異世界に召喚されて中世欧州っぽい異世界っぽく色々な冒険者と過ごす日本人の更に異世界の魔王の物語

へたまろ

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第3章:ジュブナイルとチョコのダンジョン攻略

第6話:アンダーザマウンテン4~武器屋~

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「という訳で、ここがこの街でも有名な武器屋ドワーフの友だ!」
「ふーん」

 俺が自信をもって連れてった武器屋の外観を見たカナタの感想がふーんだ。
 こいつ! 
 まあ、良いだろう。
 こんな貴族のボンボンに武器の良し悪しが分かるはずもない。

「私は今もってるこのメイスで十分です」

 そう言ってチョコが樫で出来ているであろうを胸に抱く。
 胸は無いが。

「えっ? それって杖……」
「言うなカナタ……駆け出しの懐事情くらい知ってるだろう?」
「あー、まあ」
 
 俺だってそれがメイスじゃない事は知っている。
 カナタも杖と言ったが、実際はただの削りだしの木の枝にしか見えない。
 治療師の持つメイスと言えば、柄頭が十字の形をしていたり女神の形をしていたり、それなりに凝った意匠が施されたものが多い。
 勿論、女神等を彫ったもので殴打する治療師は殆ど居ない。
 殆ど居ないだけで、居る事は居る。
 血塗られた女神を見てうっとりとした表情を浮かべていた奴も居た。
 それでも治療の腕もピカ一というのだから、治療術が神から授けられた奇跡というのは怪しいものである。

「うう……私だってこれがメイスじゃない事くらい分かります」
「いや、それメイスだよね? おじさん?」
「ああ、そうだな。立派なメイスだ」
「うう……返って惨めになりますよ~」

 精一杯の慰めに対してこの言い種。
 まあ、繊細な部分だからこれ以上触れないでおこう。

「で、取りあえずおじさんの武器は?」
「ああ、俺のはこれだな」

 そう言って背中から長剣を取り出す。
 両手で扱うにはちょっと軽い、短剣と長剣の中間くらいの長さと幅の一品だ。
 一応命を預けるものだから、それなりに良い物だ。

「へえ、魔鉄を芯に使った鉄とミスリルの合金の剣だね? なかなか良い仕事してますねー」
「ちょっ! そのモノクルどこから出て来た?」
「右のポッケ?」
 
 いつの間にか円の形をしたグラスを持ったカナタが、それを片目にはめて剣を鑑定している。
 いい仕事してますねーのところが若干おっさんの声だったが、誰かの真似だろうか? 

「金貨132枚と銀貨82枚ってところですか?」
「ピッタリだよ! なんだよお前!」

 13,282ジュエルと68マニーだったが68マニーはまけて貰ったから、ガチでピッタリだ。
 というか、値引き後の額まで当てるとか、段々と怖くなってきた。
 金貨1枚が100ジュエル、銀貨1枚が1ジュエル。銅貨1枚が1マニー、鉄貨1枚が1アインだ。
 といっても、鉄貨なんて最近使う処は殆ど無い。
 10アインで、1マニー、100マニーで1ジュエルとなっていくが確かどこぞのイースタンのお店だと商品の包装代に5アイン要るとかなんとか……
 カナタは絶対に普通の子供じゃない事だけは分かった。
 だが、イースタンという事で納得するしかないか。

「おお、まだ生きとったか」
「酷いな!」
「ふぇっふぇっ、何やら疲れておるなお主?」

 お店に入ると、よぼよぼの爺が酷い事を言ってくる。 
 カナタに色々と削られて余裕の無かった俺は思わず怒鳴ってしまったが、その反応を見て色々と察してくれたらしい。
 流石この店で50年冒険者を見てきただけの事はある。

「あのおじいさんが店主さんか、初めまして」
「おやおや、これはめんこい坊主じゃのう。お主が今回このジュブナイルに面倒見て貰ってる子か?」
「うん、そうだよ!」
「おうっ?」

 カナタがじじいの問いかけに素直に答えたから、思わず変な声が出たわ。
 面倒見たつもりは無いが、じじいの言葉に上手く返してくれるあたり意外と対人能力は高いのか。 
 ちゃんと俺の面子も立ててくれてるし、案外良い奴かも。
 ん? なになに? 「貸し1ね?」ってやかましいわ! 
 口パクで下らん事言ってんじゃねー! 

「ふぇっふぇっふぇっ! じゃあ、今日は坊主の武器を見に来たのか? それとも防具か?」
「あー、僕は自前のがあるから大丈夫だよ」
「ほう、ここにはもっと良い物があるかもしれんぞ? お主金だけは持ってそうじゃしのう」

 ガッチリマーク状態に入ったじじいが、ガサゴソと棚をあさり始める。
 確かにこんな身なりの良い坊っちゃんが来たら商機だと思うわな。

「本当に大丈夫だよ? 大体僕無職だから、戦わないし」
「はあっ?」
「私のは木の枝です……」
「はっ?」

 カナタがふざけたことを言い出したタイミングで、立ち直ったチョコがさっきの会話を続けてくるから頭がこんがらがりそうになった。

「おいっ! 俺とチョコだけでダンジョン制覇なんて無理だぞ?」
「だから、準備するんじゃん」
「ていうか、お前レンジャーとかじゃないのか?」

 大体無職の意味が分からん。
 というか、2人でビルドのダンジョン制覇とかA級くらいじゃないと無理じゃないだろうか? 
 そもそも言い出しっぺはお前だろうが! 

