異世界に召喚されて中世欧州っぽい異世界っぽく色々な冒険者と過ごす日本人の更に異世界の魔王の物語

へたまろ

文字の大きさ
64 / 74
第3章:ジュブナイルとチョコのダンジョン攻略

第10話:ビルドのダンジョン1階層~

しおりを挟む
 ギルドを出た後で魔女っ娘萌え萌えキュンキュンに武器を取りにいって、ようやくダンジョンの前までやってきた。

 周りにはチラホラと、まさに今からダンジョンに挑む冒険者たちが歩いている。
 緊張しているのがこっちにまで伝わってくる、見ていて微笑ましい新人ども。
 逆に浅階層は消化試合と言わんばかりに、弛緩したムードのベテランまで。 

 そして、そいつらからの視線が痛い。
 それもそうか。

 ガキと女とおっさんのパーティとか、俺が見掛けても見ちゃうわ。
 でも、しょうがない。
 これは、マスターからの指名依頼だからな。 

「お父さんと、娘さんと息子さんのパーティかな?」

 うっさい、黙れ。
 俺は独身だ。

「それじゃ、いざしゅっぱーつ!」

 カナタが先頭で拳を突き上げて中に入ろうとしたので、後ろからその襟首をむんずと掴む。

「あー、先頭は俺が歩く」
「えー……」

 なんで、こいつは不満そうなんだ?
 普通に考えて前衛職の俺を差し置いて、なんで無職のお前が……
 無職?

 いや、気配探知レベル255だったわ。
 どう見ても、散敵能力は俺より高いわな。

 でも、ダンジョンで12歳……見た目とおになるかどうかのガキを前歩かせる戦士とか、碌な奴じゃねーわ。
 ハイキングじゃねーんだから。

 ただ、後ろが心配なんだわな。
 カナタを一番後ろに持ってくるのが確実。
 いや、体裁を気にしなければ先頭がカナタで次がチョコ、最後が俺ってのがベストだが。

「はあ……、取りあえず10階層までは俺が前を歩く。そこから先頭はカナタだ」
「まあ、いいけどね」

 イラッ。
 なんで、こいつはこんなに偉そうなんだ?
 いや、良い。
 まずは、チョコのレベリングを急がないと。

「あのー……私は?」
「お前は真ん中一択だ」
「はい……」

 何故しょんぼりする。
 まさか、先頭を歩きたかったのか?

「本当は先頭が……だってこのメイスが、我を血に染めろと話しかけてくるのです」
「気のせいだから」

 メイスを胸に抱いて、キラキラとした視線を向けてくるチョコに対してカナタがバッサリ。
 そりゃそうだ。
 どう見ても、そんな物騒な……物騒だな。
 竜の意匠がとてつもない威圧感を放ってる気が。

「どうどう」
「あっ……なんか、メイスが落ち着いたみたいです」

 カナタが、竜を撫でると威圧感が収まる。
 うん……考えるな。
 考えたら負けだ。

「取りあえず、今回の一回で制覇する気は無いからな? というか無理だろ?」
「するよ?」
「はっ?」
「今回で、サクッと制覇するよ」

 自信満々に言い切るカナタ。
 いやいや、無理でしょ?
 俺の予定では、取りあえず1ヶ月くらいは浅層でチョコとカナタのレベリングのつもりだったのだが。
 正直レベル2の治療師とか、戦闘じゃ全く役に立たないし。
 回復魔法も使えないんだぜ?
 正直足手纏い以外の……チラッ

「いま、私の事を足手纏いって思ったでしょう?」
「ああ、思ったが?」
「否定してくださいよ!」

 チョコが肝心な時に役に立たない勘を全力で働かせて来る。
 全く。
 戦闘や探索で発揮してもらいたいものだ。

「早く行くよ」
「ちょっ! おまっ!」

 そんな事を思っていたら、すでにカナタがダンジョンの中に入っていた。
 待てや!
 俺が先頭つっただろ!

 周りの冒険者からクスクスといった笑い声が聞こえる。
 何笑ってやがる!
 俺を笑ってやがるな!
 そうだよ!
 どう見ても、子守だよ!
 クソがっ!

「勝手に先に行くなよ!」
「うん!」

 まあ、入り口付近に魔物が居ることはまずない。
 5階層くらいまでは冒険者も結構いるので、魔物はあまり見かけない。
 基本的には探し出して、狩るといった感じだ。

 6階層くらいからは、冒険者の数が減るのに比例して、魔物の数も増えてくる。
 曲がり角でばったりと出くわしたり、背後からのバックアタックにも気をつけないといけない。
 
 もう一度言おう。
 5階層くらまでの浅層に、魔物はあまり居ない。
 捜し歩いて、見つけて狩るものだ。

 だというのに。

「あっ、そこの角を右に曲がって少し行ったら、ゴブリンがいるからチョコさんメイス用意してね」
「あっ、はいっ!」
「一人で狩ってみよう!」
「えっ? 一人でですか?」
「大丈夫、大丈夫!」

 俺は頭を押さえて、首を振る。
 これで、30匹目のゴブリンだ。
 しかもここはまだ、2階層。
 
 ここで、30匹のゴブリンを狩ろうと思ったら、普通二日くらいは掛かるだろう。
 信じられるか?
 まだ、3時間も経ってないんだぜ?

