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第2章:北風とカナタのバジリスク退治!~アリスの場合~
第16話:ペルセウスと北風とバジリスク2~カナタさんのバジリスク講義~
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「おはよう」
カナタが爽やかな笑みで挨拶をしてくる……ギルドの飲食スペースのテーブルから。
ここのギルドは酒類の提供はしていないが、朝、昼、晩と冒険に出る前の冒険者たちが軽く腹を満たす程度の食事は提供してくれる。
そして、なんと冒険払いと呼ばれるシステムまである。
これは、確実に依頼を行うという事がギルドに認知されており、その達成予想が70%を越えている場合、依頼金を前借して食事が出来るのだ。
といっても、そこまでカツカツの冒険者なんてのは、本当にここでの食事代を引かれたら儲けがあまりない依頼ばかりをこなす日雇い労働者か、一発狙いで前借すら出来ない連中ばかり。
普通の冒険者なら、たかだか銅貨60枚程度の食事代などその場ですぐに払える。
主に仮冒険者が、冒険者になるまでに飢えない為の救済処置だ。
そのため仮冒険者に限り、価格も半額の30枚程度となっている。
その差額は先輩冒険者たちが売れない素材や、腐りやすい食べられる部位を無料で提供することで成り立っている。
このギルドのハゲにしてはよくやったと言いたくなるような制度だが、よくよく聞けばナイスミドルの提案らしい。
まあ、過去にお世話になった身としてはあまり多くを言う事もないけどね。
「おはよう!」
「カナタはいっつも早いね」
アレクとカバチがカナタを見つけて声を掛ける。
心なしか、カナタの周りのテーブルに人が座って居ないのはあえて触れないでおこう。
そして、今日も今日とてコーヒーと新聞って、あんた本当にいくつなのよ?って話なんだけどね。
レイクポートのカナタなら28歳だけど、とてもじゃないけどいくらイースタンでもそれは無理があるわ。
「どうせ一人だと夜もやる事無いし、すぐに寝るからな。さてと、それじゃあ買い物に行こうか?」
「ええ?僕、お腹空いたんだけど」
全員揃ったところで、カナタが一気にコーヒーを飲み干して立ち上がる。
それに対してカバチが何か言ってるが、あんた朝しっかりと黒パンとスープ食べてきたじゃん。
そんな事を思っていると、カナタが紙の包みに入った何かを3つ取り出す……いつの間にか手にした鞄から。
どこにあった、その鞄!
「そう言うだろうと思って、サンドイッチを用意して貰ったから食べながら行こう」
「流石カナタ!」
「気を遣わせてしまって悪いな」
カバチがおおはしゃぎ。
そして、アレクが申し訳なさそうに頭を下げてそれを一つ受け取っている。
「有難う」
私にも手渡されたので、有り難く頂戴しておこう。
何気に細かくて気が利く男なんだよな。
優良物件ぽいんだけど、笑顔の裏が気になって恋愛相手としては怖いけど。
ほらっ!変な事を考えるとすぐに笑顔の目の部分だけが変わるんだよ!
まあ、どうせ私は共通表情というスキルを持ってるから仕方ないか。
「まずは道具屋で石化対策か」
「そうだね……といっても、バジリスクと戦うなんて想定してなかったから、その辺の魔道具の事あんまり知らないんだよな」
カナタの言葉にアレクが恥ずかしそうに頬を掻いているが、カナタは特に気にした様子もない。
普通に笑顔でアレクの肩を叩くと「じゃあ、道すがらその辺の話もしようか?」なんて事を口にしてる。
というか、こいつって無駄に博識だったりするから、ちょいちょい勉強になるのは間違いない。
ちょっと話を楽しみにしている自分が、情けないやら恥ずかしいやら。
――――――
「そもそも石化のメカニズムって何か分かるか?」
「いや、さっぱり」
「それは魔法的な何かだよ!」
魔道具屋に向かう途中で唐突に始まったカナタのバジリスク講義。
言われてみなくても、なんで石になるのか不思議だ。
これはいまだに世界で解明されていない謎の1つである。
「じゃあ、化石って知ってるか?動物や魔物が石化した状態のやつ」
「ああ、ゴルゴンの食べ残しって呼ばれてる石になった骨の事だろ?」
カナタの質問に対して、うちの筋肉兼頭脳担当のアレクが答える。
確か、世界中のあちこちの地中から動物や魔物、竜などの見たことも無い生物の骨の石化したものが発見されるんだったっけ?
