お前呼ばわり! 酷い! 
 出会った当初の爽やかなカナタさんどこいったの? ナイスガイ100%カナタさん! カムバーック! 
 そんな事を思ってたら、カナタさんがとっとと会計を終わらせてきてしまった。
 買い物しゅうりょー! そして僕のワクワクタイムもしゅうりょー! 
 カウンターではカナタさんと店主がまだ話している。
 もういーよー……早くでよーよー……帰りたいよー……
 ワクワクタイム後のいじけタイムに入っていると、ちょっとカナタさんの意地悪そうな笑顔が気になった。
 ああ、新たな被害者が……

「まあ、そこのワゴンは基本中古の品なんだが、その剣だけはずっと買い手が付かなくってさ……いっそ兄貴に頼んで溶かして打ち直してもらおうか考えてたところなんだ」

 店主のお兄さんの言葉に、カナタさんがちょっと冷たい視線を送っている。
 お兄さんが一瞬たじろぐ……まあ言葉遣いはあんなだけど、基本優男だしね。

「危ないところだった……」

 カナタさんはそう呟くと、これまたどこからか虹色に輝くニードルを取り出すっておい! そんな良いもん持ってんなら、そっちを僕にくれ! 
 これには武器屋のお兄さんも目を見開いている。

「えっ? 虹色鋼? ええっ? それって伝説の素材じゃ……」

 なんてことを口走っているが、僕も噂でしか聞いた事が無い。
 曰く、魔法との相性が非常に高く、その七色の輝きが表すように基本全属性の魔法の効果を高めてくれるとかくれないとか。
 っていうか、実在してるの見た事無いし……

「店主はもう少し、目を養った方が良いな……」

 カナタさんはそういうと、僕たちの目の前でブッ細工なショートソード鉄の塊の腹にそのニードルを突き刺す。
 当然鉄の剣はそこから罅割れていき、粉々に砕け散ってしまった。

「えっ? 僕のお祝いの品じゃ……」
「ちょっと? お兄さん?」

 2人とも、突然のカナタさんの凶行に思わず声を失う。
 が、次の瞬間違った意味で言葉を無くしてしまった。
 何故なら、その鉄の塊の下から青白い細身のショートソードが現れたのだ。
 しかも、その刀身には何やら文字も掘ってある。
 これあれだ……ルーンブレイドって奴だ。
 多分、魔法の言葉を掘って、なんらかの魔法を付与してあるんだろう。

「ミ……ミスリル鋼? えっ? ミスリルソード? はっ? えっ?」

 可哀想なのは、店主のお兄さんの方だ。
 その鉄の下に隠されていたのは、惑う事無きミスリルで出来た剣だし、魔法の言葉ルーンまで記されている。
 魔法の効果次第だが、どんなにくだらない魔法でもルーンブレイドは最低でも1万ジュエルはする。
 そして、ミスリル鋼のルーンブレードともなると40万ジュエルはくだらない……
 ダメだ……どう考えても僕たちが店を出た直後にそこのワゴンの剣全てを、お兄さんが叩き割る未来しか見えない。

「良かったな……良いものがかなり安く買えたぞ」

 カナタさんがわざとらしく、店主に聞こえるように言うと僕にその剣を渡してくる。
 ちらっとお兄さんに目をやると……あっ、死んだ魚の目をしてる。
 そりゃそうだよね……こんな1級品の武器をたったの100ジュエルで売っちゃったんだもんね。
 本来なら、カウンターの後ろに掲げて客寄せとして飾っても良いくらいの武器だし、適正価格で売れば普通にお店を増築だって出来たはずなのにね……
 あっ……膝を折った……
 とうとうお兄さんが両手を地について、項垂れてしまった。
 あまりに可哀想すぎて、素直に受け取れない。

「カナタさん……ちょっとこれは……」
「フンッ、そこの店主の目利きが甘いのが悪い」

 取りつく島もないとはこの事だな。
 しかも、物凄く楽しそうにお兄さんを見ているカナタさんの表情を前に、水を差す事は出来そうもない。
 お兄さんごめんなさい……僕は無力です。

「おい……店主、最後に良い事を教えてやろう。そこの鉄くずだが、長い事魔力に触れていたからだろう。内側は魔鋼に変質しているからな? そのまま鍛冶屋に持ってってナイフにでもしてもらえ」

 魔鋼を使ったナイフか……まあ、この剣には遥かに劣るけどそれでも珍しい一品だな。
 魔法の伝導性が高いから、魔法使いの人とかが好んで使うらしく、確か1万~4万ジュエルくらいにはなったはず。
 店主のお兄さんがガバッと起き上がると、慌てて鉄くずを集めている。
 しかし、すぐにハッとした表情を浮かべる。

「でも、この鉄含めてお客様にお売りしたものですから……」

 おお! ここに商売人の誇りを垣間見た気がする。

「いらん……俺が欲しかったのは中身だけだ。ほらっ、物を買った時に要らない箱とかはお店に処分を頼むだろ?」
「あざーっす!」

 おにいさああああん! 
 その言葉を聞いたお兄さんは、物凄い速さで鉄くずを大事そうに袋に入れている。
 その血走った眼を見ながら僕は、ちょっとこのお店をこれから人にお勧めするときは、少し考えてからにしよう。
 そんな事を思ったのであった。

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