「おい、カナタ? 大丈夫なのか?」
「うん、今回は3匹だからね。チョコさん一人でも問題無いでしょ?」

 そして、曲がり角の先から現れるゴブリン。
 また、ゴブリンか……
 つかゴブリンの見た目なんかわかりゃーしねーけど、なんか似たような個体ばっか出てくるんだよなぁ。

「うう……やっぱり、物理で戦うのって慣れないですね」
「おまっ、魔法の攻撃手段持ってねーじゃねーか」
「はい……」

 プルプル震えながら、ゴブリンに近付いて行き目を閉じてえいっとメイスを振るうチョコ。
 目瞑っちゃだめだろ。
 そんな事を思うが、なんの抵抗も無く先頭のゴブリンの頭がへしゃげる。
 
 チョコが攻撃しようとすると、何故かゴブリンが攻撃姿勢の途中で止まるんだよな。
 何故か……チラッ。

「どうしたの?」
「いや……」

 このガキが何かした様子は見られないが。
 とはいえ、何かおかしい。

「やった!」

 喜ぶな!
 あと2匹残ってるぞ。

 そして1匹倒すごとに、小さくガッツポーズするチョコ。
 隙だらけである。
 その隙を突くこともせず、待ってくれるゴブリン。
 おかしいどころの騒ぎじゃない。

「えいっ!」
「ギャッ!」
「やあっ!」
「ギャッ!」

 なんか、気の抜けた掛け声といい。
 凄くやる気がそがれる。
 死ぬ覚悟を決めて来たというのに、この緊張感の無さ。

「私って才能あるかも?」
「ねーよ!」
「無いよ!」

 こっちを見て、キラキラとした目を向けるチョコを二人でバッサリと切り捨てる。
 実際に、カナタも死んだ魚のような目でその戦闘風景を眺めている事もある。

 それほどまでに、才能が無い。

「これで、レベル5になりました! ふふーん。カナタよりも上ですね」
「ワー……オメデトウ」

 カナタの言葉から、完全に感情が抜け落ちている。
 そして、こちらに救いを求めるような瞳。
 うんうん、分かってる。
 俺と二人で来れば良かったって言いたいんだよな?
 
 お断りだ。
 足手纏いかもしれないが、これから回復魔法を覚えるかもしれないチョコが居るだけでも救いだ。
 現に、カナタは本当に何もしない。

 ぶっちゃけお前と2人とか、1人で挑むようなもんじゃねーか。
 そんなこんなで、サクサクとレベリングが捗る。
 ゴブリン、コボルト、スライム、吸血蝙蝠、それらをすべてチョコがメイスで粉砕していく。
 何故か、ヒットの瞬間に魔物が硬直するという謎を除けば、素晴らしい展開だ。
 
 もしかして、メイスの特殊効果かなにかか? 
 その女神像にパラライズの能力が付与されているとかじゃないよな?

「おお! 新しいスキル覚えました! 【小回復ライトヒール】です!」
「ついに! ついに回復魔法を覚えたのか!」

 そして、レベル8に上がったところで、チョコがようやく回復魔法を覚えた。
 カナタも安心したんじゃないかな?
 そう思って、横に目を向けた瞬間に……おしっこチビるかと思った。

 悪魔の笑みってああいうのを言うんだろうね。
 これで、無茶が出来る……
 っていう呟きも聞こえたし。

 なんか、手帳を開いてるし。
 手帳の表題には回復職向けカナタブートキャンプとかって文字が見えたけど……
 ブートキャンプってなんだ?

 不穏な言葉だってことだけは分かったけど。

「はっ! 背筋に悪寒が!」

 目の前で、チョコもブルッと震えてた。
 ご愁傷様って言葉が思い浮かんだ。
 ダンジョンで不吉だな……
 その言葉を振り払うように、頭を振ってチョコに近寄る。

「やったな!」
「ええ、凄く嬉しいです……けど、なんか途端に凄いプレッシャーが……」
「おめでとうチョコさん」
「ヒッ!」
「えっ?」
「えっ、いや、あっ……ありがとうカナタ」

 背後からカナタも賛辞を贈る。
 そして、チョコが満面の笑みでカナタの方に振り返って小さく悲鳴をあげる。
 うん……

 なんかしらんが、頑張れ。
 あいつの笑顔がろくなもんじゃないことだけは、分かる。
 分かるだけだ。
 助けられそうにない。

 よく見れば、人懐っこい普通の笑顔だ。
 チョコも慌ててお礼を言っている。
 言っているが、チョコの顔が若干引き攣っている。

――――――

「むりーーーーー!」
「アハハハハハ! 大丈夫だよ! 常時回復魔法を掛け続けてたら死なないから! むりーって言葉も、ヒールと字数一緒だし! どうせなーら、むりーーーーーの代わりにヒーーーーールって叫んだら?」
「精神が! 魔力が!」
「フフフ! だから、その首元から出てるストローで魔力回復ポーションを飲みながら、ヒールを繰り返したら良いだけだってー!」
「魔力と傷は癒えても、精神が―――!」
「新しい魔力回復ポーションだよー!」
「ちょっ、聞いて! 私の話聞いて! 勝手に補充しなくていいからー!」

――――――

 なんだろう……真っ赤な壁の階層で、チョコが悲鳴をあげながらオークやオーガと戦ってるイメージが……
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

処理中です...