何故か骨だけのものや、殻しか見つからないから石化の能力を持つ魔族や魔物が石化したあとに食べ残して捨てられたものだろうというのが一応の通説だったはず。
「僕も知ってる!バジリスクやコカトリスが石化させて食べたあとに骨だけ残すからって聞いたよ」
流石にこれは有名な話だから、カバチでも知ってるか。
良かった、知った風な顔でカバチと同じような事をいうところだった。
「それは間違いだな。あれは死んだ後の生物が柔らかい所が腐敗して骨だけになった後で長い間風土に晒されて、その上に積もった新たな遺骸や土なの重圧で固められる。まあ殻が早めに化石になると中の遺骸が残ったりする事もあるが、基本的に殻の無い生き物はこの骨がアラゴナイトやカルサイトに置き換わって化石になる事が多いな」
「へえ……分からん」
「なんだか良く分からないや」
「なるほどね」
ちょっと、何よその目は!
ようは、固い骨がなんか重いものでより固くなったうえに、その中のなんたらナイトやらなんたらサイトになっちゃうって事でしょ?
まあまあかな?ってうるさいわ!
口パクで話しかけんな。
分かったふりしてもすぐにバレる……共通表情が憎い。
「まあ、ようは石化と化石は似て非なるものって事だ。その最大の特徴は石化は本来なら死んだら腐ってなくなる皮膚や内臓のような柔らかい部分も石のようになるって事」
「うん……それって、どういう事?」
「まあ、意地悪してもしょうがないから答えから言うが、これによって魔族や魔物の石化の仕組みとしては表面の構成物質の変化による石化……もしくは、表面に石の粉を吹きかけて固めることによる石化、この二つが予想でき……て無さそうだね」
「大丈夫、私はちゃんとついて行ってるわよ」
カバチはそうそうに諦めたみたいだけど、アレクは目から鱗みたいな表情になってた。
そして、私もカナタに言われて初めてそこに考えが到ったわけだけど、アレクよりは理解出来ている!と信じたい。
「じゃあ、実際には石化した状態でも生きてるって事か?」
「生きてるというよりは、すぐに死なないと言った方が正解かな?」
うーん、理解して無さそうで核心を突くような質問するアレクはやっぱりバカじゃなかったか。
でもすぐに死なないって事は、いずれ死ぬって事だよね。
「後者であれば呼吸は可能だから……いやまあ、口の中や鼻の穴くらいは石化するだろうけど、内臓は大丈夫だろうから肺が無事なら結構長い間は生きて居られると思う。前者が口の中から喉、胃壁や腸壁、肺の内側まで石化するなら5~6分で死に至るだろうね」
「という事は、5~6分以内に石化を解けば大丈夫って事?」
「まあ、確実だね。ただ、表面に針を差して治った事例や、自力で石化を解いた事例があるから、やはり表面を石で固めるってのが一番有力だ。だったら、上手くいけば数日は大丈夫だと思う」
本当にこいつの職業はなんなのだろうか?
魔物研究科とかでは無かろうか?
でも、使える魔法は多彩だし、ますます分からん。
いや、どう見てもF級に収まるような奴じゃないことだけは分かったけどさ。
「という事で、表面の石化した部分を真っ先に砕く事で石化は処理できるかな?石化ブレスとかなら、石になる元になる何かを吹きかけてると予想できるけど、視線で石化を行うとなると魔法に近いよね?でも目を合わせなければ防げるという事にバジリスク攻略の最大のヒントが隠されてると思わないか?」
「そうか!目を合わせてこっちが怯んでる隙に石の粉を吹きかけてるんだ!」
うーん、言ってる事が分からない。
そして、アレクがなんか的外れな事を自信満々に言ってる気がする。
「そうだね。その可能性も大きいけど、バジリスクやゴルゴンなんかは徐々に石化じゃなくて、一瞬で石化するからね……となると、呪術と土魔法の合成とかかな?」
「呪術?」
「一瞬で相手を石で覆う魔法となると、効果が絶大過ぎるからね?そんな魔法を使えるとなると賢者や魔王クラスじゃないと無理かな?(俺は使えるけど……)」
「はっ?」
「いや、なんでもない」
ちょっといま、ボソッと俺は使えるって言わなかった?
じゃあ何か?
あんたは賢者や魔王の類って言うのか?