「おまっ! マジふざけんな!」
「痛い痛い! 頭が割れる……なーんつって!」

 はあっ? 
 確かにカナタを掴んで頭を拳で挟んでグリグリしてたはずなのに、気が付いたら木の人形をグリグリしてた。
 そして本人はその人形の横で、口に手を当ててあたかも人形から声が出てるようなふりをしてやがった。
 分かった、こいつシノビって奴だな。
 たしか、攻撃を人形を身代わりにして躱すスキルもあったはずだし。
 イースタン限定のアサシンと並ぶレンジャーの上級職だったはずだ。

「お前シノビだろ! バリバリの中衛上位職じゃねーか!」
「違いますう! 無職ですう!」
「あの、杖……」
「うるさい! チョコは黙ってろ!」

 取りあえずこのガキだけは捕まえて、グリグリの刑に処さんと気が済まん。

「おいおい、ジュブナイル。お前は何をしに来たんじゃ? 冷やかしか?」
「はっ! だって、こいつが!」
「子供相手にムキになるんじゃない!」
「おう? 俺が悪いの?」
「うむ!」

 くそっ! カナタのせいで怒られたじゃねーか! 
 ぜってーいつか仕返ししてやる! 
 ん? なになに? 「やーい! 怒られてやんの?」ってじゃかましいわ! 
 なんでこいつははっきりと聞こえるような口パクが出来るんだよ! 
 ああ、これもシノビの技にあったっけ? 喋れない状況で情報を伝えるスキル。
 うん、こいつはシノビで決定だな! 

「ああ、まあいいや、じいさん武器のメンテ頼む! 明日からビルドのダンジョンの最上階目指すから」
「はあ? お主とうとう気が狂うたか?」
「ははっ、気が狂って踏破に挑む方がまだマシだ。正常な精神状態でダンジョン制覇の指名依頼だよ」
「うわあ、そりゃ難儀な事じゃな」

 そうだろうね。
 俺もそう思うわ。
 まだトチ狂って、俺は英雄になるなんて叫んでる奴の方がよっぽどマシな状況だもんな。

「なら仕方ない、切れ味と身体強化の魔法を付与して貰えるよう手配するから頑張れ。ちょっと紹介状を書くから待ってろ。それから武器を研ぎ直してやろう」
「いや、そんな金はねーぞ?」
「なに、ダンジョン制覇すりゃ余裕で払えるだろ」

 じじいが気合を入れてるようだが、その二つの魔法を武器に付与するだけで金貨100枚(1万ジュエル)は飛んでくんだけど? 
 まあ、ダンジョン制覇したら5万ジュエル以上のドロップは手堅いから払えなくはないが。

「俺が戻って来れなかったらどうするんだよ!」
「ああ、そん時は借金じゃな。安心しろ、無利息でギルドに話を通して報酬の1%を回してもらうようにするで気にするな。ワシが死んだらチャラじゃ! お主が死んでもチャラという条件じゃ」
「おいおい、どうしたんだじじい? もしかして死ぬんじゃねーか?」

 結構口厳しくてケチなジジイの癖に破格な条件を提示してくれる。
 俺は知っている。
 普段とは違った行動を取って、それがあまりにも人格者っぽい行動だった場合その人物はたいていすぐ死ぬ。
 物語の定番だな。

「おいっ! 普通に利息取ってやろうか? あまりに憐れじゃから、餞別がてら手助けをしてやろうと思うたじゃけだ! それに……そこな子供がおればなんとかなるかもしれんしのう」
「お……おう、いや普通に感謝はしてるがらしくないと思ってな。でも、こんなガキ一人が居たところでな、普通に荷物の嬢ちゃんも居るし」
「ふぇっふぇっ、大丈夫じゃ! イースタンは死なんよ」
「いや、結構死んでるから!」

 確かにイースタンってのは化物だが、それ故に無謀だったりするから。
 俺は勇者だつって、人間と友好状態にある魔族領に勝手に攻め込んで森で迷って死んだり。
 俺は選ばれしものだから、絶対に死なねーからとか言って竜に食われたり。
 年間数人の無謀なイースタンが死んでるから! 
 冒険者ギルドにも、イースタンは時折おかしな蛮勇になるから全力で止めるようにって案内来てたから! 
 はっ! それってカナタの事じゃねーか! 
 俺死ぬの? 

「うーん、取りあえず僕が持ってるメイス使う?」
「えっ? なんでメイス持ってるんですか?」
「うん、なんでか持ってた」

 ふとカナタの方に目をやると、手を組んで祈る女神の後ろに、今にも飛び立たんとする竜が象られた翼と首で十字に見えなくもないメイスをチョコに渡してた。
 柄頭の女神は純白で、竜は漆黒、殴打や刺突には竜の部分を使うから棍棒としての役割も問題無さそうだ。
 柄は落ち着いた白色で素材が不明だが。
 取りあえずはっきりと分かるのは高いという事だろう。

「ええ、こんな凄そうなメイス使えませんよ!」
「大丈夫だって、これでもまだ持ってる中じゃ下の方だから」
「そうなんですか?」
「それに貸すだけだから、気にしないで! 制覇したら返してもらうし」
「それなら……」

 おう! 俺にもなんか貸してくんねーかな? 
 メイスを手に持って目をキラキラしてるチョコを見て、羨ましいなんて思ってたら横から手が出てくる。

「おい、お主はさっさと剣をわしに渡さんか! メンテナンス出来んぞ?」
「あっ、すんません」

 チョコは武器貰ったのに、俺は武器取られた。
 まあ、あっちは返さないといけないし、俺は返してもらえるからいいけどさ。


 
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