異世界に召喚されて中世欧州っぽい異世界っぽく色々な冒険者と過ごす日本人の更に異世界の魔王の物語

へたまろ

文字の大きさ
52 / 74
第2章:北風とカナタのバジリスク退治!~アリスの場合~ 

第23話:ペルセウスと北風とバジリスク8~マザーそしてカナタブートキャンプ~

しおりを挟む
「という事で、そろそろ本命がこっちに来るはずだから……」

 そう言ってカナタがヒラリと木から飛び降りてくる。
 着地に失敗しろ!
 そして足首がグキってなってこけろ!
 私の願いも虚しく、物音すら立てずに着地するカナタ。
 この実力を隠す気も無い行動が若干イラッとする。
 けど、地面に降りた今ならチャンス!

「プレゼントなら、もっと役に立つものが良いかな?」
 
 カナタは私が全力で投げた石を、左手で軽く掴むとその辺にポイッと投げ捨てる。
 というか、あんたも私にくれたの石ころだからね?
 まあ、普通のじゃないけど。

「なあ?あいつってイースタンだよね?シノビって奴?」
「いや、無職って聞いたけど」

 一連の動作を見ていたジャンがカバチに聞いているが、そうかシノビって線もあるか。
 あの身のこなしに、察知能力の高さ、正体を隠したがるところか間違いない。

「シノビじゃないけどね。取りあえず、中ボスを倒したら次は大ボスだよね?」
「えっ?」

 カナタがそう漏らした直後、地鳴りが響いたかと思うとさらに数体のバジリスクがこっちに走り寄って来るのが見える。
 あれ?あの変異種って中ボス?
 まだ強いのが居るの?
 他の皆も同じことを思ったのか、ちょっと訝し気な表情を浮かべながら向かって来たバジリスクに目を向ける。

 さらに奥からバジリスクに囲まれるように一体の大きな個体が現れる。
 通常の個体の薄緑の迷彩とも保護色とも取れる鱗と違い、その個体は若干黄色掛かっている。

「まさかマザー?」

 クリスがゴクリと喉を鳴らす。
 マザー?

「おいおいおい……マザーがこんなところにまで来るとか……」

 ジャンがツヴァイハンダーを構えながら、全員の前に出る。
 
「う……そでしょ?」

 テオラも顔が青い。
 そんなにヤバい奴なの?

「ねえねえ、あれってそんなにヤバいの?」
「あの鱗は魔法も弾くし、通常の武器ではなかなかダメージも与える事もできない」
「そのうえっ……と!」

 私の呟きにクリスが答えるや否や目の前に黒い物体が突っ込んでくるのが、かろうじて見える。
 そしてそれをジャンが大剣で受け止めるが、2mくらい後ろに弾かれている。

「早い!」

 見ると、ジャンに軌道をそらされたであろうマザーが離れたところの木にぶつかっていた。

「という訳で、アリス以外は下がってね!」

 どういう訳かしらないけど、カナタが私の背中を押すと同時にカバチの盾に目配せする。
 なんの合図かな?
 そして一瞬でジャンの元に駆け寄ると、ジャンの首根っこを掴んでカバチ達の傍に放り投げた瞬間、カバチの持っていた盾が青い光を放って周囲を包み込むドームを形成していた。
 えっ?ていうかあの巨人を放り投げるってあんたの腕力どうなってんの?

「ちょっ!何やってんだあんた!」
「おい、ここから出すんだ!2人だけでどうするつもりだ?」
「カナタ!出してよ!」
「師匠!」
「まさか……2人だけで逃げる……いや、無理ね」
「あの?何がどうなってるか教えて。というか、あの人達本当になんなの?」

 みんながドームの中から激しく叩いているが、どうやらあの中から出る事が出来ないらしい。
 テオラさんは一瞬、自分たちを生贄とか失礼な事を考えたみたいだけど、普通に魔法職と無職が逃げられる状況じゃないことに気付いて思いとどまったようだ。
 ただ、バリイさんだけは完全に混乱状態に陥っている。

「さあ、散々楽してきたアリスさんに働いて貰おうかな?この杖貸してあげるから」
「えっ?私?一人で?」

 そう言ってカナタが投げ渡してきた木の棒を、思わず受け取る。
 うん、普通の木の棒だ。

「世界樹……ユグドラシルの枯れ枝だから、良いもんだよ?」
「ただの木の枝と違うの?てかそこらへんに落ちてる小枝だよね?」
「失礼な奴め、使ってみたら分かるから」

 うう……というか、カナタが手を付き出してるだけで周囲のバジリスクがこちらを囲んだまま、突っ込んでこないのが凄く不思議なんですけど?
 その手はどうなってるのでしょうか?

「いや、一人はちょっとムリ……かなあっと?」

 助けを求めるように、カバチの盾の作り出したドームに目を向けるとアレクが凄い勢いで目を反らした。
 ちょっと、あんた何か知ってるでしょう?