「そうなれば一定の条件下で、絶大な効果を発揮できる呪術が近い気がする。そして、石化睨みにもある程度の制限……そう、Sランクや竜、大型や高位の魔物、中位魔族以上に効果が無い、またレジストするスキルが存在するという事は、自分より弱い相手にしか効かないんじゃないかなってね……それって、結構使えないスキルだよね?」
「言われてみれば」
「失敗による反動はないけど、石化が効かない相手にはあっさりと討伐されてるところを見ると、ノーリスクの低位呪術の可能性が高いかな?」
おお?
おおお?
割とカナタの答えが真実っぽい。
まとめると、バジリスクの石化睨みに限らず石化睨みは呪術だと。
そして、代償は効かない相手には必ず勝てない。
制限は自分より弱くて……この場合はレベルなのか、魔力なのか分からないけど、いずれかが弱くて目を合わせる必要がある。
そして、目が合った場合に石化の魔法が発動する。
確かに伝説の賢者や、魔王の中には石化を使った人も居たらしいから、石化自体は相当高位の魔法として認識されている。
確か賢者はそれで竜を石化して動きを封じて、戦士が石化した体ごと貫いて倒したって話があったような。
また、完全な状態で石化して封印された竜も居るとか。
常に魔力を注がないと解放されるらしく、いまもその国では数人の王級魔導士が魔力を3交代で注ぎ続けてるらしいけど。
また石化の魔法を使う女魔王は散々若い男を石にして愛でてたらしいけど、結局最後は筋肉にものを言わせて自力で石化を砕いて解除した樵に惚れて、拝み倒して結婚したらしい。
結局彼が老いさらばえるのが苦痛で、彼の筋力が衰えたところで石化して1体の石像と二人っきりで城に引きこもって若返りの秘術を研究しているらしい。
イイ話ダナーと世間では言われているが、そうだろうか?
「まあ、ここまではあくまで予想だが、ほぼ間違いないと思っている。なら、対策はどうしたら良いかな?」
「そこで、質問投げかける?えっと、相手より強くなれば良いんだよね?」
「たぶん……それだけ?」
それって、詰んでるよね?
だって、事前にレベル上げする時間なんかないし、魔力が必須ならアレクとカバチは……いや、前衛職でも石化を防いだ事例があるから魔力が問題じゃないのか。
おお!カナタが、期待した目でこっちを見ている。
ここは、天才魔法少女アリスちゃんの頭脳が本領発揮される時が来たかしら?
来たれ私の時代!
……ごめん、限界。
これ以上は分かりません……あっ、あからさまにガッカリしないで。
「ふう、呪術なら防ぐ方法は何も自力のレジスト以外にもあるだろう……」
「呪い返し!」
良かった……
なんとか面目守ることが出来たっぽい。
「正解!」
「でも、身代わり人形とかって金貨数枚はする上に、造ってもらうのに時間かかったよね?自分の血と髪の毛を渡して、手作りで魔力込で3日~1週間って聞いたんだけど?」
いままで、バジリスク退治に身代わり人形を持って行った人なんていないけど、もしこれで防げたらバジリスク討伐の歴史が変わる。
というか、黙ってたら私達バジリスク専門のハンターとして、一気に有名人に!
でも、今回試すにはあまりにも時間が無さすぎる。
「というわけで、これ形代ね?」
「はっ?」
「俺の国の身代わり人形みたいなもん」
そう言ってカナタが取り出したのは人型に切られた紙だったりする。
ちょっ!こういうのって本人に似てないとダメなんじゃないの?
「俺の国では大体これでなんとかなるから」
「心配しかないよ!」
「カナタが言うなら「何よ!ちょっと、アレク正気に戻って!」
カナタは自信満々だが、とてもじゃないがこれに命は託せない。
アレクのその全幅の信頼がもはや、催眠術とかってレベルじゃない。
というか、もしやこいつ本当は呪術師とかじゃないの?
「取りあえずここにアレクの名前を書いてっと。これでもう1回は防げるよ」
「えっ?」
「いやいやいや!」
なんなの、そのこれで大丈夫みたいな言い方。
取りあえず、そんな紙切れの何を信じたら良いのよ!
「試しになんかあれば良いけど、呪術なんてそうそうお目に掛かれないしね」
「試したくないよ!流石に失敗したらシャレにならないし」
取りあえず全員分の紙人形を2枚ずつ用意したカナタはよしっ!と呟きながら魔道具屋に向かって行った。
何故か奴の分だけ紙人形が無かったのが、すごーく気になったけど。
今回も戦う気が無いとか言わないよね?
「ん?俺には効かないと思うから」
それはどっちの話?
石化睨みが?
紙人形が?
カナタが爽やかな笑みで挨拶をしてくる……ギルドの飲食スペースのテーブルから。
ここのギルドは酒類の提供はしていないが、朝、昼、晩と冒険に出る前の冒険者たちが軽く腹を満たす程度の食事は提供してくれる。
そして、なんと冒険払いと呼ばれるシステムまである。
これは、確実に依頼を行うという事がギルドに認知されており、その達成予想が70%を越えている場合、依頼金を前借して食事が出来るのだ。
といっても、そこまでカツカツの冒険者なんてのは、本当にここでの食事代を引かれたら儲けがあまりない依頼ばかりをこなす日雇い労働者か、一発狙いで前借すら出来ない連中ばかり。
普通の冒険者なら、たかだか銅貨60枚程度の食事代などその場ですぐに払える。
主に仮冒険者が、冒険者になるまでに飢えない為の救済処置だ。
そのため仮冒険者に限り、価格も半額の30枚程度となっている。
その差額は先輩冒険者たちが売れない素材や、腐りやすい食べられる部位を無料で提供することで成り立っている。
このギルドのハゲにしてはよくやったと言いたくなるような制度だが、よくよく聞けばナイスミドルの提案らしい。
まあ、過去にお世話になった身としてはあまり多くを言う事もないけどね。
「おはよう!」
「カナタはいっつも早いね」
アレクとカバチがカナタを見つけて声を掛ける。
心なしか、カナタの周りのテーブルに人が座って居ないのはあえて触れないでおこう。
そして、今日も今日とてコーヒーと新聞って、あんた本当にいくつなのよ?って話なんだけどね。
レイクポートのカナタなら28歳だけど、とてもじゃないけどいくらイースタンでもそれは無理があるわ。
「どうせ一人だと夜もやる事無いし、すぐに寝るからな。さてと、それじゃあ買い物に行こうか?」
「ええ?僕、お腹空いたんだけど」
全員揃ったところで、カナタが一気にコーヒーを飲み干して立ち上がる。
それに対してカバチが何か言ってるが、あんた朝しっかりと黒パンとスープ食べてきたじゃん。
そんな事を思っていると、カナタが紙の包みに入った何かを3つ取り出す……いつの間にか手にした鞄から。
どこにあった、その鞄!
「そう言うだろうと思って、サンドイッチを用意して貰ったから食べながら行こう」
「流石カナタ!」
「気を遣わせてしまって悪いな」
カバチがおおはしゃぎ。
そして、アレクが申し訳なさそうに頭を下げてそれを一つ受け取っている。
「有難う」
私にも手渡されたので、有り難く頂戴しておこう。
何気に細かくて気が利く男なんだよな。
優良物件ぽいんだけど、笑顔の裏が気になって恋愛相手としては怖いけど。
ほらっ!変な事を考えるとすぐに笑顔の目の部分だけが変わるんだよ!
まあ、どうせ私は共通表情というスキルを持ってるから仕方ないか。
「まずは道具屋で石化対策か」
「そうだね……といっても、バジリスクと戦うなんて想定してなかったから、その辺の魔道具の事あんまり知らないんだよな」
カナタの言葉にアレクが恥ずかしそうに頬を掻いているが、カナタは特に気にした様子もない。
普通に笑顔でアレクの肩を叩くと「じゃあ、道すがらその辺の話もしようか?」なんて事を口にしてる。
というか、こいつって無駄に博識だったりするから、ちょいちょい勉強になるのは間違いない。
ちょっと話を楽しみにしている自分が、情けないやら恥ずかしいやら。
――――――
「そもそも石化のメカニズムって何か分かるか?」
「いや、さっぱり」
「それは魔法的な何かだよ!」
魔道具屋に向かう途中で唐突に始まったカナタのバジリスク講義。
言われてみなくても、なんで石になるのか不思議だ。
これはいまだに世界で解明されていない謎の1つである。
「じゃあ、化石って知ってるか?動物や魔物が石化した状態のやつ」
「ああ、ゴルゴンの食べ残しって呼ばれてる石になった骨の事だろ?」
カナタの質問に対して、うちの筋肉兼頭脳担当のアレクが答える。
確か、世界中のあちこちの地中から動物や魔物、竜などの見たことも無い生物の骨の石化したものが発見されるんだったっけ?