「アレク!」
「えっ?いや、もう無理だよ!こうなったら頑張ってとしか言えないから!頑張ってとしか言えないからー!」

 何故2回言った!
 しかも、めっちゃ可哀想なものを見るような目で。

「ちょっと、あんたふざけるのもいい加減にしろ!そこの嬢ちゃん一人でどうにか出来る状況じゃないだろ!」

 ジャンが大剣で思いっきりドームに斬りつける。
 キーンという音が鳴ったかと思うと、ジャンが手を押さえている。

「硬すぎるだ……ろ」
「ああ、ドラゴンのブレスにも耐えられる劣化イージスの盾の守護結界だからね?まあ、効果は残存魔力から見たところ20分くらいかな?ということで、アリスさん……制限時間20分!バジリスク100人組手といきましょうか?100人居ないし、人でも無いけど」
「えっと、なにがということかさっぱり分からないんですけど……」

 そしてカナタがバジリスクに向かって手招きすると、1体だけゆっくりとこっちに歩いてくる。
 うん、1体ずつ来てくれるってことかな?
 というか、なんでそのバジリスク達は襲い掛かってこないのかな。

「意味が分からないんだけど」
「では、健闘を祈る」
「祈らないで!そして手伝って!」

 私の叫び声虚しく、カナタが手を上げて振り下ろした瞬間、バジリスクが凄い勢いで突っ込んできた……

「キャー!」
「アリスちゃん!」
「アリス!」
「嬢ちゃん!」
「おい、お前いい加減にしろ!」
「ねえ、なにこれ?」

 かと思ったら吹き飛ばされた。
 ぐはっ!
 早すぎませんか?
 そしてみんなが焦っているなか、何故アレクだけ腕を組んで黙って頷いている!

「0点……」

 空高く打ち上げられた私を、お姫さま抱っこの要領で受け止めたカナタが緑色の液体を振りかけながら呟く。

「まずは、魔法職なんだから攻撃を受けちゃだめでしょ?」
「うう……痛くないけど、さっきめっちゃ痛かった。もう無理です……」
「はやっ!」
 
 一瞬で心折れた私に、カナタが呆れた表情を浮かべる。
 知ってますか?
 回復薬で治るのは身体の傷だけで、心の傷までは治らないんですよ?

「取りあえず、避けるか魔法で受けるかしないと……」

 そっとカナタが私を降ろして少し離れた瞬間に、またバジリスクが突っ込んでくる。
 ちょっ!まっ

「ぎゃっ!」
「キャー!」
「ちょっ、もう見てられない!」
「おい、カバチ何とかできないのかこのドーム」
「さっきからお願いしてるけど、解除してくれないんだもん」
「あれ大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ?師匠が居ればまず死ぬことは無いですし」

 だもんって、本当になんとかする気あるのかカバチ?
 そして、アレク……全然大丈夫じゃないですから?
 もう、2回死んだ気になってますから。

「はあ……本当に学習能力が低いな」
「うう……もう無理……」

 またも私に緑色の液体を振りかけて離れようとするカナタに縋りつく。

「行かないで……」
「うん、そういうのはもっと違うシチュエーションで使うと良いよ?それと……」

 上目遣いで懇願する私の手を、カナタは冷たいセリフと共にサッと振りほどくと耳元でなにやら囁く。
 そしてまたも突っ込んでくるバジリスク。

「キャー――!」

 そして叫び声をあげて目を塞ぐ、テオラ。

「【氷弾アイスショット】!」
「グワッ!」
 
 だが、今回は今までとは違う。
 カナタに言われた通り氷弾の魔法を上から下に向けて放つと、自分でも信じられないくらいの氷の塊が降って来て地面に突き刺さる。
 そしてそこに突っ込むバジリスク。

「すぐに攻撃しないと」
「いや……今ので魔力が殆ど……」
「じゃあ、杖で目を刺すとか、喉を付くとかいろいろと方法あるじゃん!」
「ええ?……」
「はあ……これ飲んで」
「えっ?」
「いいから!」
  
 カナタに言われるがままに、手渡された青い液体を飲み干すと一気に魔力が漲って来るのを感じる。
 まさか、マジックポーション?

「これで使えるだろ?」
「魔力が……よし、【ファイアーボール】!って、嘘!」

 私の手から出たのは火の玉と呼ぶにはあまりに大きすぎた。
 目の前のバジリスクを焼き尽くし、さらにその後方のバジリスクを3体ほど巻き込んでようやく消えた。
 そして、バジリスク達から何やら抗議の声が上がっている。

「アリス!組手なんだから1対1でやってるのに、他のに攻撃しちゃだめじゃん」
「いや、手加減が……そして魔力も……」

 今の一撃でまたも魔力が殆ど空っぽになってしまった。
 
「今の……」
「なんだ、あの嬢ちゃんもちゃんとやったらすげーじゃねーか」
「アリス凄い凄い!」
「ねえ、あの人一体いくつポーション持ってるんだ?」
「いや、分からないけど、俺に使っただけでも3桁いってるけど」
「というか、いい加減俺に誰かちゃんと説明して!」

 急に後ろの集団から緊張感が消えた気がする。
 カバチだけは、キラキラとした目を向けてくれているが。
 ジャンはほほうといった感じだし。
 クリスさんの興味は、カナタの持ってるポーションの数だし。
 っていうか、アレクあれ100本も使ったの?
 マジで何やらされたのアンタ!
 そして、バリイさんが若干切れ気味だ。

「じゃあ、次から3対1で?」
「良いわけ無いじゃない!」
 
 というか、本当にこいつは何がしたいんだ……



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

処理中です...