何故か骨だけのものや、殻しか見つからないから石化の能力を持つ魔族や魔物が石化したあとに食べ残して捨てられたものだろうというのが一応の通説だったはず。
「僕も知ってる!バジリスクやコカトリスが石化させて食べたあとに骨だけ残すからって聞いたよ」
流石にこれは有名な話だから、カバチでも知ってるか。
良かった、知った風な顔でカバチと同じような事をいうところだった。
「それは間違いだな。あれは死んだ後の生物が柔らかい所が腐敗して骨だけになった後で長い間風土に晒されて、その上に積もった新たな遺骸や土なの重圧で固められる。まあ殻が早めに化石になると中の遺骸が残ったりする事もあるが、基本的に殻の無い生き物はこの骨がアラゴナイトやカルサイトに置き換わって化石になる事が多いな」
「へえ……分からん」
「なんだか良く分からないや」
「なるほどね」
ちょっと、何よその目は!
ようは、固い骨がなんか重いものでより固くなったうえに、その中のなんたらナイトやらなんたらサイトになっちゃうって事でしょ?
まあまあかな?ってうるさいわ!
口パクで話しかけんな。
分かったふりしてもすぐにバレる……共通表情が憎い。
「まあ、ようは石化と化石は似て非なるものって事だ。その最大の特徴は石化は本来なら死んだら腐ってなくなる皮膚や内臓のような柔らかい部分も石のようになるって事」
「うん……それって、どういう事?」
「まあ、意地悪してもしょうがないから答えから言うが、これによって魔族や魔物の石化の仕組みとしては表面の構成物質の変化による石化……もしくは、表面に石の粉を吹きかけて固めることによる石化、この二つが予想でき……て無さそうだね」
「大丈夫、私はちゃんとついて行ってるわよ」
カバチはそうそうに諦めたみたいだけど、アレクは目から鱗みたいな表情になってた。
そして、私もカナタに言われて初めてそこに考えが到ったわけだけど、アレクよりは理解出来ている!と信じたい。
「じゃあ、実際には石化した状態でも生きてるって事か?」
「生きてるというよりは、すぐに死なないと言った方が正解かな?」
うーん、理解して無さそうで核心を突くような質問するアレクはやっぱりバカじゃなかったか。
でもすぐに死なないって事は、いずれ死ぬって事だよね。
「後者であれば呼吸は可能だから……いやまあ、口の中や鼻の穴くらいは石化するだろうけど、内臓は大丈夫だろうから肺が無事なら結構長い間は生きて居られると思う。前者が口の中から喉、胃壁や腸壁、肺の内側まで石化するなら5~6分で死に至るだろうね」
「という事は、5~6分以内に石化を解けば大丈夫って事?」
「まあ、確実だね。ただ、表面に針を差して治った事例や、自力で石化を解いた事例があるから、やはり表面を石で固めるってのが一番有力だ。だったら、上手くいけば数日は大丈夫だと思う」
本当にこいつの職業はなんなのだろうか?
魔物研究科とかでは無かろうか?
でも、使える魔法は多彩だし、ますます分からん。
いや、どう見てもF級に収まるような奴じゃないことだけは分かったけどさ。
「という事で、表面の石化した部分を真っ先に砕く事で石化は処理できるかな?石化ブレスとかなら、石になる元になる何かを吹きかけてると予想できるけど、視線で石化を行うとなると魔法に近いよね?でも目を合わせなければ防げるという事にバジリスク攻略の最大のヒントが隠されてると思わないか?」
「そうか!目を合わせてこっちが怯んでる隙に石の粉を吹きかけてるんだ!」
うーん、言ってる事が分からない。
そして、アレクがなんか的外れな事を自信満々に言ってる気がする。
「そうだね。その可能性も大きいけど、バジリスクやゴルゴンなんかは徐々に石化じゃなくて、一瞬で石化するからね……となると、呪術と土魔法の合成とかかな?」
「呪術?」
「一瞬で相手を石で覆う魔法となると、効果が絶大過ぎるからね?そんな魔法を使えるとなると賢者や魔王クラスじゃないと無理かな?(俺は使えるけど……)」
「はっ?」
「いや、なんでもない」
ちょっといま、ボソッと俺は使えるって言わなかった?
じゃあ何か?
あんたは賢者や魔王の類って言うのか?
「そうなれば一定の条件下で、絶大な効果を発揮できる呪術が近い気がする。そして、石化睨みにもある程度の制限……そう、Sランクや竜、大型や高位の魔物、中位魔族以上に効果が無い、またレジストするスキルが存在するという事は、自分より弱い相手にしか効かないんじゃないかなってね……それって、結構使えないスキルだよね?」
「言われてみれば」
「失敗による反動はないけど、石化が効かない相手にはあっさりと討伐されてるところを見ると、ノーリスクの低位呪術の可能性が高いかな?」
おお?
おおお?
割とカナタの答えが真実っぽい。
まとめると、バジリスクの石化睨みに限らず石化睨みは呪術だと。
そして、代償は効かない相手には必ず勝てない。
制限は自分より弱くて……この場合はレベルなのか、魔力なのか分からないけど、いずれかが弱くて目を合わせる必要がある。
そして、目が合った場合に石化の魔法が発動する。
確かに伝説の賢者や、魔王の中には石化を使った人も居たらしいから、石化自体は相当高位の魔法として認識されている。
確か賢者はそれで竜を石化して動きを封じて、戦士が石化した体ごと貫いて倒したって話があったような。
また、完全な状態で石化して封印された竜も居るとか。
常に魔力を注がないと解放されるらしく、いまもその国では数人の王級魔導士が魔力を3交代で注ぎ続けてるらしいけど。
また石化の魔法を使う女魔王は散々若い男を石にして愛でてたらしいけど、結局最後は筋肉にものを言わせて自力で石化を砕いて解除した樵に惚れて、拝み倒して結婚したらしい。
結局彼が老いさらばえるのが苦痛で、彼の筋力が衰えたところで石化して1体の石像と二人っきりで城に引きこもって若返りの秘術を研究しているらしい。
イイ話ダナーと世間では言われているが、そうだろうか?
「まあ、ここまではあくまで予想だが、ほぼ間違いないと思っている。なら、対策はどうしたら良いかな?」
「そこで、質問投げかける?えっと、相手より強くなれば良いんだよね?」
「たぶん……それだけ?」
それって、詰んでるよね?
だって、事前にレベル上げする時間なんかないし、魔力が必須ならアレクとカバチは……いや、前衛職でも石化を防いだ事例があるから魔力が問題じゃないのか。
おお!カナタが、期待した目でこっちを見ている。
ここは、天才魔法少女アリスちゃんの頭脳が本領発揮される時が来たかしら?
来たれ私の時代!
……ごめん、限界。
これ以上は分かりません……あっ、あからさまにガッカリしないで。
「ふう、呪術なら防ぐ方法は何も自力のレジスト以外にもあるだろう……」
「呪い返し!」
良かった……
なんとか面目守ることが出来たっぽい。
「正解!」
「でも、身代わり人形とかって金貨数枚はする上に、造ってもらうのに時間かかったよね?自分の血と髪の毛を渡して、手作りで魔力込で3日~1週間って聞いたんだけど?」
いままで、バジリスク退治に身代わり人形を持って行った人なんていないけど、もしこれで防げたらバジリスク討伐の歴史が変わる。
というか、黙ってたら私達バジリスク専門のハンターとして、一気に有名人に!
でも、今回試すにはあまりにも時間が無さすぎる。
「というわけで、これ形代ね?」
「はっ?」
「俺の国の身代わり人形みたいなもん」
そう言ってカナタが取り出したのは人型に切られた紙だったりする。
ちょっ!こういうのって本人に似てないとダメなんじゃないの?
「俺の国では大体これでなんとかなるから」
「心配しかないよ!」
「カナタが言うなら「何よ!ちょっと、アレク正気に戻って!」
カナタは自信満々だが、とてもじゃないがこれに命は託せない。
アレクのその全幅の信頼がもはや、催眠術とかってレベルじゃない。
というか、もしやこいつ本当は呪術師とかじゃないの?
「取りあえずここにアレクの名前を書いてっと。これでもう1回は防げるよ」
「えっ?」
「いやいやいや!」
なんなの、そのこれで大丈夫みたいな言い方。
取りあえず、そんな紙切れの何を信じたら良いのよ!
「試しになんかあれば良いけど、呪術なんてそうそうお目に掛かれないしね」
「試したくないよ!流石に失敗したらシャレにならないし」
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何故か奴の分だけ紙人形が無かったのが、すごーく気になったけど。
今回も戦う気が無いとか言わないよね?
「ん?俺には効かないと思うから」
それはどっちの話?
石化睨みが?
紙人形が?
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ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
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